サマリー
秋田県の住宅街に野生のクマが出現した事例を通じて、クマの生息数の増加や食料不足、縄張り争いなどが人里に降りる理由として語られています。また、共存の意味についても考察され、人と自然の距離感を保つことの重要性が強調されています。
住宅街とクマの関係
おはようございます。 花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。 昨日本当に怖い思いをしました。
昨日の朝7時半ごろ、近所にクマがいます、という情報が入りました。 場所を見たら、家から歩いて9分のところです。
番地違いの同じ町内でした。 私は住宅街に住んでいるんですが、
公園とかちょっとした林はありますけどね、森とは言えない場所なんです。 それでもそこに居住まっていたというので、本当に驚きましたし、本当に怖いなと思いました。
クマが捕獲されたのは午後3時半ごろです。 朝からおよそ8時間、クマはその間ずっとその場にいたようです。
行政とか警察、猟友会の方々が監視をしていました。 住宅街なので発砲もできないということで、監視をしているという情報が入っていました。
どんな形で捕獲に至ったのか、詳しくは報じられてはいませんが、8時間かかりました。 秋田県では月のワグマの目撃情報が県全体で、昨日は100件近くありました。
夕方のニュースで、今日の目撃情報といって、秋田県の地図が画面に現れて、 この地域で何件、この地域で何件、って伝えられるんです。
まるでコロナウイルスの感染者を、毎日今日は何人って言っていたみたいに、毎日毎日、 クマの情報が伝えられます。
秋田県が公表している推定生息数は、およそ2,800から6,000頭と言っています。 推定なんで幅があるんですね。幅がありすぎるっていう気もします。
2,800から6,000って倍ですよね。 まずそれを明らかにするっていうことから、スタートしなきゃいけないような気もします。
環境省の報告では、クマ類、ツキノワグマとかヒグマってことですけれども、 日本全国で分布域が拡大しているそうです。
そして人里に近いところ、いわゆる低標高域と言っているんですが、 そこへの進出が目立ってきていると指摘しています。
本州のツキノワグマで見てみますと、 平成15年度と平成30年度、この15年で比較してみますと、分布域はおよそ1.4倍に拡大したというデータがあります。
クマがいるのは山の中だけではなくなってきているということです。 ということで、クマの生活圏と人間の生活圏が重なり始めているということです。
最近のNHKの番組で縄張り、競争、捕獲後の扱いの現実について紹介されていたということを、 友人が教えてくれたので内容を確認してみました。
それによりますと、本当に強いクマは森の奥に留まって、 里に降りてくるのは縄張り争いに負けた弱いクマであると。
餌場の取り合いが激しくなっていて、行き場を失った個体が人里へ来ている、 と、そういう内容のようでした。
つまり、山の中ではクマ同士の生存競争が起きているんですね。 増えているから。
その結果、弱いクマ、あるいは子連れの母グマが、 やむを得ず住宅地近くまで降りてきているということなんです。
これはまさに、個体数が増加していること、 餌が不足していること、縄張り競争が重なった結果ということなんです。
秋田県の調査によりますと、住宅街に見つかるクマは、 多くはやはり若い個体だったり、母と子の親子グマのようです。
弱い立場のクマほど、人の生活圏に入り込みやすい。 それが現在の現実のようです。
共存の重要性
専門家の間で語られているのは、いくつかの要因です。 まずは、山の木の実の大凶作です。
餌がなければ、やっぱり人里に降りてくるしかないということですね。 二つ目は、学習したクマの存在です。
人を恐れないクマという言葉をよく聞くようになりましたけれども、 研究者は、クマの性質が変わったんじゃなくて、
人前に出ても大丈夫だと、学習した個体が増えたと説明しています。
そして、一回人里で柿とか生ゴミを食べたクマというのは、 ここは安全で餌がある場所、というふうに学習してまた戻ってきます。
こうやって、人とクマの距離が少しずつ縮まってきたということですね。
一つ目、二つ目については、もう人間の力でどうすることもできないというか、 凶作なのは人間がどうこうできるわけじゃないし、
そのことによって、やっぱり生きようとしているクマは人里に降りてくるしかないっていう、 食べ物を求めてくるっていうのはしょうがない習性だなって思うんですけど、
三つ目、これは私たちが努力できることかもしれないなって思うことなんですけど、 里山の境目が壊れていることです。
SNSでは環境破壊が進んで、クマが住む場所がなくなっているんじゃないかという声があって、 秋田県にも批判の声がものすごく多かったんですけれども、専門家はそうは言っていないです。
秋田県も開発が進んでいるのかなーって見渡してみても、そうは思えないわけですよ。
じゃあ何が起こっているのかって言いますと、 人口減少で畑とか田んぼが放棄されていて、
やぶになっているということが起こっているわけです。 それがクマにとっては人目を避けて通れる緑のトンネルになっているということなんですよ。
なので専門家は何と言っているかというと、 やぶ化した里山はクマにとって潜むのに最適だと、
見通しのいい緩衝帯を取り戻すことが出没を防ぐ第一歩だと言っているんですね。 自然を壊してクマが住めなくなったんじゃなくて、
自然が増えちゃってクマがあちこちで住めるようになったということなんですよ。 なのでクマが通りにくい街を作ることっていうのが現実的な安全対策かなっていう風に思いました。
クマのことについては2023年10月13日 497回の配信の中でもお話ししているんですが、
すでに秋田県は野生動物が自然環境の中で健全に生育できることと、 人が安心して安全に暮らせること、この両立を目指すという考え方を謳っているんですね。
その中で見えてくるものは共存って一緒に暮らすこととはイコールではないっていうことです。 互いに生きる場所を尊重して保つということ、これが共存の真の意味だと私は思っています。
今は人が管理を怠ってその境界は崩れてきていて、 クマは人の食べ物に近づいてきて、人は恐怖で排除に走るという状況になっていますよね。
今まさにその距離を保つ覚悟が必要だと思いますし、 そのためにはシビアなことも今はしていく必要があるなって思います。
優しさだけでは成り立ちませんし、強さだけでも成り立たないことだなっていうふうにも思います。 人が自然に対してどれだけ責任ある距離感を保てるかっていう、それが今試されていると思います。
この配信はアップルポッドキャストを他各種プラットフォームでお届けしています。 それではまた明日。
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