1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #037 愛を失っても愛の中にい..
2025-02-22 09:26

#037 愛を失っても愛の中にいた人

誠実であることは、自分を救うことがあります。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
https://note.com/child_skylark

◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #モノエフ朗読 #小説
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サマリー

このエピソードは、家族や恋愛に関する複雑な感情を描いており、個々の経験や生活が織り交ぜられています。特に、過去の結婚や親子関係の影響が強調され、新たな人間関係の可能性も探求されています。

家族の複雑さ
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、様々な人がいることをテーマにお送りいたします。
夕食を食べ終わり、お茶を一口すすると、家がしんと静まり返っていることに気がついた。
食器を運び、食洗機へ入れる。
別れた夫は、食洗機は教育に良くないからといって使わせてくれなかった。
子供たちが独立した後もだ。
あの人は私が楽をするのが気に入らなかったのだろうか。
別れる時にもらった一車両で食洗機を買った。
手荒れが減り、自分の時間が増え、最高だった。
母さん、俺らもそっちで一緒に住むよ。
と息子は言ってくれたが、
私、一人暮らし初めてなのよ。とっても楽しみなの。
と言って断ってしまった。
本心だった。
22歳で親が決めた人と結婚し、息子を二人産んだ。
夫だった人は、うちの会社をそれなりにちゃんと経営してはくれたが、
秘書と長年にわたり不倫をしていた。
東京にいた息子がうちの会社に入ってくれて、
ちゃんと社員たちと馴染んでいるという話を聞いて、
夫を追い出すことにした。
正直、坊ちゃんの方が社員たちからは人気がありますね。
久しぶりに会いに来てくれた柴さんは、
私が出したお茶を飲みながらそう言った。
本当?あの子、うまくやれてます?
前の社長はけっこう、
前の社長は経営者としては優秀でしたが、
あまり社員たちのことは、その…
帰り見ない人だった?
私がそう言うと、柴さんは焦って、
いえ、決してそのようなことは…
いいのよ。一緒にあの人の悪口言いましょう。
柴さんも長年の恨みがあるでしょ?
恨みなんて滅相もない。
丑山高さんをここまで連れてきて、
大きくしてくださった方ですから。
そうね。私もそのおかげで、
この家での生活を続けていられているわけだしね。
でもまさか、園田さんが社長とそんな関係だったなんて。
柴さんは人がいいものね。
ただ馬鹿なだけでございます。
園田さんも優秀な秘書でしたから、
まさかというのが正直なだけで。
岡本さんは気づいていたわよ。
気づいていて見ないふりしてた。
そんなまさか!
いいのよ。岡本さんだって、
丑山高さんからあの人がいなくなってしまったら困るから言えなかっただけ。
奥様…
でもね、気持ちでは許せないの。
だから柴さんみたいにお茶には誘わないの。
岡本もわかっていると思います。
嫌な女ね、私。
お手伝いさんは呼ばないのですか?
大奥様も施設に入られて、
お一人でこのお屋敷は広すぎるのでは?
いいの、今は一人で。
私、ようやく一人の人間になれている気がするの。
奥様は、ずっと立派なお人でございますよ。
柴さんはそう言って、
困ったように微笑んだ。
こんにちは。
インターホン越しの声に驚いた。
佐紀ちゃん?
信子おばさん、お願い止めて。
佐紀ちゃんは妹の娘で、隣町に住んでいる。
どうしたの、突然。
彼氏と喧嘩したの。
喧嘩?
共働きなのに、私は彼氏と喧嘩したの。
彼氏はのんきに出張とか言っちゃうんだよ。
出張はのんきではないと思うけど、
誰のおかげで仕事ができていると思っているの?
まあね、それはね。
そんなわけで、3日間止めてください。
仕事は?
有給溜まってたんで大丈夫。
その間に新しい家探すから。
新たな人間関係の探求
別れるの?
もうやってられない。
もったいない。
もったいない?
だって、自分で好きになった人なんでしょ。
私は恋愛とかしたことないから、すごくうらやましい。
そっか、おじさんとはお見合い結婚だったんだっけ?
そう。だから、れいことひでおさんもうらやましい。
うちの両親、今でもラブラブだもんね。
そう。
なに?
今夜はさ、一緒に恋愛映画見ようよ。
一晩中。
一晩中?
さきちゃんがうちのテレビをちょっといじると、
映画を見られるようになった。
どうやったの?
ん?
インターネットにつなげることはできるみたいだったから、
私のサブスクにログインしただけ。
サブスク?
さてさて、なにから見る?
あ、私、アメリ見たかったんだよね。これでいい?
よくわからないからまかせるわ。
さきちゃんは部屋の電気を消して、映画を再生した。
映画なんて何年ぶりだろう。
自分の家なのに、映画館に来たような気がした。
ふぅ。
ふぅ。
もう何本目だろう。
さきちゃんは真っ赤になった目をタオルで押さえている。
私も鼻をすすりながら涙をぬぐう。
軽快な音楽と一緒にエンドロールが流れる。
さきちゃんはいろんな映画を知っているのね。
彼氏が好きなの。
へぇ。
映画は経験できなかったことを疑似体験させてくれるからすごいんだって。
自分以外の人の気持ちを知っている。
自分以外の人の気持ちを考えるのに役立つんだって。
それは映画に限らないんだけどね。
彼氏はその中で映画が好きなんだって。
素敵な人ね。
私の気持ちは分かってくれなかったけどね。
ああ、困ったわね。
理屈ばっかりなんだもん。
私はそんなものを求めてないのに。
寄り添ってほしいだけだものね。
気持ちを共有したいというか。
そう、人生をシェアしたいだけなのに。
シェア?
一緒にいるって、そういうことでしょ?
そうね。
誰かとシェアできる人生って素敵でしょうね。
気がつくと、2人ともソファーで寝ていた。
インターホンの音で目が覚めた。
はーい。
通話ボタンを押すと、知らない男の人がいた。
あ、あの、あの、
突然すみません。
ぼ、ぼく、古田といいまして、
あの、さっきはこちらにいらっしゃいますでしょうか?
ああ、たけし。
さっき、やっぱりここだったか。
なんで分かったの?
さっきのお母さんに頭下げて教えてもらったんだよ。
お願いだから一緒に帰ろう。
ええ?
皿洗いは俺がやるから。
まあまあ、とりあえず上がってもらいましょう。
朝ごはんも作るから。
私は久しぶりに、
3人分の朝ごはんの準備に取り掛かった。
いかがでしたでしょうか?
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように。
小島千尋でした。
09:26

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