1. 小島ちひりのプリズム劇場
  2. #039 町中華をたらふく食べる人
2025-03-22 09:26

#039 町中華をたらふく食べる人

大事な時にたくさん食べられる人は大丈夫です。

脚本・出演:小島ちひり
収録・編集:三木大樹(有限会社ブリーズ)

noteに本文を掲載中。
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◇小島ちひり
7歳より詩を書き始める。
大学・大学院で現代詩を中心に近現代文学を学ぶ。
2013年 戯曲を書き始める。
2016年 つきかげ座を旗揚げ。3公演全ての作・演出を手がける。
2023年 プリズム劇場を配信開始。
日常の中の感情の動きを繊細に表現することを得意とする。
現在は表現の幅を広げるべく社会に潜伏中。

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#ラジオドラマ #朗読 #物語 #シナリオ #脚本 #小説 #モノエフ朗読
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サマリー

このエピソードでは、主人公が結婚をやめた理由や思いについて語りながら、食を通じたコミュニケーションが描かれています。特に、ラーメンやマチ中華を楽しむ中で、恋愛や生活の選択に関する葛藤が表現されています。

引っ越しをやめる理由
小島ちひりのプリズム劇場
この番組は、小島ちひり脚本によるラジオドラマです。
プリズムを通した光のように、さまざまな人がいることをテーマにお送りいたします。
引っ越すの!やめたから!
電話で私がそう言うと、剣がうろたいているのが伝わってきた。
やめるってどういうこと?え?もうこっちは準備できてるよ。
わかってる。でもやめる。
え?え?どういうこと?ごめんよくわかんない。母さんもシノが来るの楽しみに待ってるよ。
ごめん。私の気が変わったって言っておいて。
え?本当にどうしたの?俺たち結婚するんだよね?
本当にごめん。これで終わりにしよう。
終わり?別れるってこと?
また今度ちゃんと話そう。とりあえず今日はそれだけ。
私はそう言うと電話を切った。
私にだって思うところがいろいろあってこうしたわけだが、向こうからしたら晴天の霹靂だろう。
私の言っていることもやっていることも意味がわからず、困惑しているに違いない。
それでも私はそうするしかなかった。
え?シノ、じゃあ今まだ家にいるの?
電話口の向こうで、香りが驚いた声をあげた。
そう、今二歩どきしてる。
アハハ、詰めた場所で開かれて、荷物もびっくりしてるんじゃない?
本当にね。大変だよ、冷蔵庫も空っぽだし。
じゃあご飯行く?
いいの?
いいよ、全然。どこ行く?
うーん、ラーメン。
一時間後、待ち合わせの駅前に香りが現れた。
てか寒くない?
それが香りの第一声だった。
寒い、本当に。
温かいもの食べよう。どのラーメン屋がいいの?
あそこ。
私は少し行ったところにあったマチ中華を指差した。
ラーメンって言うから、てっきりラーメン屋かと思ってた。
香りはそう言いながら引き戸を開けた。
席につき、メニューを開く。
お決まりですか?
お店のおかみさんとお母式人が、注文を取りに来てくれた。
シノは決まった?
えーっと、担々麺とラーメン。
お決まりですか?
えーっと、担々麺と餃子。
あ、餃子2人前にしてください。
あと、ワンタン麺と麻婆豆腐とレバニラもお願いします。
香り、そんなに食べるの?
引っ越しの日本時は疲れるでしょ。食べときなって。
以上でよろしいですか?
あと、生ビール2つ。
かしこまりました。
店員さんはそう言うと、キッチンへ帰って行った。
香りは二ほどきしないでしょ。
まあね、でも失恋ってエネルギー枯渇するからさ、食べておいたほうがいいよ。
失恋って、別れるんでしょ。
まあね。
私はね、正直市川さんとシノは合わないって思ってたからほっとしてる。
そうなの?
だって、市川さん悪い人じゃないけど、いい人じゃないじゃない。
悪い人じゃなければいいじゃない。
だめだよ。邪悪でもなく善良でもない人は、外役だもの。
外役?実際そうでしょ。空気も読まず、思いやりもなくて、
ただふわふわとシノのことが好き、シノからも好かれてるって立場に甘えてただけでしょ。
暴力も震わないし、きつい言い方もしないから優しそうに見えるけど、
本当はシノのために労力使うのも面倒くさがる人じゃん。
はっきり言うね。
食を通じたコミュニケーション
私とか、シノの関係者に会うときもいつもぼんやりしていて、
おもてなしされるのが当たり前で、邪魔だな、早く帰ってくれないかなっていつも思ってた。
なんかごめん。
でも、好きだったんでしょ。
好きだった。今でも多分好き。
でも、一緒にいるべき人じゃないって気づいちゃったんでしょ。
そう、この人と一緒にいても幸せにはなれないって思った。
恋愛は好きだけでなんとかなるけど、生活はそうはいかないからね。
そうだね。
お待ちどうさま。ビールとレバニラでーす。
店員さんがビールとレバニラを手際よくテーブルに並べる。
とりあえず食べよう。シノの未来を祝って。
ありがとう。私の未来を祝って。
私たちは乾杯をし、目一杯レバニラを頬張った。
次の日曜日、ケント駅前の喫茶店で待ち合わせをした。
どうして急に引っ越しをやめたの?
ケント結婚することはできないと思ったから。
どうして?嫌いになっちゃった?
嫌いじゃない。今でも好き。でも無理なものは無理。
それじゃわからないよ。説明して。
一緒に住もうってなったとき、どうして当たり前に私が引っ越すと思ったの?
え?だって、俺の家からシノの家は一緒だったの。
だって、俺の家からシノの家は遠いから。
それ、私の家からケンの家も遠いってことだよね。
まあそうなるかな。理由になってないよね。
だって、シノの方がテキパキしてるし、俺が片付けて引っ越すより、シノが引っ越す方が早いじゃない。
私の労力はどうなるの?引っ越し費用だって私持ちだったよね。
だって、シノの引っ越しだもの。どうして俺が手伝ったりお金出さなくちゃいけないの?
私のこと好きなら手伝ってくれてもよくない?
気持ちと労力のトレードはフェアじゃないと思うな。
じゃあ私の労力は何とトレードされるの?
シノの引っ越しはシノのものだから俺には関係ないよ。
どうしてお母さんに結婚したら一緒に住むって言っちゃったの?
だって、結婚したら親と同居は当たり前でしょ?
令和の今は当たり前じゃないよ。
俺は家族を大切にしたいんだよ。そこら辺の白情な人たちと一緒にされちゃ困る。
私は大切にしてくれないの?
大切だよ。だからお母さんと一緒に住まわしてあげようと思ったのに。
どうして私、仕事辞めなきゃいけなかったの?
女の子が働くなんてかわいそうだと思ったから、家にいたほうが楽だしいいでしょ?
私の幸せ、誰が決めたの?
母さんがそうしたほうがシノのためになるって言ったから。
私の意見は?
同居も嫌だし、仕事も辞めたくないって言ったじゃない。
そうだった?聞いた覚えがないけど。
私は涙がポロポロこぼれてきた。
ケンのことを、それでも好きだった。
穏やかだし、一緒にいて楽だった。
でももう無理なの。
一緒にいると思っていたのに、まさか全然違うところにいただなんて思ってもみなかった。
シノ、何を言っているの?
ごめんね。私、仕事探さなきゃいけないし忙しいから。
そう言って、私は席を立った。
シノ、ちょっと!
ケンは私を呼んだけど、追いかけてくることはなかった。
いかがでしたでしょうか?
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それでは、あなたの一日が素敵なものでありますように、小島千尋でした。
09:26

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