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2024-02-29 20:40

e59 ストレスで生じた穴を塞ぐ + ヒトデの頭

細胞が障害を受けると細胞内にストレス顆粒というものが生じます。その機能についての話です。


さらに、アオイがヒトデの頭はどこにあるのかを解説します。


https://www.nature.com/articles/d41586-023-03417-4

https://www.nature.com/articles/s41586-023-06726-w

https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2102804118


https://www.nature.com/articles/s41586-023-06669-2

https://news.stanford.edu/2023/11/01/study-reveals-location-starfishs-head/

https://www.nature.com/articles/d41586-023-03123-1


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生き物っていうのは、小さな細胞が集まってできているんですよね。
細胞っていうのは膜に囲まれているわけなんですけれども、細胞の中にはさらに膜に囲まれた小器官っていうのがあるわけです。
DNAの核の場所である核とか、エネルギーを作るミトコンドリア、それからタンパク質の合成を行う小胞体とかゴルジタイなんていうのがあるんです。
さらに分解を行うリソソームというのがあります。 生き物全体がストレスによって生存を脅かされるように
細胞自体もストレスを受けるわけなんです。 熱とかUV、あとは酸化するような物質だったりがストレスになって、さらにウイルスとか細菌みたいな病原体もストレスになるんです。
こういうふうに細胞がストレスにさらされた時に、細胞の中に現れるストレス下流っていうものがあるんですね。
このストレス下流っていうのは膜に囲まれているわけではなくて、いろんなタンパク質とかRNAが凝集したものなんです。
普段多くのタンパク質とかRNAっていうのは自由に動けるんですけれども、それが固まってこんなものができるんです。
このストレス下流っていうのは一過的でストレス状態が終わるとなくなるんですね。 いろんなストレスでストレス下流は生じるし、いろんな種類の細胞で見られるんです。
だからストレス下流はきっとストレス反応にとって重要な役割があるんじゃないかと考えられているんです。
でもこれまでにRNAを守ったりとかストレスに対応してタンパク質の剛性を調節しているっていう話があるんですけど
まだ議論の余地があって、機能がはっきりとはわかっていないんです。
で最近、このストレス下流が細胞内小器官の修復をしているっていう研究があったので、今日はその話をしていきたいと思います。
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フォトサイエンティストへようこそ、こなやです。 今日紹介する論文はフランシス・クリック研究所のクラウディオ・ブッシラによる研究で
2023年11月のネイチャーに掲載されたものです。 細胞内小器官の一つリソーソームというのは膜に囲まれたもので
内部が酸性なんですね。酸性アルカリ性の酸性なんです。 さらにタンパク質を分解する酵素がたくさん入っていて
細胞の中にあるものを分解するっていう役割を持っているんです。 だから細胞の中でいらなくなった大型の分子とか
入ってきた細菌をリソーソームの中に取り込んで分解するっていう役割を担っているんです。 でも何かストレスがあって、例えば物理的なストレスとか化学物質
あるいはウイルスや細菌の働きでリソーソームの膜が損傷することがあるんですね。
そうするとリソーソームの中にある分解酵素とか酸がリソーソームの外に出てきて、そうすると細胞の中の別のものが壊れて
最終的には細胞が死んでしまうんです。 こういったストレスっていうのはストレス下流の形成を促すんですね。
でもさっきも話したようにストレス下流の機能っていうのはよくわかっていないわけなんです。 でもストレスが起きると
小器官の膜が修復するような機能が促進されるっていうことがわかっていたんです。 さらにストレス下流に含まれるタンパク質でストレス下流の形成に重要なものが
あって、それがG3BPっていうやつなんですね。 このタンパク質がリソーソームの膜に結合するということが知られていたんです。
それでこの論文の筆者はストレス下流とリソーソームに何か関係があるんではないかって考えたんです。
さらにこのタンパク質G3BPがその関係に何か働いているんではないかと考えて実験を進めていったんです。
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実験の内容としてはリソーソームに損傷を起こす化学物質を細胞に振りかけることによってストレスを与えた後に
高解像度で細胞を観察していったんです。 こういうふうに細胞の中で起きていることをどうやって観察するかなんですけれども
そのままでは見えないんですね。 それでタンパク質に光る分子をくっつけて
蛍光顕微鏡っていうその光を検出できる顕微鏡で観察するんです。
まずこういうストレスを与えるとストレス下流ができてきているっていうのが観察できるんですね。
それをどうやってやるかというとストレス下流にはG3BPがあるのでG3BPに光るものをくっつけてその光でもって観察をしたんです。
このできてきたストレス下流なんですけれどもリソソームが壊れている場所で形成されているということを発見したんです。
これをどうやってやったかというとリソソームの膜が壊れるとそこに集まってくるタンパク質があって
ガレクチン3って言うんです。 なのでこのタンパク質に別の色で光るものをくっつけたんですね。
そうするとリソソームが壊れた場所っていうのを見ることができるんです。 こうやって観察していたらリソソームが壊れている場所にストレス下流ができてくる
ということが観察されたんです。 さらに細かく見ていくとストレス下流っていうのはタンパク質とRNAが
凝集したものなんですけれどもリソソームにできた穴を塞ぐようにこのストレス下流が存在していたんです。
だからストレスによってリソソームに穴が開いてるんだけどそれに線をしてリソソームを修復して中身が出ないようにしているんだろうっていうことだったんです。
本当にそういう機能があるのかを調べるために G3BPに異常がある細胞で調べてみたんですね。
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そうするとそういった細胞ではこういった穴を塞ぐのが形成されなくってリソソームが壊れてしまうということが示されたんです。
それからリソソームに穴が開くとそこから酸が漏れ出てくるのでリソソームの外側で酸性度が上がるんですね。
だからpHが下がるんです。
これが刺激になってG3BPが凝集して最終的にストレス下流ができると考えられるという結果だったんです。
というわけでまだ機能によくわからない面があったストレス下流にこんな風に物理的に穴を塞ぐっていう機能がある可能性が明らかになったんです。
穴が開いててそこに凝集して穴が塞ぐっていうことなんですけどそれを聞くと連想するのが血液凝固反応なんですね。
血管に穴が開いた時っていうのは血小板という細胞が固まって血管の穴を塞ぐんです。
これは細胞が集まっているわけでスケールが全然違うんですけどでも細胞の中にもこんな同じようなメカニズムがあるっていうことが示されたわけなんです。
さらにこの論文では最近の感染とストレス下流の関係も調べています。
血核っていう病気を起こす血核菌というのがいるんですね。 これは感染をするとリソソームの障害を起こすんです。
それで病気が引き起こされるんですね。 この研究では血核菌を細胞に感染させる実験もしていて
そうするとストレス下流ができるっていうのを示しているんです。 G3BPの機能がない細胞でも同じ実験をしているんですけれども
その場合はこの血核菌がより増殖するっていうことを示したんです。 だから
G3BP、つまりそれによってできるストレス下流っていうのは 血核菌の増殖を抑えているっていうことが明らかになったんです。
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これは細胞で行った実験なんですけれども、もし同じことが人間でも起きているのであれば
ストレス下流の機能がおかしくなれば血核に対する免疫が異常になるはずなんですね。
今回のこの研究よりも前に行われた研究で、血核への免疫に異常がある
過程を調べて、その原因となる遺伝子を特定した研究があるんです。 そこではZNFX1っていうタンパク質の変異を
同定したんですけれども、このタンパク質っていうのがストレス下流に存在するタンパク質なんです。
今回の研究でもこのタンパク質が G3BPと一緒にストレス下流に存在するっていうことを示しています。
だから確かに血核とストレス下流には関係がありそうだということがわかったんです。 というわけで
細胞の中にストレス応答に重要そうなんだけど、まだ機能がはっきりしていないストレス下流っていうものがあって、
その新しい機能が見つかったということなんですね。 それはリソソームに穴が開いたら、それを物理的に塞ぐっていうものなんだけど、
これが細菌の感染に抵抗することに重要であるというところまでわかった研究だったわけです。
こんにちは、あおいさん。 こんにちは、こなやさん。
突然ですけど、人手の頭はどこにあると思います? 突然ですね。
人手ってあの星型のやつですよね。頭。 まあ最初に思いつくのはあのアニメのスポンジボブのパトリックみたいな感じで、5本の
なんていうんですか、腕みたいなやつの1本が頭で残りが手足っていうやつだけど、絶対違いますよね。
違います。 確か海底に人手が寝そべってる時は下側に口があるんですよね。
だから下側が頭っていうのもありそうですけど、いやでもこれは引っ掛けで頭はないっていうのが答えかな。
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いい線言ってるんですけど、それも違います。 ああそうですか。
いやーなんかこんな考えたことなかったですけど、考えてみると難しいですね。 そうなんですよ。
この問題の答えは長い間わかっていなかったんですけれども、最近これを明らかにした研究があったんです。
まず動物は左右対称の構造の体をしているものが多いんですね。 人間を含めた脊椎動物もそうですが、昆虫とかイカやタコみたいな進化的に離れた生き物もそうなんです。
だから左右の軸と頭から胴体、尻尾への軸があって、その端っこが頭になります。
でもヒトデは幼生期に人と同じく両側対称から始まりますが、生体になると5つの放射状の対称構造を持つ不思議な形状になるんです。
この体を見ても頭から尻尾への軸がどこにあるかよくわからないわけです。 そうですね。
でも実はヒトデとヒトは進化的には結構近縁なんですよ。 ヒトは虫やイカよりはヒトデに近いんです。
へー、そうなんですね。 でも体の作りは全く違うというわけですね。
そうなんです。なので体の構造だけを見て、このヒトデの頭はどこにあるのかという問いに答えるのは難しかったんです。
しかしスタンフォード大学のローラン・フォーメリーラが遺伝子と分子技術を駆使してこの謎を解き明かしました。
ほう、遺伝子で分析ですか。面白いですね。 具体的にはどういう方法が使われたんですか?
この研究チームはホックス遺伝子などの分子マーカーを用いてRNAトモグラフィーと呼ばれる手法を行いました。
実はどの動物でも頭の領域にある遺伝子とか、どの動物でも胴体の領域にある遺伝子があるということがわかっていたんです。
ホックス遺伝子に代表されるこのような遺伝子は体の各部位を作っていくのに重要なんです。
人手よりも進化的に離れていて、外見が似ていないようなミミズとか昆虫のような動物でもこういった遺伝子が働いていて、
哺乳類で頭で働いている遺伝子は昆虫でも頭で働いているんです。 そこで人手でこれらの遺伝子がどこで発現しているかを調べれば、人手の頭の位置と胴体の位置がわかると考えたんです。
なるほど、外見の解剖学的な特徴ではなくて遺伝子の場所を見るっていう分子的なアプローチで人手の体の謎に迫ろうって思ったわけですね。
そうなんです。 彼らはこのような遺伝子が組織のどこに発現しているかを三次元的に特定しました。
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インサイチャハイブリダイゼーションと呼ばれる手法があるのですが、これを用いると特定のRNAがどこにあるかわかります。
そうするとどの遺伝子がどこで働いてRNAが作られているのかわかるわけです。 この手法で頭で働く遺伝子と胴体で働く遺伝子についてたくさん調べてみて、
人手のどこでこれらの遺伝子が働いているかを三次元的に特定しました。
で、頭の遺伝子のRNAはどこにあったんですか?
人手の体のほぼ全体にあったんです。 口と体中から伸びている小さな観測と呼ばれる運動器官以外の体の大部分には頭の遺伝子が発現していました。
さらに予想外の展開として、胴体の遺伝子の発現がどこにも見られなかったんです。 つまり人手の体のほとんどが頭であることが示唆されたんです。
全部が頭ですか。それは意外ですね。 ですよね。
面白い研究で、まあ面白いというだけでもいいと思うんですけど、この研究には学術的にはどんな価値があるんですか?
そうですね。 分子生物学の専門書でも、人手のような極秘動物は系統図でハテナマークが描かれるほど謎が多い生き物のようなので、
今回の発見は進化や体の発達について画期的な発見と言えそうですね。 また、研究では人に近い生物を対象にすることが常なのですが、
普段私たちが注目することの少ない動物からも学び取れることがあるということも示した研究なのではないでしょうか。
なるほど。 確かに人のモデルとして限られた動物ばかり研究されるわけなんですけど、生き物のことを本当に理解するにはこういう研究も大切ですよね。
そうですね。
それでは今日はここまでにしたいと思います。 最後までお聞きいただきありがとうございました。
ありがとうございました。
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