遺伝子とタンパク質の役割
みなさんこんにちは、こなやです。
人間の脳って、他の動物と比べてかなり大きいんですね。
これっていうのが、人間の知能が高いことの理由の一つだと考えられているわけなんです。
最近発表された研究で、人間の脳がどうしてそんなに大きくなったのかという理由がわかったかもしれないという話があったんです。
さらに、それには人間で新しい遺伝子ができて、そうなったんだという話なんだけれども、
その新しい遺伝子ができる仕組みというのも一つ明らかにしたという話なんです。
まだ論文一つだけの話なので、これがどれだけ信頼できる話なのかというのはまだわからないところはあるんですけど、それでも結構びっくりするような内容だったんです。
ただですね、今回のこの研究の内容を理解するためには、セントラルドグマというものを知ってないといけないんですね。
これって生物学で一番大事な知識で、高校の生物では習うんですよ。
だから習ったことある人だったら知ってるっていう人もいると思うんですけれども、そうじゃない人もいると思うので、
ちょっとここで一通り説明してから論文の内容に入っていきたいと思うんです。
ちょっとややこしい話にはなると思うんですけれども、知っていて損のない話なので、ちょっと長くなるかもしれないんだけれどもお付き合いいただければと思います。
人間を含めて生き物っていうのは親と子がかなり似てるんですよね。
それは遺伝するからっていうことなんですけれども、その遺伝子っていうものが親から子へ伝わっているっていうことなんですよ。
これは知ってる人も多いと思うんですけれども、この遺伝子の実体がですね、DNAっていう物質なんです。
DNAっていうのはですね、同じような小さな構成要素がたくさん連なってできているんですね。
だからレゴのブロックがどんどんつながって長く伸びていくみたいな、そういう感じなんです。
似たようなって言ったんですけれども、全く同じものがどんどんつながっているわけではなくて、
そのブロックになるものが4種類あるんです。
それが頭文字からですね、ATGCの4種類っていう風になっているんです。
だからDNAっていうのはATGCの4種類のどれかがどんどんつながることによって長くなっているわけなんですね。
そういう風に文字がありますから、遺伝子配列なんて言って呼ばれるわけなんです。
このDNAっていうのがものすごく長いんですよ。
その人の細胞が持っているDNAっていうのは全部で3ギガ個つながっているんです。
だから3×10の9乗戸分だけあるっていうことなんです。
全部が一つながりになっているわけではなくて、人の場合だと40数個に分かれているんだけれども、それでも一個一個がめちゃくちゃ長いわけなんです。
この配列が人間同士だったらほぼ同じなんですね。99.何%まで同じなんだけど、ところどころ人によって違うんですね。
だから僕の持っているDNAとあなたの持っているDNAっていうのは若干違うわけなんです。
この違いが個人の個性を生み出しているっていうことになるわけなんです。
人間同士っていうのはすごく似てるんだけど、動物の種類が違えばちょっと違ってきて、例えばチンパンジーだったら数%違うんですね。
進化的に離れた生き物であれば、その違いっていうのがどんどん大きくなってくるわけなんです。
このDNAっていうのが遺伝子なわけで、親から子へ伝わっていくわけなんですよ。
だから細胞が分裂するときにはDNAのコピーが作られて、別々の細胞に大体同じDNAが伝わっていくっていうことになるわけなんです。
そのDNAの中に生き物の体を作って機能させるための情報が全部入っているわけなんです。
でもDNAそのものっていうのは情報を持っているだけで、その生き物を機能させること自体には働いていないんですね。
実際に生命の機能を働かせているのはタンパク質なんです。
タンパク質っていうのはものすごいたくさんの種類があるんですね。
タンパク質もDNAと同じように、その構成要素がまっすぐつながってできているものなんです。
タンパク質の場合はアミノ酸っていうのがつながってできているんですけれども、タンパク質を作るアミノ酸っていうのが20種類あるんです。
このタンパク質の配列っていうのはDNAの情報を元に作られていくんですね。
タンパク質っていうのはDNAよりももっと構造が複雑で、しかもアクティブなので生命の活動を作り出すことができるわけなんです。
ただそのタンパク質っていうのはDNAほどは長くなくて、そのDNAの配列上にどれぐらい長いタンパク質を作るのかっていう情報も含まれているんですね。
それで実際タンパク質はですね、数百個か数千個ぐらいのアミノ酸がつながったものっていうのが多いんです。
だから長いDNAがあって、そのごく一部でタンパク質の情報っていうのが保持されているんですけれども、その一つのタンパク質の情報があるDNAの部分を一つの遺伝子って呼ぶんです。
というわけで、DNAがあってその中にタンパク質の情報があるっていうところまでわかったわけなんですけれども、ここからですね、タンパク質がどんなふうに作られるのかっていう話をちょっとしていきます。
DNAからRNA、そしてタンパク質へのプロセス
まずですね、DNAの情報がRNAっていうDNAとよく似た分子に書き込まれるんですね。
だからDNAってすごく長いんだけど、そのごく一部の情報を写し取ったRNAというのが作られるんです。
その後にですね、このRNAの情報をもとにタンパク質が合成されるんです。
こんなふうにですね、DNAの情報をもとにRNAが作られて、RNAをもとにタンパク質が作られるっていうこのことをですね、セントラルドグマって言うんです。
これは全ての生物で共通して行われていることで、生命の基礎になる現象なんですね。
じゃあ次はですね、DNA、RNA、タンパク質っていうのがどこにあるのかっていう話をちょっとしていこうと思います。
あの生き物の体っていうのは細胞からできているんです。
あの菌みたいな一つの細胞でできている生き物もあるんですけれども、動物とか植物っていうのはたくさんの細胞からできているんですね。
だから動物であればその体がですね、たくさんの小さな部屋に分かれていて、それを細胞って呼ぶんです。
DNAなんですけれども、この全ての細胞が1セットずつDNAを持っているわけなんです。
だから人間であればさっき言ってた3ギガの情報がですね、全ての細胞の中にあるんです。
ちょっと一部例外があってですね、赤血球とかってDNAを持ってないんですけれども、
基本的には1つの細胞が全てのDNAを持っているっていう状態にあるんですね。
この細胞なんですけれども、DNAがしまわれている場所っていうのがあるんですね。
それを核って言うんです。
今のセントラルドグマの話で、DNAがしまわれている場所っていうのが、
今話したようにDNAっていうのは核の中にあるんです。
このDNAからRNAが作られるわけなんですけれども、それは核で行われるんですけれども、
RNAが作られるとRNAは核から出ていくんです。
このRNAは核から出ていくんです。
この作られたタンパク質っていうのは、細胞の中のいろんな場所に移動していって、
細胞にとって必要な機能を担っていくと。
そういうふうにDNAが作られるわけなんですけれども、
このDNAが作られるとRNAは核から出ていくんですね。
その核の外でRNAを元にタンパク質が作られるんです。
そして細胞にとって必要な機能を担っていくと。
そういうふうになっているんです。
というわけで、以上の説明がですね、
遺伝子とは何か、そして遺伝子が働くっていうのはどういうことなのかっていう説明だったんです。
どうでしょうか。
その細胞の中で起きていることのイメージが少し湧いたんであればいいなと思うんです。
これって生命の働きの中で一番大事なやつなんですね。
でもちょっと短い時間だったし、説明が言葉だけで下手なところもあったんで、
ちょっとよく意味がわからなかったっていう人もいると思うんです。
詳しく知りたいと思う人はですね、
こういうのを説明したサイトとか動画とかっていうのがたくさんあるので、
ぜひセントラルドグマで検索してみてください。
ではいよいよですね、今回紹介したい論文の話に入っていきます。
ノンコーディングRNAが新しい遺伝子を生み出す話
今話したようにDNAからRNAが作られて、RNAはタンパク質の情報を持っているわけなんですけど、
中にはですね、タンパク質の情報を持っていないやつっていうのもいるんです。
こういうのをノンコーディングRNAって言うんですけど、
何してるかよくわかんないんですね。
だからなんかゴミみたいなものではないかって考えられているんです。
でも今回の論文はですね、
このノンコーディングRNAが新しい遺伝子を生み出すのに関係しているっていう、
そういう話なんですね。
しかもこれがですね、
人間の脳が大きくなったのに関係していたんではないかっていう、
そういう話なんです。
この論文なんですけれども、
ニー・アンっていう人たちが行った研究です。
いつものように小ノートに論文へのリンクを載せておきます。
このグループがですね、最初に気がついたのは、
ノンコーディングRNAは核から出ていきにくいっていうことなんですね。
普通のRNAはDNAから作られて核から出ていって、
タンパク質の合成に働くわけなんだけど、
ノンコーディングRNAは核から出ていけないっていうことなんですよ。
この配列について、コンピューター解析を行ったんですね。
そうすると、ノンコーディングRNAは共通して、
特定の配列を持っているものが多いっていうことが分かったんです。
その配列がですね、U1エレメントっていう名前なんですね。
この配列があると、
核にくっついてしまって出てこれなくなるっていうことが分かったんです。
この配列が壊れてしまえば、
うまく核から出てこれるようになるっていう、
そういう結果だったんです。
このグループはですね、
次に猿と人の配列の比較をしていったんです。
このグループはですね、
人の配列の比較をしていったんです。
このグループが探したのはですね、
猿ではこのU1エレメントがあって、
ノンコーディングRNAなんだけど、
人ではこのU1エレメントが壊れているもの、
そういうのを見つけていったんです。
そういうものっていうのは、
人ではU1が壊れているから、
核から出てくるはずなんですよね。
そうすると、このRNAも
タンパク質の合成に使われるようになるっていうことなんです。
そうすると、猿は持ってないんだけど、
人では持っている遺伝子、
人では持っているタンパク質っていうことになって、
遺伝子から見る人間の進化
人でだけ働いている遺伝子っていうのが
見つけられるっていう考えなんですね。
このグループ、そういう遺伝子をいくつか見つけてきたんですけど、
そういう遺伝子をバイオ細胞で作らせてみたんです。
そのバイオ細胞の中にはですね、
神経細胞の塊みたいなものを作ることができるやつがいるんです。
だからすごく小さい脳みたいなものを作らせることができるんです。
この遺伝子をそういう細胞に入れてみると、
この神経細胞の塊っていうのが少し大きくなったそうなんです。
さらにこのグループはですね、
この人でだけU盤が壊れている遺伝子をですね、
マウスの脳の細胞で作らせてみたんです。
そうしたらですね、マウスの脳が少し大きくなったそうなんです。
このことからこういった遺伝子は脳を大きくする作用があるということが考えられるわけなんです。
さらにこのグループはですね、
この遺伝子を作らせたマウスは少し頭も良くなっていた、
そんなことも言っていたんです。
この研究の結果をまとめるとですね、
猿にはないんだけど人では働いている遺伝子があって、
その遺伝子は脳を大きくする作用があるということが分かったということなんですよね。
だからひょっとしたらこの遺伝子は人間の脳が大きくなったその理由なのかもしれないということなんです。
さらにこの研究はですね、
こういった遺伝子が猿では遺伝子ではなかったんだけれども、
人で急に働くようになって新しい遺伝子ができたということも示しているわけなんです。
その新しい遺伝子ができる時っていうのは、
遺伝子が重複してできることが多いっていうのがすでに分かったということなんです。
もともと一つの遺伝子だったものが何かの加減でそのコピーができて、
そのコピーが少しずつ変わっていくことによって新しい働きを持った遺伝子になるっていう、
そういうことが起きることが多いんです。
なんだけど今回の研究ではですね、
遺伝子の進化と新しい発見
ノンコーディングRNAっていう役に立たないものがあって、
それが突然機能のあるものに変わることによって新しい遺伝子ができることがあるっていう、
そういうことを示しているんですね。
これまで植物なんかではそういうことがよく起きるっていうことが分かってたんですけれども、
今回の研究ではですね、それが動物でも起きているし、
しかも進化にとって重要である可能性が示されたっていう、
そういう興味深い研究だったんです。
今回の研究なんですけれども、
研究としてかなり面白いものだと思うんです。
なんだけどやっぱりちょっと前提になる知識があって、
今回はですね、ちょっと頑張ってその前提になる部分から説明していくっていう形にして、
だからその分ややこしかったと思うんです。
でもそれで、もしこの研究の面白い部分がちゃんと伝わったんであれば嬉しいです。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。