親のイライラと自己批判
ようこそ、親も育つ子育て。野田徳子です。
今日も子育てをもう少し楽にするヒントを一緒に探していきましょう。
今日もよろしくお願いします。
さて、今日のテーマは、子育てにおける親のイライラや自己批判を
IFS、内的家族システムの視点から解明していこうというお話ですね。
ええ。皆さんよくあると思うのですが、
子育てをしていると、もっと子供に優しくしたいのについカッとなっちゃうとか、
なんで私ってこうなんだろうって後で自分を責めてしまうとか、こういうことありますよね。
よくあります。うーん、ほぼ毎日かな。
私が診療室でお会いするお父さんお母さんたちも、同じようなことをおっしゃっています。
親御さんは皆さんすごく真面目で、お子さんへの愛情も深いんです。
なのに自分の感情に振り回され、そして自分を批判して、
その結果自分に対してかなりネガティブなトークをしています。
私もそんなパターンになりがちです。
私はいつもそんな親御さんに、それはあなたのせいだけじゃない。
あなたの心があなたを守るために必死に働いた結果なんだよという話をしています。
今回の話はそんな私が日常診察室でしているお話です。
興味深いです。親にありがちな自分へのネガティブトークが、
自分の心が自分を守ろうとしているという捉え方の転換ですね。初めて聞きました。
そうなんです。今日のお話を通して、親子の衝突をただの失敗じゃなくて、
自分の心の中で何かが起きているよという大事なサインとして見れるようになるといいなと思います。
親子の衝突が何かのサインですか?
ええ。そんな一生を使える視点をあなたと一緒に探っていけたらなと思っています。
内的家族システムの考え方
これはなんていうかテクニックというよりは、自分自身との関係を見直す旅みたいなものです。
そしてあなたがそれを身につけたら、子供や配偶者、他のどんな人との関係でも使っていけます。
一生ものの視点、すごくいいですね。では早速、その中心的な考え方になる内テク家族システム、IFSについて教えていただけますか?
心理療法なんですよね。なんだか難しそうですが、大丈夫。難しい話ではありませんから安心してください。
IFSというのはアメリカのリチャード・シュワルツ博士が作った心理療法なんですけど、
その一番大事な考え方が、人の心って実は一つじゃないんですよということ。
つまり人の心の中にはいくつものパーツと呼ばれる部分がいるという見方なんですね。
パーツの集まりですか?なんだか心の中に多くのチームメンバーとか家族がいるみたいなイメージでしょうか?
まさにその通りです。心の中に家族が住んでいるっていう感じです。
その家族には心配性なお母さんみたいなパーツもいれば、衝動的な子供みたいなパーツもいる。
例えば早くしなさいって子供を来さす自分も一つのパーツですし、夜寝顔を見ながらあんなに言わなければよかったって後悔する自分もまた別のパーツ。
これらは矛盾しているんじゃなくて、それぞれ違う考えや信念を持っていて、その時々で前に出てきたり静かになったりするんです。
なるほど。そう考えると子育て中によく感じる子供が可愛くて仕方ないという気持ちと、ちょっとでいいから一人になりたいという気持ちが同時にあるのも納得できますね。
それがまさにIFSの考え方の一つ目。心は多くのパーツからできたシステムであるということなんです。
パーツたちは家族みたいにお互いに影響し合いながら一つのシステムとして機能してるんですね。
だから可愛いと思うパーツと離れたいと思うパーツが同時に声を上げるのは、親として未熟だからとか、矛盾しているとかじゃなくて、心のシステムが正常に動いている証なんです。
それはすごく救われる言葉ですね。矛盾した愛入れないように見える感情を持つのは自然なことなんだと。それだけでちょっと自分を許せる気がします。
そうなんですよね。自分への理解の仕方で自分に優しくなれる。
なるほど。ただそこで疑問なんですけど、怒りとか不安とかいわゆるネガティブな感情を生み出すパーツも味方だって言えるんでしょうか。
どうしてもこの怒りっぽい自分をどうにかしたいと思っちゃうんですが。
すごく大事なポイントですね。そこがIFSの二つ目のパワフルな考え方につながります。
それは全てのパーツにはあなたを守ろうとする肯定的な意図があるということなんです。
全てのパーツにですか?
はい。どんなに厄介に見えるパーツにもです。
怒りのパーツにも肯定的な意図がある。
はい。必ずあります。例えば子供が宿題をしない時に、もうわーっと怒りがこみ上げるというお母さんがいるとします。
はいはい。
その時にその怒りのパーツは一体何からその人を守ろうとしてたんでしょうか。
その奥にはこの子が勉強できなかったら自分がちゃんとしたお母さんじゃないと感じてしまうとか、私がしっかりこの子の問題を解決しないと状況がさらに悪くなって自分が耐えられるか心配な気持ちとかがあったりします。
なるほど。じゃあ怒りっていうのはその奥にあるむしろ傷つきやすい感情を守るためのちょっと過激なボディーガードみたいな存在だったと。
まさにボディーガードです。
あーなるほど。
そしてそのパーツたちは働き方によって大きく3つのタイプに分けられるんです。
マネージャー、管理者ですね。そしてファイアファイター、消防士。そしてエグザイル、追放されたパーツです。
マネージャーは問題が起きないように先回りして管理する予防係みたいな存在ですね。
その通りです。ちゃんとした親でいなきゃとか忘れ物させちゃダメだとか常に未来を心配してあなたをコントロールしようとする。
すごく働き者であなたを守ろうと必死なんです。
そのマネージャーが頑張ってるのはわかるんですけど、でも子育てって予測不可能なことだらけじゃないですか。
そうですよね。だから急に強い感情が出てきてコントロールできないという状況も出てくる。
そんな時に現れるのがファイアファイター、消防士です。
ファイアファイターはもうとにかく緊急に火を消すことが任務です。
辛い感情という舵をどんな手を使ってでも消そうとする。
それがカッと鳴って怒鳴るという行動だったり、ゲームや買い物に没頭して現実から逃げたり、時には感情をシャットダウンして何も感じなくさせたり。
手段は選ばないんですよ。だから後になってなんであんなことをしたんだろうと我に変えることが多いんです。
マネージャーとファイアファイター、すごくリアルです。
そして彼らが守っているのが3つ目のパーツ、エグザリル、追放されたものなのですね。
はい、エグザリルというのは過去の経験で負った傷や痛み、悲しみ、無力感などを抱えた子供時代に傷ついた私たちのパーツです。
変化をもたらす対話
いつもはこのパーツを感じないように私たちのシステムはどこかにこのエグザリルを追放しているわけです。
子供時代に傷ついた私たちのパーツなんですね。
ええ、私は誰にも愛されないとか、私はダメな存在だといった普段は心の奥底に追いやられている感情、これを持つのがエグザリルですね。
例えば子育てにおいては、子供が言うことを聞かなくて感じる無力感が自分の昔の無力感、つまりエグザリルを刺激してしまって、
それを感じさせないようにファイアファイターが怒りとして出動してくる。そんな連鎖が起きているわけです。
なるほど。その心の中のパーツたちが作り出すドラマにまず気づくということが本当に大きな一歩なんです。
それと関連して、IFSのもう一つの重要な4つ目の視点があります。
はい。
それは、どんなにパーツたちが嵐のように騒いでいても、自分の中には誰にでも穏やかで思いやり深くて落ち着いた中核となる自分が必ずあるという考え方です。
これをセルフと呼びます。
セルフですか?
セルフは、よく太陽にパーツたちは雲に例えられます。どんなに分厚い雲に覆われていても、その向こう側で太陽は消えることはないですよね。
ああ、なるほど。
それと全く同じなんです。どんなに気持ちがアップダウンしていても、あなたのセルフは必ずある。セルフの穏やかな視点から自分のパーツを理解しようとすること、それが本当の意味での変化への入り口なんです。
では、その太陽の光を暴走しているパーツに届けるにはどうしたらいいんでしょう。起こるパーツをなくしたい、静かにさせたいと思ったら。
そこが5つ目の考え方、変化は対話から生まれるにつながってきます。
多くの方は、この起こるパーツを敵みたいに見て、抑え込もうとするんです。
はい、ついしてしまいますね。でも、追い出そうとすればするほど、パーツは自分の存在が危ないと感じて、もっと過激なやり方であなたを守ろうとしてしまうんです。
抑えつけようとすると、余計に暴れてしまうと。
そうなんです。だから、IFSで大事にするのは、パーツを排除することじゃなくて、セルフの立場からパーツと対話して関係を作り直すことなんです。
対話ですか。
自己への思いやりの重要性
ええ、さっきのボディガードの例で言うなら、クビにするんじゃなくて、いつも守ってくれてありがとう、大変だったね。
でもこれからはもう少し私を信頼していいよ。もうそんなに頑張らなくても大丈夫だよ。
で、その存在を認めて、ねぎらい信頼関係を回復するんです。
それはセルフコントロールというより、自己との対話、セルフコンパッション、自分への思いやりに近いですね。
まさに、パーツとの信頼関係ができてくると、パーツは極端な役割を手放して、本来持っている才能を発揮できるようになるんです。
過剰に管理していたマネージャーが、頼れるプランナーになったりとかですね。
へー、衝動的だったファイヤーファイターが、人生を楽しむ情熱に変わっていったりするんですよ。
なるほど、仕組みはよくわかりました。でも理屈ではわかっていても、やっぱりカッとなってしまう瞬間はあると思うんです。
その感情に飲み込まれそうな時に、具体的にできることって何かありますか?
はい、もちろんです。でもまずは、このIFSの見方による心の仕組みを知っただけでも、これまでとは全然違う視点が生まれているはずなんです。
と言いますと、またイライラしちゃったと自己嫌悪に陥る代わりに、
あ、今私のファイヤーファイターが出てきたな、何を守ろうとしているんだろう、と一歩引いて自分を観察できるようになる。
この自分の中に生まれる小さな余白が助けになるんです。
その余白が、自動的な反応から意識的な対応への切り替えスイッチになる、ということですね。
ええ、その一瞬の立ち止まりを助けるお守りのような実践法が、私がお伝えしているセルフトークです。
セルフトーク、自分への語りかけですね。
はい、ただこれは怒っちゃダメだと自分を立する言葉ではありません。
あなたの中の穏やかな核であるセルフが必死に頑張っているパーツに向けて、お疲れ様、気づいているよ、と声をかける。
セルフからパーツへの心のコミュニケーションなんです。
うーん、具体的にはどんな言葉をかけるのがいいんでしょうか。
もし自分を責めそうになったり、子供を怒鳴りたくなったりする衝動を感じたら、心の中でこう呟いてみてください。
私を守ろうとしてくれているパーツ、ありがとう。でも私を信頼して大丈夫。少しリラックスしても安全だよ、と。
パーツが守ってくれていると認めて、さらに私が、つまりセルフがここにいるから大丈夫、と伝えるんですね。
その通りです。これ実は他の子育てテクニックと決定的に違う点があります。
多くの手法は子供がどう変わるかにフォーカスしますが、このセルフトークはまず自分の中を整えることに集中します。
自分の中の関係を先に落ち着かせるわけですね。
はい、これを唱えたからって魔法みたいに怒りが消えるわけではありません。
でもこの言葉は感情の渦の中にコンマ数秒の静かな空間を作ってくれます。
そのわずかなスペースこそが感情に振り回される親から、状況を冷静に見守る親へと戻るための入り口になるんです。
小さなでもすごくパワフルなお守りになりそうです。結局子育てで大事なのって、完璧なしつけよりも親である私たち自身の状態を整えることなんですね。
ポリベーガル理論の紹介
本当にそう思います。親であるあなたが自分の心の中のパーツたちと良い関係を築いている時、その安心感は言葉を越えて、非言語のメッセージとして必ずお子さんに伝わりますから。
親の状態が言葉を越えて伝わる。今日の話で心のソフトウェアラーの仕組みはすごくわかりました。
実際、親も育つ子育てではこの後子供のパーツを理解し、その気持ちに共感し、子供との関係を作っていく会話をします。
それはまた今後の配信で説明していきます。または私の本、「親も育つ子育て」を読んでいただければと思います。
ではのりこさん、最後にもう一つ。仕組みはわかっても、いざという時、頭で考えるより先に体が勝手に反応しちゃうことってありますよね。
胸がドキドキしたり、喉がギュッとなったり、あれは一体どうしてなんでしょうか。そしてどうすればいいでしょうか。
素晴らしい質問ですね。まさにそこが次回お話ししたいポリベーガル理論につながるんです。
その体が勝手に反応してしまう現象には、私たちの神経性という自動セーフティシステム、ハードウェアが深く関わっています。
神経性、つまり体の仕組みですね。
はい、今回はIFSを通して心の内側を見てきましたが、次回は親がさらに自分を理解するためのポリベーガル理論という考え方を探っていきます。
ポリベーガル理論、少し難しそうですが、体が反応する理由が分かれば、もっと自分を責めなくて済みそうです。
ええ、大丈夫です。心と体の話がつながると、自分への理解がもっと立体的になります。
私がダメなままだから反応するのではなく、私のシステムが守ろうとして反応していると心がから思えるようになりますよ。
心と体のつながり、すごく興味深いです。これは次回が楽しみですね。
本日はありがとうございました。
ありがとうございました。ではまた次回お会いしましょう。