2025-12-20 15:49

EP4 子どもが思い通りに動けない理由──“脳力(のうりょく)”という実行機能を知ると、親子のイライラが減る

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今回のエピソードでは、子供の問題行動は実行機能「脳力」の発達と関連しているという観点から、子供の「脳力」について話します。
 

🔸 この番組について

このポドキャストでは、Dr. Norikoこと、野田徳子が「子育ては全人的な健康の要」という信念から創設した『親も育つ子育て™️』に基づいて語ります。このモダリティーで使われている脳神経科学、心理学、内的家族システム(IFS)、ポリベーガル理論、サイコセンソリーテクニックを使ったリラックス法などについて説明します。

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サマリー

このエピソードでは、子どもの脳の実行機能と、それが子育てに与える影響について論じられています。特に、子どもが思い通りに行動できない理由と、その理解が親のフラストレーションを軽減することが探られています。子どもの行動を理解するためには、ワーキングメモリーや抑制、柔軟性といった脳の発達が重要とされています。この理解を通じて、親子のイライラが減り、効果的なサポートが可能になると言われています。

子どもの脳と実行機能
ようこそ、親も育つ子育て。野田徳子です。
今日も、子育てをもう少し楽にするヒントをお届けします。
今日もよろしくお願いします。
徳子さんは、ニュージーランドで総合診療科の医師をされていて、メンタルヘルスがサブスペシャリティなんですよね。
そうなんです。一見、子育ては医療とは関係ないようですが、全人的な健康やメンタルヘルスに非常に大きな影響を与えていると感じていて、親御さんのサポートになる仕事も続けています。
今日もよろしくお願いします。
さて、今日のテーマですが、子供の脳の実行機能、英語ではExecutive Function。
のりこさんの本の中では、脳の力と書いて能力と呼ばれる力についてですね。
自分の子供の行動を見ていて、なんでこんな行動しちゃうの?と思うことありますよね。
実はその行動、脳の発達と深く関係があるかもしれないということなんです。
そうなんですね。まずその能力という言葉なんですけど、これは具体的にどういうものなんでしょうか。
これは専門的には実行機能と呼ばれるものなんですけど、一言で言うと、状況に合わせて考えたり判断したり、行動を調整したりする力のことですね。
行動を調整する力。よく例えられるのが、脳のCEOとか。
ああ、会社の社長さんみたいな。
そうですそうです。あるいはオーケストラの指揮者なんて言い方もしますね。
指揮者ですか、なるほど。
この機能は年齢とともに徐々に育ってくる。そしてその子供によって発達のスピードやレベルが違う。
この視点を持つことが子育てではすごく重要になってくるんです。
問題行動の原因
なぜなんでしょう。
子供のいわゆる問題行動って言われるものの多くが、実はこの能力がまだ発達の途中だからっていうことが原因だったりするんですね。
そうなんですか。うちの子は私が言ったことすぐ忘れるので、親を尊敬してないんじゃないかとか、親の話を全然聞く気がないのかと思って腹が立ちます。
親は子供の問題行動は子供本人のやる気の問題で、やろうと思えばできるのにと思ってしまいますよね。
ええ。
だからそれをしない子供に腹が立つ。
まさにそうです。
だからその問題行動の原因がやる気の問題ではないことがわかると、親御さんのフラストレーションが、そうかまだ難しいんだなっていう理解とか共感に変わっていったりします。
なるほど。
そうすると親の心にも少しゆとりが生まれるんですよね。
確かに。でその脳のCEOという例えすごく面白いと思うのですが、具体的に脳のどのあたりが働いているんですか。
主役はですね、前頭前夜といって、おでこのすぐ後ろにある脳の部分なんです。
前頭前夜。
ここが計画を立てたり、優先順位をつけたり、あとはカットなった気持ちを抑えたりとか、そういう人間らしい高度な働きを担っている場所ですね。
まさに会社の社長室みたいなものですね。
そんなイメージです。ただこの社長も一人で全部やってるわけじゃないんです。
ティームがいるんですね。
そうなんです。例えば習慣とかやる気に関わる大脳規定学とか、ミスに気づく体情界とか、いろんな部署と連携しながら働いているんです。
なるほど。
そのティームの連携をスムーズにする役割をしているのが、ドーパミンとかセロトニンといった神経伝達物質なんですね。
うーん、その社長とチーム全体が能力の正体っていうことなんですね。
そういうことになります。
ここからが一番大事なポイントなんですけど、この社長室である前頭前夜が完全に成熟するのっていつ頃だと思いますか?
うーん、やっぱり思春期ぐらいには?
それがなんと20代の半分までかかると言われてるんです。
20代半ばですか?
ええ。ということは、私たち大人が当たり前にやっている自己コントロールみたいなことって、子供に凝っては脳の仕組みの上でもできなくて当たり前っていう。
そうなんです。大人の脳を基準にしてどうしてできないのって思うこと自体が、そもそもちょっとずれちゃってるっていうことなんですね。
実行機能の3つの柱
私がよく言う言葉に、期待と比較は不幸のもとという言葉があるのですが、まさに子供がある行動ができることを期待し、子供を大人や周りの他の子供と比較するというよく親がするこの行動こそ、親が不幸に感じる原因なんですよね。
なるほど。耳が痛いですね。では、この実行機能の能力がまだ発達途中だと、具体的にはどんな行動として現れるんでしょうか。親御さんが、ああ、うちの子もって思うような例ありますか?
はい。たくさんありますね。例えば、この実行機能には大きく3つの柱があると言われてるんですけど、3つの柱A、まず1つ目がワーキングメモリー、作業記憶ですね。
ワーキングメモリー、はい。これは情報を一時的に頭の中に置いておいて、それを使って作業する能力。よく脳のメモ帳なんて言われます。脳のメモ帳。このメモ帳の容量が子供はまだ小さいんですね。だから、靴下を履いて、顔を洗って、本を鞄に入れてねって一度に伝えても、もう靴下を履いた時点で残りは全部忘れちゃってたり。
ああ、ありますね。すごくあります。こっちとしては、わざと無視してるでしょって思っちゃうんですけど。
思っちゃいますよね。でもそうじゃなくて、単純にメモ帳に書き切れなかったっていうだけなんです。
なるほど。
ある研究では、子供にとって複雑な指示は、もうただの雑音に聞こえることさえあるって言われてます。
雑音ですか。それはちょっとショックですけど、でもすごく腑に落ちます。
ええ。
では、二つ目の柱は何でしょう。
二つ目は抑制、つまりブレーキをかける力です。
ブレーキ、これはゲームがやめられない問題に直結しそうですね。
まさに直結しますね。行動とか感情の衝動的な反応をコントロールする力なんですけど、子供って目の前の楽しいことに対するアクセルを踏む力はすごく強いんですけど、ブレーキのシステムがまだ未熟なんです。
アクセルは一人前、だけどブレーキはまだ。
そうなんです。分かっているけどやめられないっていうのは、本人の意思が弱いからじゃなくて、脳のアクセルとブレーキの成長のスピードが違うからなんですね。
なるほど。
特にゲームみたいな強い刺激は、アクセルを司るドーパミンをたくさん出させるので、もうフルスロットルの車を効きの悪いブレーキで止めようとしているようなものなんです。
ああ、それは止められないですね。
本人も頭の片隅では止めなきゃって思ってたりする。でも体が動かない。そのもどかしさを感している子も多いんです。
そっか。なんかこれ私もあります。夜次の日に備えて早く寝ようと思っても、SNSをダラダラと見るのが止められないとか。
これは私の能力の問題なのか。いい気づきですね。親にも能力がありますからね。それは次回お話ししようと思います。
了解しました。楽しみです。
では3つ目の柱は何ですか。
3つ目は認知的柔軟性、頭の切り替えの力です。
切り替え。
はい。状況の変化に合わせて考えとか行動を柔軟に変える力です。これが苦手だと、例えばいつもと違う道を通るとパニックになっちゃうとか。
ありますね。頑固とかこだわりが強いって見えちゃう部分ですね。
でもこれも頑固なんじゃなくて、脳の切り替えスイッチがまだちょっと固いだけっていうイメージなんです。
スイッチが固い。
はい。いつも通っている道はスムーズに進めるけど、急にこっちの新しい道を行こうって言われても、まだ道を知らないので安全かどうかわかるまで行きたくないみたいな。
なるほど。パニックになるのは反抗じゃなくて、どうやって行けばいいかわからない、安全かどうか知らなくて不安っていう感情の現れなんですね。
子どもの行動の理解
そうですね。ワーキングメモリー、抑制、柔軟性、この3つの視点で見ると子どもの行動が困った行動じゃなくて、脳の発達の自然な姿として見えてきますね。
本当にそうですね。
ただここで1つ疑問が浮かぶんですけど、脳が未熟だからって全部許してたらわがままになるだけじゃないのっていう心配も出てくると思うんです。
それは非常に重要なポイントです。
はい。その能力のレベルの問題だからと理解してしまうとそれは甘やかしになるのではっていう心配すごくよくわかります。
でも理解することと甘やかすことや放任することは全く違うんですね。
違う。
脳の発達を理解するっていうのは子どもの行動を許すためじゃなくて、もっと効果的なサポートをするためなんです。
効果的なサポート。
はい。足場掛けって言うんですけど。
足場掛け。
子どもが一人では登れないところに親がちょうどいい高さの足場を組んであげるっていうイメージです。
例えばワーキングメモリーが弱い子だったら、あれとこれとそれをやってじゃなくて、まず靴下を履こうか、できたら教えてって1つずつ伝える。
これも立派が足場掛けです。
なるほど。ゲームがやめられない子には今すぐやめなさいじゃなくて、あと長い針が6に来たらおしまいにしようかみたいに事前に終わりを知らせてあげる。
そうですそうです。それも足場掛けですね。心の準備ができますから。
切り替えが苦手な子には次の予定を早めに伝えて見通しを持たせてあげるとか。
まさに。つまり、親が子どもの脳の外付けの前頭炎矢を担ってあげるっていう感覚なんです。
外付けの前頭炎矢。面白いですね、その表現。
子どもの脳がまだ自分でできない計画とかコントロールを、親が子どもをサポートして一緒にやってみるという。
なるほど。
ただそのプロセスで大切にしてもらいたいことがあります。それは親子の対話なんです。
対話。
ただ一方的に親が自分の判断で足場を組むんじゃなくて、宿題をやるのはどんたことが一番大変なのって、まず子どもの困り事を聞いてみる。
その上でご飯の前に終わるとお母さんは助かるなみたいに親の気持ちも伝える。
そしてじゃあどうしたらできそうかなって一緒に作戦を考えるんです。
その対話を通じて子ども自身が自分の脳の癖に気づいて対策を学んでいくわけですね。
そうなんです。これは単なるしつけとは全く違うアプローチです。
親子の対話とサポート
ダメなことを教えるんじゃなくて、どうすればできるかを一緒に考えるパートナーになるっていう視点なんですね。
パートナーになる。
そうやって一緒に作戦を考える経験が、自分が悪いわけではないんだ、自分も工夫すればできるんだっていう自信、自己肯定感につながっていくんです。
なるほど。
子どもの行動を能力っていうレンズで見て、親が外付けの前頭炎やとしてサポートし、対話を通じて一緒に解決策を探っていく。
これによって子どもの問題行動と見えるものが、親と子が共に育っていくきっかけに少しずつ変わっていくはずです。
すごくよくわかりました。ありがとうございます。
では今回のまとめとしては、子どもの問題行動を見たら、なんでうちの子はこうなのという怒りやフラストレーションだけでなく、この子にはどんな能力がまだ十分でないからこんな行動につながるのだろうと、好奇心を持って今までと違うレンズを使って子どもを見てみる。
それが親子共に育つ第一歩につながるということですね。
そうです。まとめてくださってありがとうございます。
さて次回は親自身の脳の働き、能力について伺えるということで、これもすごく楽しみです。
と同時に私の能力の問題で子育てが難しいのかなとちょっと心配でもあります。
そんな気持ちもするかもしれません。
でもこれが親も育つ子育てで大切にしている、親が自分を理解しケアし癒すということなのです。
子どもの能力を知ることと同じくらい、親が自分自身の能力を知ることで最終的には子育てはもっと楽になります。
そうなんですね。
さらに詳しい情報は私の著書、親も育つ子育てやインスタグラムやnote.comの記事でも発信していますので、よかったらご覧になってみてください。
はい。のりこさん、では今日は本当にありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。次回またお話しできるのを楽しみにしています。
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