1. おおさかBookラジオ〈大阪×本×声〉
  2. #53『単身者たち』多田尋子
2022-11-13 08:48

#53『単身者たち』多田尋子

#53『単身者たち』多田尋子

#『多田尋子小説集 体温』

00:01
タイトルは、単身者たち。作者は、多田尋子という女性の作家です。
この作品、たぶん昭和40年代が舞台、時代背景で、書かれたのは昭和50年代だと思うんです。
この多田尋子さんという作家さん、何回も芥川賞にノミネートされるんだけど、一回も受賞したことがなくて、たぶん咲いたノミネートなんですよ。
でも、その時に別の人がいい作品を書いてたりとか、力量がなくてノミネートを逃してるっていうんじゃなくて、本当にいい作品を書き張る。
世の中に出てる作品としても、私は短編で読んだんですけど、たぶん、書籍になっているのはいくつかしかなくて。
多田さんは、大泉田んぼの、尋子は、たずねるっていう人。尋問の人に子供の子。
古本屋をやっているので、たまたま見つけてというか、この人はどんな作家やろうと思ったら、そういうプロフィール先に見て、こんな人なんやと思って読んだんですけど、
戦後の高度経済成長期の時代背景で、女性の生き方、生き様を描くというような作家さんなんですが、文章もすっごくよくて。
私が読んだ単身者たちっていう話は、母1人、子1人で、結婚もせず、もう30代後半で生活をしている主人公がいてて、彼女は古道具屋さんでアルバイトみたいなことを始めるんですよね。
古道具屋さんは、同じ年かもうちょっと上のくらいの男性が一人で飽きなっていると。周りからもエゴ夫婦ですかみたいなことを言われるんだけど、その彼にはちょっとした秘密があって。
その奥さんはいたのですが、逃げられているのかな。自分がアルバイトでいてるんだけど、その人の人生というか、なんで一人で古道具屋をやっているかみたいなところを知ることになっていくんですよね。
最終的には、ハッピーエンドというか、結ばれるか結ばれないかは読んでからなんだけど、2人ともにいろいろな背景がありっていうようなことを、本当に淡々とそんなにギミックを用いながら書くわけではない。
03:16
その時代背景も含め、その2人の心情というのをすごく素敵に描いてある作品なんですよね。この人のこの文章がなんで賞を取らへんやろうって思うぐらい、いろんな多くの方に私も読んでほしいなと思うような本なんですが、そんな作家さんなんだけど、出てる冊数も少なくて、すごい高値なんですよ。
だから古本で入手するっていうのも、ちょっと高額になってるから、でもそれで人の目に触れないっていうのはすごい残念だなと思うんですよね。
でも同じように考えた人が、タダイロコ作品をもう1回編集して世の中に出したいっていう人が、2015年か6年にアンソロジーを作り始めて、それは有志みたいな格好で出版されてるので、タイヨンというタイトルなんですけど、世の中には出ているので、それはまだ安価に手に入るから、いろんな人に読んでもらいたい作品というか、作家さんやなって思います。
もう90代なのかな。今も存命で、そんな作家活動してはるわけではないけれども、最近出たアンソロジーのほうのあとがきに、こんな自分が年齢になって、私の作品をいいと思って、もう1回世の中に出したいっていう読者の人がいてくれることが、すごい幸せだっていうようなあとがきを書かれていて、
その時代を生きて、日の目は見なかったけど、逆に埋もれてる作家さんなんてたくさんいてるんだろうし、そういうふうに出会って、それを紹介していくのが古本屋の仕事かなって思える、胸にちんとくる一冊でした。はい、以上でございます。
くたけしとてんから出てる最初のその短信者たちは私4なんだけど、それはたまたま主人が学生の頃に買ってて、もう主人がこれいらないというか、次の人に手渡してもいいからっていうので、払い下げを受けて棚に並べようと思ってた本なんですよね。
これ誰やろうと思って、調べてすごく根がついてるのをびっくりして読み始めたんですけど、絶対評価されるべき人だと思います。その短編の中に一つね、戦後の昭和40年代ぐらいにある夫婦がいてて、旦那さんはトラックの運転手かなんかをしてて、奥さんとつつましやかに暮らしてるんですよね。
で、奥さんは見ごもりやすい体質で、一人目二人目って言うんで、その子供がいてて、やっぱり養育もお金がそんなに収入が高いわけじゃないからもう大変で家計やりくりしながら、二人でつつましやかに生活してるんだけど、三人目を見ごもってしまったときに、当然のようにおろすんやろみたいな。
06:17
で、泣く泣く病院行って打退して、でもその生活が良くなるわけじゃなく、二人で文化住宅のアパートで子供たちを育ててしてて、でまた妊娠してしまうみたいな、それを繰り返すのね。
で、奥さんはもう悩んで悩んで、やっぱりでも自分たちでは育てられないから、二回目三回目の打退をするっていうようなお話が出てくるんですよ。
ちょうどね、その話を読んでたときに、自分の母親から同じような話聞かされて、実は私の兄と私の間に一人おった。
で、でも年後やったし、兄が生まれて一年後にまた妊娠してしまって、まだ母親は若かったから、もう赤ちゃんのことで手一杯になってるのに、もう自分では養育てられへんって言って、
親族にも内緒で旦那さんと自分のお姉さんとだけに言って、病院行って卸したんだっていうのを明かされたんですよ。
もう50年間ぐらい母親隠してたんですよ。で、それを読んでたときに、実にその話、実母にその話をされ、ぎょえええとかって思って、すごい衝撃だったんだけど、
でもその時代の女性たちって、そういうこと、今だったらいろんな福祉の手を使ってとかさ、いろんなやり方でも妊娠しないようにするっていうことも学ぶこともできるし、いろんな手立てはあると思うんですけど、今の世の中としては。
でもその時代の女性って、そういうこと考えられへんかったというか、そういう情報もなかったんやろうなーって思うと、ああ、こういう女性って多かったんやなーっていうのをすごく親身に感じてしまって、そういうのもあって、ただひろこ作品にすごい親近感を持ってしまいました。
そんなエピソードもあってね。その頃の女性って、そんなに悲壮な感じではないんだけど、やっぱり切なさ、つらさみたいなのをうまく書いてはる文章って素敵やなーって。そんな作品なんです。もし出くわすことがあったら、ぜひ読んでみてください。
08:48

コメント

スクロール