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2024-08-28 25:20

vol.10 動機面談〜組織の中で「耳を傾けてもらうこと」の可能性

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今週は、耳を傾けてもらうと、その人自身に変化が起きていくという、アダム・グラントさんの本に出てくる「動機面談(モチベーショナル・インタビューイング)」のお話から始まります。篠田さんと山田さんが、その聴き方における「3つのポイント」をたどりながら、組織における動機面談の可能性について対話を重ねていくうちに、新たに見えてきた「耳の傾け方」とは……?

■参考書籍

アダム・グラント

GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す

 

 

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組織を考えるメディア、オーガナイズ。このポッドキャストは、エールの篠田さんと山田で、組織を考える、捉え直す上で、我々が面白いと思った視点からお知らせしていこうという番組です。
篠田さん、では今回もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
もう早いもので10回目になるということが収録直前に分かりまして、もう着々と数を重ねておりますね。
はい。毎回、ネタ会議がだいたい5分もかからないという順調なペースで、いいなと思っています。話したいことがいっぱいあります。
大体の、今のところは篠田さんが講演で話されることを丁寧に喋っていただくっていうのが、今のところの企画会議なので、今回もある程度それに近い感じでお話をいただけるかなと思ってるんですけど、今回はどんな話を。
はい。今回は、私が講演の中で、聴くっていうことをテーマに話してほしいとご依頼を受けることが多いんですよね。
その中で、聴くが大事と同時に、そのように聴いてもらった、耳を傾けてもらった側に何が起きるのかっていうのが同じぐらい大事だと思っていて、そんなお話をするんです。
その中でも、私が一番好きな事例をちょっとお話ししたいなって思いました。
アダム・グラントっていう組織心理学の、今多分世界で第一人者、学者としても第一人者だし、一般向けの本も何冊か書いてるので、著名な方がいるんですよね。
一冊目の、GIVE & TAKEっていう、人には、テイカーとマッチャーとギバーがいますっていう本を、多分あれ15年くらい前? 結構前ですよね。
でも割と多くの方が手に取って覚えてらっしゃる方いるんじゃないかなと思いますが、あの本を書いた人ですね。
アダム・グラントのTHINK AGAINっていうのが最新刊で、これも日本語も出てるんですけど、そこに出ていた事例です。
どういう事例かっていうと、公衆衛生の観点で赤ちゃんに例えばはしかとかの予防接種を打たせるじゃないですか。
これは日本もそうだし、この本に出てきた事例はカナダの事例なんですけど、カナダも赤ちゃんに打ってもらうんですよね。
なんですけど、世の中には一定、予防接種が嫌だって忌避する考えの人っていますよね。
個人の選択ですよねっていう考え方もあるけど、少なくとも公衆衛生の観点からは、みんなが打ってくれて初めてその伝染病が抑えられるわけなので、
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個人の意思だということは前提としてありつつ、やっぱり打っていただきたい。
それって命令して打てよっていうわけにもいかないし、っていう、こういうジレンマの状況を描いています。
ここで出てくるのがこのモチベーショナル・インタビューイングって、日本語でそのまま訳すと、モチベーショナルが動機づけするの動機で、
インタビューイングが面談ですよね。動機面談っていう手法で。
先に言ってしまうと、行動科学の中で最もエビデンスが分厚い手法なんですって。
対象試験がもう1000ぐらい世界中で行われていて、そのうちの4分の3ぐらいで効果がありましたってやってるから。
他のね、これちょっと話が逸れますけど、いわゆる飲む薬、内服薬とかでも当然体質によって効果って違うから、
意外と多く使われている薬とかでも、そこまでの確率で効果がわれるものって普通にあるんですよ。
たまたま私、昔、製薬会社に行ったので、うっすらそういう業界知識があるんですけど。
だからそれと比べても、この対象試験1000、4分の3でポジティブって、結構ちゃんとしたエビデンスだと思うんですよね。
っていうのはちょっと前振りとして、これ何が起きてるかっていうのを、この本の内容そのままご紹介すると、
もうお子さんが何人かいて、また赤ちゃんが生まれましたっていう女性がいます。
この女性が暮らしている村では、村全体でちょっと予防接種はねっていうムード。
その中で彼女は生活しているということもあって、当然ちょっと予防接種は良くないという考えをわりと強く持っている。
生まれた赤ちゃんにもワクチンはちょっともう結構ですっていう態度なんですよね。
それに対して医師が面談はして、そこでお話をするんです。
でもするっていうよりも、やることは聴くんですよね。
そのポイントとしては、3点ある。この動機面談って。
問いかけがオープンクエスチョンってよく言うんですけど、イエス・ノーで答えられる問いではなくて、
5W1Hを使って、相手がいろいろ話せるような問いかけをするというのが1点目。
2点目が、じっくり聴く。相手の内省を促すような聴き方をする。
3点目が、その話が変わりたいんだったら変化できるっていう、その力があなたありますよねっていうことをちょっと動機付けする。
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この3点が全く説得とかではないんです。
自分、相手の話をじっくり聴いて、あなたには選択肢がありますよね、どちらを選ぶこともできますよねって言って終わる。
こういうやり方。実際この本で書かれていた例でも、予防接種を忌避するお母さんに対して、
意思ですからね、自分は打ってほしいんだけど、なんで打たないんですかみたいなことでは全然言わずに、ずっと聴いていく。
そうすると、お母さん、自分の周りの人も打とうとしないんだとか、
例えば問いかけの例で、いつ頃から予防接種にする考えが生まれたんですかとか、どんな情報に接していらっしゃるんですかとか、
そんな聴き方をしていくんですって。
で、お母さんは普通に、周りの人もみんな打たないって言うし、結構いろいろ情報とか見ると、打ったほうがいいっていう情報も確かにあるのは知ってて、
はっきり言って、でもそういう専門的な知識ってわかりにくいから嫌だ、みたいなことも言う。
そうやって、お母さんが言うのに対して、ですよね、1時間ぐらいかけて、確かに世の中の情報って本当に様々ですよね。
最後に、医師なので、自分がワクチンに関して違う考えがあるし、もしお子さんがハシカになったら本当に大変なことになるから、
それについては心配なんですっていう話を医師としてして、
ただ、その上で最後に、お母さんがお子さんに予防接種を打たせるかどうかっていうのは、それはお母さんの決めることですから。
どちらに決めたとしても、それは母親として良かれと思って判断してるっていうことなんだなっていうことは信頼してますよって言って返す。
そうしたら、この例では、退院する前に打ちますって言ってお子さんに打たせ、
その後その上のお子さんたちもまた病院に連れてきて、上の子たちにも打たせてくださいってやりましたっていう事例なんですよね。
これって、私も読んでものすごい感銘を受けましたし、
講演でお話をして、多くの講演で事後アンケートをお願いしていて、皆さんが感想を寄せてくださるんですけど、
必ずこの話がちょっと驚いたとか、感銘を受けたってやっぱり感想をいただくエピソードなんです。
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それだけ私たちの従来持ってる人の挙動とか、人の考えを変えるにはどうしたらいいかっていうのと相当違うから。
聴くっていうことの効果とか意味に関しても、これまで思ってたのとすごく違うから。
そうやって私もだし、この話をご紹介するとすごくびっくりしましたとか印象が残りましたっていうふうな感想をいただくんだと思うんですよね。
これ実際にその事例であれば、母親、の目の前の方の中では何が起きるんですかね。
そうやってオープンに聴いてもらって、オープンな問いかけからちゃんと聴いてもらう姿勢があって、
意見を押し付けられることもなくっていうのだと、基本変わらない可能性が、普通に見ると高そうな気がするんですけど、何かが起きるわけですよね。
そうなんですよね。私の解釈もこれ入るんですけれども、人が助言を受けて、これは本にもちょっと触れてるんですけど、助言を受けて、
例えばワクチン打ってくださいよって言って、言うことを聞かないっていう時って、人って根源的に自分で意思決定をしたい生き物で、自分で決めたって思えないじゃないですか。
この状況で医師に言われたから打ちましたって。むしろ無力感にいっちゃう。
っていう考察なんですよね。この本に書かれているのは。
逆にこの動機面談という手法が何をやってるかっていうと、
お母さんからしたら医師っていう反対の意見の、いわば権威の人から、あなたが決めていいんだって言われた。
っていうふうな状況を作ると、むしろ決めやすくなる。
例えば、今まで人と違う意見があって、自分が説得される側になった時に、
効果あったものありますか?みたいな。シストで怒られたとか、コンコンと説得されたとか、
無視して勝手にやられたとか。説得するやり方とか、とにかく私が勝手にやるわみたいな。
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説得する側がやってしまう状況っていうのをひっくり返して、自分に向けた時に、それで気持ちよく従えた例ってどれだけあるかっていう話。
今言われて考えましたけど、だいたい思いつくのって渋々納得するか、納得してないけどいうこと聞くとか。
僕、例えば学生時代とか、特に小学校中学校とかだったら、もう先生が言うからしょうがないな、みたいなとか。親に言われたから、みたいなこととか。
とかのシーンがパッと浮かんだりするのって、内心だと理解もしてないし納得もしてないけど、まあまあ、親とか先生とかが言うなら正しいんでしょうね。
自分の中で何かが変化してその決定をするとか、何か行動を起こすではなくて、何かを回避するとか諦めるとか。
自分で決めてっていうことではない感じが多いですね。
これはもうこの事例を読んだり、知ったことでちょっと文献検索を実際にしたりして、論文を見たりした結果の、私の肌感覚的解釈なんですけど、
特にこの例のように、知識としては世の中皆さんは予防接種を打ってるって知ってるわけですよ。
だけど自分及び自分の仲間たちはしてないっていう、まずこういう状況なんですよね。
その時ってむしろ結構頑張って予防接種は良くないのであるっていう風に結構強く意識してるというか。
割とこう、風船のイメージでパンパンになってる感じ。
これが、だからちょっと触るとそうじゃなくてってすごい反発する気持ちが強くなっちゃう状況だったのが、
お医者さんがふんふんって一生懸命聴いてくれて、私は心配ですけど、
でもあなたはちゃんと立派な大人で、ちゃんと考えがあってそうしてるっていうことも分かりましたと。
だから打とうと打つのをやめる、どちらを選択しても、それはあなたがお決めになることで、
それ自体はもう立派なことですっていうような言われ方をすると、ちょっとこう緩むっていうんですよね。
この風船がちょっと。
そう、余裕ができて、そうすると他の考えをフラットに受け取る余地というか、
心の余裕が生まれるっていうことなんだと思うんですよね。
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なるほど。
この手法が実際使われている領域として、
依存症から抜け出そうとする方々のセラピーでも使われているとか、
当然、組織開発でも使われている、教育現場でもっていう、
実際利用されている範囲の広さみたいなところを考えると、
割とその根源的な人の心の挙動に直結してるんじゃないかなとは思いました。
なるほど。
今日時間がそんなに取れないんであれですけど、オープンダイアログっていうやり方があるじゃないですか。
詳しく知らないです。
僕もそんなに詳しくないのであれですけど、すごくざっくりと話をすれば、
いわゆるカウンセリングとかそういったものを受ける方が、
カウンセラーとクライアントが1対1で話すんではなくて、
当事者のクライアントもいれば、カウンセラーもいれば、それを取り巻くご家族とか、
いろんな方が周りにいながら、例えば僕がクライアントだとしたら、
山田をどうするといいんだろうかっていうのを、ご家族とカウンセラーが一緒に話してるっていう場に、
私もただそこにいて聴いてるっていう状態で、
っていうことをやってるっていうことをやると、自然とそのクライアントも、
自分の中で変化が起こっていてっていうことがすごく効果があるっていうものらしいですね。
すごいざっくり言ってるような。最初、細部はずれてるかもしれないですけど、
なんか構造的に似てる感じがして、私がっていうものに目が向くんじゃなくて、
そのシステムの中で私というものがどう扱われてっていうことを一緒に見てるみたいなのって、
聴いてもらってるっていう構造では多分そんなにないんだと思うんですけど、僕の理解だと。
ただ、自分に何かが向けられてとかいうことと違った構造の中でやってるみたいな。
共通点は、自分を正当化しろって言われてないっていう。
確かに、そうですね。なるほど。
この話を、このポッドキャストのオーガナイズという組織を考えるっていうところにひも付けてみると、
私もそうですけど、組織の中で当然いろんな考えが出てくるのを最終的には一つに決めて、
みんなで行動するのが、そのために組織があるわけですよね。
その過程で、割とこの事例のように、少数だけれども明確に反対ですっていう方が
い続けて、割と頑なにあるという状況っていうのは、普通に皆さん経験してることだと思います。
そうですね。
自分もそっち側、少数側に立ったことも何度もあるし。
その時って、説得っていうやり方なんですよね。やられるのが。
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説得だと建設的で、上下関係が強いと、
さっきの山田さんみたいな事例のように、やれよって言われて、
評価が怖いとか、評価までいかなくても上司に怒られるのは怖いからやるとか。
もしかすると、あんまり健全に回ってない組織だと、その方を無視するとか、
そういうことで動いていく。
っていう例は見てきてるんですけど、そこで、少数派の頑なになっている人に、
この動機面談みたいな接し方をするっていう選択肢が実はあるのだっていう。
そっちの方がむしろ人間の本性に沿っているのではないかっていうのが、
すごい、私もそうかって目を開かれた気がしましたし、
聴くっていう力をつけると便利ですって、聴くが大事って言っても、
いつも聴けっていう話ではなくて、これはエールの代表の櫻井さんがよく言ってることですけど、
私たちがある場面に直面した時のコミュニケーションの選択肢の一つとして聴くっていうものができると、
オプションが広がるから、いいよって言ってることのものすごい分かりやすい事例だと思うんですけど、
ここで聴くっていうのができることで、実は考えを揃えていく、
打開、むしろその方が積極的になっちゃうっていうことが起きる可能性があるっていうことなんですね。
いやそうですね、まさにその選択肢の一つとして、そういった関わり方を持つとか、
そういった形で、より関わる人たちが同じ方向に向けるやり方の一つとして選択肢を持てるっていう、
そのパワフルさですよね。それだけを使えとか、それが万能だって話では全くなく、
そういうオプション、そのカードも切れるよねってことを持ってた方が、
より効率的に効果的に、かつ関わる人も自分の意思を持って能動的に働きやすいみたいなことを含めて、
実現し得る可能性のある選択肢を持ってるってことですよね。
あともう一個ちょっとそこに重なる話で、ちょっと興味深いなと思っているのが、
この動機面談、モチベーショナルインタビューっていう手法は、それだけエビデンスが分厚いわけなので、
このやり方自体をちゃんと教える仕組みもあるし、
言ってみれば、医療従事者のような専門家の方向けのようには見えるんですけど、
ちゃんと勉強して言ってみれば、資格というかサーティフィケートをもらえる仕組みっていうのが、
ネットで検索した限りでは、英語圏にあるんですね。
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アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスもあったかなっていうのは見つかったんですけども、
日本にないっぽいんですよ。少なくとも私がざっくりネットサーチした限りでは。
知り合いの医師、知り合いレベルなので、たまたまその方が知らなかっただけな可能性は十分あるけど、
聞いても聞いたことないって言うんですよね。
これは何なのかっていうのももう一個疑問としてあって、
医療で言えば患者さんだし、依存症とかもそうですよね、基本的に。
その人の意思、その人が決められるとか、その人の意思にも正しさが、
正しいっていうのは価値判断というよりも、「大人として扱う」みたいなことですよね。
「その人にはその人の論理があって、その人なりの正しさがあるのだ」っていう前提に立って人と接するっていう
この態度とか考えが、今の日本の医療とか大規模医療みたいな世界観と
ものすごく馴染みが悪いのかなっていう、勝手な仮説をちょっと持ったんですよね。
こんなにエビデンスがある話が、しかもお金かかる、時間だけは取りますけどね。
誰かが話聴けばいいんだから。
何なんでしょうね、確かに。
何なんだろうっていうのはね、結構大きな問いとして残っています。
10回目を迎えた中で、前の話とすごい繋がるなと思っていたのを、最後少しだけ僕なりに感じたのは
ブロック塀と石垣ですよねっていう組織に来た時に、ブロック塀型だと自分と同じ規格になるように部下を指導することが良い振る舞いである。
それが組織的にも奨励されるし、部下のキャリアも伸びるしっていう構造だったよねっていう時って
篠田さんが途中で言われてた、大人扱いするっていうことを全然しなくてもいいモデルじゃないですか。
ある種、子どもとまではないにしても、意思とかじゃなくて、もう言うこと聞けっていうのでできるっていうモデルが
すごく事業環境としても適切だったっていう時代の名残が結構あるんだなって感じは個人的にしていて
今日のお話を伺っていて、ブロック塀型のさらに背後に、やっぱり子ども扱いというか弟子扱いというか
下に扱うっていうある種のメンタリティを持って関わっていることがむしろ良かれとされていた。
実際良かったっていう時代だったっていうのは、構造的にあったのかもなっていうのは最後すごい聞きながら思いました。
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そうかもしれない。今そういう過渡期だからこそ、私がこういう話をした時に、もっと過去だったら、は?って言われて。
確かに。
終わったかもしれないのが、それなりにポジティブというか驚きとともに、私も受け取ったし、この話をご紹介すると
やっぱり喜んでいただける方が一定いるっていうのは、その今まさに変化の途上なのかもしれないですね。
確かにこれ20年前だったらもっと、は?って言われたかもしれないですね。
言われたかもしれない。アメリカだからでしょみたいな。
いいから言うこと聞かせてればいいんだよみたいな感じで。
日本に合わないって言われてた可能性がありました。
確かに。
いやーちょっと過去の回答引きもづけていろいろ解釈できそうなのかもしれませんが。
ありがとうございます。
いい時間にもなってきたので、続きはまた次回にもちょっとできるかなと思います。
では今日もありがとうございました。
ありがとうございました。
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