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216芥川龍之介「アグニの神」(朗読)
2026-03-24 26:08

216芥川龍之介「アグニの神」(朗読)

【作品】アグニの神

【作者】芥川龍之介(1892-1927)

【あらすじ】上海を舞台にしたミステリー・怪奇小説です。インド人の老婆に拉致され、邪教の神を降ろされる少女・妙子を、書生の遠藤が救い出そうと策略を巡らせる物語です。儀式の最中、アグニの神が予期せぬ行動を取り、老婆を殺して妙子を救います

【こんな方に】寝る前に聴きたい / 名作文学 / 睡眠用BGM / 朗読 / 青空文庫 / 聴き流し


神の気まぐれ

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サマリー

芥川龍之介の「アグニの神」を朗読。上海を舞台に、少女・妙子を救おうとする書生・遠藤の奮闘を描く怪奇ミステリー。老婆の邪教儀式に巻き込まれた妙子を救うため、遠藤は老婆の魔法と対峙する。最終的に、アグニの神が老婆を殺害し、妙子は救われるが、その真相は謎に包まれる。

はじめに
寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。 このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
作品は全て青空文庫から選んでおります。ご意見ご感想、ご依頼は公式Xまでどうぞ。 寝落ちの本で検索してください。
また別途投稿フォームもご用意しました。リクエストなどをお寄せください。 それと、まだしてないよという人は、ぜひ番組のフォローをよろしくお願いします。
そして最後に、お気に入りを投げてもいいよという方、概要欄のリンクよりご検討いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いします。
作品紹介と朗読準備
さて、今日はですね、芥川龍之介さんの
アグニの神です。 毎度毎度、次は何を読んだらいいもんかなと迷うわけですよ。
そこでですね、参考にしているのが、
カタカナで文豪サーチというサービスがあるんですが、ウェブサイトで、 これがですね、
青空文庫の中での 人気ランキングというか、
参照されているランキングというの。 ページビューですね。PV。
このページが特に見られているみたいよ、みたいなのを作品別で 並べてくれているんですよ。
そこからまあ、これがみんな読んでるやつなのねっていうので、 人気どころから披露みたいなことをしたりするんですが、
その中で、通常版と自動書版とあって、 このアグニの神は自動書版に分類されています。
他に自動書版に分類されているものですと、 銀河鉄道の夜とか、雲の糸とか、注文の多い料理店、白焼姫、
都市春などがありますね。 夜高の星、セロヒキの豪雄。
山梨もいつか読もうかと思うんですけど、3000文字はあまりに短いね。
文字数が書いてあるのも、読み上げとしてはちょっと良くてですね。 1時間に大体何文字読むか、自分の中での体内カウントがあるから、
何分ぐらいで終わる感じで読み始め? この船は漕ぎ出すんだなぁ、みたいなことがわかっていいわけですけども。
ちょっと今、うちの猫たちが飯をよこせ、飯をよこせと、なんか僕の近くの高田に登ったり降りたり、ちょっとうるさいんで、ちょっとご飯をあげてきますね。
はい、無事、アラブル神々は今ご飯に夢中です。
アグニの神、今回は9000文字ですので、そうですねー、
20分ちょろちょろって感じですかね。
はい、どうかお付き合いください。 それでは参ります。
上海の占い師とアメリカ人
アグニの神。 1、シナのシャンハイのある町です。
昼でも薄暗いある家の2階に、人相の悪いインド人のおばあさんが一人、 商人らしい一人のアメリカ人と何かしきりに話し合っていました。
実は今度もおばあさんに占いを頼みに来たんだがね。 アメリカ人はそう言いながら、新しい薪煙草へ火をつけました。
占いですか。占いはとぶん見ないことにしましたよ。 ばあさんはあざけるようにじろりと相手の顔を見ました。
この頃はせっかく見てあげても、お礼さえろくにしない人が多くなってきましたからね。
それはもちろんお礼をするよ。 アメリカ人はおしげもなく300ドルの小切手を一枚、ばあさんの前へ投げてやりました。
差し当たりこれだけとっておくさ。 もしおばあさんの占いが当たれば、そのときは別にお礼をするから。
ばあさんは300ドルの小切手を見ると急に愛想がよくなりました。 こんなにたくさんいただいてはかえってお気の毒ですね。
そして、いったいまたあなたは何を占ってくれろとおっしゃるんです?
私が見てもらいたいのは、 アメリカ人はたばこをくわえたなり、こうかつそうな微笑をうかべました。
いったい日米戦争はいつあるかということなんだ。 それさえちゃんとわかっていれば、われわれ商人はたちまちのうちに大金もうけができるからね。
じゃあ、あしたいらっしゃい。それまでに占っておいてあげますから。 そうか、じゃあ間違いのないように。
インド人のばあさんは得意そうに胸をそらせました。 私の占いは50年来一度もはずれたことはないんですよ。
なにしろ私のはアグニの神がご自身をお告げをなさるんですからね。 アメリカ人がかえってしまうとばあさんは次の間の小口へ行って、
少女エレンと老婆の脅し
エレン、エレン、と呼び立てました。 その声に応じて出てきたのは美しいシナ人の女の子です。
が、なにか苦労でもあるのか、この女の子のしもぶくれの頬はまるで蝋のような色をしていました。
なにをぐずぐずしているんだい。ほんとにお前くらいずうずうしい女はありゃしないよ。 きっとまた台所で眠りかなんかしていたんだろう。
エレンはいくら叱られてもじっとうつむいたままだまっていました。
よくお聞きよ。今夜は久しぶりにアグニの神へお伺いを立てるんだからね。 そのつもりでいるんだよ。
女の子はまっ黒なばあさんの顔へ悲しそうな目をあげました。 今夜ですか。
今夜の十二時。いいかい。忘れちゃいけないよ。 インド人のばあさんは脅すように指をあげました。
またお前がこの間のように私に世話ばかり焼かせると、今度こそお前の命はないよ。
お前なんぞは殺そうと思えばひよっこの首を絞めるより。 こう言いかけたばあさんは急に顔をしかめました。
ふと相手に気がついてみるとエレンはいつか窓際に行ってちょうど開いていたガラス窓から 寂しい往来を眺めているのです。
何を見ているんだい。 エレンはいよいよ色を失ってもう一度ばあさんの顔を見上げました。
よしよし、そう私を馬鹿にするなら、まだお前は痛い目に相足りないんだろう。
ばあさんは目を怒らせながらそこにあった宝器を振り上げました。 ちょうどその途端です。誰か外へ来たと見えて、
戸を叩く男は突然荒々しく聞こえ始めました。 2
書生遠藤の登場と老婆への疑念
その日のかれこれ同じ時刻にこの家の外を通りかかった年の若い一人の日本人があります。 それがどう思ったのか2階の窓から顔を出したシナ人の女の子を一目見ると
しばらくはあっけに取られたようにぼんやり立ちすぐんでしまいました。 そこへまた通りかかったのは年を取ったシナ人の人力社婦です。
おいおい あの2階に誰が住んでいるかお前は知っていないかね。
日本人はその人力社婦へいきなりこう問いかけました。 シナ人は鍛冶棒を握ったまま高い2階を見上げましたか。
ああ少すか。あそこには何とかというインナ人の婆さんが住んでいます。 と気味悪そうに返事をすると早々行きそうにするのです。
ああ待ってくれ。そしてその婆さんは何を商売しているんだ。 ああ占い者です。この近所の噂じゃ何でも魔法さえ使うそうです。
まあ命が大事だったらあの婆さんの所なぞへはいかないほうがいよいよですよ。 シナ人の社婦が行ってしまってから日本人は腕を組んで何か考えているようでしたが、
やがて決心でもついたのか、さっさとその家の中へ入っていきました。 すると突然聞こえてきたのは婆さんの罵る声に混じったシナ人の女の子の鳴き声です。
日本人はその声を聞くが早いか一股に2,3段ずつ薄暗い梯子を駆け上りました。 そして婆さんの部屋の扉を力いっぱい叩き出しました。
扉はすぐに開きました。が日本人が中へ入ってみると、そこにはインド人の婆さんがたった一人立っているばかり。
遠藤の潜入と老婆との対峙
もうシナ人の女の子は次の前でも隠れたのか、影も形も見えたりません。
ああ何か御用ですか。 婆さんは様を疑わしそうにジロジロ相手の顔を見ました。
お前さんは占い者だろう。 日本人は腕を組んだまま婆さんの顔を睨み返しました。
ああそうです。 じゃあ私の用などは聞かなくてもわかっているじゃないか。
私も一つお前さんの占いを見てもらいにやってきたんだ。 何を見てあげるんです。
婆さんはますます疑わしそうに日本人の様子を伺っていました。 私の主人のお嬢さんが去年の春行方知れずになった。それを一つ見てもらいたいんだが。
日本人は一句一句力を入れているのです。 私の主人は香港の日本領事だ。お嬢さんの名は太鼓さんとおっしゃる。
私は遠藤という書生だが、どうだね。そのお嬢さんはどこにいらっしゃる。 遠藤はこう言いながら上着の隠しに手を入れると一丁のピストルを引き出しました。
この近所にいらっしゃるようじゃないか。香港の警察署を調べたところじゃお嬢さんを 攫ったのはインド人らしいということだったが隠し立てをするとためにならんぞ。
しかしインド人のお嬢さんは少しも怖がる景色が見えません。見えないどころか唇にはかえって人を馬鹿にしたような微笑さえ浮かべているのです。
お前さんは何を言うんだい。私はそんなお嬢さんなんぞ顔を見たこともありゃしないよ。
嘘つけ。今その窓から外を見ていたのは確かにお嬢さんの太鼓さんだ。
遠藤は片手にピストルを握ったまま片手に次の間の告知を指差しました。
それでもまだ強情張るならあそこにいるシナ人を連れて来い。
あれは私のモライ語だよ。
お嬢さんはやはりあざけるようににやにや一人笑っているのです。
モライ語かモライ語でないか一目見りゃ分かることだ。貴様が連れて来なければ俺があそこへ行ってみる。
遠藤が次の間へ踏み込もうとすると、とっさにインド人のお嬢さんはその告知に立ちふさがりました。
ここはあたしの家だよ。見ず知らずのお前さんなんぞに奥へ入られてたまるもんか。
どけ。どかないぞ。打ち殺すぞ。
遠藤はピストルをあげました。
いや、あげようとしたのです。
がその表紙にお嬢さんがカラスの鳴くような声を立てたかと思うと、まるで電気に撃たれたようにピストルは手から落ちてしまいました。
これには勇みだった遠藤もさすがに肝をひしがれたのでしょう。
ちょいとの間は不思議そうに辺りを見回していましたが、たちまちまた勇気を取り直すと、
魔法使いめ。
と罵りながら虎のようにお嬢さんへ飛びかかりました。
がお嬢さんもさる者です。
ひらりと身をかわすが早いか、そこにあった包丁をとってまたつかみかかろうとする遠藤の顔へ床の上のゴミをはきかけました。
するとそのゴミがみな火花になって、目といわず口といわずばらばらと遠藤の顔へ焼きつくのです。
遠藤はとうとうたまりかねて火花のつむじ風に追われながら転げるように外へ逃げ出しました。
3.
妙子からの手紙と遠藤の決意
その夜の十二時に近い時分、遠藤はひとり婆さんの家の前に立たず見ながら、
二階のガラス窓に映るほかげを悔しそうに見つめていました。
せっかくお嬢さんの在りかをつきとめながら取り戻すことができないのは残念だな。
いっそ警察へ訴えようか。
ああいやいや、品の警察が手ぬるいことは香港でもおこりごりしている。
毎日今度も逃げられたらまた探すのがひと苦労だ。
といってあの魔法使いにはピストルさえ役に立たないし。
遠藤がそんなことを考えていると、
突然高い二階の窓からひらひら落ちてきた紙切れがあります。
おや、紙切れが落ちてきたか。
もしや、お嬢さんの手紙じゃないか。
こうつぶやいた遠藤はその紙切れを拾い上げながらそっと隠した懐中電灯を出してまんまんな光に照らしてみました。
すると果たして紙切れの上には大光が書いたのに違いない消えそうな鉛筆の跡があります。
遠藤さん、このうちのお嬢さんは恐ろしい魔法使いです。
時々真夜中に私の体へアグニというインドの神を乗り移らせます。
私はその神が乗り移っている間中死んだようになっているのです。
ですがどんなことが起こるか知りませんが、
なんでもお嬢さんの話ではアグニの神が私の口を借りていろいろ予言をするんだそうです。
今夜も12時にはお嬢さんがまたアグニの神を乗り移らせます。
いつもだと私は知らず知らず気が遠くなってしまうのですが、
今夜はそうならないうちにわざと魔法にかかった真似をします。
そうして私をお父様のところへ返さないとアグニの神がお嬢さんの命を取ると言ってやります。
お嬢さんは何よりもアグニの神が怖いのですからそれを聞けばきっと私を返すだろうと思います。
どうか明日の朝もう一度お嬢さんのところへ来てください。
この計略の他にはお婆さんの手から逃げ出す道はありません。さようなら。
遠藤は手紙を読み終わると懐中時計を出してみました。時計は12時5分前です。
もうそろそろ時刻になるな。相手はあんな魔法使いだし、お嬢さんはまだ子供だからよほど運が良くないと。
遠藤の言葉が終わらないうちにもう魔法が始まるのでしょう。
儀式の開始と妙子の苦悩
今まで明るかった2階の窓は急に真っ暗になってしまいました。
と同時に不思議な香の匂いが街の敷石にも染みるほどどこからか静かに漂ってきました。
その時あのインド人の婆さんはランプを消した2階の部屋の机に魔法の書物を広げながらしきりに呪文を唱えていました。
書物は香炉の火の光に暗い中でも文字だけはぼんやり浮き上がらせていたのです。
婆さんの前には心配そうなエレンが、いや品服を着せられた太鼓がじっと椅子に座っていました。
さっき窓から落とした手紙は無事に遠藤さんの手に入ったであろうか。
あの時往来にいた人影は確かに遠藤さんだと思ったが、もしや人違いではなかったであろうか。
そう思うと太鼓はいてもたってもいられないような気がしてきます。
しかし今うっかりそんな煙が婆さんの目にでもたまったが最後、この恐ろしい魔法使いの家から逃げ出そうという計略はすぐに見破られてしまうでしょう。
ですから太鼓は一生懸命に震える両手を組み合わせながら、かねてたくんでおいた通りアグニの神が乗り移ったように見せかける時の近づくのを今が今かと待っていました。
婆さんは呪文を唱えてしまうと今度は太鼓を巡りながら色々な手振りをし始めました。
ある時は前へ立ったまま両手を左右に上げてみせたり、またある時は後ろへ来てまるで目隠しでもするようにそっと太鼓の額の上へ手をかざしたりするのです。
もしこの時部屋の外から誰か婆さんの様子を見ていたとすれば、それはきっと大きなコウモリか何かが青白いコウロの火の光の中に、と今あってでもいるように見えたでしょう。
そのうちに太鼓はいつものようにだんだん眠気がきざしてきました。
が、ここで眠ってしまってはせっかくの計略にかけることもできなくなってしまう通りです。
そしてこれができなければ、もちろん二度とお父さんのところへも帰れなくなるのに違いありません。
日本の神々様、どうか私が眠らないようにお守りなすってくださいまし。
その代わり私はもう一度、たとえ一目でもお父さんのお顔を見ることができたなら、すぐに死んでもよろしいございます。
日本の神々様、どうかお婆さんを騙せるようにお力をお貸しくださいまし。
太鼓は何度も心の中に熱心に祈りを続けました。
アグニの神の降臨と遠藤の監視
しかし、眠気はおいおいと強くなってくるばかりです。
と同時に太鼓の耳には、ちょうどドラでも鳴らすような得体の知れない音楽の声がかすかに伝わり始めました。
これはいつでもアグニの神が空から降りてくるときにきっと聞こえる声なのです。
もうこうなってはいくら我慢しても眠らずにいることはできません。
現に目の前の航路の灯やインド人の婆さんの姿でさえ、気味の悪い夢が薄れるようにみるみる消え失せてしまうのです。
アグニの神、アグニの神、どうか私の思うことをお聞きでくださいまし。
やがてあの魔法使いが床の上にひれ伏したまま、しわがれた声をあげたときには、太鼓は椅子に座りながらほとんど精神も知らないように、いつかもうぐっすり寝入ってしまいました。
太鼓はもちろん婆さんも、この魔法を使うところは誰の目にも触れないと思っていたのに違いありません。
しかし実際は部屋の外にもう一人、戸の鍵穴から覗いている男があったのです。
それは一体誰でしょうか。
言うまでもなく、書生の遠藤です。
遠藤は太鼓の手紙を見てから、一時は往来に立ったなり、夜明けを待とうかとも思いましたが、お嬢さんの身の上を思うとどうしてもじゅっとしてはいられません。
そこでとうとう盗人のようにそっと家の中へ忍び込むと、さっそくこの二階の小口へ来て、さっきから覗き見をしていたのです。
しかし覗き見をするといっても何しろ鍵穴を覗くのですから、青白い甲羅の火の光を浴びた、死人のような太鼓の顔がやっと正面に見えるだけです。
そのほかは机も、魔法の書物も、床にひれ伏した婆さんの姿もまるで遠藤の目には入りません。
しかし、しわがれた婆さんの声は手に取るようにはっきり聞こえました。
アグニノカミ、アグニノカミ、どうか私の思うことをお聞き入れくださいまし。
婆さんがこう言ったと思うと息もしないように座っていた太鼓は、やはり目をつぶったまま突然口を聞き始めました。
しかもその声がどうしても太鼓のような少女とは思われない荒々しい男の声なのです。
いや、俺はお前の願いなぞ聞かない。お前は俺の言いつけに背いていつも悪事ばかり働いてきた。
俺はもう今夜限りお前を見捨てようと思っている。いや、その上に悪事の罰を下してやろうと思っている。
婆さんはあっけに問われたのでしょう。しばらくは何とも答えずに喘ぐような声ばかり立てていました。
が、太鼓は婆さんにとんじゃくせずおごそかに話し続けるのです。
お前は哀れな父親の手からこの女の子を盗んできた。もし命が惜しかったら明日とも言わず今夜のうちに早速この女の子を返せがいい。
遠藤は影穴に目を当てたまま婆さんの答えを待っていました。
老婆の抵抗とアグニの神の裁き
すると婆さんは驚きでもするかと思いのほか憎々しい笑い声を漏らしながら急に太鼓の前へ突っ立ちました。
人を馬鹿にするのもいいかげんに惜しい。お前は私を誰だと思っているんだい?
私はまだお前に騙されるほど網絡はしていないつもりだよ。早速お前を父親に返せ。
警察のお役人じゃあるまいし、アグニの神がそんなことを追いつけになってたまるもんか。
婆さんはどこから取り出したか目をつぶった太鼓の顔の先へ一丁のナイフを突きつけました。
さあ正直に白状をし、お前はもったいなくもアグニの神のコワイロを使っているんだろう。
さっきから様子を伺っていても太鼓が実際に眠っていることはもちろん遠藤にはわかりません。
ですから遠藤はこれを見るとさては警略が露見したかと思わず胸を躍らせました。
が太鼓は相変わらずまぶた一つ動かさず嘲笑うように答えるのです。
お前も死に時が近づいたな。俺の声がお前には人間の声に聞こえるのか。
俺の声は低くとも天井に燃える炎の声だ。それがお前にはわからないのか。
わからなければ勝手にするがいい。俺はただお前に尋ねるんだ。
すぐにこの女の子を送り返すかそれとも俺の言いつけに背くか。
婆さんはちょいとためらったようですがたちまち勇気を取り直すと片手にナイフを握りながら片手に太鼓の襟紙を掴んでずるずる手元へ引き寄せました。
この甘め。まだ強情はるきだな。よしよしそれなら約束通り一思いに命を取ってやるぞ。
婆さんはナイフを振り上げました。もう一分間遅れても太鼓の命はなくなります。
遠藤はとっさに身を起こすと錠のかかった入口の戸を無理無態に開けようとしましたが戸は容易に破れません。
いくら押しても叩いても手の皮がすり抜けるばかりです。
救出と老婆の死
六。そのうちに部屋の中からは誰かのわっと叫ぶ声が突然暗闇に響きました。
それから人が床の上へ倒れる音も聞こえたようです。
遠藤はほとんどきちがいのように太鼓の名前を呼びかけながら全身の力を肩に集めて何度も入口の戸へぶつかりました。
板の裂ける音錠の跳ね飛ぶ音戸はとうとう破れました。
しかし肝心の部屋の中はまだ香炉の青白い火がめらめら燃えているばかり人気のないように浸透しています。
遠藤はその光を頼りにおずおずあたりを見回しました。
するとすぐに目に入ったのはやはりじっと椅子にかけた死人のような太鼓です。
それがなぜか遠藤には頭に五光でもかかっているように大ごそかな感じを起こさせました。
「お嬢さん!お嬢さん!」
遠藤は椅子へ行くと太鼓の耳元へ口をつけて一生懸命に叫びたてました。
が、太鼓は目をつぶったなり何とも口を開きません。
「お嬢さん!しっかり用心なさい。遠藤です。」
太鼓はやっと夢が覚めたようにかすかな目をあきました。
「遠藤さん?」
「そうです遠藤です。もう大丈夫ですからご安心なさい。さあ早く逃げましょう。」
太鼓はまだ夢うつつのように弱々しい声を出しました。
「計略はだめだったわ。つい私が眠ってしまったもんだから、勘にしてちょうだいよ。」
「計略が露見したのはあなたのせいじゃありませんよ。
あなたは私と約束したとおりアグニの神のかかった真似をやりようせたじゃありませんか。
そんなことはどうでもいいことです。さあ早く逃げなさい。」
遠藤はもどかしそうに椅子から太鼓を抱き起こしました。
「あら嘘。私は眠ってしまったんですもの。どんなことを言ったか知りはしないわ。」
太鼓は遠藤の胸にもたれながらつぶやくようにこう言いました。
「計略はだめだったわ。とっても私は逃げられなくてよ。」
「そんなことがあるもんですか。私と一緒にいらっしゃい。今度しくじったら大変です。」
「だっておばあさんがいるでしょ。」
「おばあさん。」
遠藤はもう一度部屋の中を見回しました。
机の上にはさっきのとおり魔法の書物が空いてある。
その上仰向きに倒れているのはあのインド人のばあさんです。
ばあさんは意外にも自分の胸で自分のナイフを突き立てたまま血だまりの中に死んでいました。
「おばあさんはどうして。」
「死んでいます。」
太鼓は遠藤を見上げながら美しい眉を潜めました。
「私、ちっとも知らなかったわ。」
「おばあさんは遠藤さんが、あなたが殺してしまったの。」
遠藤はばあさんの死害から太鼓の顔へ目をやりました。
今夜の計略が失敗したことが、しかしそのためにばあさんも死ねば太鼓も無事に取り返せたことが、
運命の力の不思議なことがやっと遠藤にもわかったのはこの瞬間だったのです。
「私が殺したんじゃありません。」
「あのばあさんを殺したのは、今夜ここへ来た悪人の神です。」
遠藤は太鼓を抱えたまま、おごそかにこうささやきました。
終わりに
1968年発行。新庁舎。新庁文庫。
蜘蛛の糸。とじしゅん。
より独りを読み終わりです。
うーん、なるほどね。
自分で降臨させた悪人の神にインド人のおばあさんは殺されてしまったということですね。
はぁ、はぁ。
で、初生の遠藤は何で、
連れ去られたエリーという名前をつけられた日本人の太鼓は何で、
インド人のばあさんが何のメタファーかってことなんですけど、
わかりませんね。
そこまでは調べていません。
うーん。
自動書に分類されていたので、
いじめっ子は罰せられるぞみたいなことなのかな、なんだろうね。
わざわざ国を指定しているのが何かの因由ではなかろうかという気がしますけど、
わかりませんね。
はい。
昨日とあるイベントへ顔を出してきまして、
その話は別で雑談会で撮ろうかと思いますけど、
一息入れに酔いました。
はい。
人の熱と書いて一息入れですね。
あー猫が鳴いてる。
これは椎名林檎ちゃんが浮雲さんと二人の名前で出した長く短い祭りに出てくる歌詞で初めて知った単語ですが、
一息入れに当てられまして昨日は。
さよならはじめましてって感じですね。
これはこの歌知ってる人じゃないとわかんないけど。
知らない人ばっかりの空間に放り込まれるとちょっとやっぱ疲れるね。
はぁ。
普段いかにぬるまに使ってるかってことなんでしょうけども。
はい。またその話は別で撮ろうかと思いますが。
よし。
終わりにしていきましょうか。
無事に寝落ちできた方も最後までお付き合いいただけた方も大変にお疲れ様でした。
といったところで今日のところはこの辺で。また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
26:08

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