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2025-07-17 14:44

148葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」(朗読)

148葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」(朗読)

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サマリー

葉山嘉樹の作品「セメント樽の中の手紙」では、労働者の恋人が事故で亡くなり、彼女はその悲しみをセメント樽の中に封じ込めた手紙を通じて、労働の現実を訴えています。物語は、労働者の身分と死の悲劇をテーマにしたプロレタリア文学の側面が強調されています。

ポッドキャストの紹介
寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。 このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
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エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。 作品はすべて青空文庫から選んでおります。
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さて今日はですね、 葉山嘉樹さんのセメント樽の中の手紙という
短いテキストを読もうと思います。 2800文字。10分そこそこで終わってしまいそうですね。
前回ちょっと 太宰治さんの
人間失格大物に取り掛かったので、 今日は短いのにしようと思っています。
葉山嘉樹さん初めて読みますね。福岡県
福岡県京都郡豊津村生まれ。
最初の小説「牢獄の半日」が文芸宣戦に掲載、その後1925年インバイフ、
1926年セメント樽の中の手紙、これを読みますね。 が同じく文芸宣戦に掲載され、
長編「海に行くる人々」 が日本プロレタリア文学の記念碑的な傑作と絶賛された。
プロレタリア文学ですか。 労働書のやつね。
前読みましたね。簡易公選。長かったなぁ。 長かったし、
男しか出てこなかったんだよね。
あれでもあんなに長編なのに意外と再生数回ってるんですよね。 たぶん他に取り組んでる人がいないんだろうな。
長すぎて。 まあそういう
ニーズもあるのかもしれませんけどね。
じゃあそろそろやってみましょうか。 短いので少しゆったりめに読むかな。
寝落ちできるか心もとない文字量ですが、どうかお付き合いください。 それでは参ります。
セメント樽の中の手紙。 松戸四蔵はセメント分けをやっていた。
外の部分は大して目立たなかったけれど、 頭の毛と鼻の下はセメントで灰色に覆われていた。
彼は鼻の穴に指を突っ込んで、鉄筋コンクリートのように鼻毛をさちこばらせている コンクリートを取りたかったのだが、
1分間に10歳ずつ吐き出すコンクリートミキサーに間に合わせるためには、 とても指を鼻の穴に持っていく間はなかった。
彼は鼻の穴を気にしながら、とうとう11時間。 その間も昼飯と3時休みと2度だけ休みがあったんだが、
昼の時は腹の空いているために。 もう一つはミキサーを掃除していて暇がなかったため、
とうとう鼻にまで手が届かなかった。 の間、鼻を掃除しなかった。
彼の鼻は石膏細工の鼻のように硬化したようだった。 彼が姉妹自分にヘトヘトになった手で移したセメントの樽から小さな木の箱が出た。
何だろうと彼はちょっと不審に思ったが、 そんなものにかまっていられなかった。
彼はシャブルでセメンマスにセメントをはかり込んだ。 そしてマスから船へセメントをあけると、またすぐその樽を開けにかかった。
「だが待てよ、セメント樽から箱が出るって方がねえぞ。」 彼は小箱を拾って腹かけのどんぶりの中へ放り込んだ。
箱は軽かった。 軽いところを見ると金も入っていねえようだな。
彼は考える間もなく次の樽を開け、次のマスをはからねばならなかった。 ミキサーはやがて空回りを始めた。
こんくりがすんで終業時間になった。 彼はミキサーにひいてあるゴムホースの水でひとまず顔や手を洗った。
そして弁当箱を首に巻きつけて、一杯飲んで食うことを専門に考えながら、 彼の長屋へ帰っていった。
手紙の内容
発電所は八分通り出来上がっていた。 夕闇にそびえるエナさんは真っ白に雪をかぶっていた。
汗ばんだ体は急に凍えるように冷たさを感じ始めた。 彼の通る足元では木曽川の水が白く泡を噛んで吠えていた。
「ああ、やりきれねえなあ。」 カカアはまた腹を膨らましやがったし。
彼はうようよしている子供のことや、またこの寒さをめがけて生まれる子供のことや、 めちゃくちゃに産むカカアのことを考えると全くがっかりしてしまった。
一年九十銭の日当の中から日に五十銭の米を二尻食われて、 九十銭で来たりすんだり、べらぼうめ、どうして飲めるんだい。
が、ふと彼はどんぶりの中にある小箱のことを思い出した。
彼は箱についているセメントをズボンのしりでこすった。 箱には何も書いてなかった。
そのくせ頑丈に釘付けしてやった。
思わせぶりしやがら、釘付けなんぞにしやがって。 彼は石の上へ箱をぶっつけた。
が、こわれなかったので、この世の中でも踏みつぶす気になって、やけに踏みつけた。 彼が拾った小箱の中からは、ぼろに包んだ紙切れが出た。
それにはこう書いてあった。
私はNセメント会社のセメント袋を縫う女工です。 私の恋人はクラッシャーへ石を入れることを仕事にしていました。
そして10月の7日の朝、 大きな石を入れるときに、その石と一緒にクラッシャーの中へはまりました。
仲間の人たちは助け出そうとしましたけれど、 水の中へ溺れるように石の下へ、私の恋人は沈んでいきました。
そして石と恋人の体とは砕けあって、 赤い細い石になってベルトの上へ落ちました。
ベルトは粉砕塔へ入っていきました。 そこで鋼鉄の弾丸と一緒になって、細かく細かく、
激しい音に呪いの声を叫びながら砕かれました。 そうして焼かれて立派にセメントとなりました。
骨も肉も魂も粉々になりました。 私の恋人の一切はセメントになってしまいました。
残ったものはこの仕事着のボロばかりです。 私は恋人を入れる袋を縫っています。
私の恋人はセメントになりました。 私はその次の日、この手紙を書いてこの樽の中へ、
そーっとしまい込みました。 あなたは労働者ですか?
あなたが労働者だったら、私をかわいそうだと思ってお返事ください。 この樽の中のセメントは何に使われましたでしょうか。
私はそれが知りとございます。 私の恋人はいくたるのセメントになったでしょうか。
そしてどんなに方々へ使われるのでしょうか。 あなたは左官屋さんですか?
それとも建築屋さんですか? 私は私の恋人が劇場の廊下になったり、
大きな邸宅の塀になったりするのを見るに忍びません。 ですけれどそれをどうして私に止めることができましょう。
あなたがもし労働者だったら、このセメントをそんなところに使わないでください。 いいえ、ようございます。どんなところにでも使ってください。
私の恋人はどんなところに埋められても、 その所々によってきっといいことをします。
構いませんわ。あの人は気性のしっかりした人ですから、 きっとそれ相当な働きをしますわ。あの人は優しい、いい人でしたわ。
そしてしっかりした男らしい人でしたわ。 まだ和行ございました。
26になったばかりでした。 あの人はどんなに私を可愛がってくれたか知れませんでした。
それなのに、私はあの人に強肩びらを着せる代わりに、 セメント袋を着せているのですわ。
あの人は館に入らないで、海天窯の中へ入ってしまいましたわ。 私はどうしてあの人を送って行きましょう。
あの人は西へも東へも、遠くにも近くにも葬られているのですもの。 あなたがもし労働者だったら、
私にお返事くださいね。 その代わり、私の恋人の着ていた仕事着のキレをあなたにあげます。
この手紙を包んであるのがそうなんですよ。 このキレには石の粉とあの人の汗とか染み込んでいるんですよ。
あの人がこのキレの仕事着でどんなに堅く私を抱いてくれたことでしょう。 お願いですからね。
このセメントを使った月日と、 それから詳しい所書きと、
どんな場所へ使ったかと、 それにあなたのお名前もご迷惑でなかったら、ぜひぜひお知らせくださいね。
あなたもご用心なさいませ。 さようなら。
松戸与三は、わきかえるような子供たちの騒ぎを身の回りに覚えた。 彼は手紙の終わりにある住所と名前を見ながら、茶碗に注いであった酒をぐっと一息に煽った。
ヘベレ家に酔っぱらいてぇなぁ。 そして何もかもぶち壊してみてぇなぁ。
と、どうなった。 ヘベレ家になって暴れられてたまるもんですか。子供たちをどうします。
斎君がそう言った。 彼は斎君の大きな腹の中に7人目の子供を見た。
大正15年1月。 1968年発行。学芸書林。
全集 現代文学の発見 第1巻 最初の衝撃。
より読料読み終わりです。
短いですね。そうか、住所書いてあったのか。 ずっと返事くださいって書いてあるけど、どうやってって思ってたけど。
あ、そう。 返事出すのかね、これね。
労働者だったらがすごい繰り返されてますね。 もし労働者だったら、もし労働者だったら。
プロレタリアですね。 ただいま収録は2025年の7月14日月曜日の朝午前9時過ぎですが、
参議院選挙の真っ最中ということで、 選挙カーの音がね、すごい入ってくるんですよね。
今日8時台から聞こえたけど、いいの?8時台ってやっていいんだっけ? なんか時間制限あるよね。
もうわかんないですけど、細かいことは。 そんな騒音というかね、
普段ない音に、音を飼いくぐりながら 収録をしています。
今日あたり期日前投票に行ってこようかな。 どうなるんですかね。まあちょっと主義主張はあんまりない方なんで。
特定のところにいられるみたいではないんですけど。 でも物価高は厳しいよね。
この前の飲みの席で堂々と、米党によろしくって 学会員の人に言われましたけどね。
まあそれぐらい気持ち、ね、こう、 ズバーンと言ってもらえると、まあ気持ちいいからっていう。
はぁーっていう感じですけど。 考えておきまーすみたいなね。
まあ税金を納めている代わりに投票する権利があるんでね。 その権利を行使しに行きましょうかね。
僕が言うまでもないですけども、皆さんもぜひ 選挙行ってください。
はい。 じゃあ短いですが終わりにしましょうか。
無事に寝落ちできた方も、最後までお付き合いいただいた方も 大変にお疲れ様でした。
といったところで今日のところはこの辺で。 また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
14:44

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