ポッドキャストの紹介
寝落ちの本ポッドキャスト。
こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには、面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。
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また、別途投稿フォームもご用意しました。
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それと最後に、番組フォローもどうぞよろしくお願いします。
家庭の様子
さて、今日はですね。
太宰治さんの応答です。
桜桃と書いて応答と読むんだと思うんですが。
芥川隆之助が亡くなった日を偲んで、
彼の作品にちなみ、葛波という作品を書いていたので、
葛波記、木は木引きの木ですね。
あれは芥川君が死んだ日だね、それを葛波記と呼ぼうという日が、
確か夏にあったと思うんですが、あれ違ったかな。
それとそれに対してですね、
太宰治はの遺体が発見された日を
応答記と呼ぼうとなったそうです。
何月なんだろうか、ちょっと調べてきます。
はい、調べてきました。応答記6月19日だそうです。
ちょうどいい頃合いですね。もうすぐじゃないか。
で、今日はその応答を読んでまいりたいと思います。
文字数は5390文字なので、
30分かからないでしょうね。
どうか寝落ちまでお付き合いください。
それではまいります。応答。
我、山に向かいて目をあぐ。
詩編第121。
子供より親が大事と思いたい。
子供のためになどと古風な道学者みたいなことを
首相らしく考えてみても、
何、子供よりもその親の方が弱いのだ。
少なくとも私の家庭においてはそうである。
まさか自分が老人になってから子供に助けられ、
世話になろうなどという図々しい無私の用意した心は
全く持ち合わせてはいないけれども、
この親はその家庭において常に
子供たちのご機嫌ばかりうかがっている。
子供といっても私のところの子供たちは
みなまだひどく幼い。
長女は七歳、長男は四歳、
次女は一歳である。
それでもすでにそれぞれ両親を圧倒しかけている。
父と母はさながら子供たちの下男下女の
趣を呈しているのである。
夏。家族全部三畳間に集まり、
大にぎやか大混乱の夕食をしたため、
父はタオルでやたらに顔の汗をふき、
「飯食って大汗かくもげびたこと。」
と柳だるにあったけれども、
どうもこんなに子供たちがうるさくてはいかに
お上品なお父さんといえども汗が流れる。
と一人ぶつぶつ不平を言い出す。
母は一歳の次女におっぱいをふくませながら、
そうしてお父さんと次女と長男のお給仕をするやら、
子供たちのこぼした物を拭くやら拾うやら、
鼻をかんでやるやら八面六臂のすさまじい働きをして、
お父さんはお鼻に一番汗をおかきになるようね、
いつもせわしくお鼻をふいていらっしゃる。
父は苦笑して、
「それじゃあお前はどこだ?うちまたかね。
お上品なお父さんですか?」と。
「いや何もお前、医学的な話じゃないか。
上品も下品もない。」
私はね、
と母は少し真面目な顔になり、
このお父とお父の間に、
涙の谷。
涙の谷。
父は目して食事を続けた。
私は家庭にあってはいつも冗談を言っている。
それこそ心には悩みをあずらうことの多いゆえに、
表には軽落をよそわざるを得ないとでもいようか。
いや家庭にあるときばかりでなく、
私は人に接するときでも、
心がどんなにつらくても、
体がどんなに苦しくても、
ほとんど必死で楽しい雰囲気をつくることに努力する。
そして客と別れた後、
私は疲労によろめき、
お金のこと、道徳のこと、自殺のことを考える。
いやそれは人に接する場合だけではない。
小説を書くときもそれと同じである。
私は悲しいときにかえって、
軽い楽しい物語の創造に努力する。
自分では最もおいしい奉仕のつもりでいるのだが、
人はそれに気づかず。
ダザイという作家もこの頃は軽薄である。
面白さだけで読者をつる。
スコブル・アン・ギと私を詐欺すむ。
人間が人間に奉仕するというのは悪いことであろうか。
もったいぶってなかなか笑わぬというのは、
良いことであろうか。
つまり私はクソ真面目で凶ざめな、
気まずいことに耐えきれないのだ。
私は私の家庭においても絶えず冗談を言い、
白氷を踏む思いで冗談を言い、
一部の読者、批評家の想像を裏切り、
私の部屋の畳は新しく、
気丈は整頓せられ、
夫婦はいたわり尊敬し合い、
夫は妻を討ったことなどないのはむろん、
出て行け出て行きますなどの乱暴な口争いしたことさえ一度もなかったし、
父も母も負けずに子供を可愛がり、
子供たちも父母に陽気によくなつく。
しかしこれは外見。
母が胸を開けると涙の谷。
父の寝汗もいよいよひどく、
夫婦は互いに相手の苦痛を知っているのだが、
それに触らないように努めて、
父が冗談を言えば母も笑う。
しかしその時に涙の谷と母に言われて父は目視、
何か冗談を言って切り返そうと思っても、
咄嗟に上手い言葉が浮かばず、
目視続けるといよいよ気まずさが積もり、
さすがの通人の父もとうとう真面目な顔になってしまって、
「誰か人を雇いなさい。どうしたってそうしなければいけない。」
と母の機嫌を損じないようにおっかなびっくり一人ごとのようにつぶやく。
子供が三人。
父は家事には全然無能である。
布団さえ自分であげない。
そしてただもう馬鹿げた冗談ばかり言っている。
配給だの登録だのそんなことは何も知らない。
全然宿屋住まいでもしているような形。
来客、驚悚。
仕事部屋にお弁当を持って出かけて、
それっきり一週間もご帰宅にならないこともある。
仕事仕事といつも騒いでいるけれども、
一日に二三枚くらいしかお出来にならないようである。
あとは酒。
飲みすぎるとげっそり痩せてしまって寝込む。
その上あちこちに若い女の友達などもある様子だ。
子供。
七歳の長女も、
今年の春に生まれた次女も少し風邪をひきやすいけれども、
まずまあ人並み。
しかし四歳の長男は痩せこけていてまだ立てない。
言葉はあとかだとか言うきりで一語も話せず、
また人の言葉を聞き分けることもできない。
張って歩いていて、
うんこもおしっこも教えない。
それでいてご飯は実にたくさん食べる。
けれどもいつも痩せて小さく、
髪の毛も薄く、
少しも成長しない。
夫婦の葛藤
父も母もこの長男について深く話し合うことを避ける。
白痴。
推し。
それを一言でも口に出していって、
二人で肯定し合うのはあまりに悲惨だからである。
母は時々この子を固く抱きしめる。
父はしばしば発作的にこの子を抱いて川に飛び込み死んでしまいたく思う。
推しの次男を斬殺す。
罰日正午過ぎ。
罰句罰章罰番地罰章。
何がし五十三歳。
三は自宅六畳まで次男何がし括弧十八君の頭を巻割りで一撃して殺害。
自分はハサミで喉をついたが死に切れず、
付近の委員に収容したが帰得。
同家では最近次女何がし二十二歳三に養子を迎えたが、
次男が推しの上に少し頭が悪いので娘可愛さから思い余ったもの。
こんな新聞の記事もまた私にやけ酒を飲ませるのである。
ああ、ただ単に発育が遅れているというだけのことであってくれたら。
この長男が今に急に成長し、
父母の心配を息通り嘲笑するようになってくれたら。
夫婦は親戚にも友人にも誰にも告げず、
ひそかに心でそれを念じながら、
表面は何も気にしていないみたいに長男をからかって笑っている。
母も精一杯の努力で生きているのだろうが、
父もまた一生懸命であった。
もともとあまりたくさん書ける小説家ではないのである。
極端な昇進者なのである。
それが公衆の面前に引き出され、
ヘドモドしながら書いているのである。
書くのがつらくてやけ酒に救いを求める。
やけ酒というのは自分の思っていることを主張できないもどかしさ、
忌々しさで飲む酒のことである。
いつでも自分の思っていることをはっきり主張できる人はやけ酒なんか飲まない。
女に酒飲みの少ないのはこの理由からである。
私は議論をして勝った試しがない。
必ず負けるのである。
相手の確信の強さ、
自己肯定の凄まじさに圧倒せられるのである。
そうして私は沈黙する。
しかしだんだん考えてみると相手の身勝手に気がつき、
ただこっちばかりが悪いのではないのが確信すられてくるのだが、
一度言い負けたくせにまたしつこく戦闘を開始するのも因散だし、
それに私には言い争いは殴り合いと同じくらいに
いつまでも不快な憎しみとして残るので、
怒りに震えながらも笑い、沈黙し、
それから色々様々考え、
ついやけ酒ということになるのである。
はっきり言おう。
くどくどとあちこち持ってまわった書き方をしたが、
実はこの小説、夫婦喧嘩の小説なのである。
涙の谷。
それが導火線であった。
この夫婦はすでに述べた通り、
であらなことはもちろん、
口汚なく罵り合ったことさえないすこぶるおとなしい一組ではあるが、
しかしそれだけまた一触即発の危険におののいているところもあった。
両方が無言で、
相手の悪さの証拠固めをしているような危険、
一枚の札をちらと見ては伏せ、
また一枚ちらと見ては伏せ、
いつか出し抜けに、
さあできましたと札をそろえて、
眼前に広げられるような危険、
それが夫婦を互いに遠慮深くさせていったといって、
言えないところがないでもなかった。
妻のほうはとにかく、
夫のほうは叩けば叩くほど、
いくらでもほこりのでそうな男なのである。
涙の谷。
そう言われて夫は悲願だ。
しかしいい争いは好まない。
沈黙した。
お前は俺に幾分当てつける気持ちでそう言ったのだろうが、
しかし泣いているのはお前だけでない。
家庭の苦悩
俺だってお前に負けず子供のことは考えている。
自分の家庭は大事だと思っている。
子供が夜中に変な咳一つしてもきっと目が覚めてたまらない気持ちになる。
もう少しマシな家に引っ越して、
お前や子供たちを喜ばせてあげたくてならんが、
しかし俺にはどうしてもそこまで手が回らないのだ。
これでもう精一杯なのだ。
俺だって凶暴な魔物ではない。
妻子を見殺しにして平然というような度胸を持ってはいないのだ。
配給や登録のことだって知らないのではない。
知る暇がないのだ。
父はそう心の中でつぶやき、
しかしそれを言い出す自信もなく、
また言い出して母から何か切り返されたら偶の音も出ないような気もして、
誰か人を雇えなさい、
と独り言みたいにわずかに主張してみた次第なのだ。
母も一体無口な方である。
しかし言うことにいつも冷たい自信を持っていた。
この母に限らずどこの女も大抵そんなものであるが、
でもなかなか来てくれる人もありませんから。
探せばきっと見つかれますよ。
来てくれる人がないんじゃない。
居てくれる人がないんじゃないかな。
私が人を使うのが下手だとおっしゃるのですか。
ああ、そんな。
父はまた黙した。
実はそう思っていたのだ。
しかし黙した。
ああ、誰か一人雇ってくれたらいい。
母が末の子を背負って八田市に外に出かけると、
父は後の二人の子の世話を見なければならん。
そして来客が毎日決まって十人くらいずつある。
仕事部屋の方へ出かけたいんだけど。
これからですか。
そう、どうしても今夜のうちに掻き上げなければならない仕事があるんだ。
それは嘘でなかった。
しかし家の中の唯一から逃れたい気もあったのである。
今夜は私、妹のところへ行ってきたいと思っているのですけど。
それも私は知っていた。妹は渋滞なのだ。
しかし女房が見舞いに行けば、私は子供のおもりをしていなければならん。
だから人を雇って、
言いかけて私は良した。
女房の身内の人のことに少しでも触れると、
ひどく二人の気持ちがややこしくなる。
生きるということは大変なことだ。
あちこちから鎖が絡まっていて、少しでも動くと血が吹き出す。
私は黙って立って、六畳間の机の引き出しから香料の入っている封筒を取り出し、
手元に突っ込んでそれから原稿用紙と辞典を黒い風呂敷に包み、
物体でないみたいにふわりと外に出る。
もう仕事どころではない。
自殺のことばかり考えている。
そして酒を飲む場所へまっすぐに行く。
いらっしゃい。
飲もう。
今日はまた馬鹿に綺麗な島を。
悪くないでしょ。
あなたの好きな島だと思っていたの。
今日は夫婦喧嘩でね。
院にこもってやりきれないんだ。
飲もう。今夜は泊まるぜ。
断然泊まる。
子供より親が大事。
と思いたい。
子供よりもその親の方が弱いのだ。
応答が出た。
私の家では子供たちに贅沢なものを食べさせない。
子供たちは応答など見たこともないかもしれない。
食べさせたら喜ぶだろう。
父が持って帰ったら喜ぶだろう。
鶴を糸でつないで首にかけると、
応答はサンゴの首飾りのように見えるだろう。
しかし父は大皿にもられた応答を
極めてまずそうに食べては種を吐き、
食べては種を吐き、
食べては種を吐き。
人間の存在意義
そして心の中で虚勢みたくつぶやく言葉は
子供よりも親が大事。
1989年発行。
門川書店。門川文庫。
人間失格。応答。
より独了。読み終わりです。
はい。
なんだ。小説とか言ってるけどまんま君のことじゃないかという気がしますね。
なるほど。自殺のことについて触れているので
このタイトルを明日の
ネーミングに使用したということなんですかね。
うーん。うーん。
人間失格もね、いつか読み上げねばならないなというリストに入っているんですけど
ボリュームが大きくてね、
7万8千字だったんで
えーっと
どのくらいだ?
2時間半、2時間半の上下みたいな感じかな。
あんな暗そうな話を何日も何日もかけて収録して
取り組むのになかなかね
まあそのうちそのうちですね。
最近の僕ですが
プロ野球の解説動画のナレーションみたいなお仕事をもらってやってるんですけど
それに追加してね
剣道のね、ドキュメンタリーのナレーションもさせてもらったんですが
なんかドキュメンタリーものってゆっくりなんだなと思って。読み上げが。
だから僕のこのポッドキャストは
よりだいぶゆっくり読んでください
ちょっと気持ち早いですって言われましたね
全日本実業団大会を前に
佐々木はとある場所を訪れていた
みたいなゆっくり
情熱大陸のイメージでやってるんだけどな
下条アトムのイメージがいいのかな
あんなにネバっこいの嫌だよね
とある場所を訪れていた
まあいろいろアプローチしてみますかね
あとですね
普段聞いてるラジオ番組で
東京ポッド許可局というラジオを聞いてるんですけど
そこのね
グッズというか
夏になるとそうめんが販売されるので
買ったんですよ
それが島原
長崎県ですか
腰が強くプツプツとした食感が嬉しい
島原特産の高級てのべそうめんだそうです
買ってみたんですけど
めんつゆだけじゃ絶対に飽きちゃうと思うので
なんかおすすめの食べ方ないですかね
という話なんですけど
もしなんかいい食べ方があったら教えてほしいな
辛くするのもありですよね
ラー油とかごま油とか使って
梅がねそんなに得意じゃないんでね
梅を使ったさっぱりはそんなにぐっとこないかな
もうそうめんで十分さっぱりしてるから
そのさっぱり研ぎ澄まさなくてもって感じは
しなくもないというか
お気に入りのそうめんの食べ方などあれば教えてほしいです
どうぞよろしくお願いします
では終わりにしましょうかね
無事に寝押しできた方も最後までお付き合いいただいた方も
大変にお疲れ様でした
といったところで今日のところはこの辺で
また次回お会いしましょう
おやすみなさい