1. 寝落ちの本ポッドキャスト
  2. 160蘭郁二郎「穴」(朗読)
2025-09-02 16:25

160蘭郁二郎「穴」(朗読)

160蘭郁二郎「穴」(朗読)

雨の日の夜にぜひ。

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サマリー

ポッドキャストでは、蘭郁二郎の短編「穴」が朗読されます。この作品は、線路の近くで見つかった死体を巡る恐ろしい物語で、登場人物たちの恐怖や驚きを通じて、死というテーマが深く掘り下げられています。このエピソードでは、倉さんの死亡とその周辺の謎が語られます。青大将の死骸や、目撃された人影など、不気味な出来事が描かれています。

ポッドキャストの紹介
寝落ちの本ポッドキャスト
こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには、面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品は全て青空文庫から選んでおります。
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また別途投稿フォームもご用意しました。
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そして最後に、まだというそこのあなた、
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さて、今日は蘭郁二郎さんという方の
穴というテキストを読もうと思います。
ちょっと怖いらしいですよ。
怖いのが苦手な方は、開始5秒で寝てください。
朝一番に線路の上で死体が見つかったという始まりからのようです。
それから、僕はまだ読んでいないので何とも言えないですが、
雨の日の夜に聞くと最高だということだそうです。
どういう内容なんですかね。
蘭郁二郎さんという方は1910年代、
1913年生まれで30歳で亡くなった小説家、
SF作家、推理作家という経歴だそうです。
今回の穴というテキストも文字数4200文字なので
すごくサクッと終わると思いますが、
サクッと終わって怖いってどういうことなんですかね。
作中に出てくるポンコツというのが歴史体、
引かれて死んだ死体のことを指しているようです。
謎々踏まえて、
踏まえて寝落ちしてくださいというのもあれですけど。
さあ、やっていきましょうか。
どうかお付き合いください。
それでは参ります。
毎日毎日、木がクサクサするような長雨が
灰色の空からまるで小ぬかのように振り込めている
梅雨時の夜明けでした。
ちょうど宿直だった私は寝ぼけまのこで
朝の一番電車を見送って
やれやれと思いながら
先輩であり同時に同僚である吉村君と
ぽつぽつ帰り自宅にかかろうと
ようやくしらみかけた薄積みの中に
5分を溶かしたような梅雨の東空を
住所の汗の浮いたガラス戸越しに見つめていた時でした。
思い出したような
電車の後ろに壁掛け電話が
チリンチリン、チリリンと呼び出しを送ってきたのです。
そばにいた吉村君がすぐ受話器を外しましたが
え、何?
ポンコツか。
んー、どこに?
うん、うん、うん、行こう。
と言ってガチャリと電話を切って
おい、ポンコツだとよ。
今の番が見つけたって言うから
終電車にやられたらしいな。
と腐ったような顔をして言うのです。
このポンコツというのは
我々鉄道や仲間の言葉で歴史のことを言うのですが
私も昨年学校を出てすぐ鉄道の試験を受け
幸い合格はしたものの
どういう関係か散々じらされた挙句
採用になったのは秋でしたので
この梅雨の季節を迎えるのには
まだ半年ばかりしか経っていなかったのです。
しかしそれでも私の仕事が保線区であったせいか
すでに3、4回のポンコツに行き上がっていました。
中でも一番すごかったのは
やはり若い女の時で
これは覚悟の飛び込みだったそうですが
そのせいかひどく鮮やかにやられていました。
ちょうど太ももの付け根と首等を引かれ
両足はそのももの付け根のところで
ペラペラな皮一枚で繋がっていて
うねうねと伸びているのを見た時は
そしてそうなってまで
右の手で着物の裾をしっかり押さえているのを見た時は
我ながらよくも一人で詰め処までやってきたと
後からも思ったことでした。
その2、3日は飯もろくに食えずに
舌の根がヒリヒリするほど
唾ばかり吐き散らしていたものです。
もう一つこれは聞いた話なんですが
やはり18区という若い女のポンコツがあって
献死も済んでさあ
バラバラになった体を集めてみたが
どうも右の手が足りない。
いくらその辺を数丁にも渡って調べても
見当たらないというんです。
まさか野良犬が食われていったのではあるまいが
というので色々調べてみましたら
すでに車庫に回されていたその
引いた電車の車輪の一つを
その手のひらだけの手袋のような手で
しっかり握っていた
実に怖かったそうです。
献死係が仕事用の軍手が置いてあるのかと思って
ひょいと取ろうとしたら
関節からすっぽり抜けた若い女の手のひらに
衝撃の発見
その血まみれの口から真っ白い剣が
二三寸ばかりも抜け出ていたそうで
苦し紛れに箸と車輪を掴んだんでしょうが
それを取るのに指一本一本を拝むように
やっと取ったといいますから
すごい話です。
どうもだいぶ横道に逸れてしまいましたが
で、その夜明けのポンコツの知らせを受けて
私と吉村君と
それからやはり泊り番だった交付の3人ばかりとで
とりあえずガソリンカーで現場へ出かけたのです。
そこは中央線の東中野を出て立川に行く
全国でも珍しい直線コースが
立川からようやくカーブして日野へ行く
その立川日野間のほぼ真ん中あたりというのでした。
申し遅れましたが
私は当時立川の詰所にいたのです。
ガソリンカーといってもトロッコに毛の生えたようなものですが
これが思ったよりスピードを出すもので
私たちは振り落とされないようにしっかり捕まっていながら
寝不足と霧雨とに悩まされてすっかり憂鬱になっていました。
と交付の一人が思い出したように
おー、倉さんのおっ母はもう去年のこんな時だったじゃねえか
すると
そうよ、この先あたりだったな。あれもひどかった。
と、もう一人が合図地を打つのです。
この倉さんというのは
古株の甲府で実に筋骨竜々の巨大官
私なんか手に負えないせめん袋をひょいひょいと
二つも寮の小脇に抱えてしまう馬鹿力を持った男で
腕っぷしのもののお湯この中までも
一目も二目も置かれている男です。
その上、ひどく酒癖が悪く
酒を飲めば決してまっすぐに家へ帰れないという悪病を持った男で
そのために細君は彼の不志だらと家計の苦しさを恨んだ挙句
やみつかれていた肺病も手伝ったのでしょうか。
去年、私がまだ来る前に飛び込み自殺をしたということで
これは私も以前から聞き知っていたことです。
また余談になりましたが
ガトリンカーがビュービュー走っていきます。
線路の両側にうっそーと続いていた森が突然ぱったりと途絶えると
定規で引いたような直線レールが
遥か多摩川の方にしらじらと濡れて続いています。
急に森を抜け出たせいか
吹きざらしの車の上にいると
霧雨が肌にまで染み通ってきて
ゾクゾクした寒さに襲われてきました。
と、さっきの甲府が言うのです。
いけねえ、おい。
今日は17日じゃねえか。
え?
倉さんのおっ母がポンコ作った日だぜ。
誰も返事をしませんでした。
ところが吉村君が私の耳元で
ポンコ作ったっていうのはこの辺なんだぜ。
そう囁いたかと思うと
急にガソリンカーがぐーっとスピードを落として止まってしまったのです。
思わず伸び上がってみると
2、3弦先の線路の脇に
黒っぽい着物を着た男がゴロンと転がっていました。
みんなが無言でゾロゾロ言ってみますと
まるでレールの上に寝ていたのじゃないかと思われるほど
見事に太ももと首とが引き切られているのです。
首がねえな。
そう言って一人が小腰をかがめて見ていましたが
あ、こんなところに立ってやがる。
そういった方を見ると
なるほど首だけがまるで大きいもののように
銅装の砂利の上にちょこんと立っているのです。
チッと舌打ちした甲府がその首を拾いに行きましたが
いきなり
というような声を漏らすと
泳ぐような格好をして駆け戻ってきて
く、く、く、クラさんだ。
ガタガタ震える手でその首を刺すのです。
え、クラさん?
みんなは思わず襟首に流れ込んだ霧雨のしずくを
ひやりと感じて顔を見合わせました。
ちょうど今もその話が出たばかりですし
屈強な甲府たちもさっと顔が青じらんでしまいました。
しばらくしてからやっとみんなで固まって
その首を拾いに行ったのですが
倉さんの不気味な死
なるほどその首はクラさんでした。
しかもポンコツの苦しみというよりも
その首だけマスクのような顔には何を見たのか
ぞっとするような恐怖の色が刻み込まれているのでした。
とその時私は
いやーなものを見てしまったのです。
その首のそばに四五尺もあるような青大将が
ずたずたに引き切られているのです。
ぎくりとした途端に自分でも
頭から血がスーッと引いていったのを覚えています。
吉村君や他の甲府たちもすぐそれに気がついたのでしょう。
わざと目をそらしているらしいのです。
一人の甲府がかさかさな唇をパクパクさせていましたが
お、お母、うらうなよ
と口走りました。
急所をつかれたようにはっと見合わせたみんなの顔は
どれもこれも髪のように白けて
そこに転がっている倉さんの生首そっくりでした。
私たちが詰所に帰ってやっと一息入れていますと
夕べの終電車と今朝の一番との運転手の話が伝わってきました。
それによると今朝の一番の運転手は
自分が通った時はもうその死骸があった。
確かに死骸になっていた。
それは二三元手前でわざわざ車を止めて
レールから傍らに引っ張って下したのだから間違いないというし
車掌もそれを証言するそうです。
ところが終電車の運転手は確かにそんなポンコツはなかったというのです。
第一あそこはちょうど森の切れた両側は一面の開けた田んぼですし
線路にそんな男がいたらきっと見つけるはずだし
あんな頑丈な男だったら車のショックでも分かるはずだというばかりか
その終電車の車掌がこんなことを言い出しました。
というのは最高部の乗務員室で背をもたれながら
ぼんやり飛び去っていく窓の外を見ていますと
ちょうどあなたりで窓から漏れるルームライトの光の中に
ふっと人影を見たというのです。
それは立って歩いている人影で
しかもレールを挟んで右側を黒っぽい着物を着た男が
そして左側を痩せ方の女らしい人影があった。
その車掌はもうやっと思ってもう一度確かめようとしたのですが
何分ヘッドライトもないし
次の瞬間にはルームライトの光の他に
闇に消えてしまったというのですが
これを聞いたとき私たちさっきの青台車を見た連中は
唇の色を失っていました。
それにしても自殺などするはずもない倉さんが
非晩のしかも真夜中になぜあんな線路を歩いていたのか
一直線の見通しの利くところで
なぜポンコツをくらったのか
そして田んぼの真ん中のレールの上に
どこから青台車が来て轢かれたのか
吉村君もそうらしかったのですが
私は今日がちょうど倉さんが
生前虐待指導士だったという蔡君の
恨みを呑んで自殺したという
同じ日の同じ場所であったばかりか
そこへ得体の知れぬ青台車が
真珠するように寄り添っていたということや
謎の人影と埋葬
車掌の見たという男女の人影のことと
あの血みどろの恐怖に
目の玉が半分以上も飛び出していた
凄まじい行走の倉さんの生首等を思い合わせて
しっとり濡れたシャツの肩あたりが
変にぞくぞくと問い旗立ってくるのでした。
しかもその晩はおつやなのですが
この辺は終始の歓迎状が
今でも土葬のしきたりだそうで
身寄りもないし結局同僚だけで
簡単な不気味なおつやを済まし
妊婦を頼んで蔡君の墓場の横を掘ったのですが
たった一年しか経たないのに
いくら掘っても蔡君の棺桶が見当たらないというのです。
ようやくそれらしいところを掘り当ててみますと
ただ土歩の中がポカンと少しばかり
虚ろになっているばかりで
そこから地上に向かって
一径一寸ばかりの穴がひょろひょろと
抜け通っている霧だったのです。
私たちはしょぼしょぼと振り続くリングの中に
無言のまま立ちすくんでしまいました。
2003年発行
ちくましょぼうちくまぶんこ
怪奇探偵小説名作戦7
乱育児老朱
魔像
より独了読み終わりです。
おっかうらむなよって
つぶやいた甲府がいたのがちょっと謎だったな。
どういうことなんだこれは。
死体を見つけて
青大将も隣で死んでて
それを目撃した3人のうちの1人が
おっかをうらむなよ
をくちばしる
くちばしら
くちばしゃ
くちばしらされた
誰に?倉さんに?
わかりませんね。そうですか。
この作品を紹介してくれたいくつかのノートの中に
読みづらいですけど無駄がないのでいいですよ
みたいな書いてありましたが
読みづらさはそんなでもないかな。
短いですね。はい。
連日暑い日が続いていますが
ちょっとくらい雨が降ってほしいですね。
雨が降って涼しい日がほしいなと思います。
もう答えるね。本当この暑さは。
なんか10月まで暑いと聞きましたが
本当ですか?
もう涼しいとこ行きたい。
標高が高いところに行きたいね。
はい。
まあ理想ばかり語ってもしょうがないので
海抜の低いところでハイツ配って生きていきましょう。
よし終わりにするか。
無事に寝落ちできた方も
最後までお付き合いいただいた方も
大変にお疲れ様でした。
と言ったところで今日のところはこの辺で
また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
16:25

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