寝落ちの本ポッドキャスト。こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品は全て青空文庫から選んでおります。
ご意見・ご感想・ご依頼は、公式エックスまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。
また、投稿フォームもご用意しました。合わせてご利用ください。
それと番組フォローもどうぞよろしくお願いします。
さて、今日は宮沢賢治さんの銀河鉄道の夜ですね。有名なやつです。
宮沢賢治さんは、国語の教科書にはたくさん出てきますが、
日本の詩人、童話作家、仏教信仰と農民生活に根差した創作を行った、
作品中に登場する架空の理想郷に、
郷里の岩手県をモチーフとした伊波島部と名付けたことで知られる。
代表作、銀河鉄道の夜。これ、今日読みます。
注文の多い料理店。セロ引きの豪酒などがあるとのことです。
文字数がですね、4万1千字?およそ4万2千字なので、
1時間40分ぐらいかな。になろうかと思います。
だいたい2万ちょいぐらいを1時間で読み上げるペースなので、
ちょっと早口でそんぐらい。
銀河鉄道の夜をちゃんと文字で全部さらったことがないので、
どんな文体かわからないんですけど。
僕が子供の頃はNHK教育だと思うんですけど、
ジョバニーとカンパーネルラを二足歩行の猫のキャラクターに見立てたアニメがやってたんですよね。
でも全然覚えてないや。絵面しか覚えてないや。
ストーリーの本筋?大筋か。
大筋は中田のあっちゃんのギュッとまとめた動画でいただいたんですけど、
今日改めて文字でさらおうと思います。
AI君が出力してくれた概要によると、
闇の中に展開される色彩や匂いや音楽の世界が強烈で、
多くのアーティストが表現しようとしたが文字で書かれた作品を超えることができていない最高傑作と言われるそうです。
うーん。
だそうですよ。それを今から読み上げますよ。
どうぞ寝落ちまでお付き合いください。
それでは参ります。
銀河鉄道の夜
1.午後の授業
では皆さんはそういう風に川だと言われたり、
土の流れた跡だと言われたりしていたこのぼんやりと白いものが本当は何かご承知ですか?
先生は黒板に吊るした大きな黒い星座の図の
上から下へ白くけぶった銀河帯のようなところを指しながら
みんなに問いをかけました。
カンパネルラが手を挙げました。
それから4、5人手を挙げました。
ジョバンニも手を挙げようとして急いでそのままやめました。
確かにあれがみんな星だといつか雑誌で読んだのでしたが、
この頃はジョバンニはまるで毎日教室でも眠く、
本を読む暇も読む本もないので、なんだかどんなこともよくわからないという気持ちがするのでした。
ところが先生は早くもそれを見つけたのでした。
ジョバンニさん、あなたはわかっているんでしょう?
ジョバンニは勢いよく立ち上がりましたが、
立ってみるともうはっきりとそれを答えることができないのでした。
ザネリが前の席から振り返ってジョバンニを見てくすっと笑いました。
ジョバンニはもうドギマギして真っ赤になってしまいました。
先生がまた言いました。
大きな望遠鏡で銀河をよく調べると銀河はだいたい何でしょう?
やっぱり星だとジョバンニは思いましたが、今度もすぐに答えることができませんでした。
先生はしばらく困った様子でしたが、目をカンパネルラの方へ向けて、
「では、カンパネルラさん。」となざしました。
すると、あんなに元気に手を挙げたカンパネルラが、
やはり文字文字立ち上がったまま、やはり答えが出ませんでした。
先生は意外なようにしばらくじっとカンパネルラを見ていましたが、急いで、
「ではよし。」と言いながら自分で星図をさしました。
このぼんやりと白い銀河を大きないい望遠鏡で見ますと、もうたくさんの小さな星に見えるのです。
ジョバンニさんそうでしょう?
ジョバンニは真っ赤になってうなずきました。
けれどもいつかジョバンニの目の中には涙がいっぱいになりました。
そうだ、僕は知っていたんだ。
もちろんカンパネルラも知っている。
それはいつかカンパネルラのお父さんの博士のうちで、
カンパネルラと一緒に読んだ雑誌の中にあったんだ。
それどこでなくカンパネルラは、その雑誌を読むとすぐお父さんの書斎から大きな本を持ってきて、
銀河というところを広げ、真っ黒なページいっぱいに白に点々のある美しい写真を二人でいつまでも見たのでした。
それをカンパネルラが忘れるはずもなかったのに、すぐに返事をしなかったのは、この頃僕が朝にも午後にも仕事がつらく、
学校に出てももうみんなともはきはき遊ばず、カンパネルラともあんまり物を言わないようになったので、
カンパネルラがそれを知って気の毒がってわざと返事をしなかったのだ。
そう考えるとたまらないほど、自分もカンパネルラも哀れなような気がするのでした。
先生はまた言いました。
ですからもしもこの天の川が本当に川だと考えるなら、
その一つ一つの小さな星はみんなその川の底の砂や砂利の粒にも当たるわけです。
またこれを大きな土の流れと考えるなら、もっと天の川とよく似ています。
つまりその星はみんな土の中にまるで細かに浮かんでいる油の玉にも当たるのです。
そんなら何がその川の水に当たるかと言いますと、
それは真空という光をある速さで伝えるもので、
太陽や地球もやっぱりその中に浮かんでいるのです。
つまりは私どもも天の川の水の中に住んでいるわけです。
そしてその天の川の水の中から四方を見ると、ちょうど水が深いほど青く見えるように、
天の川の底の深く遠いところほど星がたくさん集まって見え、
したがって白くぼんやり見えるのです。
この模型をご覧なさい。
先生は中にたくさん光る砂の粒の入った大きな両面の突レンズを指しました。
天の川の形はちょうどこんななのです。
このいちいちの光る粒がみんな私どもの太陽と同じように自分で光っている星だと考えます。
私どもの太陽がこのほぼ中頃にあって、地球がそのすぐ近くにあるとします。
皆さんは夜にこの真ん中に立って、このレンズの中を見回すとしてご覧なさい。
こっちのほうはレンズが薄いので、わずかの光る粒、すなわち星しか見えないでしょう。
こっちはこっちのほうはガラスが厚いので、光る粒、すなわち星がたくさん見え、その遠いのはぼーっと白く見えるという。
これがつまり、今日の銀河の説なのです。
そんならこのレンズの大きさがどれぐらいあるか、またその中のさまざまな星については、もう時間ですから、この次の理科の時間にお話しします。
では今日はその銀河のお祭りなのですから、皆さんは外へ出てよく空をご覧なさい。
ではここまでです。本やノートをおしまいなさい。
そして教室中はしばらく机のふたを開けたり閉めたり、本を重ねたりする音がいっぱいでしたが、まもなくみんなはきちんと立って礼をすると教室を出ました。
ジョバンニが学校の門を出るとき、同じ組の七八人は家へ帰らず、カンパネルラを真ん中にして校庭の隅の桜の木のところに集まっていました。
それは今夜の星祭りに青い明かりをこしらえて川へ流すカラスウリを取りに行く相談らしかったのです。
けれどもジョバンニは手を大きく振ってどしどし学校の門を出てきました。
すると町の家々では今夜の銀河の祭りに一井の葉の玉を吊るしたり、ヒノキの枝に明かりをつけたり、いろいろ支度をしているのでした。
家へは帰らず、ジョバンニが町を三つ曲がってある大きな甲板所に入って靴を脱いで上がりますと、月あたりの大きな扉を開けました。
中にはまだ昼なのに電灯がついてたくさんの輪転機がバタリバタリと回り、
キレで頭を縛ったりランプシェードをかけたりした人たちが何か歌うように読んだり数えたりしながらたくさん働いておりました。
ジョバンニはすぐ入口から三番目の高いテーブルに座った人のところへ行ってお辞儀をしました。
その人はしばらく棚を探してから、「これだけ拾っていけるかね?」と言いながら一枚の紙切れを渡しました。
ジョバンニはその人のテーブルの足元から一つの小さな平たい箱を取り出して、
向こうの電灯のたくさんついた立てかけてある壁の隅のところへしゃがみ込むと、
小さなピンセットでまるで泡粒ぐらいのカツジを次から次へと拾い始めました。
青い胸当てをした人がジョバンニの後ろを通りながら、「よう虫眼鏡くん、おはよう。」と言いますと、
近くの四五人の人たちも声も立てずこっちも向かずに冷たく笑いました。
ジョバンニは何遍も目を拭いながらカツジをだんだん拾いました。
六時が打ってしばらくたった頃、ジョバンニは拾ったカツジをいっぱいに入れた平たい箱をもう一度手に取った紙切れと引き合わせてから、
さっきのテーブルの人へ持ってきました。
その人は黙ってそれを受け取ってかすかにうなずきました。
ジョバンニはお辞儀をすると扉を開けて計算台のところに来ました。
すると白服を着た人がやっぱり黙って小さな銀貨を一つジョバンニに渡しました。
ジョバンニはにわかに顔色がよくなって威勢よくお辞儀をすると台の下に置いたカバンを持って表へ飛び出しました。
それから元気よく口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊を一つと角砂糖を一袋買いますと一目散に走り出しました。
3. 家
ジョバンニが勢いよく帰ってきたのはある裏町の小さな家でした。
その三つ並んだ入り口の一番左側には空き箱に紫色のケールやアスパラガスが植えてあって、小さな二つの窓には日覆が降りたままになっていました。
お母さん、今帰ったよ。
具合悪くなかったの?
ジョバンニは苦痛をぬぎながら言いました。
ああ、ジョバンニ。お仕事がひどかったろう。
今日は涼しくてね。私はずっと具合がいいよ。
ジョバンニは玄関を上がって行きますと、ジョバンニのお母さんがすぐ入り口の部屋に白いキレをかぶって休んでいたのでした。
ジョバンニは窓を開けました。
お母さん、今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って。
ああ、お前先に上がり。私はまだ欲しくないんだから。
お母さん、姉さんはいつ帰ったの?
ああ、三時ごろ帰ったよ。みんなアスパラをしてくれてね。
お母さんの牛乳は来てないんだろうか。
来なかったろうかね。
僕、行って取ってこよう。
ああ、私はゆっくりでいいんだから、お前先に上がり。
姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いていったよ。
うん、では僕食べよう。
ジョバンニは窓のところからトマトの皿を取って、パンと一緒にしばらくむしゃむしゃ食べました。
ねえ、お母さん。僕、お父さんはきっと間もなく帰ってくると思うよ。
ああ、私もそう思う。けれども、お前はどうしてそう思うの?
だって今朝の新聞に、今年は北の方の量は大変良かったと書いてあったよ。
ああ、だけどね、お父さんは寮へ出ていないかもしれない。
きっと出てるよ。お父さんが韓国へ入るような、そんな悪いことをしたはずがないんだ。
この前お父さんが持ってきて、学校へ寄贈した大きなカニの甲羅だのと、ナカイの角だの、今だってみんな標本室にあるんだ。
6年生なんか授業のとき、先生がカワルガール教室で持っていくよ。
お父さんはこの次はお前にラッコの浮気を持ってくると言ったね。
みんなが僕に会うとそれを言うよ。ひやかすように言うんだ。
お前に悪口を言うの?
うーん、けれどもカンパネルラなんか決して言わない。
カンパネルラはみんながそんなことを言うときは気の毒そうにしているよ。
カンパネルラのお父さんとうちのお父さんとは、ちょうどお前たちのように小さいときからのお友達だったそうだよ。
ああ、だからお父さんは僕を連れてカンパネルラのうちへも連れて行ったよ。
あのころはよかったな。
僕は学校から帰る途中、たびたびカンパネルラのうちに寄った。
カンパネルラのうちにはアルコールランプで走る汽車があったんだ。
レールを7つ組み合わせると丸くなって、それに電柱や信号標もついていて、信号標の明かりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。
いつかアルコールがなくなったとき石油を使ったら、勘がすっかりせずけたよ。
そうかね。
今も毎朝新聞を回しに行くよ。
けれどもいつでも家中まだ死因としているからな。
早いからね。
ザウェルという犬がいるよ。
尻尾がまるでほうきのようだ。
僕が行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。
ずっと街の角までついてくる。
もっとついてくることもあるよ。
今夜はみんなでカラスうりの明かりを川へ流しに行くんだって。きっと犬もついていくよ。
そうだ。今晩は銀河のお祭りだね。
うん。僕牛乳をとりながら見てくるよ。
あー行っておいで。川へは入らないでね。
あー僕岸から見るだけなんだ。1時間で行ってくるよ。
もっと遊んでおいで。カンパネルラさんと一緒なら心配はないから。
あーきっと一緒だ。お母さん窓を閉めておこうか。
あーどうか。もう涼しいからね。
ジョバンニは立って窓を閉め、お皿やパンの袋を片付けると勢いよく靴を履いて、
「では1時間半で帰ってくるよ。」と言いながら暗い戸口を出ました。
4.ケンタウル祭の夜
ジョバンニは口笛を吹いているような寂しい口つきで日の木の真っ黒に並んだ街の坂を降りてきたのでした。
坂の下に大きな一つの街灯が青白く立派に光って立っていました。
ジョバンニがどんどん電灯の方へ降りて行きますと、
今まで化け物のように長くぼんやり後ろへ引いていたジョバンニの影帽子はだんだん濃く黒くはっきりになって、
足を上げたり手を振ったり、ジョバンニの横の方へ回ってくるのでした。
「僕は立派な機関車だ。ここは勾配だから早いぞ。僕は今その電灯を通りっこす。
そーら、今度は僕の影帽子はコンパスだ。あんなにくるっと回って前の方へ来た。」
とジョバンニが思いながら大股にその街灯の下を通り過ぎた時、
いきなり昼間のザネリが新しい襟の尖ったシャツを着て電灯の向こう側の暗い工事から出てきて、ひらっとジョバンニとすれ違いました。
「ザネリ、カラスより流しに行くの?」
ジョバンニがまだそう言ってしまわないうちに、
「ジョバンニ、お父さんからラッコの上着がくれや。」
その子が投げつけるように後ろから叫びました。
ジョバンニはばっと胸が冷たくなり、そこら中キーンとなるように思いました。
「なんだい、ザネリ。」
とジョバンニは高く叫び返しましたが、
もうザネリは向こうの火場の奪った家の中へ入っていきました。
「ザネリはどうして僕が何もしないのにあんなことを言うんだろう。走る時はまるでネズミのようなくせに。」
「僕が何もしないのにあんなことを言うのは、ザネリがバカなからだ。」
ジョバンニはせわしくいろいろなことを考えながら、
さまざまな明かりや木の枝ですっかりきれいに飾られた街を通っていきました。
時計屋の店には明るくネオン灯がついて、
一秒ごとに石でこさえた袋の赤い芽がくるっくるっと動いたり、
いろいろな宝石が海のような色をした厚いガラスのバンに乗って星のようにゆっくりめぐったり、
また向こう側から銅のジンバがゆっくりこっちへ回ってきたりするのでした。
その真ん中に丸い黒い星座葉やみが青いアスパラガスの葉で飾ってありました。
ジョバンニは我を忘れてその星座の図に見入りました。
それは昼、学校で見たあの図よりはずっと小さかったのですが、
その日と時間にあわせてバンをまわすと、
そのとき出ている空がそのまま楕円形の中にめぐってあらわれるようになっており、
やはりその真ん中には上から下へかけて銀河がぼーっと煙ったような帯になって、
その下の方ではかすかに爆発して湯気で曲げているように見えるのでした。
またその後ろには三本の足のついた小さな望遠鏡が黄色に光って立っていましたし、
一番後ろの壁には空中の星座を不思議な獣や蛇や魚や瓶の形に描いた大きな図がかかっていました。
本当にこんなようなサソリダノ、ユウシダノ、空にぎっしりいるだろうか。
ああ、僕はその中をどこまでも歩いてみたいと思ったりして、しばらくぼんやり立っていました。
それからにわかにお母さんの牛乳のことを思い出して序盤にはその店を離れました。
そして窮屈な上着の肩を気にしながら、
それでもわざと胸を張って大きく手を振って街を通って行きました。
空気は澄みきってまるで水のように通りや店の中を流れましたし、
街灯はみんな真っ青なアモミや奈良の枝で包まれ、
電気会社の前の6本のプラタナスの木などは中にたくさんの豆電灯がついて、
本当にそこらは人魚の都のように見えるのでした。
子供らはみんな新しい織りのついた着物を着て星巡りの口笛を吹いたり、
ケンタウルス、梅雨を降らせ!と叫んで走ったり、
青いマグネシアの花火を模したりして楽しそうに遊んでいるのでした。
けれども序盤にはいつかまた深く首を垂れて、
そこらの賑やかさとはまるで違ったことを考えながら牛乳屋の方へ急ぐのでした。
序盤にはいつか街外れのポプラの木がいく本もいく本も高く星空に浮かんでいるところに来ていました。
その牛乳屋の黒い門を入り、牛の匂いのする薄暗い台所の前に立って、
序盤には帽子を脱いで、「こんばんは。」と言いましたら、
家の中は死因として誰もいたようではありませんでした。
「こんばんは。」
「ごめんなさい。」
序盤にはまっすぐ立ってまた叫びました。
するとしばらくたってから年とった女の人がどこか具合が悪いようにそろそろと出てきて、
何か用かと口の中で言いました。
「あの、きょう牛乳がぼくとこへ来なかったのでもらいにあがったんです。」
序盤にが一生懸命意気をよく言いました。
「いま誰もいないでわかりません。あしたにしてください。」
その人は赤い目の下のとこをこすりながら序盤にを見おろして言いました。
「おっかさんが病気なんですからこんばんでないと困るんです。」
「ではもうすこしたってから来てください。」
その人はもう行ってしまいそうでした。
「そうですか。ではありがとう。」
序盤にはおじぎをして台所から出ました。
十字になった町の角をまがろうとしましたら向うの橋へ行くほうの雑貨店の前で
黒い影やぼんやり白いシャツが入り乱れて六七人の生徒らが
口笛を吹いたり笑ったりしてめいめいカラスうりの明かりを持ってやってくるのを見ました。
その笑い声も口笛もみんな聞き覚えのあるものでした。
序盤にの同級の子供らだったのです。
序盤には思わずドキッとして戻ろうとしましたが
思い直して一生意気をよくそっちへ歩いて行きました。
「川へ行くの?」
序盤にが言おうとして少しのどがつまったように思ったとき
「序盤にラッコの上着が来るよ!」
さっきのザネリがまた叫びました。
「序盤にラッコの上着が来るよ!」
すぐみんなが続いて叫びました。
序盤には真っ赤になってもう歩いているかもわからず
急いで行きすぎようとしましたらその中にカンパネルラがいたのです。
きてもうそっちは何も見えなくなりました たくさんのくるみの木が葉をさんさんと
光らしてその霧の中に立ち 金の円弧を持ったデンキリスが可愛い顔を
その中からちらちら覗いているだけでした その時スーッと霧が晴れかかりました
どこかへ行く街道らしく小さな伝統の一 列についた通りがありました
それはしばらく線路に沿って進んでいました そして2人がその明石の前を通っていく
時はその小さな豆色の日はちょうど挨拶でも するようにポカッと消え2人が過ぎて
行く時またつくのでした 振り返ってみるとさっきの十字架は
すっかり小さくなってしまい本当にもうそのまま 胸にも吊るされそうになり
さっきの女の子や青年たちがその前の白い 渚にまだひざまずいているのかそれとも
どこか方角もわからないその天井へ行ったのか ぽんやりして見分けられませんでした
序盤にはあーっと深く息しました カンパネラーまた僕たち二人きりになった
ねー どこまでもどこまでも一緒に行こう
僕はもうあのサソリのように本当にみんなの 幸いのためならば僕の体なんか100ペン
焼いても構わない 僕だってそうだ
カンパネラーの目には綺麗な涙が浮かんで いました
けれども本当の幸いは一体何だろう 序盤にが言いました
僕わからない カンパネラーがぼんやり言いました
僕たちしっかりやろうねー 序盤にが胸いっぱい新しい力が湧くように
ふーと息をしながら言いました ああそこ石炭袋だよ空の穴だよ
カンパネラーが少しそっちを避けるように しながら天の川のひととこを指差しました
序盤にはそっちを見てまるでギクッとして しまいました
天の川のひととこに大きな真っ暗な穴が ドーンと開いているのです
その底がどれほど深いかその奥に何があるか いくら目をこすって覗いても何にも見えず
ただ目がしんしんと痛むのでした 序盤にが言いました
僕もあんな大きな闇の中だって怖くない きっとみんなの本当の幸いを探しに行く
どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう
あーきっと行くよ あーあそこの野原はなんて綺麗だろう
みんな集まってるね あそこが本当の天井なんだ
あ、あそこにいるのは僕のお母さんだよ
カンパネルラはにわかに窓の遠くに見える 綺麗な野原を指して叫びました
序盤にもそっちを見ましたけれども そこはぼんやり白く煙っているばかり
どうしてもカンパネルラが言ったように 思われませんでした
なんとも言えず寂しい気がして ぼんやりそっちを見ていましたら
向こうの川岸に二本の伝心柱が ちょうど両方から腕を組んだように
赤い腕着を連ねて立っていました
カンパネルラー 僕たち一緒に行こうね
序盤にがこう言いながら振り返ってみましたら その今までカンパネルラの座っていた席に
もうカンパネルラの形は見えず ただ黒いビロードばかり光っていました
序盤にはまるで鉄砲玉のように立ち上がりました そして誰にも聞こえないように
窓の外へ体を乗り出して 力いっぱい激しく胸を打って叫び
それからもう喉いっぱい泣き出しました もうそこらがいっぺんに真っ暗になったように思いました
その時 お前は一体何を泣いているのちょっとこっちをご覧
今までたびたび聞こえたあの優しいセロのような声が 序盤にの後ろから聞こえました
序盤にはハットを持って涙を払ってそっちを振り向きました さっきまでカンパネルラの座っていた席に黒い大きな帽子をかぶった
青白い顔の痩せた大人が優しく笑って大きな一冊の本を持っていました お前の友達がどこか行ったんだろう
あの人はね本当に今夜遠く行ったんだ お前はもうカンパネルラを探しても無駄だ
どうしてなんですか僕はカンパネルラと一緒にまっすぐ行こうと言ったんです ああそうだみんながそう考えるけれども一緒に行けない
そしてみんながカンパネルラだ お前が会うどんな人でもみんな何でもお前と一緒にリンゴを食べたり汽車に乗ったりしたの
だ だからやっぱりお前はさっき考えたようにあらゆる人の一番の幸福を探しみんなと一緒に
早くそこに行くがいい そこでばかりお前は本当にカンパネルラといつまでも一緒に行けるのだ
ああ僕はきっとそうします僕はどうしてそれを求めたらいいでしょう ああ私もそれを求めている
お前はお前の切符をしっかり持っておいでそして一心に勉強しなきゃいけない お前は科学を習ったろう
水は酸素と水素からできているということを知っている 今は誰だってそれを疑いやしない実験してみると本当にそうなんだから
けれども昔はそれを水銀と塩でできていると言ったり 水銀と硫黄でできていると言ったりいろいろ議論したんだ
みんなが命名自分の神様が本当の神様だと言うだろう けれどもお互い他の神様を信ずる人たちのしたことでも涙がこぼれるだろう
それから僕たちの心が良いとか悪いとか議論するだろう そして勝負がつかないだろう
けれどももしお前が本当に勉強して実験でちゃんと本当の考えと嘘の考えと分けてしまえば その実験の方法さえ決まればもう信仰も科学と同じようになる
けれどもねちょっとこの本をご覧いいかい これは地理と歴史の時点だよ
この本のこのページはねえ紀元前2200年の地理と歴史が書いてある よくご覧紀元前2200年のことでないよ
紀元前2200年の頃にみんなが考えていた地理と歴史というものが書いてある だからこのページ一つが一冊の地歴の本に当たるんだ
理解そしてこの中に書いてあることは紀元前2200年頃には大抵本当だ 探すと証拠も続々出ているけれどもそれが少しどうかなとこう考え出してごらん
そらそれは次のページだよ 紀元前1000年
だいぶ地理も歴史も変わっているだろう この時はこうなのだ変な顔してはいけない
僕たちは僕たちの体だって考えだって天の川だって記者だって歴史だってただそう 感じているのなんだから
そらご覧僕と一緒に少し心持ちを静かにしてごらん いいか
その人は指を一本を上げて静かにそれを下ろしました するといきなり序盤には自分というものが自分の考えというものが記者やその学者や天の川
やみんな一緒にポカッと光ってシーンとなくなって ポカッと灯ってまたなくなってそしてその一つがポカッと灯るとあらゆる広い世界が
ガランと開けあらゆる歴史が備わり すっと消えるともうガランとしたただもうそれっきりになってしまうのを見ました
だんだんそれが早くなって間もなくすっかり元の通りになりました さあいいかだからお前の実験はこの切れ切れの考えの始めから終わりすべてに渡るようでなければ
いけない それが難しいことなんだけれどももちろんその時だけのでもいいのだ
あごらんあそこにプレシオスが見える お前あのプレシオスの鎖を解かなければならない
その時真っ暗な地平線の向こうから青白いのろしがまるで昼間のように打ち上げられ 汽車の中はすっかり明るくなりました
そしてのろしは高く空にかかって光り続けました マジェランの声援だ
さあもうきっと僕は僕のために僕のお母さんのために カンパネルナのためにみんなのために本当の本当の幸福を探すぞ
ジョバンニは唇を噛んでそのマジェランの声援を望んで立ちました その一番幸福なその人のために
さあ切符をしっかり持っておいで お前はもう夢の鉄道の中でなしに本当の世界の日や激しい波の中を大股にまっすぐ歩いて
いかなければいけない 天の川の中でたった一つの本当のその切符を決してお前はなくしてはいけない
あのセロのような声がしたと思うとジョバンニは あの天の川がもうまるで遠く遠くなって風が吹き
自分はまっすぐ草の丘に立っているのを見 また遠くからあのブルカニロ博士の足音の静かに近づいてくるのを聞きました
ありがとう私は大変いい実験をした 私はこんな静かな場所で遠くから私の考えを人に伝える実験をしたいとさっき考えて
いた お前の言った後はみんな私の手帳にとってあるさあ帰っておやすみ
お前は夢の中で決心した通りまっすぐに進んでいくがいい そしてこれから何でもいつでも私のとこへ相談においでなさい
僕きっとまっすぐに進みますきっと本当の幸福を求めます ジョバンニは力強く言いました
ではさようならこれはさっきの切符です 博士は小さく折った緑色の紙をジョバンニのポケットに入れました
そしてもうその形は天気輪の柱の向こうに見えなくなっていました ジョバンニはまっすぐ走って丘を下りました
そしてポケットが大変重くカチカチなるのに気がつきました 林の中で止まってそれを調べてみましたらあの緑色のさっき夢の中で見た
怪しい天の切符の中に大きな2枚の金貨が包んでありました 博士ありがとう
お母さんすぐ父を持っていきますよ ジョバンニは叫んでまた走り始めました
何かいろいろなものがいっぺんにジョバンニの胸に集まって何とも言えず悲しいような 新しいような気がするのでした
コトの星がずーっと西の方へ移ってそしてまた夢のように足を伸ばしていました ジョバンニは目を開きました
元の丘の草の中に疲れて眠っていたのでした 胸はなんだかおかしくほてり
頬には冷たい涙が流れていました ジョバンニはバネのように跳ね起きました
街はすっかりさっきの通りに下でたくさんの明かりを綴ってはいましたがその光はなんだか さっきよりは熱したという風でした
そしてたった今夢で歩いた天の川もやっぱりさっきの通りに白くぼんやりかかり 真っ黒な南の地平線の上ではコトに煙ったようになってその右には
サソリ座の赤い星が美しくきらめき 空全体の位置はそんなに変わってもいないようでした
ジョバンニは一山に丘を走っておりました まだ夕ご飯を食べないで待っているお母さんのことが胸いっぱいに思い出されたのです
どんどん黒い松の林の中を通ってそれからほのじろい牧場の柵を回ってさっきの 入り口から暗い牛舎の前へまた来ました
そこには誰かが今帰ったらしくさっきなかった一つの車が何かの樽を2つ乗っけて おいてありました
こんばんは ジョバンニは叫びました
はい 白い太いズボンを履いた人がすぐ出てきて立ちました
何のご用ですか 今日牛乳が僕のところへ来なかったんですが
あーすみませんでした その人はすぐ奥へ行って1本の牛乳瓶を持ってきてジョバンニに渡しながらまた言いました
本当にすみませんでした今日は昼過ぎうっかりして 子牛の柵を開けておいたもんですから大将早速親牛のところへ行って半分ばかり飲んで
しまいましてねー その人は笑いました
そうですかではいただいていきます どうもすみませんでしたいいえ
ジョバンニはまだ熱い父の瓶を両方の手のひらで包むように持って牧場の柵を出ました そしてしばらく木のある街を通って大通りへ出てまたしばらく行きますと道は縦文字になって
その右手の方通りの外れにさっきカンパネーラたちの明かりを流しに行った川へかかった 大きな橋の矢倉が夜の隣ぼんやり立っていました
ところがその10時になった街角や店の前に 女たちが78人ぐらいずつ集まって橋の方を見ながら何かひそひそ話しているのです
それから橋の上にもいろいろな明かりがいっぱいなのでした 序盤にはなぜかさーっと胸が冷たくなったように思いました
そしていきなり近くの人たちへ何かあったんですか と叫ぶように聞きました
子供が水へ落ちたんですよ 一人が言いますとその人たちは一斉にジョバンニの方を見ました
ジョバンニはまるで夢中で橋の方へ走りました 橋の上は人でいっぱいで川が見えませんでした
白い服を着た巡査も出ていました ジョバンニは橋のたもとから飛ぶように下の広い河原へ降りました
その河原の水際に沿ってたくさんの明かりがせわしく登ったり下ったりしていました 向こう岸の暗い土手にも日が7つ8つ動いていました
その真ん中をもうカラス売りの明かりもない川がわずかに音を立てて灰色に静かに 流れていたのでした
河原の一番下流の方へ巣のようになって出たところに人の集まりが くっきり真っ黒に立っていました
ジョバンニはどんどんそっちへ走りました するとジョバンニはいきなりさっきカンパネルラと一緒だったマルソに会いました
マルソがジョバンニに走るよって言いました ジョバンニ、カンパネルラが川へ入ったよ
どうして? いつ?
ザンネリがね 船の上からカラス売りの明かりを水の流れる方へ押してやろうとしたんだ
その時船が揺れたもんだから水へ落っこったろう するとカンパネルラがすぐ飛び込んだんだ
そしてザンネリを船の方へ押して起こした ザンネリは加藤に捕まったけれどもあとカンパネルラが見えないんだ
みんな探してるんだろ? ああすぐみんな来た カンパネルラのお父さんも来た
けれども見つからないんだ ザンネリは家へ連れられてった ジョバンニはみんなのいるそっちの方へ行きました
そこに学生たちや街の人たちに囲まれて 青白い尖った顎をしたカンパネルラのお父さんが黒い服を着て
まっすぐに立って左手に時計を持ってじっと見つめていたのです みんなもじっと川を見ていました
誰も一言も物を言う人もありませんでした ジョバンニはワクワクワクワク足が震えました
魚を捕る時のアセチレンランプがたくさん忙しく行ったり来たりして 黒い川の水はちらちら小さな波を立てて流れているのが見えるのでした
下流の方の川幅いっぱい銀河が大きく映って まるで水のないそのままの空のように見えました
ジョバンニはそのカンパネルラはもうあの銀河の外れにしかいないというような気がして 仕方なかったのです
けれどもみんなはまだどこかの波の間から僕ずいぶん泳いだぞと言いながら カンパネルラが出てくるかあるいはカンパネルラがどこかの人の知らない巣に
でもついて立っていて誰かの来るのを待っているかというような気がして仕方ない らしいのでした
けれどもにわかにカンパネルラのお父さんがきっぱりいました もうダメです落ちてから45分経ちましたから
ジョバンニは思わず駆け寄って博士の前に立って僕はカンパネルラの行った方を知っています 僕はカンパネルラと一緒に歩いていたんですと言おうとしましたが
もう喉が詰まって何とも言えませんでした すると博士はジョバンニが挨拶に来たとでも思ったもんですか
しばらくしげしげジョバンニを見ていましたが あなたはジョバンニさんでしたねどうもこんばんはありがとう
と丁寧に言いました ジョバンニは何も言えずにただお辞儀をしました
あなたのお父さんはもう帰っていますか 博士は固く時計を握ったまままた聞きました
いいえ ジョバンニはかすかに頭を振りました
どうしたのかなぁ僕にはおととい大変元気な頼りがあったんだが 今日あたりもう着く頃なんだが船が遅れたんだな
ジョバンニさん明日放課後皆さんと家遊びに来てくださいね そう言いながら博士はまた川下の銀河のいっぱい映った方へじっと目を送りました
ジョバンニはもういろいろなことで胸がいっぱいで何も言えずに博士の前を離れて早く お母さんに牛乳を持って行ってお父さんの帰ることを知らせようと思うともう一目
お父さんに河原の町の方へ走りました 1969年発行 門川書店門川文庫