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2024-12-29 12:44

銀河鉄道の夜「六、銀河ステーション」/宮沢賢治

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作品名:銀河鉄道の夜
著者:宮沢賢治(みやざわけんじ)

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5・10・14
20・26・29日更新予定

#青空文庫 #朗読 #podcast

BGMタイトル: Maisie Lee
作者: Blue Dot Sessions
楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/
ライセンス: CC BY-SA 4.0
00:06
六、銀河ステーション
そして序盤にはすぐ後ろの天気林の柱が、いつかぼんやりした三角標の形になって、
しばらく火垂るのようにペカペカ消えたり灯ったりしているのを見ました。
それはだんだんはっきりして、とうとう凛と動かないようになり、
濃い光晴の空の野原に立ちました。
今新しく焼いたばかりの青い鋼の板のような、
空の野原にまっすぐにすきっと立ったのです。
するとどこかで不思議な声が、
銀河ステーション、銀河ステーション、
という声がしたと思うと、いきなり目の前がパッと明るくなって、
まるで億万のホタルイカの火をいっぺんに化石させて、空中に沈めたという具合。
またダイヤモンド会社で値段が安くならないために、
わざと取れないふりをして、隠して置いた金剛石を誰かがいきなりひっくり返してばらまいた、
というふうに、目の前がさーっと明るくなって、
ジョバンニは思わず何遍も目をこすってしまいました。
気がついてみると、さっきからごとごとごとごと、
ジョバンニの乗っている小さな列車が走り続けていたのでした。
本当にジョバンニは夜の軽便鉄道の、
小さな黄色の電灯の並んだ車室に、窓から外を見ながら座っていたのです。
車室の中は、青いビロードを張った腰掛けがまるでガラーキで、
向こうのネズミ色のワニスを塗った壁には、真鍮の大きなボタンが二つ光っているのでした。
すぐ前の席に、濡れたように真っ黒な上着を着た、
03:01
背の高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気がつきました。
そしてその子供の肩のあたりが、どうも見たことのあるような気がして、
そう思うと、もうどうしても誰だか分かりたくて、たまらなくなりました。
いきなりこっちも窓から顔を出そうとした時、
にわかにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。
それはカンパネルラだったのです。
ジョバンニが、「カンパネルラ、君は前からここにいたの?」と言おうと思った時、
カンパネルラが、「みんなはね、ずいぶん走ったけれども遅れてしまったよ。
ザネリもね、ずいぶん走ったけれども追いつかなかった。」
と言いました。ジョバンニは、
「そうだ、僕たちは今一緒に誘って出かけたのだ。」
と思いながら、「どこかで待っていようか。」
と言いました。
するとカンパネルラは、「ザネリはもう帰ったよ。お父さんが迎えに来たんだ。」
カンパネルラはなぜかそう言いながら少し顔色が青ざめて、どこか苦しいというふうでした。
するとジョバンニも、なんだかどこかに何か忘れたものがあるというようなおかしな気持ちがして黙ってしまいました。
ところがカンパネルラは窓から外を覗きながら、もうすっかり元気が治って、勢いよく言いました。
「ああ、しまった。僕、水筒を忘れてきた。 スケッチ帳も忘れてきた。
けれど構わない。もうじき白鳥の停車場だから。 僕、白鳥を見るなら本当に好きだ。
川の遠くを飛んでいたって僕はきっと見える。」
そしてカンパネルラは丸い板のようになった地図をしきりにぐるぐる回して見ていました。
06:00
まったくその中に白く表された天の川の左の岸に沿って
一筋の鉄道線路が南へ南へと辿っていくのでした。
そしてその地図の立派なことは、夜のように真っ黒な板の上にの停車場や三角標、
潜水や森が青や橙や緑や美しい光で散りばめられてありました。
ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たように思いました。
この地図はどこで買ったの? 黒曜石でできてるね。
ジョバンニが言いました。 銀河ステーションでもらったんだ。君、もらわなかったの?
ああ、僕、銀河ステーションを通ったろうか。 今、僕たちのいるとこ、ここだろう?
ジョバンニは白鳥と書いてある停車場の印のすぐ北を指しました。
そうだ、おや、あの河原は月夜だろうか。
そっちを見ますと青白く光る銀河の岸に銀色の空のすすきがもうまるで一面、
風にさらさらさらさら揺られて動いて波を立てているのでした。
月夜でないよ。銀河だから光るんだよ。
ジョバンニは言いながらまるで跳ね上がりたいくらい愉快になって、 足をコツコツならし、
窓から顔を出して、 高く高く星めぐりの口笛を吹きながら、
一生懸命伸び上がって、 その天の川の水を見極めようとしましたが、
はじめはどうしてもそれがはっきりしませんでした。 けれどもだんだん気をつけてみると、
その綺麗な水はガラスよりも水素よりも透き通って、
時々目の加減か、 チラチラ紫色の細かな波を立てたり、
虹のようにギラッと光ったりしながら、 声もなくどんどん流れていき、
09:03
野原にはあっちにもこっちにも林口の三角標が美しく立っていたのです。
遠いものは小さく、 近いものは大きく、
遠いものは橙や黄色ではっきりし、 近いものは青白く少し霞んで、
あるいは三角形、あるいは四辺形、 あるいは稲妻や鎖の形、
さまざまに並んで野原いっぱい光っているのでした。
序盤にはまるでドキドキして頭をやけに振りました。
すると本当にその綺麗な野原中の青や橙やいろいろ輝く三角標も、
天でに息をつくようにちらちら揺れたり震えたりしました。
僕はもうすっかり天の野原に来た。
序盤には言いました。
それにこの汽車、石炭を炊いていないね。
序盤にが左手を突き出して窓から前の方を見ながら言いました。
アルコールか電気だろう。
カンパネルラが言いました。
ごとごとごとごと、その小さな綺麗な汽車は、
空の鈴木の風にひるがえる中を、天の川の水や三角点の青白い美光の中を、
どこまでもどこまでもと走っていくのでした。
ああ、林道の花が咲いている。
もうすっかり秋だね。
カンパネルラが窓の外を指さして言いました。
線路の減りになった短い芝草の中に、
月長石ででも刻まれたような素晴らしい紫の林道の花が咲いていました。
僕、飛び降りて、合図をとって、また飛び乗って見せようか。
ジョバンニは胸を踊らせて言いました。
もうだめだ。あんなに後ろへ行ってしまったから。
カンパネルラがそう言ってしまうかしまわないうち、
12:04
次の林道の花がいっぱいに光って過ぎていきました。
と思ったら、もう次から次からたくさんの黄色な底を持った林道の花のコップが、
湧くように雨のように目の前を通り、
三角標の列は煙るように燃えるようにいよいよ光って立ったのです。
12:44

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