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2026-02-19 30:10

207芥川龍之介「杜子春」(朗読)

【作品】杜子春

【作者】芥川龍之介(1892-1927)

【あらすじ】唐の都・洛陽を舞台にした、金と人間愛をテーマにした寓話です。大金持ちになるも贅沢で全財産を使い果たした杜子春が、仙人の弟子となり、地獄の責め苦に耐える修業の末、冷酷な仙人よりも「人間として汗水垂らして働く幸せ」に目覚める物語です。

【こんな方に】寝る前に聴きたい / 名作文学 / 睡眠用BGM / 朗読 / 青空文庫 / 聴き流し


母の愛情

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00:07
寝落ちの本ポッドキャスト。 こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。 タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。 ご意見ご感想ご依頼は、公式Xまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。 また、別途投稿フォームもご用意しました。リクエストなどをお寄せください。
それから、まだしてないよというそこのあなた、ぜひ番組のフォローをよろしくお願いします。
そして最後に、おひねりを投げてもいいよという方、概要欄のリンクよりご検討いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いします。
さて、今日は芥川龍之介さんの杜子春です。
読み上げを始める前に、東京都にお住まいの方、東京都公式アプリはご存知ですか?
こちらとマイナンバーカードを連携させると1万1千円分のポイントがもらえるので、ぜひやってみてくださいね。
なぜ僕がこんなことを言うかというと、東京都の広報が足りてないなと思うので、
これ多分皆さんの税金から出てくるやつじゃないですか。
お知らせが届いてないぞという人多分いると思うんですよ。
僕のチャンネルは60歳以上の方が結構聞いてらっしゃるので、もしかしたら耳に届いてないかもなと思い、ちょっとお知らせです。
分からない方は若い人に聞いてみてください。
東京都のあのイチョウのマークのアプリを入れてマイナンバーカードを読み込むと1万1千分のポイントがもらえます。
以上お知らせでした。
徒長で働いている人でもなんでもないんですけどね。
一人でも多くの人に耳に届いてほしいなと思って。
70代80代とかの人にはなかなかね、届かないかもなとも思うわけですよ。
一人でも多くの人にと思っています。
それでは読んでいきましょうか。
都市春。文字数が1万字なので30分はかかんないかな。
どうかお付き合いください。
それでは参ります。
都市春1
ある春の日暮れです。
当の都、洛陽の西の門の下にぼんやり空を仰いでいる一人の若者がありました。
若者は名を都市春といって、元は金持ちの息子でしたが、今は財産を使い尽くしてその日の暮らしにも困るくらい哀れな身分になっているのです。
何しろその頃洛陽といえば天下に並ぶもののない繁盛を極めた都ですから、往来にはまだしっきりなく人や車が通っていました。
門一杯に当たっている油のような夕日の光の中に老人のかぶった車の帽子やトルコの女の金の耳輪や白馬に飾った色糸の手綱が絶えず流れていく様子はまるで絵のような美しさです。
03:05
しかし都市春は相変わらず門の壁に身を持たせてぼんやり空ばかり眺めていました。
空にはもう細い月がうらうらとなびいた霞の中にまるで爪の跡かと思うほどかすかに白く浮かんでいるのです。
日は暮れるし腹は減るし、その上もうどこへ行っても止めてくれるところはなさそうだし、こんな思いをして生きているくらいなら、いっそ川へでも身を投げて死んでしまったほうがマシかもしれない。
都市春は一人さっきからこんな取り留めのないことを思い巡らしていたのです。
すると、どこからやってきたか、突然彼の前へ足を止めた片目すがめの老人があります。
それが夕日の光を浴びて大きな影を門へ落とすと、じっと都市春の顔を見ながら、
「お前は何を考えているんだ?」と王兵に声をかけました。
「私ですか?私は今夜寝るところもないので、どうしたもんかと考えているんです。」
老人の尋ね方が急でしたから都市春はさすがに目を伏せて思わず正直な答えをしました。
そうか。それはかわいそうだな。
老人はしばらく何事か考えているようでしたが、やがて往来にさしている夕日の光を指差しながら、
「では、俺がいいことを一つ教えてやろう。
今、この夕日の中に立ってお前の影が地に映ったら、その頭に当たるところを夜中に掘ってみればいい。
きっと車にいっぱいの黄金が埋まっているはずだから。」
「本当ですか?」
都市春は驚いて伏せていた目を上げました。
ところがさらに不思議なことには、あの老人はどこへ行ったか、
もう辺りにはそれらしい影も形も見当たりません。
その代わり、空の月の色は前よりもなお白くなって、
休みない往来の人通りの上には、もう気の早いコウモリが三匹ひらひら待っていました。
都市春は一日のうちに洛陽の都でもただ一人という大金持ちになりました。
あの老人の言葉通り、夕日に影を映してみてその頭に当たるところを夜中にそっと掘ってみたら、
大きな車にも余るくらい黄金が一山出てきたのです。
大金持ちになった都市春はすぐに立派な家を買って、
元宗皇帝にも負けないぐらい贅沢な暮らしをし始めました。
乱両の酒を買わせるやら、慶州の竜眼肉を取り寄せるやら、
日に夜たび色の変わる牡丹を庭に植えさせるやら、
四六尺を何羽も放し飼いにするやら、
玉を集めるやら、二匹を縫わせるやら、
鉱木の車を作らせるやら、造木の椅子をあつらえるやら、
06:03
その贅沢をいちいち飼えていてはいつになってもこの話がおしまいにならないくらいです。
すると、こういう噂を聞いて、
今までは道で行き買っても挨拶さえしなかった友達などが朝夕遊びにやってきました。
それも一日ごとに数が増して半年ばかり経つうちには、
洛陽の都に名を知られた妻子や美人が多い中で、
都市春の家へ来ない者は一人もないぐらいになってしまったのです。
都市春はこのお客たちを相手に毎日酒盛りを開きました。
その酒盛りのまた盛んなことはなかなか口にはつくされません。
ごくかいつまんだだけお話ししても、都市春が金の杯に西洋から来た武道士を組んで、
天竺生まれの魔法使いが刀を飲んで見せる芸に見とれていると、
その周りには二十人の女たちが、十人は翡翠の蓮の花を、
十人は芽能の牡丹の花を、いずれも髪に飾りながら、
笛や琴を不思議面白く奏しているという景色なのです。
しかし、いくら大金持ちでもお金には債源がありますから、
さすがに贅沢化の都市春も、一年二年と経つうちにはだんだん貧乏になり出しました。
そうすると人間は迫上なもので、
昨日までは毎日来た友達も今日は門の前を通ってさえ挨拶一つしてゆきません。
ましてとうとう三年目の春、また都市春が以前の通り一文なしになってみると、
広い洛陽の都の中にも彼に宿を貸そうという家は一見もなくなってしまいました。
いや、宿を貸すどころか、今では湾に一杯の水も恵んでくれるものはないのです。
そこで彼はある日の夕方、もう一度あの洛陽の西の門の下へ行って、
ぼんやり空を眺めながら途方に暮れて立っていました。
するとやはり昔のように片目すがめの老人がどこからか姿を現して、
お前は何を考えているんだと声をかけるではありませんか。
都市春は老人の顔を見ると恥ずかしそうに下を向いたまましばらくは返事もしませんでした。
が老人はその日も親切そうに同じ言葉を繰り返しますから、
こちらも前と同じように、
私は今夜寝るところもないのでどうしたもんかと考えているんです。
とおそろおそろ返上しました。
そうか、それはかわいそうだな。では俺がいいことを一つ教えてやろう。
今この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったらその胸に当たるところを夜中に掘ってみるがいい。
きっと車に一杯の黄金が埋まっているはずだから。
老人はこう言ったと思うと今度もまだ人ごみの中へかき消すように隠れてしまいました。
都市春はその翌日からたちまち天下第一の大金持ちに帰りました。
09:00
と同時に相変わらずし放題な贅沢をし始めました。
庭に咲いているぼたんの花、その中に眠っているしろくじゃく、
それから刀を飲んでみせる天竺から来た魔法使い。
すべてが昔の通りなのです。
ですから車に一杯にあったあのおびただしい黄金も、
また三年ばかり経つうちにはすっかりなくなってしまいました。
片目すがめの老人は三度都市春の前へ来て同じことを問いかけました。
もちろん彼はその時も洛陽の西の門の下に細々と霞みを破っている三日月の光を眺めながらぼんやり佇んでいたのです。
私ですか。私は今夜寝るところもないので、どうしようかと思っているのです。
そうか、それはかわいそうだな。では俺がいいことを教えてやろう。
今この夕日の中へ立って、お前の影が地に映ったら、その腹に当たるところを夜中に掘ってみればいい。
きっと車に一杯の老人がここまで言いかけると都市春は急に手を挙げてその言葉を遮りました。
いや、お金はもういらないんです。
金はもういらない?ほほん、では贅沢をするにはとうとう飽きてしまったとみえるな。
老人はいぶかしそうな見つけをしながらじっと都市春の顔を見つめました。
なに、贅沢に飽きたんじゃありません。人間というものに愛想が尽きたんです。
都市春は不平そうな顔をしながらつっけんどんにこう言いました。
それは面白いな。どうしてまた人間に愛想が尽きたんだ。
人間はみんな白状です。私が大金持ちになったときには世辞も追悼もしますけれど、
一旦貧乏になってごらんなさい。優しい顔さえもしてみせはしません。
そんなことを考えると、たとえもう一度大金持ちになったところが何にもならないような気がするんです。
老人は都市春の言葉を聞くと急ににやにや笑い出しました。
そうか。いや、お前は若いもんに似合わず、関心にもののわかる男だ。
では、これからは貧乏をしても安らかに暮らしていくつもりか。
都市春はちょいとためらいました。が、すぐに思い切った目をあげると、
訴えるように老人の顔を見ながら。
それも今の私にはできません。
ですから、私はあなたの弟子になって戦術の修行をしたいと思うんです。
いえ、隠してはいけません。あなたは道徳の高い戦人でしょう。
戦人でなければ、一夜のうちに私を天下第一のお金持ちにすることはできないはずです。
どうか、私の先生になって不思議な戦術を教えてください。
老人は眉をひそめたまま、しばらくは黙って何事か考えているようでしたが、
12:02
やがてまたにっこり笑いながら。
いかにも俺はガビさんに住んでいる鉄管師という戦人だ。
はじめ、お前の顔を見たとき、どこか物分かりがよさそうだったから、
二度まで大金持ちにしてやったんだが、
それほど戦人になりたければ、俺の弟子に取り立ててやろう。
と、心よく願いを入れてくれました。
都市巡は喜んだの喜ばないのではありません。
老人の言葉がまだ終わらないうちに、
彼は第一に額をつけて何度も鉄管師にお辞儀をしました。
いや、そう、お礼などは言ってもらうまい。
いくら俺の弟子にしたところが立派な戦人になれるかなれないかは、
お前次第で決まることだからな。
が、ともかくもまず俺と一緒にガビさんの奥へ来てみるがいい。
おお、幸いここに竹杖が一本落ちている。
では早速これへ乗ってひとっ飛びに空を渡るとしよう。
鉄管師はそこにあった青竹を一本拾い上げると、
口の内に呪文を唱えながら都市巡と一緒にその竹へ馬にでも乗るようにまたがりました。
すると不思議ではありませんか。
竹杖はたちまち龍のように勢いよく大空へ舞い上がって、
晴れ渡った春の夕空をガビさんの方角へ飛んで行きました。
都市巡は肝をつぶしながら恐る恐る下を見下ろしました。
が、下にはただ青い山々が夕明かりの底に見えるばかりで、
あの洛陽の都の西の門はとうに霞みに紛れたんでしょう。
どこを探しても見当たりません。
そのうちに鉄管師は白い瓶の毛を風に吹かせて高らかに歌を歌い出しました。
明日に北海に遊び、暮れには草後。
修理のせいだ、短期そなり。
見たび学業にいれども人知らず。
二人を乗せた青竹は間もなくガビさんへ舞い下がりました。
そこは深い谷に臨んだ幅の広い一枚岩の上でしたが、
よくよく高いところだと見えて、
中空に垂れた北斗の星が茶碗ほどの大きさに光っていました。
もとより人跡の絶えた山ですから。
辺りはしんと静まり返って、やっと耳に入るものは
後ろの絶壁に生えている曲がりくねった一株の松が
高高と夜風になる音だけです。
二人がこの岩の上に来ると、鉄管師は都市春を絶壁の下に座らせて、
俺はこれから天上へ行って西黄房に午前にかかってくるから、
お前はその間ここに座って俺の帰るのを待っているがいい。
たぶん俺がいなくなると、いろいろなマショボが現れてお前をたぶらかそうとするだろうが、
たといどんなことが起ころうとも決して声を出すのではないぞ。
もし一言でも口を聞いたら、お前は到底千里にはならないものだと覚悟しろ。
いいか。天地が裂けても黙っているんだぞ。
と言いました。
大丈夫です。決して声などは出しません。
命がなくなっても黙っています。
そうか。それを聞いて俺も安心した。では俺は行ってくるから。
15:03
老人は都市春に別れを告げると、またあの竹杖にまたがって、
嫁にも削ったような山々の空へ一文字に消えてしまいました。
都市春はたった一人、岩の上に座ったまま静かに星を眺めていました。
すると、かれこれ半時ばかり経って新山の八木が肌寒く薄い着物に通り出した頃、
突然空中に声があって、
そこにいるのは何者だとしっかりつけるではありませんか。
しかし都市春は千人の教え通り何とも返上しずにいました。
ところがまたしばらくするとやはり同じ声が響いて、
返上しないと立ちどころに命はないものと覚悟しろ、
といかめしく脅しつけるのです。
都市春はもちろん黙っていました。
と、どこから登ってきたか、乱々と目を光らせた虎が一匹、
突然と岩の上に躍り上がって都市春の姿を睨みながら一声高く叫びました。
のみならず、それと同時に頭の上の松の枝が激しくざわざわ揺れたと思うと、
後ろの絶壁の頂からは人だるほどのハクダが一匹、
炎のような舌を吐いてみるみる近くへ降りてくるのです。
都市春はしかし平然と眉毛も動かさずに座っていました。
虎と蛇とは一つ餌食を狙って互いに好きでも伺うのか、
しばらくは睨み合いの体でしたが、
やがてどちらが先ともなく、一時に都市春に飛びかかりました。
が、虎の牙に噛まれるか、蛇の舌に飲まれるか、
都市春の命は瞬くうちに亡くなってしまうと思ったとき、
虎と蛇とは霞のごとく夜風と共に消え失せて、
後にはただ絶壁の松がさっきの通り高々と枝を鳴らしているばかりなのです。
都市春はほっと一息しながら、今度はどんなことが起こるかと心待ちに待っていました。
すると一陣の風が吹き起こって、
炭のような黒雲が一面にあたりを閉ざすや否や
薄紫の稲妻が谷庭に闇を二つに裂いてすさまじく雷が鳴り出しました。
いや、雷ばかりではありません。
それと一緒に滝のような雨もいきなり堂々と降り出したのです。
都市春はこの天辺の中に恐れいげもなく座っていました。
風の音、雨のしべき、それから絶え間ない稲妻の光。
しばらくはさすがのガビ山も覆えるかと思うくらいでしたが、
そのうちに耳をもつんざくほど大きな雷鳴がとどろいたと思うと、
空に渦巻いた黒雲の中から真っ赤な一本の火柱が都市春の頭へ落ちかかりました。
都市春は思わず耳をおさえて一枚岩の上へひれ伏しました。
が、すぐに目を開いてみると空は以前の通り晴れ渡って、
向こうにそびえた山々の上にも茶碗ほどの北斗の星がやはりきらきら輝いています。
してみれば今の大嵐もあの虎や白蛇と同じように、
鉄管紙の留守をつけ込んだ魔晶の手伝いに違いありません。
都市春はようやく安心して額の冷や汗を拭いながらまた岩の上に座り直しました。
18:03
が、そのため息がまだ消えないうちに今度は彼の座っている前へ、
金の鎧を着下した身の丈三乗もあろうというおごそかな心象が現れました。
心象は手に三股の矛を持っていましたが、
いきなりその矛の切先を都市春の胸元へ向けながら目を怒らせて叱りつけるのを聞けば、
ほら、その方は一体何者だ。
この神山という山は天地開拓の昔から俺が住まいをしているところだぞ。
それもはばからずたった一人、ここへ足を踏み入れるとは、よもやただの人間ではあるまい。
さあ、命が惜しかったら一刻も早く返答しろ、というのです。
しかし都市春は老人の言葉通り黙念と口をつぐんでいました。
返事をしないか。
うーん、しないな。
よし、しなければしないで勝手にしろ。
その代わり、俺の眷族たちがその方をズタズタに切ってしまうぞ。
心象は矛を高くあげて向こうの山の空を招きました。
その途端に闇がさっと裂けると、驚いたことに無数の神兵が雲のごとく空に満ち満ちて、
それが皆、矢や刀をきらめかせながら、今にもここへ人なだりに攻めようとしているのです。
この景色を見た都市春は思わずあっと叫びそうにしましたが、
すぐにまた鉄漢詩の言葉を思い出して一生懸命に黙っていました。
心象は彼が恐れないのを見ると怒ったの怒らないのではありません。
この豪情者め。どうしても返事をしなければ約束通り命は取ってやるぞ。
心象は、こう喚くが早いか三股の矛をひらめかせて一突きに都市春を突き殺しました。
そして、がびさんも淀むほどカラカラと高く笑いながらどこともなく消えてしまいました。
もちろんこの時はもう無数の神兵も吹き通る夜風の音と一緒に夢のように消え失せた後だったのです。
北斗の星はまた寒そうに一枚岩の上を照らし始めました。
絶壁の松も前に変わらず高々と枝を鳴らしていますが、都市春はとうに息が絶えて仰向けにそこへ倒れていました。
都市春の体は岩の上仰向けに倒れていましたが、都市春の魂は静かに体から抜け出して
地獄の底へ降りていきました。
この世と地獄との間には安潔堂という道があって、そこは年中暗い空に氷のような冷たい風がピューピュー吹き荒んでいるのです。
都市春はその風に吹かれながらしばらくはただ木の葉のように空を漂っていきましたが、
やがて神羅殿という額のかかった立派な御殿の前へ出ました。
御殿の前にいた大勢の鬼は都市春の姿を見るや否やすぐにその周りを取り巻いて木座橋の前へ引き据えました。
木座橋の上には一人の王様が真っ黒な着物に金の冠をかぶっていかめしくあたりを睨んでいます。
これはかねて噂に聞いた閻魔大王に違いありません。
都市春はどうなることかと思いながら恐る恐るそこへ跪いていました。
21:02
「ほら、その方は何のために神羅殿の上に座っていた?」
閻魔大王の声は雷のように木座橋の上から響きました。
都市春は早速その問いに答えようとしましたが、
ふとまた思い出したのは、決して口を聞くなという鉄漢詩の戒めの言葉です。
そこで、ただ頭を垂れたまま推しのように黙っていました。
すると閻魔大王は持っていた鉄の尺を上げて顔中の髭を逆立てながら、
「その方はここをどこだと思う。速やかに返答をすればよし。ざまなければ時を打ちさず地獄の果食に合わせてくれるぞ。」といたけだかに罵りました。
が、都市春は相変わらず唇一つ動かしません。
それを見た閻魔大王はすぐに鬼どもの方を向いて、荒々しく何かを言いつけると、
鬼どもは一度にかしこまってたちまち都市春を引き立てながら神羅殿の空へ舞い上がりました。
地獄には誰でも知っている通り、剣の山や血の池の他にも灼熱地獄という炎の谷や、
極寒地獄という氷の海が真っ暗な空の下に並んでいます。
鬼どもはそういう地獄の中へ蛙がある都市春を放り込みました。
ですから都市春は無惨にも剣に胸を貫かれるやら、炎に顔を焼かれるやら、舌を抜かれるやら、皮を剥がれるやら、
鉄の木根につかれるやら、油の鍋に煮られるやら、毒蛇に脳みそを吸われるやら、熊鷹に目を喰われるやら、
その苦しみを数え立てていては到底再現がないくらいあらゆる戦略に合わされたのです。
それでも都市春は我慢強く、じっと歯を食いしばったまま一言も口を聞きませんでした。
これにはさすがの鬼どもも飽きて帰ってしまったのでしょう。
もう一度夜のような空を飛んで神羅殿の前へ帰ってくると、
さっきのとおり都市春を木座橋の下に引き据えながら御殿の上の閻魔大王に、
この際にはどうしても物を言う景色がございません。と口を揃えて言上しました。
閻魔大王は眉をひそめてしばらく思案に暮れていましたが、やがて何か思いついたとみえて、
この男の父母は畜生動に押しているはずだから、さっそくここへ引き立てて来い、と一匹の鬼に言いつけました。
鬼はたちまち風に乗って地獄の空へ舞い上がりました。
と思うとまた星が流れるように二匹の獣を駆り立てながら、さっと神羅殿の前へ降りてきました。
その獣を見た都市春は驚いたの驚かないのではありません。
なぜかといえばそれは二匹とも形は見そばらしい野生馬でしたが、顔は夢にも忘れない死んだ父母の通りでしたから。
ほら、その方は何のために神羅殿の上に座っていたか、まっすぐに白状しなければ、今度はその方の父母に痛い思いをさせてやるぞ。
都市春はこう脅されてもやはり返答しずにいました。
この不幸者めが、その方は父母が苦しんでも、その方さえ都合が良ければいいと思っているんだな。
エマ大王は神羅殿も崩れるほど凄まじい声で喚きました。
撃て、鬼ども。その二匹の畜生を、肉も骨も打ち砕いてしまえ。
鬼どもは一斉にハッと答えながら鉄の鞭を取って立ち上がると、四方八方から二匹の馬を未練未釈なく打ちのめしました。
24:06
鞭はりゅうりゅうと風を切って、所を嫌わず雨のように馬の皮肉を打ち破るのです。
馬は。
畜生になった父母は苦しそうに身をもだえて、目には血の涙を浮かべたまま見てもいられないほど稲泣き立てました。
どうだ、まだその方は白状しないか。
エマ大王は鬼どもにしばらく無知の手をやめさせて、もう一度都市春の答えを促しました。
もうその時には二匹の馬も肉は裂け、骨は砕けて息も絶え絶えに膝端の前へ倒れ伏していたのです。
都市春は必死になって鉄漢詩の言葉を思い出しながら固く目をつぶっていました。
するとその時彼の耳にはほとんど声とは言えないくらいかすかな声が伝わってきました。
心配をおしでない。私たちはどうなってもお前さえ幸せになれるのなら、つよより結構なことはないのだからね。大王が何とおっしゃっても言いたくないことは黙っておいで。
それは確かに懐かしい母親の声に違いありません。
都市春は思わず目を開きました。そうして馬の一匹が力なく地上に倒れたまま、からしそうに彼の顔へじっと目をやっているのを見ました。
母親はこんな苦しみの中にも息子の心を思いあって鬼どもの無知に討たれたことを恨む景色さえも見せないのです。
大金持ちになればお世辞を言い、貧乏人になれば口も聞かない世間の人たちと比べると何というありがたい志でしょう。何というけなけな決心でしょう。
都市春は老人の忌ましめも忘れて学ぶようにその側へ走り寄ると、両手に半死の馬の首を抱いて、はらはらと涙を落としながら、
「おっかさん。」と一声を叫びました。
六。
その声に気がついてみると、都市春はやはり夕日を浴びて、洛陽の西の門の下にぼんやり佇んでいるのでした。
霞んだ空、白い三日月、絶え間ない人や車の波、すべてがまだガビさんへ行かない前と同じことです。
「どうだな。俺の弟子になったところが、とても仙人にはなれはすまい。」
片目すがめの老人は微笑を含みながら言いました。
「なれません。なれませんが、しかし私はなれなかったこともかえってうれしい気がするんです。」
都市春はまだ目に涙を浮かべたまま、思わず老人の手を握りました。
いくら仙人になれたところが、私はあの地獄の神羅殿の前に無知を受けている父母を見ては、黙っているわけにはいきません。
「もしお前が黙っていたら。」と鉄管師は急におごそかな顔になってじっと都市春を見つめました。
「もしお前が黙っていたら、俺は即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。
お前はもう仙人になりたいという望みも持っていまい。大金持ちになることはもとより愛想が尽きたはずだ。
では、お前はこれからのち何になったらいいと思うな。
27:04
何になっても人間らしい正直な暮らしをするつもりです。」
都市春の声には今までにない晴れ晴れとした調子がこもっていました。
「その言葉を忘れるなよ。では、俺は今日限り二度とお前には会わないから。」
鉄管師はこういううちにもう歩き出していましたが、急にまた足を止めて都市春の方を振り返ると、
「おお、幸い今思い出したが、俺は大山の南の麓に一軒の家を持っている。
その家を畑ごとお前にやるから、さっそく行ってすまうがいい。
今頃はちょうど家の周りに桃の花が一面に咲いているだろう。」
と、さも愉快そうに付け加えました。
1968年発行 新庁舎 新庁文庫 蜘蛛の糸 都市春
より独了 読み終わりです。
珍しくハッピーエンドでしたね。
芥川くんは大体バッドエンドで終わるんですけどね。
お母さんの愛情を感じた人、これからは人間らしく暮らしていくというエンドでしたが、
芥川くん自身はお母さんを10歳ぐらいの頃に亡くしていて、
しかもお母さんは精神があれだったのか脳があれだったのか、
ちょっと様子がおかしい、気が触れているお母さんをずっと見ていたという、
その愛情不足な芥川くんがあったはずので、
それをもとにこれを書いていると思うと、なかなかうーんという感じがしますね。
昨日、近所の居酒屋で飲んでたんですけど、
その男の子の店員さんがですね、一緒にポッドキャストをやっているんですけど、
一緒にやっているというか、僕が監修して番組やってもらっているんですけど、
お手伝いしているんですけど、僕が。
その男の子が居酒屋でバイトしていて、
本業芸人さんなんですけど、バイトしていて、
営業中に一人で来た香原氏お姉さんと話をしたら、
意外と息統合して、お姉さんから連絡先を聞かれたと喜んでいました。
え、マジ?と言って、すげえ良かったじゃんと言って、青春じゃんと言って、
彼は28かな、9かな、
女性は26、27とか言っていたような気がしますけど。
僕は見ていないんですけどね。
そんな勝手に幸せな気持ちになっていました。
良かったねーっつって。
予定、今度ご飯食べに行くことになったらしいんですけど、
すぐ予定空いてますって言うとガッついているように思われちゃうと思って、
再来週にしましたって言っていました。
かわいいね。
2人の恋の行方を見守りたいと思います。
では、お連れにしていきましょう。
無事に寝落ちできた方も、最後までお付き合いいただけた方も大変にお疲れ様でした。
30:02
といったところで、今日のところはこの辺で。
また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
30:10

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