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2025-09-25 17:31

167小酒井不木「死体蝋燭」(朗読)

167小酒井不木「死体蝋燭」(朗読)

人間で作った蝋燭。

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サマリー

小酒井不博の「人間蝋燭」は、恐怖に満ちた嵐の夜に和尚が過去の罪を告白する物語である。主人公は人肉を使ってロウソクを作り、その匂いに依存して恐ろしい行動に至る。小酒井不木の作品は、恐怖と絶望に満ちた状況の中で和尚と方針の緊迫した対話を描いている。また、物語は命の危機を乗り越えるための選択を迫られる方針と、その背後に潜む陰謀に焦点を当てている。

恐ろしい嵐の夜
寝落ちの本ポッドキャスト。 こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。 タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。 エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。 ご意見ご感想ご由来は、公式Xまでどうぞ。
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さて今日はですねー 小坂井不博さんという方の死体ロウソクです。
小坂井不博さんは何個か読んだことあるんだけど、何を読んだか忘れたなぁ。 ちょっと調べてくるか。
心理試験序っていう江戸川乱歩から依頼された序文の 書きましたというエッセイを読んだんだな。
作品を読むのは初めてかもしれませんね。 初めてでしょうね。
歴を読む死体ロウソクですが、 嵐の夜に和尚が語る世にもおぞましい話。
それを聞いた古坊主の辿る恐るべき末路。 仏の教えも業の深さの前には無力と思い知る残酷な物語。
心してお読みくださいというレビューがついています。
和尚の告白
文字数は5400文字なのでサクッと終わるでしょうという感じですね。 10分15分ぐらいじゃないですか。
でも怖いんでしょうね。 猫が鳴いてるな。
それでは参りますか。心してお聞きください。 それでは参ります。
死体ロウソク
酔いから勢いを増した風は、怪獣の上に吠えるような音を立てて、 栗、本堂の胸をかすめ、
大地を崩さむばかりの雨は時々砂つぶてを投げつけるように戸を叩いた。 円板という円板。
柱という柱がすすり泣くような声を発して、 屋台は宙に浮かんでいるかと思われるほど揺れた。
夏から秋へかけての嵐の特徴として、 庫内の空気は行き詰まるように蒸し暑かった。
その蒸し暑さは一層人の神経を苛立たせて、嵐のもの凄さを拡大した。 だから今年十五になる古坊主の方針が、天井から落ちてくるすすに肝を冷やして、
部屋の隅に一時困っているのも無理はなかった。 方針。
隣の部屋から呼んだ和尚の声にビリッと体を震わせて、 あたかも恐ろしい夢から覚めたかのように彼はその目を据えた。
そしてしばらくの間返答することはできなかった。 方針。
一層大きな和尚の声が呼んだ。 あ、はい。
お前ご苦労だがいつもの通り本堂の方を見回ってきてくれないか。 言われて彼はぎくりとして身をすくめた。
常ならば気楽な二人妻がこうした時には恨めしかった。 この恐ろしい嵐の時にどうして一人きり戸締りを見に出かけられよう。
あの和尚さんは、 と彼はやっとのことで声を絞り出した。
なんだ。 今夜だけは…。
ふんふんふんふん。 と和尚の高笑いする声が聞こえた。
恐ろしいというのか。よし、それではわしも一緒に行くからついてこい。 方針は引きずられるようにして和尚の部屋に入った。
いつの間に用意したのか、所見していた和尚は、 手職のろうそくに火を点じて先に立って本堂の方へ歩いていった。
五十を越したであろう年配の、ろうそくの淡い明かりによって、 前、火砲から照らし出されたやせ顔は、
どくろを思わせるように気味が悪かった。 本堂に入ると、明かりはなびくように揺れて、二人の影は天井にまで踊り上がった。
空気はどんよりと濁って、あたかも果てしのないホラーの中へでも踏み込んだように感じられ、
方針は二度と再び無事では帰れないのではないかという危惧の念をさえ起すのであった。
正面にあんざまします人間体の黒い阿弥陀如来の像は、 和尚の差し出したろうそくの火に一層いかめしく照らし出された。
和尚が念仏を唱えてしばらくその前に立ち止まると、 銀色の仏具は思い思いに揺れる日陰を反射した。
コウロ、灯明皿、植台、花瓶、 木刻金色の蓮華をはじめ、
守美団、経月絵、 祭禅箱などの金具が名の知れぬ昆虫のように輝いて、
その数々の仏具の間に何かしら恐ろしい怪物、 例えば巨大なコウモリがべったり羽を広げて隠れているかのように思われ、
法神の股の筋肉は一人でに震え始めた。 和尚は再び歩き出したが、さすがの和尚にもその不気味さは伝わったらしく、
前よりも早めに進んで一通り閉じまりを見回ると、 青白い顔をしてほっとしたかのようにため息をついた。
しかし和尚は何を思ったか、再び恐ろしい本動に引き返した。 そして阿弥陀如来の前に来たかと思うと、
真下にあたる御行の座に着き、 手食を片腹に置いていった。
「法神、礼拝だ。」 法神はカラクリ人形のようにその場にひれ伏した。
しばらく和尚と共に念仏を唱えて、やがて顔を挙げると、 如来の慈悲忍肉の口眼は一層ニューマの色を増し、
嵐にも同時たまわぬ崇高さがかえって、 法神を夢のような恐怖の世界に引き入れた。
「恐ろしい風だな。」 和尚の言葉に法神はどきりとした。
「時に、法神。」 しばらくの後、和尚は突然改まった口調で法神の方に向き直って行った。
「今夜、わしは阿弥陀様の前でお前に懺悔をしなければならんことがある。 わしは今、世にも恐ろしいわしの罪をお前に白状しようと思う。
幸い、この嵐では誰に聞かれる憂いもない。 耳をさらえてよく聞いておくれよ。」
和尚はその目をぎどりと輝かして一段声を高めた。
「実はな、お前はわしを徳の高い坊主だと思っているかもしれんが、 わしは阿弥陀様の前ではじっとして座っておれんくらいの
破壊無惨の犬畜生にも劣る悪人だよ。」
「え?」
あまりに意外な言葉に法神は思わず叫んで、化石したかのように全身の筋肉をほわばらせ、 和尚の顔を穴の湧くほど眺めた。
「わしはな、人を殺した大悪人だ。 さあ驚くのも無理はないが、お前がこの寺に来る前に雇ってあった
良人という小坊主はあれば、わしが殺したのだ。」
「う、嘘です。嘘です和尚様。それは嘘です。 どうぞそんな恐ろしいことはもう言わないで下さい。」
「いや、ほんとだよ。阿弥陀様の前では嘘は言わん。 良人は表向きは病気で死んだことになっているが、 その実はわしが手をかけて死なせたのだ。
それには訳があるのだよ。深い訳があるのだよ。 その訳というのは誠に恥ずかしいことだけれども、
これだけはどうしてもお前に聞いてもらわねばならん。 わしは坊主となって40年、その間ずいぶん人間の焼ける匂いを嗅いだ。
はじめはあまり心地の良いものではなかったが、だんだん歳をとるに従って、 嗅う匂いがたまらなく好きになったのだ。
そうしてしまいには、人間の脂肪の焼ける匂いを一日でも嗅がぬ日があると、 なんだかこう胸の中がかきむしりたくなるようなイライラした気持ちになって、
じっとして座っていることすらできなくなったのだ。 浅ましいことだと思ってもどうにも致し方がない。
魚を焼いても牛肉を焼いても、その匂いは決してわしを満足させてくれん。 あの下曲りの花の毒々しい色を思わせるような人肉の焼ける匂いは、とても他の匂いでは真似ができん。
お前はわしがこの間貸してやった天月物語の青ずきんの話を覚えているだろう。
同時に恋をした坊主が、同時に死なれて悲しさの余り、その肉を食いつくし、 それからそれに味を覚えて、後には里の人々を殺しに出たというあの話を。
わしはちょうどあの通りに人海の鬼となったのだ。 そしてとうとうそのために良順を殺すようなことになったのだ。
良順がしばらく病気をしたのを幸いに、わしはひそかに毒を与えて首尾よく彼を殺してしまった。 まさかわしが殺したとは誰も思わないから、ちっとも疑われずに葬式を出した。
しかし彼が焼かれる前に彼の肉はことごとくわしのために切り取られたのだ。 そうしてそのことはもとより誰も知るはずがなかったのだ。
それからわしがその良順の肉をどうしたと思う。 さすがにわしもたびたび人を殺すのは嫌だから、なるべく長い間彼の肉の焼ける匂いを嗅ぎたいと思ったのだよ。
そこでいろいろと考えた結果、ふと妙案を思いついたのだ。 それは他でもない。その肉の脂肪からロウソクを作ろうと考えたのだ。
過去の罪の影
ロウソクならば坊主の身として朝晩それを仏殿で燃やして匂いを嗅ぎ、 誰に怪しまれることもない。
それにロウソクにしておけばかなり長い間楽しむことができる。 こう思ってわしはひそこに手ずからロウソクを作ったよ。
ふつうのロウの中へ良順の脂肪を溶かしこんで、わしはたくさん思い通りのものを作った。 そうして毎日わしはもったいなくも、
ゴン行の際にそのロウソクを燃やしてわしの犬畜生にも劣る欲を満足させておった。 時にはゴン行以外の檻にもロウソクを燃やして楽しんだことがある。
だが今日まで仏罰にも当たらず暮らしてきた。 思えば恐ろしいことだった。
ところが方針、わしの作ったロウソクには限りがある。 毎日一本ずつ燃やしても一年かかれば三百六十五本なくなる。
だんだんロウソクがなくなっていくにつれて、わしは言うに言えぬもどかしさを覚えたよ。 この二三日、わしは何とも言えぬやるせない心細さを感じてきた。
これでは何とかしなければならんと、方針、わしは食べ物も喉を通らぬくらい考え込んだのだ。 ここに今燃えているのが良順の脂肪で作ったロウソクのおしまいだ。
わしは戦国から気が気でないのだ。方針、わしは良順の代わりが欲しくなった。 わしは方針、お前を殺したくなった。
こら、何をする。逃げようとしたってもうだめだ。 この嵐は人を殺すに屈強の時だ。
これ、泣くな。泣いたとて喚いたとて誰にも聞こえやせん。 お前はもう蛇に生み込まれたカエルも同然だ。
潔く覚悟してくれ。な、わしの心を満足させてくれ。 これ、どうかわしの不思議な心を楽しませるロウソクとなってくれ。
よう。 和尚に腕をつかまれた方針は、絶大な恐怖のためにもはや泣き声を立てることすらできず、その場に水飴のようにうずくまってしまった。
でも今が生死の別れ目と思うと、その心は最後の頼みの綱を求めて、思わず短願の言葉となった。
和尚様、どうぞ勘弁して下さいませ。私は死にたくありません。 どうぞどうぞ、命をお助け下さいませ。
和尚は悪魔の笑いをとった。 その時、嵐は一層強く本堂をゆすぶった。
これ、この声になってお前がいくら何と言ってもわしはもう容赦しない。 さあ、覚悟をせ。
こう言ったかと思うと和尚は腰のあたりに手をやって、ピカリとするものを取り出した。
ああ、和尚様、和尚です。どうかその刃物だけは、どうかごめんなされて下さいませ。 私は嫌です。殺されては困ります。
この言葉を聞くなり、和尚は振り上げた腕をそのまま静かに下した。 お前はそれほど命が欲しいのか?
はい。 方針は手を合わせて和尚を拝んだ。
それでは、お前の命は助けてやろう。 その代わり、わしの言うことを何でも聞くか?
はい。どんなことでもします。 きっとだな。
はい。 そうなら、わしの人殺しを手伝ってくれるか?
え? お前を助ければ、その代わりの人を殺さんやならん。その手伝いをお前はするか?
そ、そんな恐ろしいこと… できんというのか?
でも… それならば、潔く殺されるか?
ああ、和尚様… どうだ?
ど、どんなことでもいたします。 手伝ってくれるか?
はい。 よし、それではこれからすぐに取り掛かる。
え? これから人殺しをするんだ。
どこで? ここで。
だ、誰を殺すんですか? 和尚は返答する代わりに殺気に満ちた顔をして、左手で阿弥陀如来の方を指した。
それでは、あの阿弥陀様を? そうではない。あの孫像の後ろには今、この嵐に乗じて、この寺に忍び入った最善泥棒が隠れているのだ。
それをお前の身代わりにするのだ。さあ来い。 和尚は立ち上がった。
和尚が立ち上がらぬ前にそこに異様な光景が現れた。 阿弥陀如来の後ろから巨大なネズミのような真っ黒な怪物がさっと飛び出して、
辺りの者を蹴散らかし、一目散に逃げ出していった。 和尚がそれを覆面の泥棒だと知るには幾秒間の時間を要した。
やっ、和尚様… 不思議にもその時恐怖を忘れた彼が、こう叫んで泥棒の後から駆け出そうとすると、
和尚はぎゅっと彼の腕をつかみ、今までとは似ても似つかぬ優しい顔をしていった。
捨てておけ。逃げた者は逃がしておけ。 だが方針、勘にしてくれよ。今のわしの話した老族の一件は、あれはわしがとっその間にこしらえた話だよ。
ロウソクの秘密
さきわしは阿弥陀様の後ろにちらっと動く者を見たので、さては泥棒がこの嵐に乗じて最善を盗みに来たのだと知ったが、
うっかり喚いては戦法がどんなことをするかもしれぬと思ったから、これは策略で追い散らすより他はないと考えたのだよ。
刀でも振り回された日には二人とも殺されてしまうかもしれないからなぁ。
でも幸いに泥棒もわしの話を本当だと思って逃げていった。
何、このロウソクは普通のものだよ。良人は病気で死んだに間違いない。
いずは今夜、わしは天月物語を読んでいたのだ。それから思いついたのだ、お前をびっくりさせたあの話を。
こう言って右手に持った光るものを差し出し、さらに続けた。
お前が刃物だと言ったのはこのセンスだよ。恐ろしい時には物が間違って見える。きっとあの泥棒もこれを刃物だと思ったに違いない。
嵐は依然として狂いたけった。
1998年発行。門川春樹事務所。春樹文庫。
怪奇探偵小説集①。より読量読み終わりです。
なーんだ。
なーんだって感じですね。 そっかそっか。
心してお読みくださいみたいなレビューが振ってあったから、逆に何だよちゃんとロウソク作れよと思ったけどね。
新しいコボーズでロウソク作れよって思っちゃいましたけどいかがでしょうか。 やっぱ短かったですね。
16分ぐらい。
前回写用に取り掛かったんで、ザザヤオサムさんの長かったんで、これぐらい短いとちょっと物足りなさもありますね。
たまにはこういう回もあっていいか。 はい、それでは終わりにしましょうか。
無事に寝落ちできた方も最後までお付き合いいただいた方も大変お疲れ様でした。 といったところで今日のところはこの辺で。また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
17:31

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