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2025-04-24 13:28

124梶井基次郎「愛撫」

124梶井基次郎「愛撫」

猫の体はワンダーランドです。今回も寝落ちしてくれたら幸いです。


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サマリー

このエピソードでは、梶井基次郎のエッセイ「愛撫」をもとに、猫の耳や爪に関する興味深い観察が展開されます。猫の生態やその不思議さについて考えさせられるストーリーが展開され、最終的に猫に対する愛情と皮肉が交錯する内容になっています。

ポッドキャストの目的
寝落ちの本ポッドキャスト、おまわ、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。
タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。
エッセイには、面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。
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また、最近別途投稿本もご用意しました。合わせてご利用ください。
それと最後に、番組フォローもどうぞよろしくお願いします。
さて、今日は、梶井基次郎さんの愛撫というテキストを読もうと思います。
内側の話で恐縮ですが、
収録のアプリケーション、
これはなんてやつだっけな、
なんとか365、
オーディオディレクターだ。
これをバージョンアップしたら、ちょっと勝手が変わっていて、
うまく使いこなせない感じが、ちょっと不安なんで、
その不安もありつつ、日数も足りなさつつ、
ということで、短めのテキストを読もうと思って、
今回はこれをピックアップしました。
梶井基次郎さん、以前レモンというのを読んだことがありますが、
これが一番有名で、
若くして亡くなられた方で、
合計20ペンぐらいの短編のテキスト、あれは小説なのかな、
を残して亡くなられているということですね。
文字数でいうと3000文字ぐらいなんで、
10分かからないですかね。
こんなに短いのはあまり読んでこなかったんですが、
今日はピンチヒッター的に読もうと思います。
それでは参ります。
愛部。
猫の耳というものは、まことにおかしなものである。
薄べったくて、冷たくて、
竹のこの皮のように、表には絨毛が生えていて、裏はピカピカしている。
硬いような柔らかいような、何とも言えない一種特別の物質である。
私は子供の時から猫の耳というと、一度切っぷ切りでパチンとやってみたくてたまらなかった。
これは残酷な空想だろうか。
否。全く。猫の耳の持っている一種不可思議な視察力によるのである。
私は、家へ来たある金元な客が、膝へ上がってきた子猫の耳を話ししながらしきりにつねっていた光景を忘れることができない。
このような疑惑は思いのほかに執念深いものである。
切っぷ切りでパチンとやるというような、いたずらに類した空想も、思い切って行為に移さない限り、我々の安乳の中に外観上の年齢を遥かに長く生き延びる。
とっくに分別のできた大人が、今もなお熱心に、厚紙でサンドイッチのように挟んだ上から一思いに切ってみたら。
こんなことを考えているのである。
ところが、最近ふとしたことから、この空想の致命的な誤算が暴露してしまった。
元来、猫はウサギのように耳で吊り下げられても、そう痛がらない。
引っ張るということに対しては、猫の耳は奇妙な構造を持っている。
というのは、一度引っ張られて破れたような痕跡がどの猫の耳にもあるのである。
その破れた箇所には、また巧妙な継ぎが当たっていて、
まったくそれは、想像説を信じる人にとっても、進化論を信じる人にとっても、不可思議な滑稽な耳たるを失わない。
そしてその継ぎが、耳を引っ張られるときの緩めになるに違いないのである。
そんなわけで、耳を引っ張られることに関しては、猫はいたって平気だ。
それでは、圧迫に対してはどうかというと、
これも指でつまむぐらいでは、いくら強くしても痛がらない。
先ほどの脚のようにつねってみたところで、ごく稀にしか悲鳴を発しないのである。
こんなところから、猫の耳は不死身のような疑いを受け、
引いては切っぷ切りの危険にもさらされるのであるが、
ある日私は猫と遊んでいる最中に、とうとうその耳を噛んでしまったのである。
これが私の発見だったのである。
噛まれるや否や、そのくだらない奴は直ちに悲鳴をあげた。
私の古い空想はその場で壊れてしまった。
猫は耳を噛まれるのが一番痛いのである。
悲鳴は最もかすかなところから始まる。
だんだん強くするほど、だんだん強く鳴く。
クレッシェンドのうまく出る。なんだか木管楽器のような気がする。
私の長らくの空想は核のごとくに消えてしまった。
しかしこういうことにはきりがないとみえる。
このごろ私はまた別なことを空想しはじめている。
それは猫の爪をみんな切ってしまうのである。
猫はどうなんだろう。
おそらく彼は死んでしまうのではなかろうか。
いつものように彼は木登りをしようとする。できない。
人の裾をめがけて飛びかかる。
違う、爪をとごうとする。
何にもない。おそらく彼はこんなことを何度もやってみるにちがいない。
そのたびにだんだん今の自分が昔の自分と違うことに気がついていく。
彼はだんだん自信を失っていく。
もはや自分がある高さにいるということにさえブルブル震えずにはいられない。
落下からついに自分を守ってくれていた爪がもはやないからである。
彼はよたよたと歩く別の動物になってしまう。
ついにそれさえしなくなる。
絶望、そして絶え間のない恐怖の夢をみながら物を食べる元気さえ失せて、ついには死んでしまう。
爪のない猫。
こんな頼りない哀れな心持ちのものがあろうか。
空想を失ってしまった詩人。
蒼発生地方に陥った天才にも似ている。
この空想はいつも私を悲しくする。
そのまったき悲しみのためにこの結末の妥当であるかどうかということさえ私にとっては問題ではなくなってしまう。
しかし果たして爪を抜かれた猫はどうなるのだろう。
目を抜かれてもひげを抜かれても猫は生きているに違いない。
しかし柔らかい足の裏の鞘の中に隠された鍵のように曲がったあゆ口のように鋭い爪。
これがこの動物の活力であり知恵であり精霊であり一切であることを私は信じて疑わないのである。
ある日私は奇妙な夢をみた。
Xという女の人の死室である。
この女の人は平常かわいい猫を飼っていて、私が行くと抱いていた胸からいつもそいつを離してよこすのであるが、いつも私はそれにへきえきするのである。
抱き上げてみるとその子猫にはいつもかすかな香料の匂いがしている。
夢の中の彼女は鏡の前で化粧していた。
私は新聞か何かを見ながらちらちらその方を眺めていたのであるが、あっと驚きの小さな声をあげた。
彼女はなんと猫の手で顔へおしろいを塗っているのである。
私はぞっとした。
しかしなおよく見ているとそれは一種の化粧道具で、ただそれを猫と同じように使っているんだろうということがわかった。
しかしあまりそれが不思議なので、私は後ろからたずねずにはいられなかった。
それ何です?顔をこすっているもの。
これ?
夫人は微笑とともにふりむいた。そしてそれを私の方へほおってよこした。
取り上げてみるとやはり猫の手なのである。
一体これどうしたの?
聞きながら私は、きょうはいつもの子猫がいないことや、その前足がどうやらその猫のものらしいことを先行のように了解した。
わかっているじゃないの。これはミュールの前足よ。
彼女の答えは平然としていた。
そしてこのごろ外国でこんなのがはやるというので、ミュールで作ってみたのだということである。
あなたが作ったのかと、内心私は彼女の残酷さに舌をまきながらたずねてみると、
それは大学のイカの小遣いが作ってくれたというのである。
私はイカの小遣いというものが解剖の後の死体の首を土に埋めておいてどくろを作り、学生と秘密の取引をするということを聞いていたので非常にいやな気になった。
何もそんなやつに頼まなくたっていいじゃないか。
そして女というもののそんなことにかけての無神経さや残酷さを今さらのように憎み出した。
しかしそれが外国で流行っているということについては、自分も何かそんなことを婦人雑誌か新聞家で読んでいたような気がした。
猫の手の化粧道具。
私は猫の前足を引っ張ってきていつも一人笑いをしながらその毛並みを撫でてやる。
彼が顔を洗う前足の横側には毛足の短い絨毯のような毛が密生していて、なるほど人間の化粧道具にもなりそうなのである。
しかし私にはそれが何の役に立とう。
個人的な体験
私はごろっと仰向きに寝ころんで猫を顔の上へあげてくる。
二本の前足をつかんできて柔らかいその足の裏をひとつずつ私のまぶたにあてがう。
心よい猫の重量。
温かいその足の裏。
私の疲れた眼球にはしみじみとしたこの世のものでない休息が伝わってくれ。
子猫よ。
五生だからしばらく踏み外さないでいろよ。
お前はすぐ爪を立てるのだから。
1972年発行。
大文社。大文社文庫。
レモン。ある心の風景。ほか20編。
より独りょう読み終わりです。
はい。ちょうど10分そこそこですね。
短めのテキストでした。
僕も猫の耳をずっと触っているの好きなんですけどね。
何か撫でていると気持ちよさそうに目を細めるじゃないですか。
耳を触っているとちょっとくすぐったいのかちょっとかゆいのか。
僕の指が離れた後ブルブルって顔を震わすんですよね。
僕が一緒に暮らしている猫にかけらず、
猫カフェの猫ちゃん達も結構等しくね。
耳の内側をグリグリってやると、かゆい。
あーみたいな感じで顔を震わして。
中川茂さんがたまらなくてずっとやっちゃうんですけど。
東武東上線の上板橋駅。
近くにある魂の中華そばというラーメン屋さんがすごくおいしくて、
そこが好きで時々行くんですけど、
そこでラーメンを食べ終わった後、
目の前に保護猫カフェがあるんでね、
そこもついでに寄ってくるっていうのがルーティーンというか、
いいんですよね。お腹いっぱいになった後ね、
猫にたわむれるみたいな。
ご興味がわいたら行ってみてください。
はい、じゃあ終わりにしましょうか。
短いので寝落ちはあまり期待できませんが、
無事寝落ちできた方も、最後までお付き合いいただいた方も、
大変にお疲れ様でございました。
といったところで今日のところはこの辺で、また次回お会いしましょう。
おやすみなさい。
13:28

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