じゃあ具体的にどんな前提や手がかりを渡せばいいのかここからが面白いところなんですが、
AIをコントロールするための5つのダイヤルのようなものがあるんですよね。
ええ、あります。このダイヤルをどう回すかで出力が劇的に変わります。
ぜひ教えてください。
もちろん毎回全部のダイヤルを回す必要はありませんが、引き出しとして知っておくことが重要です。
なるほど。
まず1つ目と2つ目のダイヤルはセットで考えるとわかりやすいですよ。
作業の指定と視点の指定です。
作業と視点。
え、作業というのは要約してとか分析してという具体的なアクションですね。
そして視点というのは誰の立場で答えるかです。
例えば教師の視点で説明してとか。
ああ、なるほど。
プロの編集者の目線でこの文章を厳しくチェックしてといった具合ですね。
ちょっと待ってください。
それずっと疑問だったんですよ。
何でしょう。
教師の視点でって文字で打つだけで、
AIの中に突然教育実習を終えたプロの先生の人格がダウンロードされるんですか。
ダウンロード。
なんかそれってちょっとオカルトっぽくないですか。
確かに文字だけで人が変わるみたいで不思議に感じますよね。
でも先ほどの確率で言葉を選んでいるという仕組みを思い出してください。
予測変換のお化けですね。
AIに教師の視点でと指定すると、
AIは自分の巨大な事情の中から教育現場や先生がよく使う言葉のデータベースにアクセス範囲を絞り込むんです。
ああ、そういう仕組みなんですね。
じゃあ、難解な専門用語とか砕けすぎたネットスラングがその先生フィルターによって確率的に弾かれるってことですか。
ご明答です。その結果として教えるのが上手な先生っぽい言葉遣いが生成されるわけです。
なんだかそれってカメラの撮影モードに似てますね。
カメラですか。
全部カメラにお任せのオートモードでパシャッと撮ることもできれば、ポートレートモードにして背景をぼかしたり。
ああ、なるほど。
夜景モードにして光を集めたり。レンズそのものが変わるわけじゃないけど、ソフトウェアの処理が変わるじゃないですか。
AIへのプロンプトも自分の好みに合わせてマニュアルモードでダイヤルを調整する感覚なんだなって。
それは素晴らしい例えですね。まさにそのマニュアル調整です。
ありがとうございます。
では、そのカメラのアナロジーに乗っかって3つ目のダイヤルに行きましょうか。背景と条件の指定です。
これが一番実用的な気がしますね。
そうですね。
例えば、AIに何かお願いしてものすごく良い答えが返ってきたんだけど、文量が10ページもあって。
ありますね、そういうこと。
いや、今から5分後の会議でパッと見たいだけなんだけどって時、どうやってAIにガードレールを敷けばいいんですか。
そこで条件のダイヤルを回すんです。
300文字以内でまとめてとか、箇条書きで3つのポイントに絞ってといった制約、つまりルールを設けます。
なるほど。長さを指定するわけですね。
あとは、専門用語は使わないでとか、この話題には触れないでという禁止事項も効果的ですね。
ふむふむ。
カメラで言えば、シャッタースピードや露出を固定して手ぶれを防ぐようなものです。
文量やルールを縛ることでピントがバッチリ合うわけですね。
さて、ここまで5つのダイヤル、作業、視点、背景と条件、形式と対話、見本を見てきました。
これを使いこなせば、思い通りのアウトプットが出せるぞと思う一方で、正直に言っていいですか?
もちろんです。
いや、そもそも仕事の時短のためにAIを使っているのに、この5つのダイヤルをどう回すか、うなりながら20分もかけてプロンプトを書いて、
結果的に5分しか作業時間を短縮できなかったら、完全に本末転倒じゃないですか?
おっしゃる通りです。そこなんですよ。
そこですか?
それがまさに、細かい指示の影の部分なんです。
プロンプトを詳細に書けば書くほど、必ずしも良い結果になるとは限りません。
そうなんですか?
条件をガチガチに固めすぎると、AIの回答の選択肢が極端に狭まってしまうという弊害があるんです。
どういうことですか?
例えば、新しいサービスのアイデアを幅広く出したいというブレインストーミングの場面。
こういう時に文字数はこれくらいで、こういう業界は避けて、対象はこれでと条件を細かくしすぎると、無難でつまらないアイデアしか出てこなくなります。
偶然生まれる想定外の面白いアイデアの目をプロンプトで自ら摘み取ってしまうんです。
ああ、なるほど。カメラのマニュアル設定を細かく決めすぎると、偶然撮れたエモい写真とか奇跡の一枚みたいなチャンスを逃しちゃうのと同じですね。
まさに。あえてダイヤルを緩めるのも技術なんです。
なるほどな。
そしてここで絶対に知っておいていただきたい最大の罠があります。
何でしょう?ちょっと怖いですけど。
先ほど4つ目のダイヤルで形式の指定ができると言いましたよね。
はい。表に指定とかですよね。
価格と仕様を比較して美しい表にして出力してとすると、AIは見事なまでに整理されたピシッとした完璧な表を一瞬で返してくれます。
めちゃくちゃ助かりますよね、あれ。
もし今これを聞いているあなたが、AIが作ってくれたその美しい表を今日の午後3時からの会議のプレゼン資料にそのままコピペしようとしているなら、ちょっと手を止めてください。
ダメなんですか?
その表があなたの希望通りの形式で美しく整理されているということと、その表の中身のデータが事実として正しいということは全く別の問題なんです。
AIは情報が間違っていても、あるいは完全にデタラメを創作していても、さも本当のことのように自信満々に美しい表を作り上げます。
いわゆるハルシネーション、最もらしい嘘ですね。
うわー、耳が痛い話ですね。
人間って見た目が綺麗にフォーマットされていると、こんなにしっかり書かれているんだから中身も正しいに違いないって脳が勝手に信じ切っちゃうんですよね。
そうなんですよ。プロンプトの工夫というのは、あくまであなたの求める回答の形に近づけるためのテクニックであって、事実を保証する魔法ではないんです。
なるほど。
AIに任せて浮いた時間は必ずファクトチェック、事実確認に使わなければいけません。これを怠ると大きな事故につながります。
時短できたからってそのままスルーしちゃ絶対ダメだぞと、美しい嘘には気をつけろってことですね。
肝に銘じておいていただきたいポイントです。