菊池寛の小説「形」の魅力
みなさん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと語っています。
今、中学校2年生で、菊池寛の小説「形」というのをやっています。
これがちょっと面白くて、今日はこの菊池寛の小説「形」の魅力について、そして私の教材研究について語りたいと思います。
この菊池寛の「形」という小説は、東京書籍の中学校3年生の教科書に入っているんですけど、
今やっている中学校2年生の教科書の教材で、ちょっとなんかあまり生徒が夢中になるものが欲しいなと思って、菊池寛の形が生徒に適しているだろうなと思って、投げ餃子として選びました。
なんで取り入れられやすいかというと、うち男子校なんで、男の子がこの戦いっていうのにすごく興味関心があるというか、戦いというだけで、アンテナが立ってしっかり文章に向き合おうとする傾向があるので、これを選びました。
何より短いですし、構成が起承転結というふうに、ものすごく分かりやすく4つに分かれているので、場面分けもしやすいですし、それから謎が最後ね、なんで死んじゃうんだろうという謎が生徒を思わず深く深く考えさせる状態に導いてくれますし、
何より文章表現の深みと厚みが私たちを引き付けるわけですよね。ということで、この形っていう小説の魅力、それからどうやって授業でやってるかっていうのを少し語りたいと思います。
形はね、やっぱり文章がすごいんですよ。生徒に授業でやるときに、もうこれはスローリーディングするしかないなと思いました。
まず書読の感想をいきなり読ませて書かせて、この小説に対する疑問とか、それから気づきとかが、もうそれだけで興味・関心になっちゃうんで、どんどんどんどんこの小説を読んでいこうという動機づけにこの小説自体がなってくれるんで。
まず最初にもいきなり読ませました。そしたら案の定、なんかわからない表現がいっぱいあって、言葉が難しすぎたって書くんだけど、みんなどうしても最後に、なんであんなネタバレになるんですけど、
なんでこの中村新兵衛が火腹をつかれるっていう、死を予感させるような終わり方になってるのか、あんなパッと中途半端な終わり方になってるのかっていうのがすごい疑問っていうのがたくさん出てました。
なので、その疑問自体を解決していこうねっていうことで授業がスタートできるので、この小説自体が動機づけになるような、とても便利な、そして素晴らしい小説になっているわけです。
やり方としてはいろんなやり方を考えたんだけど、もうわからないところが多いっていうんで、スローリーディング。一つ一つの文章を読んでいって、それを解きほぐすように読もうと思いました。
なので結構時間がかかるんだけど、横持ちの先生ももうゆっくりやろうということで、ゆっくりやってます。どうやってスローリーディングするかっていうと、最初に書読の感想を読ませるんだけど、いきなり節半国の種であったっていうところの節とかいうね、その場所をちゃんと地図上で確かめるわけですよね。
なんでこの土地になるんだろうねっていうことで、この土地、戦国時代どうだったんかねっていうようなことを話すわけですね。
まあその節っていうところは、今の大阪府と兵庫県のあたりで、戦国時代都にも近くて、それから大阪っていう商業の街にも近くて、経済や政治の中心地であったっていうことで、本当にメインの土地になるわけですよね。そういう花々しい土地だったんだっていうことを抑えさせるわけです。
その中で松山新介の侍大将中村新兵衛は、五岐内中国に聞こえた大号の詩であったって書いてあるんだけど、これで何か気づくことはないかっていうふうな質問を投げかけますね。なかなか出ないわけです。何も気づかないんだけど。
中村新兵衛以外に登場人物出てきたよね。誰がいるって聞いたら、若侍って出てくるんだけど、若侍ってどんな名前だったっけって聞いたら、名前はないって言うんですよね。じゃあ名前がないんだけど、なんで松山新介っていう人は全然ストーリー上は登場しないのにわざわざ名前が出てくるんですかねって聞いたら、じーっと考えてまだわかんないわけですよ。
でね、黒板に名前をちゃんと書くと気づくことはないっていうふうに書くと、松山新介の新と中村新兵衛の新っていう字が同じだっていうことはわかるわけですよね。
生徒の発見と成長
じゃあ主君と同じ字を持ってるってどういうことなのかねって聞いたら、そこであっとかいうことで主君の名前の一字をもらって中村新兵衛っていう名前になってるっていうことを気づくわけですよね。
ということで中村新兵衛っていうのは主君の名前の一字をもらったっていうぐらい主君が信頼をおいている重要な人物だってことはもう最初の出だしからわかるわけです。
そしてそれが国内中国に聞こえた聞こえたがわかんないんでこれも調べさせたりなんかして有名な大号の詩であったっていうことでも第1文からこの中村新兵衛っていう人の素晴らしさ登場シーンから描いているっていうことはわかるわけですよね。
ここでも生徒ははーっていうふうに釘付けになるわけですよ。その後で槍中村の話になって3弦への大みの槍っていうのはどれぐらいの長さかなっていうことで実際に教室で3弦っていう長さを体感させたり
それから症状比の羽織とかって症状比ってどういう色なんだろうって調べさせて最近はプロジェクターに映せるんでもう真紅の真っ赤な本当にカープの真っ赤みたいな色よりもう少し明るくて鮮やかな日色だってことはわかるんですけど
症状って何かねって言って症状ってもののけ姫に出てきたよねとかって言いながらもうどんどん時間は経つんだけど一つ一つの言葉にこだわって調べていくわけですね。そうしたら症状っていうのがあーあれか。症状っていうのは歌舞伎とか能とかに出てくる真っ赤なお猿さんなんだけどそのお猿さんの赤いお猿さんの真っ赤な色っていうのはわかるわけですよね。
で、その症状比の真っ赤な羽織を着て東漢永均の歌舞伎も調べさせてあの金色の輝く歌舞伎もプロジェクターで投影して見せるわけですよね。で、そういう中村新米の姿っていうのが生徒はイメージ具体的にすることができてかっこいいなーって思うわけですよね。
で、そのどんどん読み進めていくんだけど今度は文章上の工夫がしてあるからその文章上の工夫をちょっと見破ってみようということで生徒に考えさせられるとやっぱりあのちゃんと直言っていうのをね生徒は言うわけですね。で直言っていうのがどういう効果があるかもう習ったよねーって言ったらまあ場面を生き生きと読者に目に見えるように想像させるっていうのは言うんですけど
じゃあ生き生きとっていうのはもうちょっと難しい言葉で何か言えるかねーとか言ったらちゃんとね臨場感っていうのを今まで習ってきているのでそこでだんだん言葉の力がついていきます。
さらにもっと表現上の工夫ないかねーとか言ったら繰り返しっていうようなことを言うわけですけどこれって監視の授業でやったよねーなんて言ったっけーって言ったら追句っていうことも言うわけですよそんなこんなでねどこを切っても本当に工夫してあってどこを読んでも丁寧に丁寧に深く読めるということでこの書き出しのこの密度の濃さ
深み本当にね発問ばっかりできて生徒は全然こうね今まで見てなかった世界がどんどんどんどん文章の中に読み取ることができて本物の小説っていうのはこんなに素晴らしいんだっていうことを体感できる書き出しになっています
そんなことであの第一場面の中村新兵衛の鮮やかな登場シーンがスタートしますそしたら今度はあの若侍主君の脇腹の子である新兵衛がずっと飼い上がってきた若侍が登場します
若侍には名前がないわけなんですけどなぜかねとか言ったら生徒はモブキャラーとかねあんなことを言ったりするんですけどそういうことをやりつつ若侍の性格であるとか新兵衛の性格であるとかをここで読み取らせていくことになるんですね
全然生徒はね最初の書読では読んでないんだけどやっぱり中村新兵衛のそういう情愛の深さとかその情愛の深さの反面自分自身に対する自負心とか自信とかそういうのを読み取っていくことになるわけです
そして今度はとうとう若侍が上陣を飾るシーンになるわけですね現在ここまでしか言ってないのでここまでしか授業での説明はできないんですけどいよいよ若侍が登場するんですけど一応若侍が登場して活躍するシーンを表現技巧を抑えながら読んでいって中村新兵衛がすごく満足下だっていうことはわかるんだけどその満足下っていうのはですね
どういうところに満足しているのかっていうのをちゃんと読み取らせるわけですねもう自分の形だけすらっていうこのだけすらっていう表現を抑えながら形でさえ威力を発揮するもっと自分の実力はすごいんだっていう中村新兵衛の自分に対する自信とか
それから若侍の戦いぶりに満足している様子を抑えさせてじゃあ皆さんここで気づくことはないと戦っているのは誰って言ったらみんな若侍って言うわけですよ若侍って書いてあるって言ったらみんなが一瞬止まってですね文章を探し始める
そしたら若侍って書いてない症状比の武者って書いてあるってこういうこと言うわけですよねそしたら差しの良い子があって言い出してあだからタイトルが形なんだって言ったら一気にシーンとなってねバーがね本当に一瞬息が止まってみんな考え始めるわけですよね
こんな風にして小説の題名読みも最初からやるんじゃなくてここで回収させるという形を私はとっていますそんな感じでね形っていうもののこの小説のこの密度の高さに助けられて楽しく面白く授業で読んでいますね
物語の深掘り
この後は最後の場面まで読んでいくんですけど教科書にもねちゃんと書いてあったんですけど原点である定山奇談定山奇談にこの部分があるんですけどこれとの比較読みを通してさらに菊池寛がこの形で表現しようとしたことは何なのかということに迫りたいと思っています
でも丁寧に丁寧にこうやって読んでいくっていうのが本当に国語力をつけさせるなあっていうふうに感じてますやっぱりこの形っていう小説でないとできなかったことなんですね
でICTとか何とかっていうのは定時ぐらいに使って本当にあのいわゆる古典的なやり方で黒板でねきちんと丁寧にやってるこういう読みもいいなと思っています
最終的にはこの小説で何を描こうとしたのかっていう王道をやりましてですねで最後にお遊びとしてこの形のオープニングムービーとか予告ムービーを作ろうということで
これはもう本当お遊びとしてパフォーマンス課題をやってムービー作りの入門ということでやってみたいと思ってます
皆さんこの形っていう小説なんだけど短いから投げ入れ教材に最適です高校でもね扱えるんじゃないかと思ってます
小説とか物語とかそういった虚構の世界いかに生徒が現実との世界との比べとか自分たちの生活自分たちの世界と比べながら
引きつけながら考えられる魅力的な題材だと思います
それでは今日はこの辺で聞いてくださりありがとうございましたまたお会いいたしましょう