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皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道、黒瀬直美です。
この配信では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育について、ゆるっと配信しています。
今日は前回に続いて、羅生門の授業作りについて第2回目の配信をしたいと思います。
前回は、導入部分、目標設定と問い作りの導入部分についてお話をしました。
前回の目標設定について、話をしていなかったので補足します。
羅生門について、私は人間が生きるために悪を働いてしまうことについての、人間の罪深さ、生きていくことの難しさ、
人間の安部というものを、極限状況の中を生きる下人を通して、人間について捉え直してほしい。
そういうふうなスタートで目標を設定しております。
当然のことながら、技能目標としては、小説の場面設定や表現の工夫を通して、
登場人物の置かれた状況・真理というのを読み取ったりとか、
それから態度目標としては、言語活動を通じて深く考えていく、小説を読んでいこうとする態度を育てないなと思って、
言語活動を活発に仕掛けていきました。
問いづくりについては、前回お話ししたとおりですが、問うということで、
生徒は随分と主体的になって、考えて読むようになりますし、
これ解決するんだ、これからこういう問いを解決するんだという主体性が生まれますし、
それから問うということ自体で対話的な雰囲気ができますので、
やっぱり小説自体が読んだらすぐに導入していく世界観を持っていますし、
それから問いづくりということ自体も、そういう対話を仕掛ける工夫、インタラクティブになる工夫ができますし、
とても小説と問いづくりはマッチしているなと思っています。
じゃあこれらを合わせて一体どのように展開していったかということを今日はお話ししたいと思います。
ここからは本当に普通なんですけど、場面ごとに読んでいくわけなんですよ。
場面ごとに読んでいって、意見を出し合いながら黒板に構造化していきました。
この構造化っていうのは、意見とかをいわゆる一枚もののグラフィックファシリテーションみたいに、
立体型版書ってよく言われるんですけど、いろんなまとまりごとに配置を変えて、
そのシーンっていうのがパッと見たら、なんとなくこの展開、それから対比関係、原因理由、
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それから終着点っていうものがわかるようになる、そういう構造型の版書を採用しました。
生徒は意見を出すんですけど、その意見を自分が考えてきた版書計画の中で位置づけるわけですけど、
その時に必ず、なんでそう思ったのって聞くわけですよ。
それを聞くと、生徒は文章の中の根拠、文章を根拠にしてそれを話すので、確かな読みっていうものを確保できます。
いろんな考えを生徒が自由に言える雰囲気なので、多様な考え方が出しやすいということで、
構造的版書はどこから生徒が答えても、私の中に構造化されているので、
その答えをこの位置に書こう、その答えをこの位置に書こうっていうふうに、
生徒がどこからでもいろんな答えを言っても位置づけることができるので、構造型版書を採用しています。
これがいわゆる右から左へと流れていくような時系列の版書だったら、生徒の答えがポーンと飛んでいっちゃうと、
教員の流れに合わせようとするあまりに、生徒が出した答えを位置づけにくいわけなんですよね。
なので、右から左に流れている時系列版書ではなく、私は構造型版書っていうのを採用してますけど、
この構造型の版書っていうのがもしわからなければ、そういうのを説明したGoogleスライドもありますので、ぜひお問い合わせいただければと思います。
この構造型版書っていうのは意外とすぐにはできなくて熟練が必要なんですよね。
私は、はっきりと構造型版書について熟練できたのは、国立大附属に赴任した時に一生懸命に修行を積みまして、ずいぶんそこで慣れたかなと思うんですけど、
結局、構造型版書には教材研究が出るんですよ。
しっかりと教材研究していって、どこから生徒が答えてもそこに位置づけられるっていうふうなレベルにしておかないと崩壊してしまうんです。
しかもその生徒の反応に合わせてその場で版書構造を書き換えたり、それから書く言葉も生徒の言葉にくるっと転換したりしてアレンジしていく、そういう力量もいるんですよね。
しかも国立大附属の生徒は私の読みを超えていく時もあるので、その場でまたブラッシュアップしていくというように、構造型版書についてはかなりな訓練が必要かなと思います。
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そうは言っても、私も何回も何回も何十回も、もしかしたら十何回か、裸書も教えているので、自分の中でもはっきりとした構造的なものが内部にありまして、
その中で生徒の答えをどんどん生かしていって、どうして?どうして?って聞いたり、他には?とか、まだあるよね?とか言いながらどんどん出させていって、
そうしていくといろんな他方面から生徒は答えを言うので、だんだんと構造型の版書が出て形作られるわけです。
生徒もそれを黒板を見ながら考えたり、あるいは書き写しながらいろいろと自分の内容、中身を整理していきますね。
その構造型版書の中でも、私が特に気をつけているのは、例えば、最初のシーンでは羅生門に入っていくっていう構造にしていて、
落外から落中に入っていくと、昼から夕方、そして夜というふうに時間が変わっていくよね?とか、
それから羅生門にいるのは下人キリギリス、そしてこの中に入っていくと京都は荒れ果てているんだよね?というようなことで、
もうまさに落外と落中との境界が羅生門にあるわけで、
そういった小説世界の理解と、それから小説に描かれている内容についての理解が少しずつ進んでいくように工夫したり、
それから語り手っていうのが登場しますよね。小説世界と違った別視点で、小説世界を外側から見る語り手っていうのがいるので、
その語り手っていうのを登場させての、その小説世界というような構造にして、
そして芸人というものの揺れ動く心情、盗みを働くか、それとも働くまいかっていうような、
そういうところで悩んでいる芸人の様子を外側から見ている語り手っていうような図式にしたり、
それから中に入っていきますね。羅生門の上にどんどん登っていくその様子も、
ちょうど死骸が無造作にゴロゴロしているところも、なんとなく簡単な図式化にして様子を想像させたりとか、
それから芸人が老婆と出会って会話をするシーンも、右に芸人を描いて左に老婆を描いて対比構造にして、
右側が芸人イコール男、左側女、老人、老婆、まず対比だねっていうことで対比構造を分からせたりして、
この芸人と老婆は一体どういう立場で物を言っているのかっていうのが、
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なんとなく場所を見れば分かるような、そういう場所の工夫をしました。
最後のシーンは、感情がどんどんどんどん移り変わっていく芸人が出るように矢印を引いたり、
それから比喩表現で老婆が描かれているので、その比喩表現もしっかり描いて、
老婆っていうもののこういう人物設定はどういう意図があるのかということも分かるような構造にしました。
そんなふうに構造的な場所っていうのは、ちょうど先生と場所で対話的にインタラクティブになるので、
対話がどんどん深まりますし、いろんな方向からの意見も出やすいですし、
私にとってこの構造型場所っていうのは授業作りの大きな生命線のような形になっているので、
今でも構造型場所っていうのを大事にしたいなと思っています。
そして一番羅生文で読みが深まったなと思うような、そういうシーンは、
芸人と老婆の対比構造ですね。先ほどもお話ししたように、
芸人は若い男で、老婆は年寄りの女性でありまして、
この芸人というのは刀を持っているということで、警備の担当ですよね。
どちらかというと武力で生きてきた人間。老婆は短い白髪って書いてありまして、
当時女性は髪の毛が長かったので、短い白髪をしていたということは、
どうもこれは元天だったのではないかというふうな予想が立つわけです。
つまり老婆は元天という、いわゆる倫理をしっかり守る立場であった、
そういう道徳的な存在であった女性が、生活のためにそれを捨てて悪に走っているということが暗示されるので、
そこを読み取らせた時は生徒はすごく納得していました。
先日の配信でも継承読みというのを言いましたけれど、
登場人物の設定には、色形とか、持っているものというのは象徴されているものがありまして、
それをしっかり読み取ることによって読みが深まっていって、
しかも対立構造になっているから、芸人と老婆の対比によって、
何を描こうとしているのかというのを読みがだんだん深まっていくわけですね。
老婆は肉食獣のような、カラスの鳴くような、動物的な描かれ方をしているので、
不気味な人間を離れた動物に近い、極限的な状況により近い表現がされているということも、
生徒の指摘からどんどん深めていきますと、次第に読みが深まっていくようになるわけです。
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先日と言っても1年半ぐらい前か、研修会に参加した時には、
松の木切れのように勢いよく燃え上がり出したのであるというところについて、
教えていただく機会がありまして、松というのは油があって、松の木は燃えやすいわけです。
木切れというのは、長くは燃えないわけですね、木の切れ端だから。
だから松の木切れのように勢いよく燃え上がったということは、
燃えやすいけどすぐに冷めるというような、男の心の移り変わりやすさというのも、
この例えで象徴しているのではないかというようなことを聞いて、
ますます理解が深まったかなと思います。
そういったこと以上に、最近大習館書店の「羅生門55の視点」という本を買いまして、
これは三宅義蔵先生という方の著書なんですけど、
実際の生徒との授業でのやりとりから、いろんな読みが深まるようなそういう本になっているので、
非常に実践的な本ですね。ぜひぜひこれを皆さんお勧めしたいと思います。
これでさらに私自身も読みが深まったので、
ますます生徒の素朴な疑問とか、ちょっとした指摘を捉えやすくなって、
授業が深まるんじゃないかなと、こういうふうな予感をさせてくれる、
とても面白い本、「羅生門55の論点」という本ですね。また概要欄にリンクを貼っておきたいと思います。
ということで、授業展開はほぼ構造的な版書のファシリテーションでやっていくというお話でした。
次回は集結に向かっていきたいと思います。
どのようにこの羅生門を終わっていくのかについてお話ししたいと思います。
それでは今日はこの辺で。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。