はじめに:講演の経緯と目的
皆さん、こんにちは。今日も明日も授業道ス黒瀬直美です。この番組では、中学校・高等学校の国語教育、働く女性の問題、デジタル教育についてゆるっと配信しています。
今日は、424回、生成AI時代の教育をデザインする、先生のチャレンジが子どもの未来をつくる、というタイトルでお届けしたいと思います。
この配信は、2026年3月21日、横浜の横浜ハヤト中学高等学校授業づくり生成AI活用公開勉強会の全体会で私がお話ししたスライドをもとに、今回、ポッドキャストでこの全体会の講演内容を皆さんにお届けしたいと思います。
そもそも、横浜ハヤト中学高等学校の全体会で講演をすることになった経緯についてなんですが、横浜ハヤトにお勤めの横尾ゆかり先生という英語の先生が兼ねてから、ご自身の学校での勉強会を主催したいとお考えになっていて、
そしてその自分のところの学校の勉強会をオープンにして、広く一般の先生方にも参加者を募って生成AI周りの活用勉強会をしたいという、そういうプランをずっと温めておられ、その中で私にお声掛けいただいたという流れになります。
特に私に全体会のオファーがあったのは、なんか突然召集されたズームミーティングで、黒瀬先生お願いしますって言われて、なんか全然ね、寝回しもないままズームミーティングでいきなりご指名いただいたことをよく覚えています。
私をご指名いただくというこの意味はどういうことなのかというと、やっぱりは横尾先生曰く、様々なところを経験してきた私が言うところだから説得力も生まれるし、女性ということでちょっと特別な立ち位置の人からのお話だし、初心者の人にもわかりやすくお話ししていただけるんじゃないかっていうようなところが狙いだったようです。
ということで私はあんまり難しい話をせずに、ビギナーの人でもちょっとやってみようかなっていうような、そういった意欲とか元気とかやる気っていうのを出させるっていうことを念頭においてこの話を引き受けることにしました。
ということで今日はその全体会のお話をしたいと思います。
全体会のゴールは、生成AIというものをもう一度認識していただいて、そして実践への具体的なイメージを持ってもらうということと、それから参加者と交流し、元気をチャージし、チャレンジ精神を養うということをコンセプトにしました。
第1部は私の自己紹介と参加者同士の交流、第2部は生成AIをめぐる教育現場の現状、そして第3部はどういう活用イメージを持つか、第4部はワークと振り返りという構成で行いました。
第1部:自己紹介と交流
第1部自己紹介についてなんですけど、自己紹介ではとにかく短くてもいいから、私の経歴をお話しすることにしています。
以前はこれをすっ飛ばして話をしていたんですけれども、どうも参加者の方との隔たりというのが少しあるような気がしていました。
その原因をいろいろ私なりに肌感で分析してみたところ、やっぱり今私は私立に在籍していて、公立の先生方のイメージって私立っていうのはやっぱりある程度お金を払っていくところだから家庭環境も恵まれているし、生徒自身も勉強というものに前組向きな生徒が通う学校。
そういう学校だからある程度落ち着いているし、勉強する環境も整っている。そういう学校で取り組んだことをお話しするっていうことは、公立っていうそういう先生方にとってはすごく隔たりがあるというイメージをお持ちだったように私は肌感で感じています。
いやいやそうじゃないんだと、私はありとあらゆる定時制から国立大附属まで勤めて、そして中でも厳しい生徒実態のところに長く勤めたっていうことをお話しすることによってこの距離を縮めることはできないかと思い、過去登壇したときにその内容をお話ししたところ皆さんの目の色が変わり前のめりに聞いていただいているという、
そういうふうな私自身の感覚的な確信でもって必ず自己紹介を入れることにしようと思って、今回も自己紹介を5分弱ですけれどもぶっ込みまして、私の最大の強みっていうのは、ありとあらゆる厳しい生徒実態も含めいろんな多様な現場実態を知っているということ。
だから授業を見る目や解像度が高くなっていったし、厳しいそういう状況での長い経験から確実にこういうことが有効だっていうことが言える立場であることと、早くからICTに着手していたっていうこの3つを強みとしてお話ししました。
そして使っているツールのショーケースみたいなのを画像で生成してもらって、ベテラン世代の一見デジタルとは程遠いおばさんがAIを使いまくっているということもお示ししました。
そういったところで私自身がこうやってAIというのを今デジタルにどっぷり使って使いまくっている原因は何なのか。それはやはり黒船が来たからだというようなお話をしたんですね。黒船っていうのはAIのことです。
AIという黒船が来航して、今歴史的な転換点を迎えている。あなたは球体依然とした封建主義を守る立場にいますか。それとも坂本龍馬とか葛藩州のように新しい時代をつくる改革派ですかっていうふうに呼びかけたんですね。
というところでお話を終えて、ペチャクチャタイムというところで2,3人でグループをつくってもらって、自己紹介1人1分程度でお願いしました。そうしたらですね、参加者の方は積極的にもう私の声が聞こえないぐらいグループで熱心に話し合いをして情報交換しておりましたね。
第2部:生成AIをめぐる教育現場の現状
こうやって一応この場を温めまして本題にスタートしました。第2部は生成AIをめぐる教育現場の現状についてお話をしました。従来ICTというものがずっと注目されてきたわけですけれども、ICTというのは紙をデジタル化して、あるいは今までの文字というものをどんどんデジタルにしていって、情報検索しやすくしたりとか、
それを効率よくまとめて情報提示したりとか、共有したり可視化したりとか、そういったところの情報の操作というものに重きが置かれていたというのがICTだと思います。ところが生成AIが誕生して、そのフェーズががらっと革命的に変わりました。
生成AIは言葉を生成し、そして言葉を理解し、そして文章を生み出したり画像を生み出したりという、そしてそれらしい思考をするという私たちが考えるっていうことをするようになったわけですよ。つまり人間の思考にまで影響を及ぼすようになってきたっていうのがこのAI。
これは教育会においては革命的な出来事で、生徒のレポートとか、従業者の教材や教材の作成とか評価の方法までものすごく影響力が及ぶようになっていったっていうのがこの生成AIの登場の意味だと思います。
それは生成AIがどのように教育現場に導入されていったかっていうのを振り返ってみてもわかるように、当初は2022年の11月にチャットGPTが公開されてから、なんかうさんくさいなということで教育会もそれからもちろん自治体ももちろん文部科学省も警戒しながら、
特に大学の先生なんかはレポートにコピペされてはたまりませんから、いろんな制限をつけながらこのAIと付き合ってきましたが、そういう制限がつけられないほどAIが進化し、教育現場にどんどん導入されるようになりまして、
最近2025年はものすごい勢いで生成AIの精度が上がり、とうとう一人一人の学習にまで入り込んでしまう、パーソナライズ化してしまうという、そういった現象になっていって、どんどん生成AIが教育現場に導入されるようになりました。
その関係でガイドラインについてもどんどんフェーズが変わっていき、バージョン1.0では学びを守ろうとか、リスクを管理しようとか、ルールを整備しようとか、そういった管理的な視点が多かったんだけども、
バージョン2になってからは利活用とか、それから組織的にこの取り組みを対応して、もっと有効活用しようとか、リテラシーを育てようとかいうように、もう利活用に完全に軸足が移っちゃう、そういったガイドラインの内容になっていきました。
もう生成AI導入は避けられない雰囲気になってきていると思いました。
それに対して現場では、大学生とか大学院生がここ2,3年で爆発的に利用するパーセンテージ、利用割合が上がっていて、もう6割7割が使っている。
高校生ももう半分以上、5割、6割が使い始めている。けれども教員はどうなのかというと、3割、4割にとどまっているというのが、生成AIをめぐる教育現場の現状になっています。
つまり、子どもの方が先にAIを使って、教員側が追いついていないということが、この利用調査でわかると思います。
これにさらに拍車をかけているのが、いわゆる262の法則というものです。
この262の法則というのは、組織においてその構成員がどのように能力や意欲を分布させているかという割合のことで、
上位の2割が常に高い目標を掲げて主体的に行動し、高い成果を出すリーダー、エース級の人。
そして6割の人が指示や環境に合わせて、周囲に合わせて行動し、標準的な業務を遂行するフォロワーそうですね。
そして下位2割の人が目標自体が低い、あるいは持たない、指示を待ってなかなか成果が上がりにくかったり意欲が低かったりするという、
そういう262の法則というものがさらに拍車をかけて、いわゆる上位2割がグイグイグイグイ引っ張るという、そういうような状態。
これが掛け合わされ、さらにこれは笠原悟先生が、生成AIとともに書くことを学ぶ授業というスライドでおっしゃっていることなんですけれども、
AIを使うという、そういうふうなAIの活用の進化の割合というのが、最初に検索の代わりに初期的に質問や応答にAIを使うというところから、
利活用にちょっとステップアップするまでの、その壁がとても高くて、初期的にAIを使うからほどほど使えるっていう状態になるまでの障壁が高くて、
なかなか利活用まで進まないっていう、そういうふうな状況にあるのがAIなんですよね。
というように、今までのお話をまとめますと、子供の方が先に使って教員が追いつかない、そして262の法則、それからビギナーからそこそこ使える中級者になるまでの障壁がかなり高い。
こういう性質が掛け合わさって、上位5%の教員が全利用の約4割を担うっていう、こういう状況になっているのが、生成AIをめぐる現場の状況なんです。
だから積極的に使う少数の教員対依然として限定的な利用に留まっている多くの教員という二極文化が進んでいるわけです。
この二極文化によって、学校間あるいは学級間の学びの質の差が生まれやすくなっていると。
それに加えまた剥奪をかけているのが、認知相対速度っていうものがあって、認知処理能力が高い人ほど、つまり爆速でAIを使う能力がある人ほど相対的に周りの人が遅いとか導入がなかなか進まないとか、
なんでこういうふうなことをちゃんとできないんだっていうように、逆にイラッときてしまうっていう認知相対速度っていうものも格差を生む一つの原因になっている。
こういうふうに私は捉えています。だからトップ層をつなぐナンバー2みたいな存在が非常に重要になってくると思っていて、
トップほどガンガンにはいけないんですけれども、そこそこついていきたいと思ってるけどなかなかついていききれないっていうナンバー2、この位置にいる人が焦らず走りすぎず自分らしい速度で自分のポジションをしっかりキープしながら、
生成AIと継続的に付き合っていくっていうことが求められていると私は思っています。なので緩やかに焦らず楽しくAI活用していくことがとても大切になってくるのではないかと。
第3部:生成AI活用の提案
そのために私が提案したのは一番仲間を作ろうということです。そしてたまには無茶をしようということです。
特に私は生成AI活用長女子会というFacebookグループを開催していたり、時々はAwayの生成AI学習会にドーンと入ったりしながら、グループ、それから友達、そして生成AIについて学習できる仲間づくりを緩く作っていくというのは非常に大事なことなのではないかと思います。
それから2番目、自分なりにどうやって生成AIを活用し、どんどんレベルアップしていくかという活用イメージを持ちましょうと提案しました。
これは私がAIと壁打ちしながら何とかこう作った4つのパスポートモデルというのがありまして、この4つのパスポートモデルを皆さんに紹介しました。
まずは入国審査、自分が落語をする使い方、そして観光ガイド、生徒に見せる、そして短期滞在、ガイド付きで生徒に使わせる、そして第4段階永住権、生徒が自由に使う。
こういうふうにレベルを分けることによって、自分自身が今どの段階にいて、次はどのようにステップを刻んだらいいのかという生成AIの活用イメージの見通しが持てて、やはり安心して落ち着いて生成AIと勉強できるんじゃないか、生成AIの勉強を進めていくことができるんじゃないかというふうに思っています。
そして3番目、興味深かった取り組みを同僚に報告し合いましょうということで、これ面白かったよ、これ良かったよ、こうやると楽になるよといったことをお互いに軽くシェアすることによって、少しずつ刺激が生まれ、つながりも生まれます。
こうやってアウトプットをちゃんとしていく、ちょっとのことでもいいからアウトプットしていくというのが大事なことになるのではないかと思っています。
第4部:実践的な活用方法
そして第3部、どうやって生成AIを活用していくかという実践的なお話に次は行きました。
こういったとき、とても大事になるのは、AIを活用する前に、やっぱりしっかりした授業デザインが土台にないと、AIを活用してもただ空転するだけだと、こういうふうにお話ししました。
いわゆる探求型とか単元学習とか言われている授業の構造、これが自分自身きちっとデザインできて、このデザインの中にAIを活用していくイメージを持つこと。
これがAIに使われない、AIの空転を招かないという、そういう条件だということもお話ししました。
じゃあ例えばどうするかというと、レベル1の入国審査についてです。
まず先生が公務や教材研究で使うということで、学級通信なんかで使ってもいいし、教材研究の中で導入としての寸劇を提案してもらってもいいんじゃないかと、こんなことをお話ししました。
それからレベル2観光ガイドでは、生成AIが作ったものを生徒に見せて、間違い、それを指摘させたり、違いを指摘させたりという批判的な思考力を養うために使ってはどうかということをお示ししました。
それからレベル3の短期滞在では、生徒が私たちが作ったある程度のガイド、このガイド付きで使うということを提案しました。
例えば自分が作った意見文に反論を3つ挙げてくださいとか、というようにまず自分の考えを作った後でAIにそれを絡ませる、そういった使い方を提案しました。
そしてレベル4の永住研というのは、生徒がある程度生成AIというものの性質に慣れて、使いどころも判断できるようになってから、探求活動の中で自分自身の問いを深めたり、
AIと対話しながら調査計画を立てたりというように、独り立ちしながら生徒が自律的に学ぶというフェーズまでいきましょうというふうにお話をしました。
まとめ:未来への提言
ということで、こんなふうに話を続けていった後でまとめでございます。
私たちは今、AIという黒船が来航した歴史的転換点に立っています。
あなたは球体依然とした封建主義を守る立場にこのまま居続けますか。それとも坂本龍馬や葛藩主のように次世代を切り開いていく立場にいますか。
というようなことをまた繰り返し、その後で世界のエネルギー消費量と人口の水位のグラフを出しましてですね。
これから人口が爆発的に増加し、産業構造も変わってきているし、それからエネルギーの使われ方も変わっているし、経済的格差も生まれ、社会が大きく変化して不透明な時代だと言われている。
その不透明な時代に困難を解決するために私たちは、AIという武器を使いこなさないと問題解決のできない時代に差し掛かっている。
AIをまさに勉強していく必要のある時代に差し掛かっているというお話をした後で、
イスラエルのユバルノア・ハラリさん、これ有名な歴史学者なんですけど、21世紀の人類のための21の思考という、その本私読んだ中に非常に印象的な部分があったのでそこを切り取って皆さんにお示ししました。
世界の歴史をすべて研究し、ものすごい巨大な知識を持つこのユバルノア・ハラリさんは、未来を予言する歴史学者とまで言われています。
そのハラリさんが言った言葉です。
最も重要なのは、変化に対処し新しいことを学び、なじみのない状況下でも心の安定を保つ能力になるだろう。
2050年の世界についていくためには、新しいアイディア・製品を考えつくだけではなく、何よりも自分自身を何度となく徹底的に作り直す必要がある。
中略、経済的にばかりではなく、とりわけ社会的にも存在価値を持ち続けるには、絶えず学習して自己改造する能力が必要だ。
どうですか、皆さん。学び続ける主体でないと、この社会を切り開いていけないということなんですね。
未来を生きる生徒に未来を生きる力を育むことが我々教員の使命だと思います。
先を生きてきた者として知恵を授けるだけではなく、先を生きる生徒に未来を切り開いてもらう、そういう教育をしなくてはならない。
仲間と共に、ということで全体会の講義を終えました。
この後は先生方に4つのパスポートに従って、ご自身の実践例を挙げてもらうというワークを10分ほど行い、会を終了いたしました。
ということで、21分も喋ってしまいましたけど、この会に全体会の参加されなかった人でも、私の講演内容がこれを聞いたら分かるような図式になっておりますので、
勉強になったかどうかはちょっと分からないけど、ぜひ生成AI時代、ブレーキとアクセルを上手に使いながら、
見通しを持ちつつ、仲間と共に、時にはチャレンジして、時には皆さんと語り合いながら、どうにかこうにか先の見えないこの社会、新しい教育を形作っていけたらいいなと思っています。
それでは今日の配信はここまでです。聞いてくださりありがとうございました。またお会いいたしましょう。