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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
こちらの番組では、たくさんのワンちゃんや飼い主さんと関わってきた私が、
日本の犬と飼い主さんの急忙エールをあげるおテーマに、犬のあれこれについて、私個人の見解からお話ししています。
時には、子育てネタや留学時代や旅行の思い出などのお話もお届けしています。
トレーニングについての実践編、業界裏話、アニマルコミュニケーションについては、メンバーシップ限定の配信2でお伝えしています。
さて今回は、犬にとって必要なのはボス?それとも親?というテーマでお話ししていきたいと思います。
というのもこのテーマ、特に動物行動学やトレーナーの世界においては、色々と意見が分かれている分野でもあるからです。
犬のトレーニングや訓練の世界では、他の動物、特に犬の直接の祖先とされる狼の行動や習性にのっとり、
それを家庭圏の行動や習性に当てはめて考えるというものが長い間使われています。
この狼に対する研究が進んできていたのは、実はまだほんの数十年なんですね。
犬が狼と別れて人と暮らすように進化してきたのは、2万年以上前と言われています。
日本では以前はこの狼の行動様式から犬の行動を当てはめて考えられたり、説明をされることが多くて、
訓練法としてもそのようなものが多く取り入れられてきたと思われます。
例えば犬が噛んできたら、拳を口の中に突っ込む、マズルをつかんで体を上から抑えつける、
仰向けにして胸を抑え、抵抗しなくなるまで犬を抑え込む、などなど、
これらはどこからそういう行動をするというようにきたのかというと、
群れの上位である狼が、飼いの狼が反抗してきた時に使う制裁行動、
そこから人が犬に噛まれたり吠えられたり、いわゆる犬が人間を舐めているような時、
こうしてしつけをするということが、昔はよく言われていました。
また以前にもお話をしたことがあるんですけれども、犬と一緒のベッドで寝ると、
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犬が人間を舌に見て言うことを聞かなくなるというような都市伝説的な考え方も、
根本はどこからきたんだろうと考えると、
人は犬に対して優位にならなければ、犬は人の優位に立ってしまい、制御ができなくなるという考え方、
すなわち、人間は犬に対してボスであるべき、強くあるべきという考え方によるものです。
ですが、近年の動物行動学からわかってきたこととしては、
今までの狼の行動様式、群れの様式から考える犬の行動パターンというのは、
従来定説となっていることと異なっているということが徐々に明らかになっているんです。
ではなぜ異なった考え方がそもそも根底にあったのか。
その大きな根源は、狼の群れの行動様式。
この研究自体が、狼を不自然な状態で飼育し、人工的に管理をした結果、
野生の状態で見る狼の行動様式と大きく異なっていたということがわかってきたからなんですね。
人間が考えるよりもずっと現代に生きる狼たちは、慎重で滅多に人に姿を見せません。
それもそのはず、世界各国で狼は絶滅させられるほど数が減っている上に、
生き残っている彼らの血筋は紛れもなく、人に対して強い警戒心を持った個体のDNAを持っています。
人に対して好奇心を持った個体は、犬として進化を遂げてきたか、繁殖せずに死を迎えてきたか、
極端に言ってしまえばそのような背景がありますので、
今生き残っている狼たちというのは非常に人間に対して警戒心が強い個体と言われています。
狼の行動様式の研究においては、主に自然保護のために保護され、
区切られた保護区や施設、動物園で過ごす狼たちが今までは対象でした。
彼らは野生の状態ではなくて、狼の群れは仕方なく不自然な管理された状態で、
彼らが平和を保つために作り上げられた、いわば人工的な群れと言えるものだったのです。
そしてこれらの不自然な状態での狼の群れは、野生の状態での狼の群れと全く異なる行動をするということが近年の研究で明らかになり、
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それは様々な書籍の中でも取り上げられています。
私もいくつか動物の行動、狼の行動について書かれた本を読んでいますけれども、
その中でもいくつかの本が人工的に保護されたり、それから飼育をされている管理下に置かれた狼の群れと、
本当の野生の状態での狼の群れの行動様式は異なっているということが書かれています。
みなさんに質問があるのですが、狼の群れというとどんなイメージを連想されますか?
だいたいその狼の群れというのは何匹くらいの狼をイメージされるでしょうか?
よく昔のアニメなんかでは、狼に追い詰められるトビリトが、
10頭以上の狼の群れに囲まれて崖の縁に追い詰められるなんて、
そして1頭の攻撃を合図に一斉に狼たちが飛びかかってくるみたいなそんなイメージありませんでしたか?
今では野生の狼の群れは基本的には少数であり、その関係性も基本的には親子関係であるということが判明しています。
つまり、ならず者の集団で一番力の強い狼が力で群れを支配するということは基本的にはありえないと言われています。
一番強いオスの狼、これも基本的には過酷な地位争いの上にボスを獲得するものではなく、
血縁関係で成り立つ以上父親の狼が立場上は一番優位とされますが、
これも過酷ではなく、時と場合によっていろいろなものを母であり奥さんである狼や子どもたちに先に餌などを食べさせたりするということももちろんあるそうです。
そして狼の血族というのは、この家族を非常によく重んじ、子どもの立場が親にとって変わろうとする、
またはそうしたことを目的とした順位争いの喧嘩はしないというものが今は通説となっています。
これは狼が家族中心の少数の群れで狩りをする上で、互いの群れ、同士のテリトリーが非常に広く取られていることにも由来します。
野生の状態においては獲物を獲ることが命をつなぐこと、その獲物の捜索・捕獲のために全エネルギーを傾ける野生の狼たちは、無益な無用な争いでエネルギーを消耗したり傷つけたりするのは無益以外何者でもないんですね。
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ただし、他の並いる狼たちを力でねじ伏せて地位を主張しボスになるという行動が全く絶対に見られないかというとそういうわけではなくて、この行動は抑圧された不自然な状況でのみ、
狼たちが限られた空間と食料、そして血縁関係以外の同類と過ごす場合でいかに争い少なく平和に過ごすかを追求した結果、一匹の強い狼、つまりボスが群れを制すというスタイルに至るのです。
つまり、飼育された狼たちということですね。これは非常に面白い特性で、野生状態と管理状態でこれだけ行動様式が異なるということは近年になってわかったというのもうねづけるものです。
それでは、狼を祖先に持つ犬たちはどうなのでしょうか。犬たちにとって自分が暮らす環境、状況の中で必要なのは、力の強いボスなのでしょうか。それとも信頼をベースとした親なのでしょうか。
ここにおいては、いまだに研究が続けられている分野ではありますし、意見が分かれている分野でもあります。
ですが、抑圧された環境下での力での順位、序列による関係性になり得る場合も、血縁関係による尊重・強調重視の関係性になり得る場合もあるという結果が示されているのが面白いなと思います。
結局、状況によってどちらもあり得るという結論が、狼の行動様式には出ているんですね。
ただし、多くの家庭においては、力で言うことを聞かせなくてはならない状況に犬たちがいるとは、私はあまり思いません。
例えば、出身も経緯も違う数十頭の野良犬たちが、街のゴミ箱の権利を争って争いを繰り広げる。
その時には、力による争いが起こることは必須でしょう。
争いが起きないように、常日頃から経緯の主張、順位争いが仲間内で行われるということも、さもありない。
ですが、家庭という競争相手が少なく異色獣に困らない状況において、この経緯の主張は基本的には不要であると私は思いますし、
そのように主張する行動学者やトレーナーさんも多くいらっしゃいます。
家庭という場において犬は、自分がこの家族の一員であるということを認識し、
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自分の立場や状況を理解して、安心して暮らすために、
必要なのは力による支配ではなくて、あなたの身の安全は私が保障しているよ。
あなたの命をつなぐ食べ物は私があなたに与えてあげるよ。
という安心感を与えること。
この人は自分にとって良いことをいつもしてくれる人なんだ。
という信頼感を犬から勝ち取ること。
そのためには犬たちの行動をよく知り、理解した上で、
相手に人間や生活のことも理解してもらう相互理解が必要なのではないでしょうか。
犬には動物としての本能があります。
犬がご飯を食べているときには近づくなというお話でもお伝えしたように、
犬が食べているときに不容易に近づいて手を出すことで、
唸られたり噛まれたりすることもあります。
ですが、それは犬が飼い主に反抗しているとか、飼い主を下に見ているということではなく、
あくまでも所有本能に関わる警戒行動であり、
それを和らげる方法、予防する方法はいくらでもあるんです。
そういうことを知っておくことで、この犬の態度は反抗的だ、攻撃的だ、
こんな犬とはもう暮らせない、いつか自分を支配しようとするに決まっている、
と厳しい強制訓練をしたり、手放されてしまうということが
少しでも減っていけばいいなと私は思っています。
いかがでしたか。
本当の野生の状態での狼の行動、そしてコントロールされた血縁関係ではない狼たちの集団の行動、
これらがそれだけ大きく平和を維持するためにとる行動が違うということは、
私も初めて知ったときは驚きでした。
あなたのワンちゃんは家庭の中でどのような行動をとっていますか。
願わくば飼い主さんとワンちゃんの関係が信頼と安全、
この2つによる強い強い絆であることを望みます。
最後まで聞いていただきありがとうございました。