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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
犬と人の架け橋でありたい私が、犬に関する様々なお話、旅の話、子供たちの話などをマイペースにお届けしています。
より具体的なトレーニング、しつけの相談、質問回答などはメンバーシップでお話ししています。
時々、ゲリラでヒソヒソ歌うライブなんかもやっています。
さて、今回は、犬の要求に応えてる?犬の要求満たしてる?というテーマでお話ししてみようと思います。
え?犬の要求に応えちゃダメなんだよね?要求に応えると要求防衛するようになるって聞いたけど?と思った方、犬のしつけについてよく書かれたり言われたりしていることですよね?
これはもちろんその通りなんです。犬の要求防衛に応えることで、犬は吠えたら飼い主が自分の要求通りに動いてくれることを学習し、飼い主を自分の思い通りに動かすために吠えるようになります。
これは何も犬に限らず、すべての動物に適応される動物行動学では自命の理で、野生動物でもペットでも人間でも、動物自身が起こした行動に対しての結果によって動物は学習をし、行動が固定化されるという原理に則っています。
私は犬の要求に絶対に応えないという決意をすることは、実は飼い主さんにとっては難しいことだと思っています。だって可愛いですからね。
なんて言ったって、敵はこの世で最も可愛い、うるうるした目で、私の言うことを聞いてちょうだい?攻撃をしてくるわけですから、これを100%無視したり、応えないでいられるという方は、相当犬のトレーニングに熟練したプロか、全く愛情を持ち合わせていないという鉄の心の持ち主だけでしょうね。
というのは極端だとしても、私は過去、犬の要求に応えないということに苦痛を感じている飼い主さんをたくさん見てきましたし、犬の要求には絶対に応えないでくださいというトレーナーさんの指示がどうしてもできないと嘆き悲しむ飼い主さんを見てきました。
そこで疑問なのが、そもそもなぜ犬は飼い主に対して要求をするのだろうということ。
多くの犬たちを見てきた中で、すぐに要求する犬と対して要求してこない犬がいるということに私は気がつきました。
ではその違いはどこにあるのでしょうか。
皆さんわかりますか。
その違いはいろいろあると思いますが、大きな枠で括るとこういうことになると思っています。
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それは犬としての要求を満たされている犬は要求が少ないということです。
では犬の要求を満たしているということはどういうことでしょうか。
この結論をもう少し詳しく説明していくと、犬という動物としての要求・ニーズが満たされている犬は、
人に対して自分の主張を要求するという行動が少なくなるということです。
謎かけではないですよ。
すべての犬の問題行動はこの根源に尽きると言っても過言ではないのではないでしょうか。
皆さんは犬が犬として生きる上でどんなことが満たされたいと思っていると思いますか。
そこにヒントがあるんです。
犬には犬という動物としての本能的な要求があります。
それは人間にもある食欲・睡眠欲・性欲という基本的な三大要求のほか、
狩猟欲・運動欲・社会的愛着形成欲といったようなものです。
ただし、犬の性欲は繁殖欲と言われ、これは人為的に虚勢や否認によって削除されている部分が大きいですね。
今挙げた要求のほかにも、細分化していくといろいろありますが、説明をしていきたいと思います。
狩猟欲というものは、大きく分ければ食欲に分類されるものではありますが、
この狩猟というのは何かというと、つまり、自分で獲物を探して見つけ出して獲りたいという欲求になります。
生きる者はすべて獲物を探し、捕らえで殺し、食べて命を繋ぎ子孫を残すために生きているといっても過言ではありません。
野生の狼も、犬科の生き物たちも、ペットの犬たちも、そのサイクルに則って生きているわけですが、
ペットや家畜にとって、この探す・捕らえるから子孫を残すまでの作業はすべて人間のコントロール下に置かれています。
他方、野生の生き物は、獲物を探して捕らえて食べることに、その命の時間を大半費やします。
また、運動欲もそこに関わるものです。
獲物を探して捕らえるということは、一番身体的なエネルギーを必要とするものなんですね。
この命の時間に対して、大半の時間とエネルギーを消費すべき項目である
獲物を探す・捕らえて食べるにかける時間とエネルギーは、余剰分として今でも犬の体内に存在するわけです。
犬と人が一緒に生きてきた約1万5千年の間、犬たちは人の近くに暮らしながら
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この獲物を探して捕らえて食べるということに確かに時間を費やしてきました。
そして、余剰時間は人のパートナーとして様々な仕事で肉体的・身体的に使われてきたのです。
人のパートナーとして様々な仕事を受け負う形になった犬たちは
自分で獲物を探し出して捕らえて食べるという時間とエネルギーを
今度は人と一緒に何かを行う、人のパートナーとして共に仕事をするという方に
時間を使うようになっていきました。
そうなると、犬と人が共存し始めたその黎明期に比べて
人との愛着形成が強くなっていきます。
それは特に、純犬種といわれる犬たちに顕著な特徴として今でも見られます。
同族である犬同士よりも、動物種としては全く違う
人との愛着関係を強くしたい、社会的に集団的に
人との強く結びつきを感じていたいという犬の本能的な欲求は
これは野生動物には見られない特徴ですね。
そしてこれこそ、人間が犬、そして犬種というものを
作り出してきたことに起因する欲求であると思っています。
なぜなら、共に生活し、生きるための仕事を担うパートナーとして
人ではなく、同種同種の結びつきを選ぶ生き方であれば
命がけの、例えば狩りなどでは、安心して、信頼して犬に仕事をするという
命がけの、例えば狩りなどでは、安心して、信頼して犬に仕事を任せられないからです。
人は我が身を時には手してでも、同種の生き物よりも
人との愛着形成を好むという生き物、つまり犬たちを
人為的に作り出してきたのでした。
それが彼らの本能的欲求の一つである、人との社会的愛着形成欲求となっています。
そしてこれは特に、分離不安症などで
飼い主と犬の双方を悩ませる問題に発展することもあります。
獲物を探して捕らえて食べる、体と頭を働かせて人のパートナーシップを深める
というその時間配分は、近代に近づくにつれだんだんと時間が短くなっていき
現代社会で犬たちの担う役割は
狩猟の補佐、警備、荷物運び、警報器の代わりなどよりも
遥かに愛顔、癒しという役割が高くなりました。
つまり、いつでも家の中にご機嫌でいてくれて
触りたい時に触らせてくれて、遊びたい時に一緒に遊ばせてくれて
求められない時には、おとなしく落ち着いて家族を見守っている
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家族円満の中を取り持つマスコット的存在
これが現代犬に求められる一番の役割ですね。
ですが悲しいことに、この100年の生活様式のスタイルは
犬という生き物が作り上げられてきた15,000年のDNAを
いきなり変えることはできません。
彼らの遺伝子の中に眠る生き物としての欲求というのは
相棒のようであることではないんですね。
飼い主さんと犬の間に生まれる多くの溝は
この意識の違いから派生されているように私は思います。
つまり、お座り、待て、抱っこさせて、足を拭かせて、歯磨きさせて
おとなしく一人で留守番して、トイレで排泄して、
散歩で引っ張らないで、インターフォンに吠えないで
これらのことを犬に教える前に、犬と人が暮らすために
私たち人が知るべきこと、それは
生き物としての犬のニーズが何であるのか
ということだと私は思っています。
この生き物としての犬のニーズが満たされているのか
満たされていないのか、そこが問題行動の発生の分かれ道になります。
私はよく冗談で、1年365日、毎日最低でも3時間以上
犬と毎日違うコースをお散歩することで
ほとんどの問題は解決しますよ、とお客様にお話しすることがあります。
中には、小型犬だから散歩はいらないと言われました。
お散歩は毎日ではなくていいと聞きました。
と、うかがうこともありますが、私は安談とした気分になります。
散歩は排泄のためだけでも、社会科のためだけでも、運動のためだけでもなく
生き物としての犬の欲求、犬のニーズを満たすためにあるものです。
犬たちが人と暮らす以前から、そして人と共に暮らし始めても
長きに渡り、獲物を探し、匂いを嗅ぎ、世界の成り立ちを確かめ
他者と自分との結びつきを確認し
飼い主さんと同じ時間と体験を共有する場所はお散歩でした。
ただし残念ながら、1日3時間以上の散歩を
それに時間を費やせる人はなかなかいませんよね。
であれば、代わりに犬のニーズを満たすにはどうしたらいいでしょうか。
犬たちのニーズを満たすためには、先ほども挙げた
狩猟欲、運動欲、愛着形成欲が欠かせないとお話ししました。
全てを満たすことができる散歩は理想ですが
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要はこれらの本能的ニーズを満たす別の行動を犬たちが取ることができれば
犬のニーズは満たされ、結果として
飼い主に自分の要求を通すために激しく自己主張する
という犬の問題行動が減っていくんです。
そのためにあるのが犬のトレーニングである
ということは、これを聞いている方は薄々感じていらっしゃると思います。
私は器にご飯を入れて犬の前にシャスシャスなんて
この世で最もつまらないご飯の与え方ですよ、と伝えることがあります。
動物は食べるものを得るというモチベーションのために
あの手この手を尽くし、股間と肉体と精神をフル活動させるんです。
食べ物を得たいという本能的欲求を満たしつつ
そのために頭と体を使わせるトレーニングは
犬の本能的ニーズを満たします。
この点から行っても私はトレーニングに報酬として
食べ物を使うことはお勧めしています。
まあ中には進めないトレーナーさんや訓練士さんもいると思いますよ。
また、体を動かすトレーニングやドッグスポーツを犬とともに行う
それに通じて運動欲、つまり動きたいというニーズを満たすこともできます。
さらに飼い主さんに慰められたり褒められたり
ご褒美をもらったり目線を合わせたりすることで
社会的愛着形成欲を満たすこともできます。
犬の集中というものは一箇所に長くは続かないものですから
トレーニングはだらだらと長く続けるというものではなくて
いかに短時間で犬のニーズを満たすことができるのかが
キーポイントになるでしょう。
実際、トレーニングをしている犬とトレーニングをしていない犬
比べると驚くほどトレーニングをしている犬はトレーニングが大好きです。
これはトレーニングの方法を
それによっても犬の好き嫌いが分かれるところではあると思いますが
犬のニーズを満たすトレーニングができていると
犬たちは満たされているのでトレーニングすることを喜び
要求防衛などの要求をして訴えるということはなくなっています。
トレーニングの仕方、特に犬を恐怖や嫌視、罰ですね
罰で動かすトレーニング方法ではなく
犬たちが進んでトライしたい、やってみたい、考えたいと思わせる
これらは養成強化のトレーニングといいますが
この養成強化トレーニングは人の労力は少なく
犬たちには多大なエネルギーを使わせることができます。
次回は私も実践している犬だけ疲れさせるトレーニングのコツ
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自分で考える犬、自分で考えられない犬を育てるコツについてお話ししていこうと思います。
それでは今回も最後まで聞いていただきありがとうございました。