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ミシマ
みなさんこんにちは。ミシマ社ラジオです。本をあまり読まない人も本好きな人も思わずその本を読みたくなる。
そんな時間をお送りします。出版社ミシマ社が運営する本との出会いがちょっとだけ広がるラジオです。
フジモト
ミシマ社の三島邦弘です。そして、アシスタントのフジモトです。
ミシマ
よろしくお願いします。第1回ミシマ社ラジオ、ついに始まりましたね。
今回はですね、今年の初めに佐藤ゆき乃さんのデビュー作、『ビボう六』の発刊イベントが行われたんですけども、その模様をお伝えしたいと思います。
フジモト
フジモトさん、このイベントに参加されましたよね。参加させていただいて、すごく楽しい夜を過ごさせていただきました。
ミシマ
はい。この佐藤ゆき乃さんのデビュー作なんですけれども、この『ビボう六』、カタカナで「ビボ」で、「う」がひらがな、そして漢数字の「六」で『ビボう六』。
これ第3回の京都文学賞を受賞した作品です。「ちいさいミシマ社」というミシマ社のレーベルから発刊しているんですけれども、ちょっと帯コピーを読んでみたいと思います。
怪獣だって恋したい。現実に絶望する小日向さんと千年を生きるゴンス。夜の京都で出会ってしまった2人の運命の行方は。儚くも淡い希望が揺れては浮かぶ新世代のファンタジー。
とまあこういう帯コピーをつけたわけなんですけども、あのこの佐藤さんはですね、なんというかあのまあイベントこれから聞いていただいたらわかると思うんですけども、あのめっちゃ面白いですよね。
めっちゃ面白いです。はいこのデビュー作にして、まあこれが初めてのイベントだったんですけども、まあ初とは思えぬあの面白さで、イベント直前はですね。
本人はもう緊張して緊張してっておっしゃってたんですけども、どっこいもうなんというかこうベテラン2人、有松遼一さんという能楽師とあの僧侶・イラストレーターの中川学さん、この3人で鼎談していただいたんですけども、このベテラン2人をなんか押しのけるですね、押しのけるというかですね。
もうどんと主役に構えてもうおじさん2人も嬉々として大喜びするような展開になっていったんですけれども、あのやっぱこの日常からやっぱり非常にユーモアがあって、まあそのなんというかそのユーモアっていうのはやっぱ本人の結構やっぱまっすぐな
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ミシマ
ものの見方とか、まあそういうものがやっぱりベースにあるんだなっていうふうにも感じたんですけれども、この小説もですね、何度か改稿をしていただいたわけなんですけれども、まあそのたびに本当に面白くなっていってですね、
あの、まあ編集、私が担当したんですけども、まあちょっとこういうところ、こうした方が完成度良くなるんじゃないですかみたいな、まあ提案というか鉛筆入れをするとですね、もうなんか遥かにそれを上回る、一旦なんかこう受け止めてそれをさらに上に返してくるっていう、まあなんていうか本当にこう作家としてのまあこれからが非常に楽しみな、まあそういうやりとりがあったわけなんですけれども、
きっとあのこのイベントを聞いていただいた方々も、なんか今私が言っているその感じっていうのをあの感じてもらえるんじゃないかなというふうに思います。
あの中川さん有松さんの言葉をしっかり受け、いったい佐藤さんはどういう言葉を返していくのか、このやりとりがですね、まああのちょっと稀に見る面白さなんで、はい、あの存分に楽しんでいただければなというふうに思います。
フジモト
はい、『ビボう六』、これあのフジモトさんもお読みになったそうですがいかがですか、はい、あのゴンスがすごく優しくて、小日向さんとのその二人の夜の京都でのやりとりがとっても素敵で、あの名所、登場する場所があるのでまわってみたいなと思いました。
ミシマ
はい、そうですね、なんか京都巡りもさらに楽しくなるような一冊でもありますね、はい、あのこの佐藤ゆき乃さんっていう小説家のデビューをあの本当に、まああのこの本を通して皆さんにぜひ応援いただき、そしてまあ祝福していただければなと思いますし、まあこの佐藤さんのそして初めてのイベント、この瞬間この声を残せているっていうことも大変大きな喜びです。
それをこの第一回のミシマ社ラジオでお伝えできるのも大変嬉しいなというふうにも思っております。はい、では早速ですけど聞きいただければと思います。
どうぞ。
ミシマ社
最初お書きになったのは大学の時にお書きになったんですか。
そうですね、私は大学留年してるんですけど、別に素晴らしい、京都の立命館大学に通ってたんですけど、別にその立派な理由なく普通にダラダラしてて留年しちゃったんですね。
いいですね、いい感じですね。
あんまり女の子で珍しい、女子で留年するの珍しいって言ってるんですけど。
本当ですか、結構演劇やってて、ダラしない人が周りに多くて、すごい感化されちゃって留年しちゃったんですけど、5年生の夏休みにやることがなくて、就職活動もあんまりちゃんとやってなかったので、すごく時間が余っててお金がなくて、
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ミシマ社
京都文学賞の賞金が100万円って言われて、これは熱いと思って。
だいぶ僕の好物の人ですね。
すみません、本当なんです。
すごいいい感じですね、今日ちょっと盛り上がりさせていただいて、ちょっといろいろ話したいことになるので。
ありがとうございます。
そうなんです、その夏休みに書いたっていう。
ということは京都文学賞に向けてというか、京都にもいらっしゃるし、その京都っていうテーマで書いたっていう。
そうですね、大学のゼミの先生に今日見に来ていただいてるんですけど、ゼミの先生に京都文学賞っていうのあるよって進めていただいて、私ゼミも小説を書くゼミだったので、これはうってつけだと思って。
そうですね、京都に住んでるし、京都文学賞だし、しかも結構珍しいんですよね、地方文学賞で賞金が100万円もある文学賞って本当に珍しくて。
なのでこれはチャンスかもしれないと思って、京都で狙いを絞って小説を書こうと思って書いてみた。
これ拝読したときに、京都をテーマにした小説なので、こういう一都市とか東京とかじゃなくて、あえて京都にっていうのはどういう風な動機というかモチベーションとか書こうって思ったのかなってすごく思ってたんですけど、賞金はわかります。すごくわかります。
大事、大事。鳥山明さんも賞金狙いで。
そうなんですか。
応募したとか。
でもやっぱりお金のパワーがすごく力になるので、というのもありましたし、やっぱり京都で良かったのはファンタジーの舞台としてすごく向いている土地で、
ファンタジーってなると、あることないこと起こりそうな土地っていうのって限られてると思ってて、そういう意味で京都って何が起こってもおかしくない不思議な雰囲気がある場所なので、という意味でもすごい自分がやりたいファンタジーに合致したっていうのはあって、
なのですごく舞台として選んだのはやっぱりそういうファンタジーをやりたかったというのはあります。
小説書く人に野望な質問かもしれないんですけど、この主人公の女の子と佐藤さん、割とリアルな取材もなさっているそうなんですけど、この人物に対する重なりとか投影みたいなのはありますか。
ミシマ社
でも結構自分とは違うタイプっていうか、私はこういう病み方はしないというか、こういう感じでどんどん狭いところに入っていくし、
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ミシマ社
そこまでしなくてもっていうくらい自分で倍にさらに倍にみたいな感じで悩んでいくタイプの人だと思うんですけど、結構そういう人を書きたくて、
やっぱりそういう人の心情って絶対面白いじゃないですか。読み物として感情の幅が広い人って面白いと思ってて、
でもこういうタイプの悩みを持っている人とか、こういうふうに病んでいく人が自分の同世代は結構いがちだなって思うんですね。
やっぱりSNSがあって当然の世代っていうのもあるかもしれないんですけど、やっぱり美醜にとらわれている外見至上主義みたいな人はすごく多くて、
そういう人ってこういう、偏見かもしれないんですけど、こういう狭いところに入っていく病み方をするので、そういう人を今の時代に、かつ自分が年齢が近いうちに書いておくっていうのが一つ意義があるかなというか、
読み物として新鮮だろうし読みがたいあるかなって思って迫っていった感じなので、結論から言うと自分とはちょっと距離があるんですけど、
でもやっぱりだからこそ、楽しんでというか、やれたかなって思います。
割と1人称でズバーっと行くところがすごいですね。
そうですよね。散らかってるは散らかってるんですけど、やっぱり自分が心情描写をやろうと思う時はいつもどの程度整理したらいいのかなって思うんですよ。
その綺麗な文章に、読みやすい文章にするってことはもちろんできるとは思うんですけど、やっぱり病んでる時の人の考え方って混沌、ぐちゃぐちゃしてそうなんですよ。
急に加速したりとか急にズンってなったりとかっていうのをなるべくそのまま行けたらいいなと思って、そういうふうに書いたんですけど、
結構人によっては嫌かもしれないなって思いつつも、でも結構熱量は入れられたかなと思っているので見どころの一つです。
同世代が書いてるから、すごいそこでもリアリティを僕らが感じるんですよね。
確かにおじさんとしては。
やっぱり囚われてるんだろうなと思うんですよね。その密集だとか何か規制の価値観にね。
その囚われるのが多分妖怪っていうことだと思うんですよね。
仏教的に言うと、仏教的に言わなくてもいいですけど、妖怪って多分煩悩の形なんだと思う。
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ミシマ社
煩悩に囚われちゃって物事が正常に見れない。人間ってみんなそうだって言うんですけど、
その中でも極端に囚われちゃった人が見るものが妖怪だとか。
そうすると自分の姿形も妖怪のように思えてくるとか。
これ交互にピュアな妖怪の世界と人間のすごい囚われた世界と交互に書いてるけど、
どっちが妖怪やねんみたいな問いかけがあって、そこがすごい深いなと思いました。
泉鏡花っていうのが好きで、絵本にしたりしてますけど、結構鏡花もそうなんですよね。
めちゃめちゃピュアな妖怪たちと、割と俗にまみれた人間たちが悪いやつに出てきたりとかっていう構図があって、
それは明治大正戦前のドラマですけど、あんまり変わってないなっていうか、
小説というものが変わってないっていうか、そういうところが永遠のものなんだろうなと思いますよね。
鬼とか妖怪ってやられちゃうんですけど、結構帝側というか大正側の都合で討伐しに行ったりするんですよね。
大山なんか酒呑童子が宿貸してあげるのに騙されて殺されちゃうんで、
どっちが妖怪みたいなのはずっとありますよね。
鵺って別に悪いことしてないですよ。泣いたぐらいです。
そうなの?
確かに。
帝が怖いって言ってたっていうね。
確かに。
ひどいですよ、確かに。
でもそれは京都の場所の魑魅魍魎がいるっていうのが、やっぱりこの『ビボう六』が東京のお話じゃ成立しないというものなんですね。
ミシマ
佐藤さん本当に面白いですね。
これもう本当にですね、3時間でも4時間でも聞いてたかった、そういうイベントなんですけども、ぜひフルバージョンで聞いていただければなと思います。
全編、有料版で聞いていただけますので、ぜひお聞きください。