技能検定の意義
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員をしているすみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、そこで働く人たちの思い、そして工業高校の教育の現場を紹介していきます。
実は今日、技能検定機械検査3級の実技試験が行われました。
鏡原のVRテクノという場所で行われたんですけども、私は試験委員として立ち会ってきました。
この技能検定というのは、公的にも認められた試験で、例えば会社に入っても、この技能検定のいろんな職種があるんですけども、
2級や1級、もしくは特級を取れば、給料が上がるとか、手当がもらえるとか、
そういったことで、各製造業では結構推奨されている資格なんです。
ですから、これを取得して就職に生かすということもできますし、就職に生かせなくても、工業高校で技能を身につけたという一定の証拠にはなるんですよね。
ですから、私は航空機械工学軍の1年生を対象に、みんなで一緒に資格を取ろうということで呼びかけて、80名ぐらいの1年生が受験するということになりました。
これはだいたい例年通りの人数ですね。
実は、あのギフ工業高校のOBのある企業の社長さんが、こういった資格の援助をしたいということで寄付をしていただいているんですよね。
これも鏡原のVRテクノという企業の団地の中にあるAMD自動機の井本さんという社長さんなんですけどね。
その社長さんが毎年寄付をしていただいているお金の中から補助を出して、そして1年生はこれをきっかけに何か資格や工業に興味を持ってくれて、
その後製造業に進んでくれたらいいな、ものづくりが好きになってくれたらいいなというふうに思っております。
部活動と資格取得
今日はその資格取得への私の思いや考えをまとめて皆さんにお伝えできたらなというふうに思っております。
本校に入学してきた1年生はなんとなく工業高校に入学してきたという子も多いと思います。
でもせっかく機械のことを学ぶのだから少しでもその面白さを知ってほしい、そんな思いから資格取得を促しています。
中でも私が特に受けてほしいと願っていたのは部活動に励んでいる生徒たちなんですよね。
私は以前野球部の監督や部長を長年勤めていましたので、その経験から確信していることがあるんです。
それは部活動を頑張りながら資格を取るという経験こそが本当の意味での分部領導であり、工業高校での分部領導とはこういったことじゃないかなというふうに思っているんですよね。
その努力は社会に出た時に必ず評価されるということです。
だから今回生徒たちには一つだけ厳しい条件を出しました。
それは資格試験のために部活動を休まないことです。
これは私も顧問をやってた時に思ってたんですけども、資格で休みますって言われると、おいそれはダメだとなかなか言えないんですよね。
もうそれだったら行ってこいということになります。
だけれども資格試験の勉強があるから部活を休みますっていうことでは本当の力ってつかないんですよね。
部活動が終わってクタクタになった後とか、練習がない隙間時間を見つけて資格の勉強をするからこそ分部領導と言えるんです。
ですから私は今は運動部の顧問ではありませんので、みんなには部活が終わった後や部活がない時、その日に練習に付き合うから申し出てくれということを伝えてあります。
そう伝えたら生徒の中には冬休みはもちろん年末の12月30日とか年明けの1月3日といった、本来なら部活も学校も休みの日に先生お願いできますかというふうに申し出てやる生徒もいるんです。
私からしたらそれが本当の分部領導だよというような眼差しで練習する風景を見ています。
旗から見ればこれは非効率かもしれませんよね。部活を休んで勉強した方が合格に近いんじゃないかと言われるかもしれません。
でも私はそう思わないんですよね。
さてこうして生徒たちが頑張る一方で、実は少し考えさせられる出来事もありました。
ある生徒と保護者から部活の試合と試験日が近いため顧問から試験を受けるなと言われたというクレームが入ったんです。
よくよく話を紐解いてみると、これは完全なボタンの掛け違いでした。顧問の先生は受けるなとは一言も言っていません。
試合が近いけれども試験の日程は変更できないのかと確認したんです。
それを生徒が試験の日程は変えれないから受けさせてもらえないってことだと解釈して、心配した保護者の方が声を上げられたというのが真相でした。
保護者の方の言い分は、部活動の練習があるからといって資格試験を受けられないのはおかしいというものです。
対応した教頭先生もそれはごもっともですと答えていました。
世間一般的に見れば、部活動よりも将来に残る資格取得の方が優先されて当然と思われる方が多いでしょう。
しかし私は資格をこうやって推奨する立場でありながらも、あえて問いかけたいんですよね。
本当にそうですかと。
私は資格試験を受けることが間違いだとは思いません。
しかし、部活動を優先して試験を受けないという選択もまた間違いではないと思うんです。
生徒自身の選択
なぜなら私たちは何のために部活動をやっているんでしょうか。
ただの運動不足解消ではありませんよね。
デクレーションでもありませんよね。
仲間と共に汗を流し苦しい練習を乗り越えて、勝利を目指して心を一つにする。
だからこそ卒業してもクラスメイトとは違う特別な強い絆が生まれるのが部活動です。
勝っても負けてもその濃密な時間は青春の一ペッシュとなって一生の糧になるんです。
もし大事な大会直前のチームの指揮を高める一番大切な練習を資格試験だからといって抜けてしまったらどうでしょうか。
そこで得られるはずだった仲間との信頼、一体感、そしてやり切ったという思いは本当に手に入るのでしょうか。
ここにAIが出すような最適解はありません。
資格を取るのが正解か、部活を取るのが正解か、そんなものはどこにもないんです。
大事なのは生徒自身が自分は何を得たいのかを考え自分で決めることなんです。
今回は資格を諦めて仲間のために戦うと決めるのも良し。
チームに迷惑をかけるが自分の将来のために資格を取りに行くと決めて頭を下げるのも良し。
どちらを選んでも痛みは伴いますし何かを犠牲にします。
でもその痛みを引き受けて自分で腹をくくることこそが大人になるための勉強ではないでしょうか。
そこに親御さんが先回りして怪我をしないように嫌な思いをしないようにと
うちの子に試験を受けさせなさいと道を作ってしまうのは少し違う気がするんですよね。
高校生というのは葛藤して悩んで自分で答えを出す
その非効率で苦しいプロセスを辿ってからこそ自分のアイデンティティーでできていくんだと私は思うんです。
AI時代の人間の挑戦
ここでふと思うんですよね。今世の中はAIが急速に進化して効率化がすごいですよね。
無駄なことはしない。最短距離で正解を出すことが良しとされています。
スマホを見れば興味のある動画や情報がどんどん目に入ってきます。
チャットGPTに聞けば何でも答えてくれます。
でも今日真剣な眼差しでノギスやマイクロメーターを握る生徒たちの目つきを見て改めて感じました。
やってみないとわからないことがあるということです。
自ら動かなければ決して味わえない気持ちがあるということです。
私たち大人は過去を振り返ればその事実を知っているはずですよね。
それはAIがこれはやめといた方がいいと言ってやらないことかもしれません。
いわゆる非効率なことかもしれませんが、やってみたら良かったということなんていくらでもあるんですよね。
AIが提示するオススメの正解だけをなぞるだけでは人間成長できないと思います。
自分のアイデンティティを作るこの時期だからこそ、自分で考えて答えは自分が決めるという気持ちで判断していってほしいなというふうに思います。
私は生徒たちの姿を見るのが好きです。
合格して喜びを爆発させる笑顔もちろん、上手くいかずにうちひしがれて泣き崩れる姿も青春の尊い地平子ですよね。
その姿は私の心を自殺さぶります。
喜怒哀楽をさらけ出して泥臭く足掻く人生、それこそが人間じゃないでしょうか。
人間らしい成長の姿ってそういったところにあるんじゃないでしょうか。
だからこそ私たち大人の役割は、効率よく結果を出させることではなくて、彼らが安心して挑戦できる環境を作ることなんです。
上手くいかない時があってもいい。
フスコとヒサシキは飛ぶこと必ず高しという言葉があるじゃないですか。
全然結果が出ていなくても、それは高く飛ぶための準備期間なんだと。
信じて彼らが自分の力で答えを見つけるのをじっと待つということも大人の大事な仕事じゃないでしょうか。
効率化の時代にあって人を育てるということは一見すると最も非効率なのかもしれません。
しかしこれほど人間らしく素晴らしい仕事はありません。
今日の試験会場で生徒たちの真剣な横顔を見ながら、私はその誇りを胸にこれからも教団に立ち続けようと改めて思いました。
人間性と判断力
今回は技能検定という試験に対しての思いを語らせてもらいました。
どうでしたか。
最近1か0か、白か黒か、なんかはっきりさせたいのかなと思う人がたくさんいるような気がしますが、
人間なんか結構グラデーションだと思うんですよね。
バランスが大事だと思いますし、どっちかに決めなければいけないこともありますが、
時によってはどっちに傾いてもおかしくない状況っていうのはいっぱいありますよね。
だからこそ判断をどうするのかでその人そのものが決まってくるんじゃないかなと思います。
その判断が客観的に見て素晴らしいと思えるような判断が下せる人間になってほしいなと私は思います。
私もまだまだだと思いますけれども、いろんな方にいろんな刺激をもらいながら今後もやっていきたいなと思います。
未来をつなぐものづくりは毎週月曜日4時に配信しております。
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ではまた来週お会いしましょう。さようなら。