3Dプリンターの進化
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員をしている、すみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本の製造業を支える企業の技術や、
そこで働く人たちの思い、そして工業高校での教育の現場を紹介していきます。
今週はですね、日刊工業新聞というマイナーな新聞があるんですけども、
その新聞社に、岐阜工業高校の100周年記念ということで、
いろんな企業に寄付をいただいて、記事を投稿していただいたんですよね。
その原稿を作るにあたって、私が学校の情報とかですね、
日刊工業新聞の記者の方と一緒に、こう作り上げた経緯がありまして、
この度、県内企業の講演会並びに、懇親会にお招きいただきました。
その際に、講演会の中では、3Dプリンターについて話があったんですよね。
その3Dプリンターとはどんなものかといったら、
普通のプリンターというのは、紙にインクを載せて印刷しますよね。
そのインクが樹脂に変わったような感じです。
樹脂を紙の上に印刷すると、少し盛り上がるような感じになりますよね。
それを何層も何層も何層も重ねて、立体のものを作るというのが3Dプリンターです。
今回はその3Dプリンターを使った企業の話を聞いてきたんですけども、
その内容について教育の現場と関連づけてお話できたらなというふうに思っております。
しかし最近の3Dプリンターというのはすごく安価で、しかも性能が良くなっているというのは皆さんご存知ですか?
Amazonで3Dプリンターを買おうと思ったら、だいたい3万円もあればですね、
結構高精度な3Dプリンターが買える時代になりました。
中国製が主なんですけども、すごい性能がいいですよ。
10年も前の3Dプリンターとは比べ物にならないぐらいのスピードと正確さ。
最近はそんな3Dプリンターが安価で手に入るという時代になってきています。
今回お話を伺った企業の社長さんは、自ら中国へ足を運び、最前線をこの目で見てこられたという方なんですよね。
驚いたのはその物量です。
中国の工場では何百台何千台という3Dプリンターがずらりと並んで、
24時間体制で製品を印刷しているんですよね。
もはや試作機という段階ではなく、完全に量産のための主力工場ということで稼働しているんです。
教育における課題
この3Dプリンターのメリットというのは、一つ一つが持ち運べるような大きさなんですよね。
なので驚いたのがその機動性を使って、今ロシア・ウクライナの戦場では、
なんと最前線すぐ近くに3Dプリンターを運び込んで、ドローンの部品をその場で作っているそうなんですよね。
確かに今までだと工作機械なんてことは持ち運びできるような品物ではなかったんですけれども、
3Dプリンターだったら持ち運べますよね。
大きな工場を作ってトラックで何日もかかって運んでいた部品が、
今やデータの送信ボタン一つで、必要な場所でその瞬間に形になる。
そんなような時代になっているんですよ。
さらに技術面でもこれまでの常識は通用しなくなってきています。
従来の削る加工では、ドリルが届かない場所には穴を開けられませんでした。
例えばドリルはまっすぐな硬いものでできていますから、まっすぐな穴は開けられますよね。
湾曲したような穴は開けれないという常識ですけれども、
しかし3Dプリンターは積層されて作られるので、湾曲した穴とか複雑な穴を金属の中に血管のようにうねる水路のように作ることだってできるんですよね。
これまでの加工の常識に縛られない新しい設計思考が必要とされる時代に来ているんです。
実は金属製の3Dプリンターというのもあって、もうすでにロケットの部品とか航空機の部品というのは作られているんです。
なのでもう身近なものとして3Dプリンターの製品というのは知らず知らずに使われているという現状なんですよね。
さてこれだけ3Dプリンターが普及してきている中で、教育の中ではどう使うのかということですよね。
これを大いに活用すべきだと思っています。
具体的に言うとこのものづくりに携わるという経験が年々小中高生含めてですけれども少なくなってきています。
プラモデルすら作ったことないという生徒はたくさんいるんですよね。
じゃあ中学校の技術家定価でどれだけのものづくりができているのかといったらこれもだんだん減ってきているんですよね。
調べてみると1970年代だと年間合計で140時間程度技術家定価の時間というのがあったんですよ。
それが現在は3年間合計で175時間。
つまり年間50から60時間程度技術家定価をしているということになります。
私たちの世代、50歳ぐらいだと男子は技術をやる、女子は家定価をやるなんてことをやっていましたけれども、
今の時代は男子生徒も家定価、女子生徒も技術を男女平等にやることになっていますので、
さらに技術の時間は半分ずつになり、さらに技術の中でも加工だけではなく、
最近はプログラミングもやらなきゃいけないし、環境についてもやらなきゃいけないし、植物の育成とかですね。
そういったこともやらなければいけないというふうに聞いています。
なので実際に手を動かして物理的なものを加工する時間というのは必然的に削り取られているのが現状です。
さらにやはり今一番問題なのは怪我をさせないという配慮です。
怪我をしたら本人もそう、そして保護者にも大変迷惑をかけるということで、
教員の立場から言うと、なるべく怪我のないような学習のないようにしたいというのが本音です。
ですからあらかじめカットされたキットを組み立てるだけということが最近の流れになってきています。
時間がない、そして怪我もさせれないなんてことで、技術過程化の中のものづくりがだんだんと試行錯誤のない、
面白くないものづくりになっているのが現状なんですよね。
ですから高校生でも入学してきた後に実習っていうのがあるんですけども、
実習の中でびっくりするような危険なことを平気でやっちゃったりすることもあるんですよね。
例えば何も抑えもなくドリルの刃を工作物に当てようとしたり、
そんなことをすると工作物がぐるぐる回っちゃいますよね。
そういったことも含めて、ものづくりについては経験してきていないなっていう子が多くなってきて、
さらに危険度が増しているというのが現状です。
CADと3Dプリンターの活用
それに想像性が育っていないのかもしれませんね。
例えばプラモデルを作ると完成から逆算して、
これこうなってこういう形になるかななんてことを説明書を見ながら作ったりしますけども、
そういったことがないので、なかなか3Dの立体に平面図をイメージし直すということが難しい生徒も結構いるんですよ。
そんな現状でものづくり人材を増やそうと思っても、なかなかこれは難しいなという現状にあります。
しかし今日話した3Dプリンターというのを、
例えば中学校の技術家定科で使えるようにしたらどうでしょうか。
3Dプリンターを使うには、3D CADで図面を立体図形を作ってそれを出力すればできますから、
3Dプリンターの利点とデメリット
簡単にまずは毛がなくものづくりができるというのはメリットがありますよね。
そして自分で想像力豊かにものが自由に作れるということで、
ものづくりの面白さ、醍醐味が出てくるんじゃないでしょうか。
やはりそういった経験があって、もっと本格的なものを作りたいとか、
そうなってこれば、ものづくり人材の確保にもつながってくるんじゃないでしょうか。
ただデメリットもありますよね。
じゃあ3Dプリンターどうするのという話です。
3Dプリンター先ほどの話だと3万円台でだいぶ安くなりましたよと言ってもお金がかかりますよね。
例えば今回お話を伺った企業だと、
3Dプリンター結構出荷するときに初期不良といって不良が出ているものがあるんですよね。
それを修理してまた販売するということになるんですけども、
なかなか修理するより新しいのを渡した方が早くて安いんですよね。
じゃあ初期不良のものはどうするのかといったら、
それを直して初期不良品を安価で教育機関に下ろしてもらうとか、
そういったことはこれからの取り組みでできるんじゃないかなというふうに考えています。
そしてもう一つ問題なのは、
学校の授業で使うには大きな壁として、それは時間の壁というのもあるんですよね。
3Dプリンターは形にするのにどうしても時間がかかります。
削り出しや金型なら数分で終わるような形でも、
積層していく3Dプリンターだと時間がかかって、
大きなものなら一晩かかってしまうことも珍しくありません。
実習の時間が限られていますから、
チャイムが鳴るまでに完成品を手に取らせてあげたいなと思うのが教員の本音ですけども、
ただそれがなかなか難しいかなというふうに思います。
物は考えようで、例えば放課後にスイッチを入れて、
翌朝教室のドアを開けたら形ができているとか、
ちょっとしたワクワクとかドキドキという完成を待つ時間、
こういったのを作ってあげるというのも逆の発想ではいいのかもしれませんよね。
このような時間のデメリットを逆手にとって、
効率だけではない思考を深めるプロセスとして実習に組み込むということも必要なのかもしれません。
何より最近の生徒たちはデジタルに強いですからね。
デジタルへの抵抗はありませんからね。
3D CADを活かして、そして3Dプリンターを駆使して、
自分の好きなものを作るということを喜びとして捉えることができたら、
これはまたものづくり人材が増えていくきっかけになるんじゃないかなというふうに思っています。
今日は3Dプリンターについての可能性について話をしました。
教育現場での活用
今Amazonでも3Dプリンターなら3万円程度で手に入るという話をしましたけれども、
これは学校が安全という壁を乗り越えて、
再び生徒たちに自由なものづくりを取り戻させるための最高に安くて強力な武器になると思うんですよね。
怪我を恐れて立ち止まるのではなく、新しい技術というものを手に入れて、
失敗を恐れずにトライアンドエラーを繰り返してほしいなというふうに思っています。
そしてその先には、かつ日本が持っていたものづくり精神が復活するんじゃないかなというふうに期待しています。
皆さんの周りでもデジタル技術で変わろうとしている現場はありますか?
またそんな話をぜひお聞かせください。
個人的には3Dプリンターを使った実習というものを構築してみたいなと思っています。
これはまず工業高校で構築し、それをもう少し短時間でできるようなものを、
中学校の技術家定科でできるような内容をカリキュラムとして下ろせるような内容を作ってみたいなというふうに思っています。
またこれは来年度からの課題ということで取り込んでいきたいと思います。
それも楽しみにしてください。
未来をつなぐものづくりでは、毎週月曜日7時から放送しています。
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ではまた来週お会いしましょう。さようなら。