求人倍率の現状
こんにちは。岐阜県の工業高校で教員を務めている、すみです。
この番組、未来をつなぐものづくりでは、日本を支える製造業の技術や、
そこで働く人たちの熱い思い、そして工業高校の情報などもお伝えしていきます。
今回は、求人の状況についてお伝えしたいと思います。
7月1日に高校生の求人が解禁されましたね。
昨年と同じか、それ以上に求人倍率が高くなりそうです。
ちなみに求人倍率とは何かということですが、生徒一人あたりに何社の求人があるかという数値です。
昨年本校では20倍を超えていました。
つまり生徒一人に対して20社の求人があるということなんですね。
かなりの売り手市場となっています。
この状況というのは、過去、教員を務めてきて初めての状況ですね。
こんなに求人倍率が高いということは、過去一度もなかったです。
売り手市場というのがどんどん白車をかけているように感じます。
今回はその状況を受けて、生徒からの視点、企業からの視点、そして教員側の視点と、
3社の視点でこの状況を考えてみたいと思います。
では現在の高校生を取り巻く環境として、
職業の選択の自由という点から少し考えてみたいと思います。
昔は、例えば農家は農家を継ぐというようなことであったり、
何か事業をしていたら、それを継ぐという習慣があったと思います。
ただ現在は、憲法でも職業の選択の自由というのは、
権利として認められていますから、そういうところは少なくなってきていると思います。
そんな現在でも、生まれながらに職業が決まっちゃうという職業もあるんですよね。
知ってますか?
義父県には有名な武戒というものがあるんですけれども、
武将さんが武を巧みに操って、愛をとるということなんですけれども、
久内町保護下の下で行われているので、
武将さんというのは厳格な伝統を守らなければならないんですね。
なので後継はその家に生まれた男兄男子に限るということなんです。
なので武将さんの中には、3人目まで女の子で、4人目でやっと男の子ができたとか、
もしくは息子さんはとても優秀で東大に進んで防衛省に入ったけれども、
途中で辞めて帰ってくるとか、そんなことがあるみたいですね。
その他日本の伝統芸能でも、摂取制度というのはあるみたいですね。
歌舞伎や能や、小さい頃から稽古を積み重ねないとなかなか身につかないというところですかね。
職業が自由に選択できるということは、当たり前ではない世界もあるということです。
現在の高校生はほとんどが自由に自分の職業を選ぶことができます。
ただ自由が故に、非常に選択が困難だということにもつながっています。
例えば農家の子が農家を継ぐとか、刀鍛冶屋さんの息子が継ぐとか、
小さい頃から見ているので、どんな仕事なのかがイメージがつきやすいですよね。
しかしどんな職業でもいいよと、自由だよと言われたときに、
どれだけの職業を高校生が知っているかといったら、ほとんど知らない、見たこともないということがほとんどだと思います。
その中で選んでいくということは、どんな仕事かイメージがおぼろげながらで選んでいくということになるので、
自分の思いとマッチするかどうかというのは非常に難しいと思います。
そんな状況の中で、生徒側の視点というと、どのような思いで、どのような考えで職業を選んでいくのかということになってくるんですけれども、
従来の成功モデルは、良い高校に行って、良い大学に入って、大企業に入って、そして定年を迎えて、余生をゆっくり過ごすということが、
現在は必ずしもこれが成功のモデルとして、生徒たちも同じように思っているかといったら、ちょっとクエスチョンがつきます。
なぜなら、先ほども話しましたが、どんな仕事をやっているのかという具体的なイメージが持てない以上、
判断基準が名前が聞いたことある企業とか、大きな企業であるということが、企業を選択する一つの目安になってしまうんですね。
当然そのような大企業は、給料や休日も条件が良いですから、親も大賛成ということになるんですが、
ただそういった大企業と呼ばれるところに就職しても、辞めてくる生徒が一定数いるんですよね。
それはどうしてかなというふうに考えているんですけれども、これは私の試験ですけれども、
女性の権利だけではなく、いろいろな権利が今認められつつあると思います。
人権の意識の高まりとか、個人の尊重というのが非常に身近で高まっているというふうに感じています。
そしてそれはどういうことかといったら、自分らしく生きろという社会のメッセージが今の世の中の風潮にあるんだと思います。
そしてSNSの発達により、スマホでインスタグラム等を見れば、自分じゃない誰かがキラキラしているというように見える。
そんなような情報伝達の発達によって、本当に自分はこのままでいいのだろうかというような問いが生まれるんじゃないかなというふうに思います。
自分らしさ、自分らしく生きていないんじゃないか、働けてないんじゃないか、
そのような問いとともに自分自身の職業をもう一度見つめ直すという生徒がいるんじゃないかなと思っています。
せっかく待遇がいい会社に就職しても、辞めてきて次の仕事を探して転職する生徒はそういった影響があるのではないかと考えています。
その結果として高校生の離職率は3年で約30%と言われています。
企業の人材確保の課題
これは企業側の人材確保の思いと、生徒側の自分らしさを求める思い、
そして職業選択の自由を生かしきれていない現実とのミスマッチが大きな原因の一つだと私は考えています。
それでは企業側の視点を見てみたいと思います。
これは生き残りをかけた人材確保の思いといても過言ではないと思います。
深刻な人材不足の現状と、
資本主義社会において企業が存続するためには労働力を確保する必要があります。
労働力が確保できない会社は淘汰されていく、
仕事があっても倒産する確率が出てくるということは近い将来現実化してくるんじゃないかと思っています。
それをやはり避けるためにはいかに人材を確保するのか、
これは本当に企業にとっては視覚問題だと思っております。
特に製造業では技能の伝達をしていくためにはなるべく若い人材が必要ではないかというふうに思っております。
一つの技能を体得するためにはやはり時間が必要だからです。
なるべく年齢的に若い方がその時間があり、技能、技術の習得につながると考えています。
しかしなかなか高校生、特に工業高校生を採用することは非常に難しい状況になっています。
それは工業高校生の中でも進学者が多くなってきているということもあります。
そして工業高校の人気そのものも落ちてきているため、入学者数そのものが減ってきているということもあります。
限られた人数の中で人材を確保するためにはどうしても魅力を発信しなければいけません。
その魅力というので一番わかりやすいのが初任給と休日です。
高校生の初任給が20万、これは多くの会社がそのボーダーを超えてきています。
さらに休日で言うと120日を超える企業が多くなってきています。
初任給を上げました。休日を多くしました。
求人状況と自動化の進展
これがどの企業もアピールポイントとして高校生に訴えているところです。
どの企業も人材不足の改善方法として自動化をどんどん進めています。
その自動化を進めれば当然人件費は少なくなりますし
人手不足というものが解消されていくことにつながります。
これから多くの企業がロボットだけではなし
人間型のロボットも含めて自動化を進めていくと思っていますが
それと同時に職人技のように人しかできない技能を標準化して
マニュアル化し誰にでもできるようにするということも取り組んでいます。
そうすれば少ない経験でも熟練した技能者のように
仕事ができるということになるということです。
しかしこれはまた難しい問題ですね。
いっちょいったんで機能というものは身につきませんし
マニュアル化するのも難しいでしょう。
さらには誰にでもできる仕事になった時に
本当にそこにやりがいはあるのでしょうか。
人としてそこで自分が働く意義というのを見つけられるのかということも
また問題になってくると思います。
中小企業では前回放送した大堀研磨工業所のように
いかに人が大事かということを考えている中小企業もたくさんあります。
そういう企業は逆に初任休や休日を大企業と同じように
競争の土俵に上げるのではなく技能の高さそして人しかできない仕事
そして中小企業ならではの人とのつながりの良さ
そういったものを数値には現れにくいですけれども
武器としていく必要があるのではないかというふうに思っておりますし
またこれからの高校生はそういったことも求めているんじゃないかというふうに
私は思うところがあります。
高校生の職業理解
最後に教員側の視点です。
では私たち高校の教員はどうすればいいのでしょうか。
企業側の切実な人材確保の思いと
生徒側の自分らしさを求める思い
この両方を理解し架け橋となる責任があると思います。
まず生徒により深い職業理解の機会を与える必要があります。
工場見学もたくさん行っておりますけれども
それだけでは足らないので実体験をどう補うかこれが大きな課題です。
同時に生徒自身の自己理解も深めていかなければなりません。
そして何より大切なのは
普段の生活や普段の会話から企業が求める人材と
生徒が求める自分らしさが一致するポイントを見つけ出し
アドバイスすることが私たちの役割だと思います。
職業選択の自由という権利を真に生かすために支援していく
これが現代の教員に求められる重要な役割だと感じています。
私の音声配信も少しでも多くの企業の良さが伝わったり
また工業高校生の理解につながれば幸いかというふうに思い発信しております。
どうでしたか?
求人の受付は始まったばっかりでこの先どのぐらい増えていくのか
どんなような、どのような傾向があるのか
また追ってお伝えしたいなというふうに思っております。
時代は急激に変化する中、価値観も大きく変わってきています。
その中でどのように働くということを定義付けるのか
それと職業はどのような関係にあるのかということを
もう一度考える必要があるのではないかなというふうに思っております。
そして生徒たちが将来的に誇りを持てる仕事を
自分の職業として選んでくれたら嬉しいなというふうに思っています。
最後までお聞きいただきありがとうございました。
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