2024-03-21 09:33

【朗読】#33 キラキラ

週も後半。ちょっと疲れたなあ、そんなときこそひとやすみ。喫茶クロスロードでは毎週木曜日、月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。/今月のテーマは「卒業」。今日は何年経っても忘れない、大切な思い出にまつわるエッセイ「キラキラ」/ 書き手:志歩/語り:志歩


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⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠キサクロおたより箱⁠

サマリー

エッセイ『卒業』では、卒業式やプロフィール帳を通じて卒業の思い出について語られています。

卒業式とプロフィール帳
スピーカー 1
カランコローン
スピーカー 2
いらっしゃいませ。喫茶クロスロードへようこそ。 いよいよ週も後半。
ちょっと疲れたなぁ。今週もなんだかバタバタしていたなぁ。 そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ一休み。 ここでのんびりしていきませんか。
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日 月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
スピーカー 1
今月のテーマは卒業。 今日は、何十年たっても心の中に残り続ける大切な思い出に関するエッセイを
スピーカー 2
私、志穂がお届けします。 それではどうぞ。
【朗読】 志穂
スピーカー 1
子供の頃は定期的に卒業式があった。 6歳で保育園や幼稚園を卒園
12歳で小学校を卒業。 15歳で中学校を
スピーカー 2
18歳で高校を。 4年生大学に行けば22歳前後で大学を卒業する。
スピーカー 1
しかしその後は卒業から遠のく。 もちろん数十年前と比べて一つの会社に一生勤めるばかりの時代じゃないから
転職したり起業したりするタイミングである種の卒業は迎えるが そこでセレモニーをするわけでもなし
スピーカー 2
しって言えば定年退職時くらいか 卒業と聞いて思い出す情景がある
小学校卒業の頃 当時私はクラスの中でポツンと一人ぼっちでいることが多かった
スピーカー 1
5年生までは決してそんなことはなかった 友人関係のいざこざや悩み不安は人並みにあったけれど
スピーカー 2
一日中誰とも話さない 休み時間に一人寂しく机に座っているなんてことはおそらくそれまで一日もなかっただろう
スピーカー 1
原因はなんとなくわかっていたが明確なきっかけがあったわけでもない ただ徐々に徐々に私の周りから友達が離れていき
6年生の秋頃には私はクラスで一人ぼっちになったのだ 寂しい恥ずかしい
心細い情けない 心の中に泣きたくなるような気持ちを抱えながらそれでも弱い姿を見せたくない私は必死に強がり
なんともないような顔で日々を過ごしていた いよいよ卒業を目前に控えた3学期
スピーカー 2
クラスの中ではプロフィール帳の交換が盛んに行われていた
スピーカー 1
クラス替えや卒業のタイミングでプロフィールを記入するための用紙を友達に渡し 渡された人はその項目に沿って自分の名前や好きなもの
スピーカー 2
将来の夢などを記入して持ち主に返すという主に女子の間で大流行していたものだ 私もやりたい
スピーカー 1
そう思ってよく行く文房具屋さんでプロフィール帳を購入した しかしすでに一人ぼっちが定着していた私にとって誰かに用紙を渡すことはすごく
エネルギーのいることで せっかく買ったのに誰にも渡せず家にしまい込んだまま時間だけが過ぎていった
スピーカー 2
いよいよ卒業まであと1週間 私は真新しいままのプロフィール帳を学校に持っていった
卒業の思い出
スピーカー 2
どうしよう 緊張する
スピーカー 1
でも よし
スピーカー 2
これ 書いてくれる
スピーカー 1
うんいいよ あ私のも書いて
スピーカー 2
勇気を振り絞って伸ばした手には私のとはまた別の とても可愛い空欄のプロフィール帳があった
あれ 思ったよりも普通だ
急にほっとしてその後ぶわっと涙があふれそうになった 強がりな私はその場では必死にこらえたけれど
スピーカー 1
チャイムが鳴って次の授業が始まった後窓際の席から校庭の方を見て一人泣いた 卒業した後は引っ越しをしてみんなとは別の中学に入学したが
スピーカー 2
最終的に全ページ埋めることができたプロフィール帳 私は何度も見返した卒業とは一つの区切りだ
スピーカー 1
その区切りがあるから頑張れたりもする いつまでもこの時が続くわけじゃない
それが見えているから疎遠になってしまった友達に話しかけることができたり 叶う見込みの薄い相手に思いを伝える勇気が持てたり
体力と精神力のすべてを捧げて何かに打ち込むことができたりする 瞬間的にものすごいエネルギーを放ち
スピーカー 2
驚異的な行動力や集中力を発揮することで後の人生に残る 大切な思い出になることも多い
アドラー心理学の本 嫌われる勇気にはこんな一節がある
スピーカー 1
今ここに強烈なスポットライトを当てよ 人生全体にうすらぼんやりとした光を当てて過去や未来を気にするのではなく
今ここに強烈なスポットライトを当てて今できることを真剣に丁寧にやるのだと 大人になって学生時代を思い起こすとなんだかキラキラして眩しく感じてしまうのは
スピーカー 2
卒業という区切りがあってそのおかげで今ここに集中できていたからなのかもしれない
あの時無意識に当てていた強烈なスポットライトが数十年経った今も その光を失っていないからなのかもしれない
スピーカー 1
社会人になると過去の経験から失敗を繰り返さないようにしようとか 先を見据えて計画を立てようとか今だけに集中できないことも多い
スピーカー 2
けれど人生を充実させるためには時に過去も未来も気にせずに今を思いっきり楽しむ時間を意識的に持つことも必要なのかなと思う
スピーカー 1
そして数十年後おばあちゃんになって人生を振り返った時 学生時代だけじゃなくて何歳の時もキラキラと輝きを放ち続けている
そんな時間をこれから歩んでいきたいと思う いかがでしたか
さて名残惜しいですが閉店のお時間です 今後も喫茶クロスロードはあなたがほっこりした時間を過ごせるよう
毎週月曜日と木曜日夜9時よりゆるゆる営業していきます また4月からは
ほどく あなたの心をゆるっとほどくエッセイ朗読
という新番組として木曜日のエッセイ会が独立リニューアルします 4月以降
スピーカー 2
キサクロの番組概要欄に新しい番組へのリンクが紹介されますので そちらからフォローしていただけると嬉しいです
それでは本日はお越しいただきありがとうございました またお待ちしております
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