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2023-09-14 09:43

【朗読】#10 人生の先輩は自分で決める

週も後半。ちょっと疲れたなあ、そんなときこそひとやすみ。喫茶クロスロードでは毎週木曜日、月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。/今月のテーマは「人生の先輩」今日は、人生の先輩の見つけ方についてのエッセイ「人生の先輩は自分で決める」/ 書き手:さっちゃん/語り:虹

00:04
スピーカー 2
カランコロン
スピーカー 1
いらっしゃいませ。喫茶クロスロードへようこそ。 いよいよ週も後半。
スピーカー 2
ちょっと疲れたなぁ。今週もなんだかバタバタしていたなぁ。 そんな気持ちが膨らんでくる頃ではないでしょうか。
そんな時こそ、ひと休み。 ここでのんびりしていきませんか。
喫茶クロスロードでは、毎週木曜日、 月ごとのテーマに沿ったエッセイ朗読をお届けしています。
今月のテーマは、【人生の先輩】
今日は、人生の先輩の見つけ方について、 さっちゃんのエッセイを、私、にじがお届けします。
それではどうぞ。
【人生の先輩は自分で決める】 さっちゃん
スピーカー 1
昔から本であれば、わりと何でも読む子だった。 ところが、読もうかなぁと思っても、なんとなく読めない本が、
実家の本棚に二冊ある。 どちらも福音館書店の古典童話シリーズ。
スピーカー 2
海底二万回りと砂の妖精という本だ。 私が十歳ぐらいのころ、
母と一緒に異動図書館に行った。 両親が本好きだったので、普段から県や市の図書館など、いろいろ連れて行ってもらっていた。
その日は、初めての異動図書館。 テンションが上がった私は、こまっしゃくれたことを言った。
スピーカー 1
私、本読むの早いよ。 子供の本は結構たくさん読んでるし、
スピーカー 2
十冊借りてもすぐに読み終わっちゃうからなぁ。 すると、それを聞いていた異動図書館のおじさんからこんなことを言われた。
スピーカー 1
それって、読んでいるって言えるのかなぁ。 例えば、この冒頭の一文を読んで、頭の中で風景を思い描けるの。
スピーカー 2
漢字とってるの? 本当に読むっていうのは、一文一文をじっくり味わって読むんだよ。
早く読むのがいいことではないんだよ。 子供の記憶なのであやふやなところはあるが、だいたいはそういう意味のことだった。
03:07
スピーカー 2
そしてその時、私は生意気なことを言っていた自分を恥じると同時に、 こう思った。
そっか、私ってちゃんと本を読めていないんだなぁ。 文章を読んで情景が心に思い浮かばなくちゃだめなのか。
スピーカー 1
でも、あんまりそんな情景なんて思い浮かばないし、 私って感性が鈍いんだなぁ。
スピーカー 2
本が好き、本を読むのが好きって言っちゃだめなのかも。 ちゃんと本を読めていない自分という小さなコンプレックスが生まれた。
スピーカー 1
冒頭の二冊、海底に満帰りも砂の妖精も、いつか読みたい本だったのだが、
スピーカー 2
分厚いし私はこういうの味わって読めないタイプと思い、 なんとなく手が伸びなくなってしまった。
スピーカー 1
中学生、高校生とコミックやラノベを読むのが楽しくなってきたことも相まって、
スピーカー 2
感性が鈍い自分像が心のどこかに潜む、 そこが凝り固まったままずっと過ごしていた気がする。
さて、それから三十年ぐらい経った現在、 今、私はとても軽やかに本を読むことを楽しめている。
感覚としては雪どけのように、徐々に固まった部分が溶けていった感じだ。
よくよく振り返ると、固まった心を溶かしてくれたことに、 影響していそうな二つの出来事がある。
スピーカー 1
大学生の頃、音楽系のサークルに所属。 音楽は好き、でも感性が豊かではない自分だから、
スピーカー 2
きっと私は本だけでなく音楽も心から感じ取れていないんだろうな、 みたいなことをある日ふと話した。
スピーカー 1
すると先輩が、 どんな好きでも好きは好きだし、
スピーカー 2
それがあれば十分なんじゃない? 自分が好きと思えばそれでいいと思う、
と言ってくれた。 目から鱗がボロボロと、
スピーカー 1
音楽に限らず本も一緒だ。 情景が浮かばなかろうが、感じ取れなかろうが、
スピーカー 2
私は本を読むのが好きなんだし、自分の好きなふうに読んだっていいんだ、 と心が軽くなった。
また仕事を始めたての頃、 ある仕事で自分以外全員40代以上の男性という会合があった。
06:02
スピーカー 2
私はつき添いだが一応招かれた側。 休憩時間に相手方のお偉いさんが私にいくつか質問をしてくれた。
これについてどう思う? つまりこれってこういうことなんだよね。
スピーカー 1
見るからに駆け出しで、間違いな私がその場で居心地が悪くならないように話を振ってくれたことはわかる。
悪意は全くない。 にもかかわらず私は、
スピーカー 2
あ、この人は私を教え導こうとしているぞ、と、ちょっとだけ違和感を持った。
そして移動図書館のおじさんのことを思い出した。
ああ、あの時も私は自分が望んでいなかった方向に教え導かれそうになっていたのかも、 とストンと踏に落ちた。
十歳の私は知らなかったけど、二十歳を超えた私は知っている。
スピーカー 1
人生の先輩は、とかく人を教え導きたがるものだし、 それはとてもありがたい。
スピーカー 2
だけど、だからこそ自分の感性に従って、 良いと思うアドバイスだけを聞けば良いはずだ。
誰を人生の先輩にすべきかは、私自身が決めればいい。
移動図書館のおじさんは、私より長く生きている先輩として、 私に本の読み方のある一つの視点を教えてくれた人。
でも、そのアドバイスに、がんじがらめになる必要はなかった。
スピーカー 1
サークルの先輩は、共に楽しい時間を過ごす仲間として、 私の考え方を変えてくれた人。
スピーカー 2
そんなことを覚えていないだろうけれど、 今、私は二十年経っても、その言葉を覚えて、 こうやってコラムに求めていたりする。
言葉の力ってすごい。 最後に、最近感じた言葉の力を一つ。
このキサクロラジオで、 一冊でも好きな本があれば、その人は本好きと言っていいんだよ、という言葉があった。
スピーカー 1
最高だと思う。 人生の先輩は、自分で決める。
スピーカー 2
年齢や立場じゃなく、私に響く言葉をくれた、 その人が、私の人生の先輩。
09:02
スピーカー 2
いかがでしたか。 さて、名残惜しいですが、閉店のお時間です。
今後も、喫茶クロスロードは、あなたがほっこりした時間を過ごせるよう、 毎週月曜日と木曜日、夜21時よりゆるゆる営業していきます。
それでは、本日はお越しいただき、ありがとうございました。 またお待ちしております。
09:43

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