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  2. #45 PMIとテセウスの舟
2025-06-07 13:36

#45 PMIとテセウスの舟

◆PMIにおける「同一性」と「変化」◆
買収後のPMI(Post Merger Integration)では、ルールやガバナンスを導入するだけではなく、対象企業の文化やコア価値を尊重する姿勢が重要になる。哲学的な「同一性」の問いを参照し、企業文化もまた変化しながら連続性を保てると考えるべきだと説く。テセウスの船や鰻屋のタレの例を用い、同一性は「許し」と「約束」によって維持されるという見解を紹介した。

◆変わる部分と守るべきコアの線引き◆
PMI成功の鍵は、相手企業が大切にしてきた価値観や仕事観を肌感覚で理解し、守るべきコアと変えるべき周辺領域を明確に伝えることにある。コアに対する敬意を示しながら、変化を伴う統合を進めることで、不安や反発を最小限に抑え、協働を促す土台を築くことができると述べた。


◆Personality:きりん

外資系コンサルティングファームやBIG4系FASにて、新規事業立案プロジェクトに多数従事し、事業計画策定やビジネスケース作成、企業価値算定等に携わる。

ベンチャー・事業会社では経営企画/経営管理として予算策定、予実管理、着地見込や予予管理を中心に企業価値向上を担う。


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◆Note:https://note.com/logicalkobo

サマリー

このエピソードでは、PMIと同一性についての話題が展開され、特にテセウスの舟の例を通じて同一性の概念を探求しています。また、過去と未来の自分のアイデンティティを維持するための「許し」と「約束」の重要性にも焦点が当てられています。PMIの過程において、組織のアイデンティティを維持しながら変化を促す方法が論じられています。コアの部分と周辺部分の理解が重要であり、どのようにルールを設けるかがポイントです。

PMIと企業文化の調整
おつかれさまです。経営企画のたばこ部屋、45回目の配信です。
戦略コンサルから事業会社の経営企画FP&Aに転身したきりんが、今日も経営企画の日知な話題をお届けしております。
今日のテーマはPMIでございまして、結構PMIに携わることも多いんですね。
本社の立場からですね、グループ会社として新しくジョインした会社に対して、何かしらですね、ルールを入れていったりとか、それでいいでシナジーを出していたりとか、
いろんな行動変容を促しながら、一緒にやっていきましょうね、というような立場なんですけれども、なかなか文化的に合わないところがあったりとか、下手にやると反発を招いてしまったりとか、結構センシティブな話なんですよね。
そりゃあまあそうだなというところで、自分も子会社の立場だった時はあるんですけども、いろいろと親会社からいろんな要求が来たりとか、ともすれば文化を破壊するようなことをやってきたりとかですね、
結構めちゃくちゃされたなという気持ちもあるんですよ。だから不安だなっていうのは当然思いますし、人間誰しもですね、そんな親会社に変われたからといって、すぐに変わりたいわけではないし、今までどおりやりたいしというふうな気持ちになるんだと思います。
だから今回PMIの話をするにあたって、少しですね、いろんな本を読みまして、同一性とか変化とか、そういうキーワードでいろいろ調べ物をしたものがありますので、それを少し話してみたいなという思いでございます。
親会社からするとですね、いろいろルール守ってもらいたいとか、セキュリティの基準が満たしてもらいたいとか、いろいろあるとは思うんです。ミッションとかビジョンを共有したいとか、KPIの管理もちゃんとやってねとか、いろいろ言いたいとは思うんですが、ここのこれをうまくやる上でですね、変化を伴うわけですし、とはいえ子会社のいいところである文化とかという同一性というものは、それはそれで担保した方がいいというふうにも思うわけで、
それでこの変化とか同一性というテーマになります。ちょっとややこしい話になるかもしれませんが、頑張って紙くだいで話していこうと思いますが、まずは最初はテセウスの船の話からいこうと思います。これは同一性という概念を理解する上で、一つよくある逸話なんですけども、
イメージするとですね、100個の部品、100個でも何個でもいいんですけども、いくつかの部品を組み合わせて作った船があるというふうに考えてください。このうちの一つの部品が古くなって取り替えたとしましょう。99個は元の船のまま、たった1個だけ同じパーツなんですが、新しいものに取り替えましたと。これは別に元の船と言っていいじゃないですか。
ただ、これを繰り返していくと、50個目とか60個目の部品を取り替えました。95個目、6個目というふうに取り替えていくと、やがてこれは元の船とは言えないんじゃないかというふうに思いませんかというのがこのテセウスの船の問題提起なんですね。もうちょっとわかりやすい例で言えば、うなぎ屋のたれを想像していただくといいかなと思います。
親の代から私の店ではですね40年間次々使われた分だけ補填して作っているんですよというそんなうなぎ屋のたれがあったとしまして、もうそれって普通に考えたら元のたれとは全然今違うものが中に壺の中に入ってませんかというふうに思ったりするじゃないですか。
こういうところですね、この同一性って何だろうというその問いをですね、我々に突きつけてくれるのがこういったテセウスの船の話、引きに言えばうなぎ屋のたれの話ということがあります。ここから話をスタートしてみましょう。つまり同一性とは何かという問いが今あるわけですね。それが同じ船なのかどうなのかっていうところに答えを一つ出してみたのが、
えーとですね、私が読んだ本の一つで小坂いとしあきさんっていう方がいるんですけれども、この方が言うにはですね、同一性というものなど本来存在しないものであると、虚構であって観察者に現れる錯覚でしかないのだと、これがあるからこれは同じものであるっていう本質、コアみたいなものは別に存在しなくて、
あくまで見ている人がそれは同一であるというふうに思い込んでいるだけなのであるというふうにおっしゃるわけですね。
アイデンティティの維持
同一性なんか存在しないのであると。ここまで言われて、ん?って思うじゃないですか。私たちっていうのは、私という存在は同一であると、アイデンティティを持って日頃から暮らしてますよね。
この我々というアイデンティティというものは確かに存在するじゃないかというふうに思うんですけれども、これについて答えを出してくれているのがもう一冊読んだ豊さんという方の本なんですけれども、後で言いますね、どういった本だったかというのがあるんですけれども、この方が言うには、我々のアイデンティティというものは常日頃変化しながら、でもコアというものを持ちながら将来的に同じ人格であるということを担保しているという話をしていて、
それが言葉で言えば許しとか約束というものを経て同じアイデンティティを保持しているというふうにおっしゃいます。ちょっとややこしいんですけれども、例えば許しという概念は、昔何かした、昔自分が何かしたことに対して今ずっとそれに引っ張られ続けると、それはそれで過世になってしまうじゃないですか。
何か満引をしましたかわかりませんけれども、昔やってしまったことの許されなければ永遠にもうあなたはそういう人間だねって言われ続けるとかっていうのがあると、ただそれについてちゃんと償い許しを得ることができたら、そういう時もあったけれども今はちゃんと社会のルールを守って立派に生きることができる人間ですというふうに自分が変化したということができるじゃないですか。これがいわゆる許しを表すわけですね。
約束というのがもう一つのテーマなんですけども、言葉なんですが、これは今の自分と将来の自分の同一性を担保するっていうためのものであるというふうに言うんですね。
今私はこういう生活をしたいというふうに思っている、そしてこれを将来にわたって続けたいと思っているっていうその約束をした場合、今の自分と将来の自分を同じであるというふうに保証すること、これが約束だというんですね。
話を戻すと、アイデンティティというものがこの許し、過去から今の自分が必ずしも同じものではないという断絶をしても良いという、これは許し、かつ今から将来に向けての自分のアイデンティティを同じものだとして、コアを大切にするコアを保証すること、これは約束というふうに本屋さんは言ったわけですと、
この許しと約束をもって、同一性というものを我々は担保しており、観念しているのであるというふうに言うことができるというふうにおっしゃいました。
つまりですね、本質が変わらないから同一なのではなくて、何かしら他者との関わりの中で許しを得て約束を守るということで、この同一性とおぼしきものが形成されていくのだと。
難しい話をタラタラとしてしまいましたけれども、秘伝のタレで例えましょうか。
うちは過去、いろいろとここのうなぎ屋のタレは美味いんだよって言われてきましたが、昔からちょっと変わりたい、うちはこういう味にした方が本当は美味しいと思うんだよなという新たな代の店長がいたとして、
昔にとらわれず甘くしていくのだと、場合によっては何なら辛くしていってもいいと思っているんだよなみたいな、そういうことを考えたとしたら、
過去にとらわれず今のタレの味を変えるという、これは許しを得るということだと思うんですね、お客さんに対して。
これからもしかしながらですね、この自家製の醤油は絶対に使うのだと、このタレを作るときにこの醤油だけは使うのだと、
これがコアだとした場合には、これを約束して今後もこのタレのアイデンティティを守っていくということに表現できたりもするかもしれません。
何が言いたいのかっていう話に多分戻った方が良くてですね、この同一性という概念っていうのは本当は何が同一で何が変化なのかっていう話をちょっと
哲学的なところも含めてされていた本を引用しましたけれども、
PMIの文脈に戻れば、変化をしながらその会社の良いところを維持するということが求められているはずですよね。
誰しもやっぱり変えられてしまうということが怖いですし、この怖くなく変わるためにどうしたらいいのかっていう、そういう問いを掲げるといいのかなと思いました。
このPMIをする上でですね。
本質的に同じものっていうものは存在しないというのが小坂井さんの立場ですし、構成物は変わると。
PMIにおけるアイデンティティと変化
しかしながらそのアイデンティティを維持するためにコアの部分とその周辺部分とというのがそれぞれ存在するということがこの議論の中で分かったとは思いますけれども、
それを前提とした場合にPMIにおいてですね、アイデンティティ、組織のアイデンティティというものを同一性を維持しながら、
それでもってうまく良い変化をもたらすためにはどういう向き合い方が良いのかというのがこれからの話になるのかなと思います。
具体的にどう活かしていくかという話ですけれども、
変われた企業があったとして、その会社が過去どのように顧客から認められてきてアイデンティティが形成されてきたのかという、まずはそのコアの部分を見定めることかなと思いました。
その会社が大切にしていること、そのミッションビジョンバリューとかそういう表現されている言葉のみならずですね、
本当に一人一人の従業員の方が大切にして働いていることは何なのかみたいなことを肌感覚で理解をしていくっていうところがまず第一ステップなのかなというのが、
このPMIにどう活かすかという意味では答えの一つかなと思っています。
この部分ですね、このコアを肌感覚で理解するっていうことが非常に難しくて、やっぱりそのためには現場に足を運んで一緒に働いてみて、
お客と向き合う中でどういった部分をこの人たちは大切にしているのか、お客さんにちゃんと向き合うことなのか、あるいは一つ一つの仕事を丁寧にやりたい、
時間がかかったとしてもちゃんとやりきりたいっていうところなのか、いろんな人々それぞれあるとは思いますけれども、
その部分についてちゃんと理解をする、肌感覚で理解をしているっていうふうに思ってもらうことも含めて大切であろうと。
その部分ですね、そのコアの部分、会社の一部になったとして、その部分は必ず維持していいんですよという約束をその会社とする部分があっていいと思います。
それは給与水準もそうかもしれませんし、雇用の確保とかもそうだと思います。
一方でこのコアの部分以外のところ、それ以外については変わるし変えていくことが必要であるという、
さっきの話が約束なのであれば、しないっていう約束なのであれば、この部分は許しを得るような部分ですよね。
過去から現在への断絶みたいな話になってくるかと思います。
これは共通のセキュリティの水準かもしれませんし、倫理のルールかもしれませんし、
要は変わらない部分と変わる部分、これをはっきり言語化して惜しみなく伝えていくことかなと思います。
PMIで大切なのは、ガバナンスでどうしても入れやすいですし、単なるルールを押し付けるだけで変わってしまうっていうふうな話になるので、
どうしても先にそういうルールばっかり押し付けるようになるとは思うんです。
その中でそれが仮に周辺部分、あまりコアに関わらない部分だったとしても、どんどんルールばっかり押し付けられると、
自分たちの大切にしているところすら変えられてしまうんじゃないかっていうふうに現場の方は不安になるであろうと、
そう考えることが必要で、であればそのコアな部分を我々はちゃんとわかっていますよと示して、そこの部分は変えなくていいですと。
でもルールはルールであるので、これは変えてくださいねっていうその線引きですね。
コアの部分と周辺部分の理解と線引きをちゃんと伝えていくっていうことが必要ではないかというふうに言えるかと思いました。
今後の展望と提案
こういった形で同一性を維持していただきながら変化を促すという部分について少し語ってみましたが、
あんまりうまく話せた気がしていません。ちょっとややこしい話になってしまいましたが、
この同一性とか変化とかですね、こういうものに興味を持っていただいた方がいれば、
ぜひこの2冊の本を最後にあげておきますけれども、そちらを読んでみていただければ面白いかと思います。
1冊目がですね、このトヤさん、トヤヒロシさんという方の責任と物語という本。
もう1冊が小坂井俊明さんの矛盾と創造という本ですね。
それぞれですね、いろいろと哲学的に自分とは何かみたいなことをもっとちゃんと論理的に組み立てて書いてくださっている本ですので、
ご興味があればぜひとに手に取っていただければと思います。
今日は同一性とか変化とかそういったところからPMIにどういうふうに生かしていけばいいのかっていう結論が結構抽象的な話になってしまい恐縮なんですけれども、
そんなところで、ある種読書感想文みたいな話でございましたけれども、終わりにしたいと思います。
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以上です。お疲れ様でした。
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