1. 情報科学のまわり道
  2. #36 宇宙に「推し」と「日本酒..
2025-10-26 15:51

#36 宇宙に「推し」と「日本酒」を届けた日 ― H3ロケット7号機とHTV-X1

2025年10月26日、H3ロケット7号機がHTV-X1を載せて打ち上げに成功。ISSへの補給だけでなく、VTuberを宇宙へ送る「推し宙プロジェクト」や、宇宙で日本酒を醸す「獺祭ムーンプロジェクト」など、文化的にもユニークな挑戦が盛り込まれました。Alive Studio運営者として、そして日本酒好きとして、宇宙と文化が交わる瞬間を語ります。


【参考リンク】

🛰️ H3ロケット7号機・HTV-X1打ち上げ特設ページ(JAXA公式): https://fanfun.jaxa.jp/countdown/htv-x1_h3f7/

🌌 推し宙プロジェクト(公式サイト): https://ssc.sorae.info/

🍶 獺祭ムーンプロジェクト(旭酒造公式): https://www.dassai.com/moon/


----


【栗林健太郎とは】

GMOペパボ株式会社取締役CTO、日本CTO協会理事。博士(情報科学、JAIST)。大学卒業後、市役所勤務を経て、2008年よりIT業界へ。2012年よりGMOペパボ株式会社。現在、取締役CTOとして技術経営、新規事業創出に取り組む。2025年3月、博士号取得。インターネット上では「あんちぽ」として知られる。


【各種リンク】

🌐 ホームページ: https://kentarokuribayashi.com/

🐦 X(旧Twitter): https://x.com/kentaro

💬 Discord: https://discord.gg/SXyKFCyMd5

✍️ 質問フォーム: https://forms.gle/8mrzUJNYXmkKuetu7

サマリー

2025年10月26日に打ち上げられるH3ロケット7号機と無人補給船HTV-X1のミッションについて取り上げています。このエピソードでは、VTuber関連商品の運搬や、ダッサイ日本酒の宇宙醸造実験など、宇宙開発と文化の新たな交差点を探っています。

00:07
こんにちは、栗林健太郎です。
このポッドキャスト、情報科学のまわり道では、情報科学の博士号を持つソフトウェアエンジニアの栗林健太郎が、
好奇心の赴くままにまわり道をしてきた中で見えてきた風景や考えについて語っていきます。
H3ロケット7号機の打ち上げ
今日のテーマは、H3ロケット7号機とHTV-X1の打ち上げです。
本日、2025年10月26日、鹿児島県の種ヶ島宇宙センターから、日本の主力ロケットH3ロケット7号機が打ち上げられました。
私もですね、ライブ配信を見てたんですけど、素晴らしい打ち上げでしたね。
今回のH3ロケットは7号機で、さらに外部ブースターが4つになった推進力が大きいタイプのシステムになっていて、
それもあって迫力のある打ち上げシーンで、とっても感動的でした。
そのH3ロケット7号機には、新型のHTV-Xという無人補給船が搭載されています。
今回初めて飛ぶことになったので、そういうこともあって注目されていたんですけれども、
このエピソードでは、宇宙開発に必ずしも興味がある人でなくても、もしかしたら面白がってもらえるような、そんな2つのトピックを紹介したいと思います。
その無人補給船というのは、ISS国際宇宙ステーションに物資を運ぶために飛んでるんですけど、
その中に、いろんなISSで必要な物資を入れるんですが、なんとVTuberのぬいぐるみやアクリルパネルといったVTuber関連グッズと、
もう一つはダッサイという日本酒がありますよね。その日本酒のメーカーが、これから宇宙で日本酒を作るための原料とお酒を作る機材が積み込まれていると。
そういうちょっと変わった積み身を運んで飛ぶというようなことが行われているところが、結構面白いポイントかなというふうに思っております。
まずは、このH-IIIロケットの打ち上げの概要と見どころというところをちょっとだけ話したいんですけど、
H-IIIロケットというのは、これまでの前の先代のH-IIロケットの技術を継承しつつ、本格的な商業展開を目指して市場競争力を高めた日本の新しい主力ロケットです。
その7号機というのが、今回無人補給船HTV-X1をISSへ飛ばすということで打ち上げを行ったわけです。
このHTV-X1というのは、その前のコウノトリという愛称がついていたHTVという補給船からさらに進化していてですね。
コウノトリというのは、ISSで物資補給をしたら、そのまま切り離されて大気圏に突入してそのまま燃え尽きちゃうという設計だったんですけど、
これはHTV-Xというのは、物資補給を終えた後も宇宙空間上で継続してミッションを行うということができるような、そういう設計になっています。
物資補給についても、1.5倍ぐらい量が増えたんだったかな。
補給船としての能力も上がっているんですけど、さらに補給をするだけじゃなくて、宇宙でミッションができるような、そういう宇宙船になったということで非常に注目をされているわけです。
ただですね、冒頭でも申し上げたように、そういう宇宙開発における技術的な進化みたいなところもとっても面白いんですけど、今回話したいのは、もうちょっと宇宙のことを身近に感じられるような2つのプロジェクトについて紹介をしたいと思っています。
1つはVTuberのぬいぐるみやアクリルパネルを住みとして運んでるんだよって話をしました。
それはオシソラプロジェクトっていう名前で行われている企画があってですね、それに賛同するVTuberの方々のぬいぐるみとかアクリルパネルを今回のHTVX-1でISSに運んで、
日本の希望というモジュールがISSにあるんですけど、そちらでぬいぐるみとかアクリルパネルを使った撮影とか、あるいはライブ配信なんかも行う予定だということになっているみたいです。
いわゆる推し勝つと呼ばれるものを、宇宙にまで拡張してしまうっていうロマンチックな企画ですよね。すごいですよね、推しが宇宙に行っちゃうみたいな、そういうものです。
自分自身ですね、VTuberの配信画面のデザインをするアライブスタジオというサービスを会社で運営してるんですけど、
宇宙でライブ配信をする時代が、VTuberが宇宙でライブ配信をする時代が来たんだなというふうに思って、感激もひとしようだなというふうに思っております。
そんな感じで、推し勝つと宇宙開発っていう、一見全然関係なさそうに思える2つの文化が交わってきたというのは、とっても面白い現象だなというふうに思っております。
VTuberと宇宙
こういうことをきっかけに、宇宙開発の興味が広がると、それでとってもいいことだなというふうに思っております。
もう一つが、日本酒の原料と機材を宇宙に運んだんだよっていうような話をしました。
それがダッサイという超有名な日本酒の銘柄ですよね。
このダッサイが手がけているダッサイムーンプロジェクトというものです。
これは、そもそも月面で日本酒を作りたいよねっていうプロジェクトなんですよね、ざっくり言うと。
月面っていうのは、地球の6分の1の重力しかないんで、その重力環境下で本当に日本酒って作れるのかなっていう実験をするために、
今回、ISSで地球の6分の1の重力環境を再現した状態で、お酒を作るということを実際にやるそうです。
お酒を作る過程っていうのは複雑な工程があるんですけど、完全にお酒そのものを作るというよりは、
いわゆるもろみという、あと絞って火入れをしたらお酒になるよっていう、ちょっと一歩手前ぐらいのものまでを作るそうです。
ただ、重力が6分の1の環境で、麹とか酵母とかそういう微生物が米に対して働きかけることでお酒ってできるんで、
そういうのってちゃんとできるのかなっていうのは結構未知なところがあるんで、そういうことを実験するために実際にISSの中でやっちゃおうっていうような話みたいですね。
で、ISSはアルコールの持ち込みっていうのは禁止らしいんで、そんなにISSに機材とか持ってってもたくさん作れるわけじゃないんですよね。
今回は200mlもろみを作るんだそうです。
それで、そのうちの100mlは地球に持って帰ってきてから、どういう成分になっているのかとか、ちゃんと発酵が進んでいるかとか、そういうのを調べるために用いられるそうなんですけど、
残りの100mlは宇宙で醸したお酒ということで、1億円で販売されるということで、もうすでに買い手がついているんだそうですね。
なので、その100mlの分のお酒を買われた方がどういうふうにするのかっていうのは、ちょっと想像しづらいところですけれども、それも楽しみなところかなというふうに思います。
そんなわけで、宇宙でお酒を作るっていうのは、科学の実験ではあるんですけど、それをさらに超えて、例えば月面でお酒を作りたいっていう、そもそも目的があってやってるプロジェクトなんで、月でもし暮らすとなったら、その時にお酒を飲みたいということもありますよね。
そういう意味では、さっきのVTuberの話と同じで、宇宙に文化を持ち込む、そういうようなプロジェクトなのかなというふうに思っております。
ダッサイの宇宙醸造
そんなわけで、今回のH3ロケット7号機の打ち上げっていうのは、HDVXを切り離して、そのHDVXが今ISSに向かっているんで、全体として成功かどうかっていうのはまだこれからだと思うんですけど、打ち上げ自体は非常に成功率に終わったというふうに思います。
それは日本の宇宙開発の技術の成功というだけじゃなくて、今後の宇宙の宇宙とか宇宙開発の意味の変化っていうのを象徴してるんじゃないかなというふうにも感じます。
これまでの宇宙開発っていうのは国家とか大きい企業の大きいプロジェクトで、一般の人には、自分自身も含む一般の人にはあんまり手の届かないような遠い存在みたいな印象があったんですけど、
そこにVTuberみたいな、僕自身もよく見てますし、そういう馴染みの深い存在がいたりとか、僕自身も日本酒大好きなんですけど、それを宇宙で作るとか、
それって、自分たちにすごく関わりのあることが宇宙で行われるようになる、その第一歩みたいな、そんな感じで、これまで遠かったような宇宙っていうのがかなり身近に感じられてくるような、そういう動きの始まりなんじゃないかなというふうに思っているわけです。
もしかしたら、僕が生きてる間に自分自身が月に行けるかどうかってちょっとわからないですけど、月でかもした日本酒を飲んだりとか、そういうのが当たり前になったりするのかもしれないし、月とか火星とかからVTuberが配信しますみたいなことがあるのかもしれないですし、
今後何十年かかるかわからないですけど、そういった未来を垣間見せてくれるような、そういう打ち上げだったんじゃないかなというふうに思います。
そんなわけで、今回のH3ロケット75機の打ち上げっていうのは、技術の話を超えて、宇宙と僕たちの距離っていうのを一気に縮めるような、そういう打ち上げだったんじゃないかなというふうに思っております。
ただですね、先ほどもちょっと言いましたが、今回まだHCV-X1を宇宙空間に打ち上げたところまでなんで、今HCV-X1はISSに向かって飛んでるとこなんですね。
なので、これから飛んでいって、3日後ぐらいにISSにドッキングされます。
それも配信あるんで、見たいと思ってるんですけど、それでドッキングをして、そこから物資がISSの中に積み込まれて、さっき言ったようなVTuberの配信とか日本酒を作るとか、そういうことが行われたり、
あるいはHCV-X1自体はその後ISSを離れて独自のミッションを行っていくんですけど、そんな感じでしばらくこのHCV-X1の活躍とか、その積み身がどういうふうに活用されていくのかっていうのを見守っていきたいなというところで、
しばらく目が離せないプロジェクトになると思いますんで、ぜひ継続的に注目していっていければなというふうに思ってます。
こんな感じで、宇宙に文化というものが持ち込まれていて、それが今後広がっていく、そういう第一歩になった打ち上げなんじゃないかなと思って、とっても胸を熱くしておりました。
はい、今回も情報科学の回り道をお聞きいただきありがとうございました。ご感想やご質問、次に話してほしいテーマなど、ぜひお寄せください。概要欄に質問フォームのリンクがあります。また、XやDiscordサーバーでも話題を共有しておりますので、お気軽にどうぞ。
それではまた、次の回り道でお会いしましょう。さようなら。
15:51

コメント

スクロール