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2025-10-02 15:11

#34 AIを有効活用する鍵は「比較」にある

AIをもっと有効に活用するには「比較」の視点が欠かせません。情報の収集や整理自体はAIが得意ですが、たくさんの情報の比較から新たな問題を見つけることは人、間の創造性にしかできません。時間的・空間的・代替的・アナロジー的という4つの比較軸を取り上げ、具体的な実例を通じて問題発見のプロセスを紹介します。AIを効率化の道具としてだけではなく、思考の伴走者にするためのヒントをお届けします。


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【栗林健太郎とは】

GMOペパボ株式会社取締役CTO、日本CTO協会理事。博士(情報科学、JAIST)。大学卒業後、市役所勤務を経て、2008年よりIT業界へ。2012年よりGMOペパボ株式会社。現在、取締役CTOとして技術経営、新規事業創出に取り組む。2025年3月、博士号取得。インターネット上では「あんちぽ」として知られる。


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サマリー

このエピソードでは、AIを効果的に活用するためには「比較」が重要であると強調されている。収集や整理が得意なAIと、人間の創造性の核心にある比較について議論され、時間的、空間的、代替的、アナロジー的な比較の方法について具体的な例を交えて説明されている。また、比較の重要性について探求し、AIがサポートする比較を通じて新しい問題を見出すことが人間にしかできないことについて考察されている。さらに、生物学的な例から言語の特徴に至るまで、さまざまな視点で比較がもたらす発見の面白さが語られている。

AIと人間の役割
こんにちは、栗林健太郎です。
このポッドキャストまわり道では、好奇心の赴くままに、
まわり道をした中で見えてきた風景や考えについて語っていきます。
今日のテーマは、AIをもっと有効に活用する鍵は、比較にある、です。
ChatGPTなどの大規模言語モデルに基づくAIを、
皆さんもよく使っていると思うんですけれども、
そうしたものは、情報を素早く集めたり、要約や整理をしたりするということが得意ですよね。
しかし、人間にしかできないのは、収集したり整理した様々な情報を比較することで、
新たに興味深い問いを発見するということなのかなと思っています。
まさにそこにこそ、人間の創造性の余地があるんじゃないかなというふうに思っているわけです。
思考の流れというのを大まかに分けると、収集、整理、比較という3つの段階があるんじゃないかなというふうに考えています。
AIというのは、収集とか整理というところにはすごく力を発揮しますよね。
何か物事を調べるときに、AIに聞いて情報を収集したりとか、たくさん集めてきた情報をまとめたり、
つまり整理をしたりする。
整理というのは、例えば要約をするとか、何か分類をするとか、そういうことですよね。
そういうことはすごく上手にやってくれます。
ただ、それだけじゃ思考というのはできなくて、収集整理した情報を、さまざまな情報があふれているわけですけど、
それをどういう比較軸において、この情報とこの情報を比較するとこういう問題があるんじゃないかとか、こういうことが分かるんじゃないかとか。
つまり、その比較からどんな問題を立ち上げるのかというところが、やっぱり人間の役割なのかなというふうに思うわけです。
どういうふうに比較をするのかということでいうと、これも4つぐらいあるのかなと思っていて、まず4つ言ってみますね。
比較の手法
1つ目が時間的な比較、2つ目が空間的な比較、3つ目が代替的な比較、4つ目がアナロジー的な比較。
ざっとこの4つ、他にもあるかもしれないですけど、挙げてみましょう。
1つ目の時間的な比較というのは、同じことでも時代によって考え方って変わるので、
同じ内容について、時代によって、時間軸で比較してみるということです。
2つ目の空間的な比較というのは、地域や文化で違いがあったりしますよね。
ある考えについて、ある事象について、地域や文化圏、あるいは国とかで全然考え方が違ったりすることがあるので、
そういう空間的な比較というのも比較の軸としてあります。
3つ目の代替的比較というのは、これは何かの考えとか理論とか主張みたいなことがあったとして、
それらは言ってみればある種の仮説なので、常にそれって複数の代替的な仮説とかアプローチがあるんだと思うんですよね。
そういったものと比較をしてみるということです。
4つ目のアナロジー的比較というのは、異分野の現象を比べてみる。
例えば専門分野が違うようなことであるとか、一見関係なさそうに見えるんだけど、何となく似てるようなものを比較してみるとか、そういうことです。
具体例の考察
それぞれについてちょっと具体例を挙げていきたいんですけど、
まず時間的比較については、この間こんなことをAIと議論しました。
最近、試列矯正をする人って、最近でもないか、この10年ぐらいなのかな、試列矯正をしている人を結構見るなと思って、
で、ぱっと見にはすごい綺麗、歯が整っているように見えるんだけど、矯正しているような人って結構増えたのかなと思ってます。
それで、試列矯正についての考え方というか、試列矯正というのは人々がどう思っているのかというのを時間的に比較するような議論をしました。
そうしてきた中で見えてきたのが、昔は噛み合わせを改善したいよね、みたいな。
要するに鼻並びがガタガタなのを直したいみたいな、そういう動機で試列矯正ってしてたけれども、
最近だとインビザラインとかそういう技術的な革新があって、昔みたいに負担ができるだけ低いような、そういった技術革新があったりとか、
あるいはその鼻並びが噛み合わせみたいな物理的な話だけじゃなくて、
それによって姿勢が悪くなるとか、虫歯が出やすくなるとか、そういう話とか、予防医療的な、そういう文脈によって試列矯正した方がいいよね、みたいな。
そういうふうに考え方が変わってきた、みたいな話を知りました。
こうやって時間的にある考えが時代の変化とともにどういうふうに変わってきたのか、みたいな比較をするっていうのも面白いことなのかなというふうに思います。
空間的な比較の例を挙げると、昔大学の授業のときに印象に残ってた言葉があって、
例えば歴史を学ぶときに重要なのは、よく歴史を学ぶときってこういうことがありました、こういう事件がありました、こういう出来事が起こりました、みたいな話を基本的には学ぶわけですけど、
それだけじゃなくて、ある国とある国の歴史を比較することが大事なんじゃないかっていうふうに先生が言ってたんですね。
今ちょっとなんか変な音が流れ出したんで、何だろう。
いや、いいや、関係ないか。
その先生が言ってたのは、日本と中国を比較したときに、例えば科挙、試験を受けて完了になるやつ。
中国では科挙っていうのはずっと行われてきたんですけど、日本っていうのは中国からいろんなものを輸入したけど、科挙っていうのは結局定着をしなかったよねっていうようなことがあって、
何があるかを見るだけじゃなくて、何がなかったのかっていう見ることによって、文化の違いみたいなこととか、何でそういうことが起こるのかっていうことから本質的な問題っていうのが浮かび上がってくるよねみたいな話をしていて、それがすごく印象に残ったっていうことがありました。
これが空間的な比較です。
大体的な比較の例を挙げたいんですけど、例というか考え方みたいな話なんですけど、例えばある種の学術的な理論とか、あるいは政治的な主張とか、社会的な意見とかいろいろありますけど、そういったものを僕たちもそれぞれ持ってるし、
例えばXとかでいろんな議論がされたりするわけじゃないですか。一見というか、自分的にはそうだよなとか納得できるとか正しいみたいなことがあったとしても、実際には世の中には常に多様な考え方があるし、いろんな立場の人がいるんで、どれか一つだけが正しいみたいなのはやっぱり良くないんじゃないかなと思うわけです。
つまり、どの主張も言ったら仮説にすぎない、といえばすぎないわけなんで、常に大体的な仮説っていうのがあるんじゃないかなという視点が大事なんだと思います。
例えば、科学技術に関する主張であったら、オッカムのカミソリの原理みたいな言葉がありますけど、つまり複数仮説があったら、どの仮説がシンプルに現象を説明できるかっていうのがどの仮説がいいかの判断基準になるよねみたいな話だと思うんですけど、
比較の重要性
そうやっていろんな仮説っていうのが常に大体的な選択肢があるんで、それらを比較、検討することが大事だよねって話なんだと思います。
最後にアナロジー的比較っていう切り口を挙げたんですけど、これはちょっと分かりにくいかもしれないですが、一見関係なさそうだけど、なんか似てるようなみたいなのを比較してみると面白いんじゃないかなっていう話です。
例えば生物学に修練進化っていう概念があります。これは全然違う種が同じような環境にいると、例えば体つきとかが似たような感じになっていくよねみたいな話です。
具体的にはイルカとサメって、イルカは哺乳類だし、アメって魚類じゃないですか。だから全然種として違うんだけれども、海の中を泳ぐみたいな環境が同じなんで、体つきも似てますよね。
どっちも魚っぽいと言うとちょっと変ですけど、泳ぐのに適した形になってるじゃないですか。そういうの修練進化って言うんですけど、例えばそういうのって言語とかでも同じようなことがあるのかなというふうにちょっと思ったことがあったんですね。
例えば言語にはいろんな特徴があり得るわけですけど、成長っていう言語の特徴があります。これは例えば中国語とかでよく一番最初に習うやつだと思いますけど、
マーっていうのをマーとかマーとかそういう感じで、音の高さで、日本人からしたらそれはマーっていう何か単語なのかなと思うけど、音の高さが違うと全然違う意味になるんだよみたいな、そういうやつを成長って言うんですけど、
この成長っていうのも言語の系統としては全然違う言語なんだけれども、別々の国というか別々の地域で独立に成長っていうのが発達したみたいな事象があるらしくて、これっていうのもある種の生物学の修練進化みたいなのと似てるなと思ってですね。
そうやって生物学、生物の体つきとか進化っていうのと言語の特徴っていうのは全然関係ない話に思えるんですけど、何か似てるよなってことで比べてみると面白い発見があるかもしれないなとかそういうことを考えたりしました。
というわけで比較について、比較というものを比較をするにはどういう軸があるのかなという話をちょっと具体例も込めて話をしてみました。
AIっていうのは情報収集や整理までは効率よくサポートしてくれます。
だけど、比較をすることでどんな新しい問題を見出すかっていうのはやっぱり人間にしかできない部分なのかなというふうに思ってます。
もちろん比較自体は、僕がさっき例に出したようにAIと喋りながらこんな比較してみたらどうみたいな議論してるんで、比較自体はサポートしてくれるんですけど、ただどういう比較をすると面白いのかとか、
あるいはそこから比較した中で何か新しい興味深い問題を見出すとか、あるいはそれがもしかしたらインパクトがあり得る問題かもしれないし、未解決の問題かもしれないんですけど、そういったものを見出すっていうのはやっぱり人間にしかできないのかなというふうに思ってます。
そんなわけで、比較っていう軸を意識してAIを使うことで、情報収集整理を効率よくできるというのはもちろん便利なんですけど、それを超えて新たな問題発見とかインサイトを得るとか、そういったことができると、よりAIの使い道としていいんじゃないかなというふうに思っております。
さて、今回も回り道をお聞きいただきありがとうございました。
ご感想やご質問、次に話してほしいテーマなどがあれば、概要欄に記載している質問フォーム、またXやDiscordサーバーも運営していますので、ぜひお寄せください。
では、また次の回り道でお会いしましょう。さようなら。
15:11

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