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それでは、今月の朗読を始めます。
枕売りの羊飼い
作者ひゐ、ある朝、羊飼いは連れている羊が一匹増えていることに気づきました。
夜のうちにどうしてか増えたのでしょう。調べてみると、大人の羊に一匹見知らぬ羊が紛れ込んでいました。
どこから来たんだい?帰らないのかい?
尋ねてみても、羊はそっぽを向くだけ。
羊飼いは、この羊を群れの新しい一匹として連れていくことにしました。
今日の目的地は、少し大きな町です。
羊飼いは、そこで商売をする予定でした。
町までたどり着ければ、連れている羊を並べて声を上げます。
枕を売るよ、枕を売るよ。いい枕が揃っているよ。
羊飼いの声に、町から人々がやってきます。
人々は羊の中から一匹を選びます。
この子をちょうだい。大事にしてくれよ。
選ばれた羊は、大喜びで新たな主についていきます。
この子にしようかな。その子は元気いっぱいの子だよ。
睡眠時間が短いのならおすすめだ。
おっと、それじゃあ大人しい子はどの子か教えてくれ。
私はしっかり寝るタイプなんだ。
お客様にお願いされたのなら、羊飼いはおすすめの羊を紹介します。
少し盆質が硬いのはこの子。柔らかいのはこの子だよ。
その子はまだ子供だ。まだ売れないよ。
この子は無邪気だよ。昼間は一緒に遊んでくれるよ。
そして、今朝増えた一匹を欲しがるお客様もいました。
その子はまだダメだ。
預かっている最中でもしかすると持ち主が現れるかもしれないからね。
誰かのものだったかもしれない子は7日間は売らないで預かっていくっていうのが羊飼いの決まりなんだ。
またもう一匹、もう一匹と羊が売れていき夕方になりました。
夜が近づけば羊たちも眠そうにし始めます。
羊飼いも今日の商品はこれまでにしようと街を離れる準備をします。
ここに私の羊は紛れ込んでいませんか?
そこに一人の男が駆け込んできました。
男は今朝群れに増えた一匹の羊を見つけると
ああ、いた。私の羊、私の枕、ごめんよ。
しかし羊はぷいっとそっぽ向いてしまいます。
羊飼いは尋ねます。
この子と一体何があったんだい?男は答えました。
ここ数日忙しくて私はあんまり眠れなかったんです。
寝たとしてもソファーとかでそれでこの子いじけてしまったらしくて
ああ、かまってあげられなかったのか。
男はしゃがみ込めば羊に目を合わせました。
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本当にごめん。これからちゃんとベッドでよく寝るよ。
睡眠を大事にするよ。洗うときは真っ白になるよう頑張って
干すときはぽっかぽかの日光にあてるよ。だから戻ってきておくれ。
その言葉にようやく羊は男を見て跳ねたかと思えば
大きな枕に変身しました。
その子本当はあなたのことが大好きみたいだね。
自分で歩かないで運んでくれって甘えてるよ。
羊飼いがそう言うと男は照れくさそうに笑い
お礼を言って去っていきました。
翌朝、羊飼いが起きると全く見知らぬ羊が3匹増えていました。
君たちきっとこの町の誰かの枕だろう。
今日この町を離れてしまうけどいいのかい。
羊飼いは彼らに尋ねます。
3匹とも群れを離れようとしませんでした。
枕に変身する羊たちは睡眠を大切にしてくれる人が大好きです。
その羊飼いは羊飼いの群れの中で
睡眠を大切にしてくれる人が大好きです。
けれど大切にしてくれないなら別の主人を求めて羊飼いの元にやってくるのです。
そして羊飼いは今日もたくさんの羊を連れて旅をします。
いい睡眠を求める人々に枕である羊を届けるために
そして枕である羊に睡眠を大切にする人に出会わせるために
終わり
よく寝落ちをする自分にとっては耳の痛いお話でした。
聞いていただきありがとうございました。
はい、落ちたな。