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2022-05-16 17:55

現代民話 最終回「くりかえすひかり」

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第五回で現代民話最終回。やりたいことはやれた気がしています。
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(小さな平)
昔あったつもな。
山の中の沼のほどりに、
人の腹の中から生まれたカッパがいたんだと。
カッパは自分が住んでらった沼の近くに、
胸のでっけえ女子と小さな平やおかりで
住んでらったんだと。
でも、毎日こえがったつもな。
いつが見捨てられる、いなくなる、
こったな幸せな日が、
ずっと続くわけがねえと思ってらったつ。
だから、女子との、わらす子が欲しがったんだと。
わらす子さえできれば、女子はずっと自分のそばからいなくならねえ。
そのために、わらす子が欲しがったんだと。
そしたら、女子も、おめさんとのわらす子が欲しいって言ってくれて、
カッパは飛び上がるくれえ嬉しかったつもな。
二人の間で、子供を欲しがるわけは違ったとしても、
見てる方向が同じだと思ったから、カッパは嬉しかったんだと。
そして、二人は夫婦になったつもな。
でも、二人の間にはなかなか子供ができなかったんだと。
カッパはエロい知識はいっぺん持ってらったとも、
体が動かねえから全然うまくできなくて、
そのたびにまだ捨てられると思って、
こえくてこえくて仕方なかったんだと。
そったら状態だから、ますます立つももただねえ。
つまっ子はうまくいってもいかなくても、
そのたびに大丈夫だよ、がんばったねえって言ってくれるのも、
言わせてしまう自分がカッパは情けなくて仕方なかったつもな。
そったらもんだから、二人にわらす子ができるまで六年かかったつ。
わらす子はおっきなあかんぼで、はいはいもつかまりだちもはやがった。
むすっとした顔をしてることが多かったとも、
あやせば笑うし、話す言葉もだんだんふえできてらった。
03:01
だども、二歳になるあたりに、わらす子が言葉を話さなくなったつ。
もうすこしすると、表情もなくなったつもな。
何が伝えたいのが、それともただ声を出さずにはいられねえのが、
ああとか、ううとか言ってらども、その声に意味を見つけることができなくなったんだと。
カッパは、自分がカッパであるにもかかわらず、
人間とわらすをつくってしまった罰だと思ったつもな。
そして、妻を自分から話さねえためにわらす子がほしいって思った。
そんな自分の意地の悪い願いの報いだと思ったつもな。
カッパたちは、いろんな人に会っていろんな話を聞いたと。
自分たちでもいろいろ調べたと。
でも、現実を突きつけられるばっかりで、今の状況がよくなるようなことは何も出てこなかったつ。
ある先生を訪ねたらば、カッパには2種類あると言われだつもな。
おめえさんみたいに、身ですぐカッパだとわかるカッパと、人間の姿をしたカッパがいると。
そう言われたつもな。
追い討ちをかけるように、どちらも人間からも生まれることがあると。
カッパの姿が依然することは少ないけども、
人間の姿をしたカッパがワラスをこさえると、ワラスが依然の影響を受けることがある。
言いにくいけども、おめえ様のワラスは人間の姿をしたカッパだと言われたつもな。
その後、先生なりに元気づけようとしたんだべが、わかりにくいだけで昔からいたし、最近増えてるんですよ。
おめえ様のワラスこだけでねえよ。
そうつけ加えて、前向きに考えることが大事だよ。
そう言って、先生の話は終わったと。
カッパは誰が人間で、誰がカッパがわかんねくなったと。
おば様が小神屋を使ってまで、自分を生まれさせないようにしたわけはなんだべ。
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お堂はなしてそれに抵抗しなかったんだべ。
なしてお堂はバレバレのフリンをしてても平気でいられたんだべ。
なして俺は何回やっても車高入れとか充電、駐車ができなくて、自動車が今20回もダブったんだべ。
そもそも代々海の近くに住んでた家族が、自様が仕事を辞めてまで、なんでわざわざ山の中の沼のほどりに住むことにしたんだべが。
カッパはワラスがこうなってしまった原因を探そうとして、気づけば普通の人間がやらねえこと、家族の悪いところを探そうとしてだったの。
そして一人で家の近くの沼の底に潜る時間が増えて、自分の血筋を呪って、自分の妻とワラス子への申し訳なさと死にてえなって気持ちがぐるぐると頭の中を回ってらった。
何一人で悩んでら?いつものように沼の底でぐるぐるとしてらったら、急に知らねえ男の脳天気な声が聞こえたぞ。
水の中にいてはっきりとは見えなかったとも、男はテーブルトークを誘ってくれた友人のようにも見えて、かと思えば学生時代の先輩にも見えたり、見るたびに顔形が変わるようにゆらゆらとゆれでらす。
ワラス子がカッパだとか言われたのか、カッパには二種類いる、遺伝するとでも言われたんだべ。
男は笑いまじりに、見てきたように言ったぞもな。沼から出てワラス子よく見ろ、いっぺん笑うようになってきてらぞ。
男はそういうのも、カッパはでもいっことしゃべれねえと答えたぞ。
それはそうだなと男は笑ったぞ。
人のワラスのこと、なんで笑うのさ。カッパは怒ったぞ。
笑ったのはおめえのワラスのことでねえ、おめえのことだ、そう男は言ったぞ。
カッパよ、おめさんの名前はなんていうのさ、と男は聞いてきたぞもな。
09:05
カッパは名前も何もね、カッパはカッパだ、と答えたぞ。
そうが男は言って、少し黙ったぞ。相変わらずゆらゆらとして、逆光で顔はよく見えなかったぞ。
おめさんのワラス子はなんて名前なのよ、男は聞いてきたぞ。
カッパはワラス子の名前を男に言ったぞ。いい名前でねえか、名前があるならおめさんのワラス子はカッパでねえな、と男は言ったぞもな。
何言ってらのす、とカッパは聞いたぞ。
何言ってらも何も、おめさんが言ったんでねえか、カッパは名前がねえって。
そったの、言葉遊びだ。現にうちのワラスはいくつになっても口がきげねえ。
トイレも自分でできねえ、人間のワラス子に比べてできねえことばっかりだ。
確かにおめえの言うとおりだ。おめえがモデなかったのも、おめえがカッパだからなわけでねえ。ただおめえがいげでなかったからだしな。
チャカスでねえ、おめえが始めた話でねえか、と、まだカッパは怒ったのも言葉遊びだよ。声をかぶせるように男は言ったぞ。
カッパなんてものは、言葉遊びだ。おめさんのうちでカッパが生まれたのでねえ。
他の人と違うわかりやすい特徴があったからカッパと呼ばれるようになったんだ。
おめえは忘れてしまったようだが、おめえにもちゃんと自分の名前があったはずだ。
おめえさん、なに言ってらのす。そう言ってカッパはなんだかすげえ濃い気持ちになったぞ。男は続けたず。
いいか、カッパってものはな、呪いだ。ことだまなのす。
それを聞いてそう思ってしまったら、自分の名前もなくして、特徴も性格も構造も変えかねねえほどの強力なマジナイだ。
おめえさんは知らずに自分のわらすこに呪いをかけようとしてるのす。おめえが小神谷にされたことと同じだ。
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だそうもよ、カッパはふりしぼるように声を出した。うじのわらすがカッパでなくても、うじのがほがのわらすこだずみでにしゃべりだすわけではねえもの。おら、ますますわかんねえくなった。
んだよ、気づいてよかっただろう。おめえのわらすこが人間であろうが、カッパであろうが、それが遺伝であろうがなかろうが、現実が変わるわけでね。
でも、おめえがこったらくったらねことで悩む時間がへるべしゃ。そう言って男は笑ったず。
おめえさんのわらすこが沈んでる沼にくらべたら、この沼なんて水たまりみたいなもんだ。おめえさんのわらすこは、ひめえだかちなりだかわからねえような音がする。しゃべろうとすると、てみてえななにかに口をふさがれる深い沼のなかで、それでも一生けんべん楽しいことをさがしてんだ。
楽しいものは、おいしいものはどこだべが。おととおかはどこにいるべが。みでくれてるべが。そういうことばかり考えてけんめいに笑ってるのす。人間だカッパだ。そんな余計なものはいるすきまがねえんだ。
おめえが手をのばして、おっきくわらすの名前をよんで。こっちだぞ。おとはここにいるぞって言ってやらねえでどうするのす。前をぎらのいいわけぬぎで、ちゃんとおめえのわらすこに向き合ってみろ。
おとこはあいかわらずぎゃっこでゆらゆらしてよくみえねえがったのも、軽くてをあげたようにみえたと。そしていなくなってしまったのもな。
気づけば、夜になってらった。カッパはきつねにつままれたような気分だったのも、ひとまずいえにもおぞったす。したらば、わらすことびついてきたすもんな。カッパはかえりをそんたにまってらったのがうれしくなったのも、そうではねがったす。
おみやげのおがしがないことがわかると、わらすこはきょうみをなくしたふうで、さっさとちゃのまにもぞっていたす。でも、その行動ひとつひとつがカッパには今までとちがってみえたぞ。
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ちぶんのきもち、こんたにあらわせるようになったんだなって。まいにちみでらったはずのちぶんのむすこが、5割まし、いや、10割ましでかわいくみえたぞ。
よるもふけで、わらすこねがしつけるのは、いつもカッパのやぐめだったすもんな。えがおでふとんにくるまるわらすこは、まとりょうしかみたいでかわいがったぞ。カッパがふとんにはいると、わらすこはかおをちかずげて、きっしゅうしてきたすもんな。
わらすこがつまこにしてたのはみたことはあっても、じぶんがされたのははじめてだったす。カッパはかんげきしたす。そしてなんだか、いろんなものがはらおじしたす。
うじのわらすはことばはしゃべれねえ。でも、それだけがおもいをつたえるしゅたんじゃねえ。ほがのわらすよりできねえことなんかいっぺあっていい?わらってさえいれくれればいい。おらがしぬまでこいつのめしらげははらいっぱいくわす。いっぺんわらわせる。
へやはくらがったのも、カッパはそうおもって、めのまえがひろがっていったようなかんじがしたすもんな。
あさになって、きのうのよるにきづいたことをつまっこにねつぼくかだると、おめさんよ、なんたらきづくのおせかったことよ。おうわらいされたすもんな。
それがらつきひがたって、わらすこはことしでとうになるともまたしゃべれねえ。でも、まいにちいっぺいっぺわらってらと。ほがのわらすにくらべればできねえことだらけだけども、まいにちおなじことをくりかえして、すこしずつできることもふえてきたんだと。
ぬまはくりかえすひかりにてらされて、まいにちしずかにあおいみなもをただえでらす。カッパがそこにもぐることはもうねえんだと。
どんどはれ。めでたし、めでたし。
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