法人と心の関係
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こちら。
法人にも心がある?組織を読み解く心理学。」今回は、「法人にも心がある?組織を読み解く心理学。」、のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。今回は、「法人にも心がある?組織を読み解く心理学。」について。
人という字が使われる、法人。会社だったり、学校だったり。そんな組織にも、私たちの心の中身に関する理論が有効。そのポイントを知ることで、どんな意味があるのか、何が起きているのか、読み解くヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」、第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども。」、第34回目「組織にもある、親・成人・子ども」とも、リンクするお話です。
皆様は今、どんな組織に所属していますか?あるいは、今までどんな組織に所属していましたか?どこにも所属していない。そんな方もいらっしゃるでしょうか?その場合も、広く考えれば、どこかの住民、そこを管理している住まいだったり場所だったり、何らかの組織に所属している、そう考えることもできそうです。
ず〜っと一つの組織に所属していると気づきづらいことも、別の組織に所属して初めて気づく、そんな体験のある方も多いのでは?思い起こせば、社会人としてのスタートを切った際、私の仕事は、新規開拓の提案営業。お客様はもちろん、社内の関係部門や関係者とも、活発にコミュニケーションを取りながら進める、そういう仕事でした。
担当商品は、ある程度決まっていて、セールスポイントをお伝えする資料やツール、受け答えのQ&A、といったようなものもあり、最初は研修を受け、上司や先輩にも同行していただきつつ、訪問。その内、一人で訪問するようになり、一人立ち。そんな流れ。
こちらの思い描いた通りに行くこともあれば、全く予想外な流れになることもある。
例えば、ある時などは、こんな具合。
実体のある、物理的に納品できる商品をご提案していたのですが、先方から、「これからは、有体物じゃなくて、無体物の時代なんですよ。」
「あぁ。そ、そうですよね。」
物理的に実体のあるものではなく、ないものが主流という趣旨の、そんな言葉から始まり、次々と繰り出されるお話。
現在であれば、クラウドやらZoomやら、オンライン三昧。その方の言葉を借りれば、まさに無体物の時代。
けれど当時は、主に有体物の時代。
結局のところ、検討されるつもりのない、遠回しなお断りモード。
また、ある時などは、こんな具合。
「あぁ、これこれ、こういうものがあればねぇ。」
その時点でないものをあげられ、「そうなんですか?」
これも、最初の頃の、お断りモードパターン。
「私、どうしたらいいんですか?」
「そんなの、誰もわからないんだから。考えるんだよ。」
何分、新規開拓営業チーム。手探りで、試行錯誤の日々、
うまくいくことがあったり、時にはクレームもあったり、
都度、上司や先輩、同僚と、報連相を徹底。
その甲斐あって、そんな困難を乗り越え、鍛えられる。
相互に会話の多い環境、だったと思います。
その後、別の環境、組織に、身を置くようになったある日。
上司に当たる方が言われたことについて、どうも疑問が。
そこで、「あの、それは違うと思うのですが。」と、口にしたところ、
その時、その上司も含め周りにいた数名が、
一斉にざっと、それなりの目力でこちらを凝視。
しかも、その内のどなたかから、「口応えするなんて。」、という一言。
「えっ?口応えって。疑問を言っただけなのに。」
正直、びっくり。素で驚きました。
まるで、親が子どもに言うセリフ。
「なぜ、大人同士の会話として成立しないんだろう。
汚染とバランスの重要性
フラットに話し合えればいいと思うのに、どうも許されないらしい。」
この2つの組織での例、これを、私たちの心の中身、
「親・成人・子ども」という理論から、考えてみます。
改めて、「親・成人・子ども」について。
私たちは、誰でも心の中に、「親・成人・子ども」の状態がある。
親は、親や親的な役割の人から取り入れた「行動・思考・感情」が入っている部分。
成人は、<今、ここ>にふさわしい「行動・思考・感情」が入っている部分。
子どもは、子どもの頃の経験や決断といった「行動・思考・感情」が入っている部分。
この「親・成人・子ども」、組織にも「親・成人・子ども」がある。
そう考えると、理解しやすい。課題も整理しやすい。
「親」と「子ども」の中身は、過去のデータ。
その部分が、記録された動画のように、自動再生される部分と言われています。
そこに「成人」が加わって、通常は、特に意識することもなく、瞬間的な出来事の中で、自然とやりとりがつながっています。
組織の「親・成人・子ども」。
「親」に該当するのは、過去の成功体験や失敗体験からの決まりごと。
こうあるべき、こうするべき、こうしてはいけない。
経営理念や社内規則、創業者の精神、心理的なリーダー像、企業文化など。
「成人」に該当するのは、<今、ここ>にふさわしい、現実的な客観性。
フラットなコミュニケーションの成り立つ部分。
基礎や根拠に基づく分析、経営判断、リスク管理など。
「子ども」に該当するのは、活き活きとエネルギッシュ、創造性、新しい取り組み、柔軟な発想。
ここまでなら許されるという、企業風土にもつながる空気。あたりでしょうか。
最初の組織では、上下関係はありつつ、ある程度自由なコミュニケーションが許されていました。
これは、「親」の部分では、規則やルールなど、基本的な部分はしっかりあるものの、今から思えば、「子ども」の部分を重視。
新規開拓の提案営業という、担当業務の性質からも、おそらく、若手のフレッシュさに期待して、大目に見ていた部分も多かったのでは?
そのあたり、「成人」の部分で判断。バランスをとっていたように思います。
もう一つの組織では、はっきり明文化されていたわけではないのですが、ある程度、定型化、パターン化された事業を展開。
そのため、上下関係も、そのパターンの中に組み込まれている状況。
上下関係の役割自体、上司が親、部下が子ども。上司の言うことは、それは指示命令。部下は、それを受け止め従う。
「成人」は、このパターンを崩さないことを現実的と判断。
そのパターンの中、一同が慣れたやり取りであれば、OK。
「親」と「子ども」は、それとは違う!疑問を挟むことに対して、即座に反応。
大げさに言うと、子ども扱い。大人同士ではない。
だからこそ、とっさに、口応えという表現になったのではないでしょうか。
「親・成人・子ども」は、図解にすると、円3つをぴったりくっつけて、縦に並べます。
一番上が「親」、真ん中が「成人)、一番下が「子ども」。
この円、基本的には、同じ大きさで描くものの、組織によっては、「親」がずいぶん大きくて、頭でっかち。アンバランスで保守的、過去の成功体験に縛られ、身動きが取れないかも。
あるいは、「子ども」がずいぶん大きくて、「親」が小さい。
勢いはあるものの、規律やルール、コンプライアンス遵守には程遠く、ガバナンス不全に陥っているかも。
できれば、<今、ここ>にふさわしい「成人」に、現実的な舵取りを期待したい。
ただ、その「成人」が、上に乗っている円、「親」から侵食され、重なってしまっていたり。下にある円、「子ども」から侵食され、重なってしまっていたり。
この重なりは、「汚染」と呼ばれる部分です。
「親」からの「汚染」は、偏見。「子ども」からの「汚染」は、思い込み。とも、言えるもの。
同じ組織にずっといると、気づきにくい。外部から、あるいは、新しく所属すると、気づきやすい部分です。
シンプルな、円3つ。組織内全体だったり、一部門だったり。気づいたこと、気になることをはめ込んで、組織の「親・成人・子ども」。円の大きさのバランスや内容、「汚染」の重なり具合の状況など、チェックしてみてはいかがでしょうか。
違う選択肢、他の解決策を見つけられる。
いくつもの可能性を増やせる。かもしれません。では、今回、覚えていただきたいポイントは、「法人にも心がある?組織を読み解く心理学。」
組織にも、「親・成人・子ども」がある。
まずは、気づくこと。
そして、いつもと違う変化を、
味わってみませんか?ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。