一人前の定義
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を、10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こちら。
「一人前って、何でしょう?」 今回は、「一人前って、何でしょう?」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「一人前って、何でしょう?」について。
よく聞く「一人前」という言葉。心の中の「親・成人・子ども」を軸に考えてみることで、違う角度から、何が起きているのか、気づくヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」。第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ「親・成人・子ども」」 」。第30回目「心の成長と変化。繰り返されるサイクル、18年。」とも、リンクするお話です。
早速ですが、「一人前」。よく聞くこの言葉、皆様はどういうことだと思われますか。
身の回りのことを、一人でできる。二十歳になったら、自動的にそうなる。あるいは、大人としての義務と責任を果たす。経済的に自活する。それとも、もっといろいろな意味もあるでしょうか。
例えば、社会人としてスタートした時期なんですが、営業として活動を始めた私には、こんなことが。新規開拓営業として、あちこちの企業にアプローチ。最初の注文は、上司からのプレゼント的なものでした。
自転車で言えば、補助輪がついた状態。料理で言えば、3分クッキング。とでも言うんでしょうか。いろいろな段取りや準備は、あらかじめ行き届いていて、その上での、言われた通りに顔を出し、言われた通りに進んで、無事受注。
その内、営業活動を継続する中で鍛えられ、ひとまず自分で受注したと思える案件も、獲得。多少の自信もつき、自分では「よし。一人前かな。」と、思い始めた頃。こんなことを言われた覚えがあります。
営業は注文を取るだけじゃなく、最後の入金まで確認、それが完了して一人前。そんな趣旨の言葉。その時「そうかぁ。最初だけ。受注を取っただけ。取りっぱなし、じゃダメ。最後の入金や納品まで見届けてこそなんだなぁ。」と、肝に銘じたものです。
この例、一人前について、心の中の「親・成人・子ども」から考えてみます。心の中の「親・成人・子ども」のワンセットは、18年ほどで完成しますので、20代前半だったこの頃は、心の中のワンセットは、既に完成済み。ある意味、一人前です。
図解にしますと、本来、心の中の「親・成人・子ども」は、縦に丸を3つ、くっつけて書く。上から「親・成人・子ども」という、縦並びの3つの円が揃った状態。それが上司と私、それぞれが独立して、この縦並びの3つの円を持っている。
上司の円3つ、私の円3つ、合計で円6つです。
ただ、最初は、上司からのプレゼント的な注文。自転車で言えば、補助輪が付いた状態。料理で言えば、3分クッキング。いろいろな段取りや準備はあらかじめ行き届いていて、その上での、言われた通りに顔を出し、言われた通りに進んで、無事受注。
これは、上司と私が、ワンセットで1人前。上司が、「親」と「成人」の役割。私が、「子ども」の役割。上司の3つの円、上2つの「親」と「成人」に、投げ縄のようにロープをかける。私の3つの円、下1つの「子ども」にも、その投げ縄のようなロープをかける。
この、投げ縄のようなロープをかけられた部分が、活動している部分。2人で1人前。今でもあるんでしょうか。電車ごっこ。紐を結んで円にして、その中に入って出発進行。一緒の方角に進む、あの遊び。イメージとしては、そんな感じです。
まだ「「「親」と「成人」の中に、社会人としての経験や知恵が不足している時期だからこその、2人で1人前。この状態の時に、私の方の「成人」が半分くらい活動していれば、3つの円の内、1.5が機能しているとして、やっと半人前でしょうか。
上司はすでに1人前ですから、これは育成目的の、私のための2人で1人前だったわけです。それが、ひとまず、自分で受注したと思える案件も、獲得。多少の自信もつき、自分では「よし。1人前かな。」と、思い始めた頃。
心の中の「親・成人・子ども」。フル活用で一人前。
この頃は、1人で3つの円、「親・成人・子ども」を、ある程度、一つの状況や場面の中だとは思いますが、フル活動させられるようになった時期でしょうか。そんな中での、営業は注文を取るだけじゃなく、最後の入金まで確認。それが完了して、1人前。
これは、心の中の「成人」データとして取り込み、「成人」を補強したように思います。
投げ縄のようなロープは、自転車の補助輪と同じ。自転車に慣れたら、外して乗る。これは、どちらの側にとっても大切なことです。
中にはいつまでもこのロープを外したがらない。「親」と「成人」側がいたり、「子ども」側がいたり。それがあまりにも強ければ、それは、依存関係とも言えるもの。せっかく揃ったワンセットが、使われないままではもったいない。
18年かけてできる、私たちの心の中の「親・成人・子ども」。これらは、3つの円として出来上がることで、ひとまず1人前。
とはいえ、それだけで1人前というわけではなさそう。
それらが機能してこそ、1人前。それは、体の成長や経済的なものだけではない。
心の中の「親・成人・子ども」。それぞれが、柔軟に臨機応変に、活き活きと活動してこそ。経済的には自立していても、いつも誰かの顔色を伺っている。
他の人に頼られているけれど、自分のことは後回し。どうも幸せそうではない。
小さな子どもだけれど、意見もしっかり持っていて、周りのこともよく見た上で解決している。頼もしい。
目覚ましい活躍をしているわけではないけれど、いつも周りに慕われていて、本人も幸せそう。
心の中の「親・成人・子ども」。18歳以上なら揃っている、ワンセット。1人前。
全てを活用し、満喫したい。誰かと投げ縄のようなロープを共有しているなら、そして、それが窮屈だったり不健全だったりするなら、少し見直してみてもよいかも。
ロープがかかっていない部分の、「親・成人・子ども」の状態。その活用されていない部分を、刺激してみてはいかがでしょうか。
他の場所や相手、状況で、承認欲求を満たす刺激=ストロークが得られるようにする。ストロークは、それを受けた行動が強化される、という特質があります。
いつも頼られてばかり、「親」、「成人」ばかり活用しているなら。自分の「子ども」が、思いっきり楽しく活き活きできる。そんなストロークが得られるコミュニティに、参加してみてもよさそう。
いつも頼ってばかり、「子ども」ばかり活用しているなら、自分の親、成人がしっかり鍛えられるような、そんなストロークが得られる、得意分野のコミュニティに参加して、引っ張る役割になってみてもよさそう。
せっかく揃っている、心の中の「親・成人・子ども」。フル活用できる一人前でありたいものです。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「一人前って、何でしょう?」。
まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。
ありがとうございました。