心の成長と基本構造
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。
心の成長と変化、繰り返されるサイクル、18年。今回は、「心の成長と変化、繰り返されるサイクル、18年。」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも自然とつながっています。
その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「心の成長と変化、繰り返されるサイクル、18年。」について。
心が成長するには、どんなプロセスをたどり、どの程度の年月がかかるのか。どんな変化とサイクルがあるのか。そのポイントを知ることで、今まで起きたこと、今起きていること、今後起きることへの勘どころをつかみやすくなります。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」。第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」。第3回目「子どもの自分が書き、今も従っている、人生脚本」。第11回目「自己肯定感と、心の基本ポジション」ともリンクするお話です。
生まれてから成長して、大人になる。皆様にとって、それはどういうことでしょうか。
20歳になったら。一人暮らしを始めたら。自分のことは自分でできるようになったら。一通りの常識的な判断ができるようになったら。あるいは、経済的に自立したら。社会の一員になったら。大人としてのコミュニケーションが取れ始めたら。などなど。
いろいろな考えがあるかと思いますが、心の成長ということでは、第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」でお伝えしました。心の中の「親・成人・子ども」ができあがること。それがポイントとなります。
そこにかかる年月は、18年。そこには、できあがるまでのプロセスがあります。そしてその後、またその同じプロセスをたどりつつ、併せて見直しをかけ、次の18年。そしてまた、18年。
成長の段階とストローク
私たちの心は、18年単位、18年周期で、「発達のサイクル」と呼ばれる、成長と変化のプロセスを繰り返しているようです。最初に図解をイメージしてみてください。
心の中の「親・成人・子ども」は、縦にくっついた円、3つ。上から「親・成人・子ども」ですが、成長のプロセスは下からとなります。「子ども」の部分から始まります。
面白いのは、この「子ども」の部分の中にも、縦にくっついた円3つの「親・成人・子ども」、こちらが1セット入っていること。そしてこの「子ども」の中に入っているそれぞれが、大きな意味を持っているということです。
ちょっと混乱してしまうかと思いますので、もともとお伝えしておりました、心の中の「親・成人・子ども」は、今回、基本の「親・成人・子ども」、基本の「親」、基本の「成人」、基本の「子ども」、ということにします。
つまり、基本の「子ども」の中に、さらに縦3つの円、「親・成人・子ども」が入っているわけです。では、その成長のプロセスは、といえば、6段階。原点である、承認要求を満たすための刺激=ストロークを得るためのプロセスでもあります。
まずは、生後0から6ヶ月。
基本の「子ども」の中の「子ども」。ここは、「身体的な子ども」とも呼ばれる部分です。文字通り、身体的に得られるストロークがメインとなっている時期。
第11回目「自己肯定感と、心の基本ポジション」でお伝えしました、4つの心の基本ポジションが決まってくるのは、この頃のようです。I'm OK /You're OK 私もあなたもOK。I'm OK /You're not OK 私はOK、あなたは OKじゃない。I'm not OK /You're OK
私は OKじゃない、あなたはOK。
I'm not O/K. You are not OK 私もあなたもOKじゃない。
自分、そして他の人、世界に対する、この心の基本ポジション。これが決まってくるこの時期ですが、自分ではまだ何もできない頃です。
食べ物はいつもきちんと出てくるのか。抱っこをたっぷりしてもらえるのか。安心できているのか。かまってもらえているか。肌に触れるものは気持ちよいものか。
同じ状況でも、生まれつきの性格もあります。そこで、どの基本ポジションを取るのか。決めるのは、本人です。
第2段階目は、6から18ヶ月。基本の「子ども」の中の「成人」。ここは「小さな教授」とも呼ばれる部分です。承認要求を満たすための刺激=ストロークを得るため、あの手この手で、あれこれ試す時期でもあります。直感や瞬間的な印象で、問題解決の戦略を立てます。
第1回目「承認要求は誰もが持っている原点」でもお伝えしたように、何もないよりはネガティブでも何でもあったほうがまし。大声で泣いてあやしてもらったり、いたずらをして叱られたり、ポジティブなストロークが得られないくらいなら、ネガティブでも何でも取りに来ます。
それに、何と言ってもまだ1歳前後です。すべてのやり方を試せるわけもありませんし、取りやすいと思った方法に飛びついて、そのままそのパターンを繰り返してしまうのではないでしょうか。
第3段階目、18ヶ月から3歳。順番から言えば、基本の「子ども」の中の「親」となりそうですが、それはいったん、後回し。ここでは、基本の「成人」の部分が出来上がります。
ちょうど言葉を使い始める時期、それまでの直感から、論理的・合理的な<今、ここ>にふさわしい、「行動・思考・感情」が発達する時期です。
そして第4段階目、3歳から6歳。お待たせしました。ここでは基本の「子ども」の中の「親」部分。「魔法の親」と呼ばれる部分が出来上がります。これで、基本の「子ども」の中の、「親・成人・子ども」1セット、基本の「子ども」の完成。
第3回目「子どもの自分が書き、今も従っている、人生脚本」でお伝えしました、人生脚本の筋書きや要点を決める時期です。ただ、「魔法の」と表現されていますように、その脚本というのは、子どもの空想や直感、魔法のような世界や解決策に基づいています。
第5段階目、6歳から12歳。日本ではちょうど、小学生の頃になります。ここでは、基本の「親」部分が出来上がります。ちなみに、この基本の「親」の中には、自分が取り込んだ、育ててくれた親や親的な役割の人の「親・成人・子ども」セットが入ることになります。
大人になった今、心の中にある基本の「親・成人・子ども」、その中の基本の「親」が、ずいぶん子どもっぽく感じられるとしたら、この取り込んだ「親・成人・子ども」セットの「子ども」部分の影響かもしれません。さて、すでにお気づきかもしれませんが、ここまでで心の中の基本の「親・成人・子ども」は、1セット揃いました。
変化と再スタート
18年のはずでは?と思われた方、そうです。その通りです。この1セットが揃った後、最終段階、第6段階目、12歳から18歳。日本では中学生から高校生の頃ですが、この期間は、ひとまず揃った基本の「親・成人・子ども」をブラッシュアップ、磨きをかける、調える時期、とでも言うんでしょうか。
そんな期間となります。これで、成長のプロセス18年。この後、再度、基本の「子ども」の中の「子ども」から、見直しをかける18年となります。「発達のサイクル」と呼ばれる、18年周期です。
最初の18年で作り上げた、基本の「親・成人・子ども」が土台となります。特にこの頃、自分では無意識のうちに決めた、心の基本ポジションや人生脚本、ストロークのやり取りのパターンなどは、当たり前のものとして根付いています。
そのため、その後の周期でも、そのまま大きく変化しない、といった方も多いかもしれません。ただ、軌道修正をする方、大きく変化される方も、もちろんいらっしゃるかと思います。
自分自身で決めたこと。変えたければ、変えればいい。変えられるから、です。さて、皆様は今、何回目の周期でしょうか。そして、どのプロセスにいらっしゃいますか。
ちなみに、本人にとって、非常に大きな出来事がありますと、18年の途中でもそこで切り上げ、また一から。基本の「子ども」の中の「子ども」から、再スタートとなるようです。
大きな出来事というのは、冠婚葬祭、入学・卒業、就職・転職・退職、起業・独立、何かの出会いや別れ、などなど。ここ最近で言いますと、世界的な出来事、コロナ感染がありました。
これは、誰にとっても大きな影響がありましたので、通常は、誕生した時期や個人的な出来事でそれぞれ違う「発達のサイクル」が、いったん世界で、いっせいにリセットされたんじゃないのかな、と思ったりもしています。今までとは違う、「発達のサイクル」やプロセスが出てくるのかもしれません。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「心の成長と変化、繰り返されるサイクル、18年」。まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を味わってみませんか。ここまで聞いていただき、ありがとうございます。最後に、番組からのお知らせです。
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