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こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学を、ポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマはこちら。「心の中身。入れる・流れる・変化する。」 今回は、「心の中身。入れる・流れる・変化する。」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆様にとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「心の中身。入れる・流れる・変化する。」について。私たちの心の中身、「親・成人・子ども」。それは、ずっと同じわけではない。最初に入れたもの、入ったものが、流れたり、変化したり。
その仕組みを知ることで、何が起きているのか、どうしたらよいのか、気づくヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」。第2回目「心の仕組みは世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども」ともリンクするお話です。
和室にある畳、そしてそのへり。皆様は畳のへりについての決まりごと、マナーをご存知でしょうか。
緑とか青色とかで、畳の横のところについている、帯のようなものですけれども。「畳のへりを踏んではいけない。それは昔からの習わし。」
「へ~、そんなマナーがあるのか。どうしてだろう。」 「畳のへりを踏むのは失礼。当たり前。」などなど。
人によって、環境や状況によって、色々な説があるようなのですが、ここでは一つの説をもとにしてお話を進めます。
私が、礼儀作法の先生から伺ったことのある説、個人的には、それなりに腑に落ちまして、納得できた説です。
それは、日本人が和装の頃、羽織袴や着物を着用していた時代。
その時代に、お茶などを持てなす際、手にはお盆にのったお茶。それを、静々と運ぶわけですけれども、和装の羽織袴や着物では、畳のへりに躓いて、うっかり転んで、お茶をこぼしてしまいかねない。
だから、現実的な所作として、畳のへりを踏まないで避けるようになった。
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今では、洋装も普及して、特に足元が隠れるわけでもなく、踏まないようにして、足運びがぎこちなくなり、不安定になるのでは本末転倒で、失礼でもなんでもない。
踏んでもいいので、一定の歩幅、歩き方で大丈夫。そんなお話でした。
この説から、心の中身、「親・成人・子ども」について、考えてみたいと思います。
誰でも心の中に、「親・成人・子ども」の状態があります。
「親」は、親や親的な人から取り入れた「行動・思考・感情」が入っている部分。
「成人」は、<今、ここ>にふさわしい「行動・思考・感情」が入っている部分。
「子ども」は、子どもの頃の経験や決断といった「行動・思考・感情」が入っている部分です。
現実的に、羽織袴、着物では、足元が危ないからという理由で、畳のへりを踏まない。それは、「成人」ではないでしょうか。
ただ、最初はそういった「成人」による判断、現実的な理由があったものが、いつしかその理由はさておき、「畳のへりを踏んではいけない。」 「それは決まりごと。」 「そうすべき。」 「そうしなさい。」とだけ、考えたり伝えたりするようになる。
そうなってきますと、同じ畳のへりを踏まないという行動が、「親」の状態へと流れ、変化してきています。
そして、そんな「親」の言い付けや決まりごとを、とにかく守らなければならないこと、当たり前のことだからと従い続ける。これは、「子ども」の状態と言えるかもしれません。
畳のへりを踏む、踏まない。その一つのことでも、心の中身は色々。
「親・成人・子ども」の状態。同じデータが、一人の人の心の中で流れ、変化する場合もあれば、そもそも最初の行き先や理由とは関係なく、直接、「親」や「子ども」にデータを入れる、入ってしまう場合もあります。
「親」と「子ども」は、過去のデータが入っている状態です。
その状態では、入っている「行動・思考・感情」が、まるでビデオや動画のように自動再生される、と言われています。
「親」と「子ども」に入れた、過去のデータ。<今、ここ>の目の前でも、建設的な結果になるのであれば、自動再生されることで、円滑に、スピーディーに、現実を進めることができます。
畳のへりを踏まない、踏んではいけない。それを守ることで、転んだりせず、自然とお茶をお出しできた。その時、それは現実的な良い決まり事でした。
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その必要がなくなってきた時、かえって問題が出てきた時、そもそもの理由すら知らない人が殆どになり、決まり事だけ残った時。どうするのか、どうなるのか。
親や子どもが自動再生されるにしても、その再生のされ方は、人それぞれ。畳のへりを踏んではいけない、それが当たり前。
その決まり事を特に守り、とても大切にしている人、そんな人から見た場合は、目の前で畳のへりを簡単に踏む人はひどく失礼な人、礼儀を知らない人、自分とは相入れない人。
ああ、やだやだ。そんなふうに思え、反射的に不快になったり、避けてしまったりするかもしれません。
あるいは、<今、ここ>にふさわしい「行動・思考・感情」の「成人」が主導権を握っている人、そんな人の中には、「いろいろな説もあるしな。」と、心の中で納得したり、
「すみません。畳のへりを踏まれると抵抗感があるんですけど。」と、コミュニケーションを図ってみたり。そんなことがあるかもしれません。
もちろん、同じ「成人」でも、人それぞれ違う対応があります。
目の前の人が大切にしているルールだからこそ、そのルールが有効かどうかよりも、その人の大切にしているものを認める、大切にする。そういった趣旨から、畳のへりを踏まないことを選ぶ人もいるかと思います。
その場合、畳のへりを踏まない、相手の大切にしていることを尊重して同じ行動をとる、それは誰もが求めている承認欲求を満たす刺激=ストロークを、その相手に与えることになります。
「親」と「子ども」に入れた、過去のデータ。今までは有効だったとしても、<今、ここ>の現実に合わなくなってきたなら、問題が起きているなら、どうするか、どうしたいのか。決めるのは、自分です。
ストローク交換にも関わる、この課題。まずは、データを整理してみることをお勧めします。
「・・・すべき。」、「当たり前。」、「仕方ない。」、「そういうもの。」などなど。そんな言葉が、ヒントになります。畳のへりにはそれほどこだわりのない方も、例えば、自分の成功体験や失敗体験、こだわるポイント、譲れないポイントなど、他に何かあるのではないでしょうか。
それは、「親・成人・子ども」、どの状態に関係していますか?
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入り口は、事実。<今、ここ>の「成人」から始まって入っていたとしても、いつしか流れ変化して、「親」や「子ども」に行き着き、自然とその「行動・思考・感情」が自動再生されるようになります。
もしそうなら、しかもそれが建設的ではない結果を招いているなら、ちょっと一息。改めて、「親・成人・子ども」に分類。自分の中の過去と現在を分け、意識してみてはいかがでしょうか。
それだけでも、<今、ここ>の「成人」、現在の比率が上がります。心の中の、流れや変化が生まれるきっかけになります。
では、今回覚えていただきたいポイントは、「心の中身。入れる、流れる、変化する。」。
まずは気づくこと、そして、いつもと違う変化を味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。最後に、番組からのお知らせです。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。