セルフプロデュースの重要性
こんにちは。明治大学で生涯学習講座の講師をしています、遠藤美保です。この番組では、社会人や学生向けの生涯学習講座を10年以上行ってきた私が、日常生活でも活かせる心理学をポッドキャストでお伝えしていきます。
今回のテーマは、こちら。
『セルフプロデュース、見た目のコミュニケーション。』 今回は、「セルフプロデュース、見た目のコミュニケーション。」のお話です。
お伝えしている心理学ですが、皆さまにとっての日常的で身近な話題とも、自然とつながっています。その見方、活かし方をご紹介します。
今回は、「セルフプロデュース、見た目のコミュニケーション。」について。
人とコミュニケーションを取るとき、見た目も素材の一つ。セルフプロデュースと関わってくる、見た目。そこにはどんな意味があるのか、何が起きているのか、気づくヒントが得られます。
第1回目「承認欲求は誰もが持っている原点」、第2回目「心の仕組みは、世界共通。誰もが持つ、親・成人・子ども。」、第8回目「承認欲求を満たし合う、コミュニケーション3つの法則。」、
第32回目「コミュニケーションを一時停止する方法とメリット」ともリンクするお話です。
おしゃれと身だしなみの違いは?これは、新入社員研修などでよく使われる問い。皆様は、聞いたことはありますか?
ちょうど研修を受けたとか、研修の講師として問いかけたとか、中には初めて聞いた、という方もいらっしゃるでしょうか。
私の知っている答えは、おしゃれは自分のため、身だしなみは他の人のため、という趣旨のもの。
それは、お客様に対してでもあり、職場の上司や同僚に対してでもある。
仕事の場では、その場にふさわしい服装や清潔感が必要となり、具体的な例につながっていく、そんな流れです。
思い起こせば、まさに私が新入社員だった頃、営業として配属が決まり、スタートしました。
基本は、新規開拓営業。訪問先は、各種法人など。取り扱う品も、それなりに金額の高いもの。担当先もあり、外出してのお仕事。
制服はあったものの、営業として外出しますから、そうなるとスーツ。それは、私服。そして、その時点では、そのための別の手当が特にあるわけでもない。
自分で用意、するしかない状況。
とは言え、スーツは、就職活動で用意したものが多少あるだけ。
「内勤なら、制服があるのに、あの制服、結構好きなのになぁ。は~ぁ」。そんな考えが、頭の中でモヤモヤ。
何分、当時は、地方の大学から東京に出てきたばかり。
あれこれ、物入りでもある時期。必要なもの、欲しいものが、色々ある中、
洋服を買わなきゃならないのは、痛い。
それもスーツなんて、高い。
正直、おしゃれだの、身だしなみだの、それ以前の問題。その時共感したのは、身近な大人からの「清潔だったら良いから。」と言う、
思いやりに満ちた言葉。
「そ、そうですよね。少しずつスーツを揃えるとして、それまでは、大学時代からの服。その中で、できる限り仕事寄りの服で凌ごう。」そう心に決め、元気よく出勤していたのですが。
新入社員を迎えての、
歓迎会でのこと。
別の部署の年配の方から、「何だ、その服は。高いものを買っていただくんだから、
それにふさわしい服があるだろう。服だけじゃなくて、
アクセサリーだって、パールとかさぁ」と、ご指摘を受けました。
「パ、パール?スーツだけでも
頭が痛いのに、パールですか?
どんな高級品を、揃えなきゃいけないの?
泣けて来る。」 それが、正直な気持ち。ただ、新入社員と年配の方とで金銭感覚に違いはあるものの、後から振り返ってみれば、
その方は、値の張る高い服やアクセサリーを揃えるように言っていたわけではなかったようです。あくまでも、TPO。
その仕事、その場にふさわしい装いをして欲しい、ということ。
今ならわかりますが、清潔は心がけていたものの、かなりカジュアル。それも、大学生寄り。まあ、大学時代の服なので、
当たり前ですが。遊びに行くなら良くても、
商談では信頼感に乏しい。
それなりに、値の張る品を扱う場には、
ふさわしくない。確かにその通りです。
人間、中身が大切。そうは言っても、伝わらなければ、もったいない。
それも含めて、うまく伝わる工夫、セルフプロデュースをすることも大切なコミュニケーションの一つ。
見た目の影響
何よりそれは、その場や相手の存在を、尊重。お互いに承認し合う、第一歩になるかもしれません。幸いなことに、その後、
手頃な服を、手頃な価格で購入できるルートが見つかり、何とか解決。ふさわしい服に、たどり着くことができました。
そしてつくづく、
服装や見た目によって、相手の反応や
その後のコミュニケーションに違いがある。そう実感します。
おしゃれは、自分のため。
身だしなみは、他の人のため。
その意味では、TPOにふさわしい服装、見た目も、他の人のため。
見方を変えると、自分のため、にもつながる。
その場の人と、円滑なコミュニケーションを取るため、ではないでしょうか。
これは、コミュニケーションの3つの法則の内、1つ目の法則に該当しそうです。
改めて、コミュニケーションの1つ目の法則とは。
私たちの心の中にある、「親・成人・子ども」。
その「親・成人・子ども」の、狙い狙われた部分で反応し合う、やり取りをすること。
これは、ストレートに続く、いつまでも続く可能性のある交流。「相補交流」とも呼ばれる、やり取り。
相互に補う、と書いて、「相補交流」です。
TPOにふさわしい服装、身だしなみは、お互いの第一印象を決めるものであり、これから始まるコミュニケーションの、入り口ともいえるもの。
営業と顧客。「成人」対「成人」だったり、「親」対「子ども」だったり。狙い狙われる、心の中身の組み合わせはあれこれあっても、
商談の内容そのものは、スムーズで良好、良い関係の続く「相補交流」をしたいところ。
それなのに、「何だろう?このカジュアルな服装の人は。何だか、信頼できない。」
そんな印象では、それがノイズになってしまいます。
これでは、コミュニケーションの2つ目の法則になってしまう可能性が高まります。
2つ目の法則とは、私たちが心の中に持つ「親・成人・子ども」の中で、狙い狙われた部分ではないところから反応すること。
ストレートに続かない、止まってしまうやり取り。「交差交流」とも、呼ばれるやり取り。交差点の交差、という字を使います。
どちらか、あるいは両方が、反応する部分を変えない限り、続かない交流、やり取りです。
営業と顧客。スムーズで円滑なやり取りとはならず、止まってしまう。
内容そのものにたどり着く前に、止まってしまうかもしれません。
もちろん、嫌な「相補交流」の場合は別です。
敢えて止める、「交差交流」の活用がおすすめ。
内容が始まる前に、止めてしまいたい。
そもそも始めたくない交流があるなら、そこは、服装や見た目をセルフプロデュース。敢えて止める、始めない。そんな方法もあります。
ちなみに、新入社員当時、強者の先輩がいたのですが、その方は鮮やかな色のハンカチを、敢えて目立つように、スーツの胸ポケットから覗かせていました。
物腰なども、ちょっと斜に構えて話すような、一見、軽く思われるような、そんな印象。
その方曰く、「見た感じがこうで、いざ仕事になると、優秀。そのギャップが良いんだよ。」だとか。
どこまで意識的だったのかはわかりませんが、この辺りは、軽い「交差交流」で敢えて一瞬止め、その後、仕事ではしっかり期待に応え、「相補交流」につなげたということになるでしょうか。
実際、仕事がよくできる方だったので、それなりの説得力はありました。
承認欲求と心理
ただ、そこは、所属していた会社の信用度や、製品の力などもあったはず。
皆様は、どう思われますでしょうか。
個人的には、良い関係を続けたい場合、スムーズでストレートな
「相補交流」につなげる。関係を始めたくない、続けたくない場合、止まってしまう、ストレートに続かない
「交差交流」につなげる。そんなシンプルなセルフプロデュース、見た目のコミュニケーションが、
安定していて安心。
人間、中身が大切。ただ、時には、それが伝わらないばかりか、
誤解までされてしまう。
そんな経験のある方もいらっしゃるのでは?特に、初対面だったり、浅い関係性の方との間で、そんな問題があるなら、見た目のコミュニケーションが、良好な
「相補交流」になっていない可能性を疑ってみたいところ。どう見られたいのか、見られたくないのか、
そしてそのためにはどんな見た目が
有効なのか。髪型や服装、似合う色や素材、などなど。
安心・安全な場所、相手で試してみてはいかがでしょうか。実のところ、私たちの求めてやまない、
承認欲求を満たす刺激=ストロークの効果も、見逃せません。
見た目を変えることで、得られるストロークの
内容や度合いが、変わってくる。すると、
ストロークは、それを受けた行動が強化される、という特質がありますから、
それにつながる、私たちの行動も変わって来る。
良い循環が起きる可能性が、高まります。
では、今回
覚えていただきたいポイントは、
「セルフプロデュース、見た目のコミュニケーション。」
まずは、気づくこと。そして、いつもと違う変化を、味わってみませんか?
ここまで聞いていただき、ありがとうございます。
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お相手は、遠藤美保でした。ありがとうございました。