まずは、救急医である川下先生が患者さんの死とどう向き合ってこられたのかをお聞きしたいと思います。
研修医時代の忘れられない見取りの経験があると伺ったのですが、 その時のことを教えていただけますでしょうか。
そうですね、たくさんあって、やっぱりこういう仕事ですから、 人の死という場面に多く携わってこさせてもらったんですね、確かに。
結構一つ一つが印象的ですけど、
僕自身は、御野さんが先ほどおっしゃったように、働き始めてですね、 最初外科をですね、外科のまわり始めて、研修時代ですね。
その時に、おそらく一番最初に働き始めて、 人の死の隣住の場ですね、いた方、患者さんのことを覚えてます。
覚えてて、比較的若い女性の方だったんですが、 その方は肝臓から出てる単肝という区だとですね、 単肝と腸をつないでる手術を受けられてたんですよ。
単肝空腸粉合っていうんですけど、そういう手術を必要だったご病気があって。
単肝とこの小腸、腸を結ぶとですね、やっぱり腸の中って筋がたくさんいるんですよね。
腸内細菌という細菌がいっぱいいるんで、それが直接単肝に流れ込みやすいですから、 単肝炎っていうのを起こすんですよ。
そして感染症なんですね。単肝に感染をすると次、肝臓にですね、その感染が及んで、 肝脳瘍っていうのを起こしてしまってたんですね。
それが体調が悪くて、肝脳瘍というその感染症のコントロールが効かなくなってですね、 肝臓にもあちこちに脳瘍という海の塊、海のたまりを作った方なんですよね。
それを当時の僕の上司は、僕のお所さんですけど、懸命に戦ってたんですね。
いくつもその溜まってた海に対して、肝臓の中にこうチューブを、栓子ですね。
そしてチューブを入れて海を抜くっていうのを何箇所もですね、入れて戦ってたんですけど、
最終的には救命できなかったんですよ。
最初は入院なさった時にそんなことになるなんて僕も全然思ってませんでしたから、
働き始めてその患者さんと、若いですしよくわかってないですから、
せめてお話は楽しくあってほしいなとか、明るく振る舞うようにしてたんですけど、
2ヶ月近い入院の中でですね、最終的に亡くなったんですけど、
その患者さんが亡くなる前にですね、直前ぐらいに言ってくれたんですよ。
悔しいって、助からないんでしょうって。
でも私は助からないんだろうけど、私の死を忘れないでねって。
あの時の顔を今でも覚えてて、あんまり聞き迫るものがあったんですね。
本当にどっちかっていうと恨みに近いようなかもしれないし、恐怖とかそういうものがあったんじゃないかなと、
あまりいい感情ではなかったんじゃないかと思うんですね。
やっぱり患者ってこんな気持ちいいなんだよっていうのはですね、
あなた忘れないでねって、腕をガッと掴まれてですね、話してくれた時の彼女の顔を忘れないですね。
なんかすごい怖かったし、死というものがですね、怖かったし、
そこに向き合うっていうこともですね、やっぱり大切さと厳しさというのを覚えてますね。
本当に最初というか、研修で入られてからで。
それぐらいですね、結構気さくに接してくれてたし、僕もいい思い出の方との出会いはですね、
それもあってすごく響いてますね。
今の川下先生の仕事の中の一つの転換転機だった部分もあるんですかね、土台になっている部分というか。
結構あるような気がします。
上司はそれこそ逃げなかったんですよね。
最後まで救命に必死にしてたし、周りからしたらもう無理だって言われてたんですよ。
それがいいか悪いか分かんないですよ。
無謀で患者さんに無理を敷いたのかもしれないし、だけど諦めてなかったなっていう背中を見せてくれたのは、多分僕にかなり大きい影響を与えてるし。
最近の、その時は研修医とか外科とかそういうところでしたけど、その後も自分で失踪した方が亡くなっていったりとかいろいろあります。
最近の救急会としてチームで仕事をするようになって、やっぱり最近の誰かが亡くなっていくとか、そういうことには研修のときの彼女はやっぱり影響を与えてると思ってて。
結構忙しい職場、皆さんそうですけど忙しかったら目の前の急に現れためんどくさいことってどっかやりたくないですか。
それは確かに配布団の業務の中ではあります。
もちろん僕もとかみんなあると思うんですよ。
やっぱり社会の中で救急の救急外来とかやってると、どこにもたどり着けないぐらい困ってる人や困ってることが訪れるんですよね。
別にそれをやっぱりやりたい、見たいっていう人って少ないと思うんですよ。
やっぱり困ることばかりだし、多くは医療、何かの薬を言ったら良くなって、良かったとか、何かの手術をすることを目標にしましょうとか全然そういうことではなくて、やっぱり置いてたときからどんな手を尽くしてもこの方は助かりませんって人はいるんですよね。
だけどそのことに本人や周囲も気づいてこなかったとか、何年も前からそういう状況なんだろうけど、もしそう悪くなったらこうしようってことは話し合われずにですね。
で、やっぱり医療人から見ると、いつこんなになってもおかしくなかったのに何やってんだみたいなことはやっぱりあるんですよね。
でもそれは我々が見えてるだけであって、実際にその方たちはそういう出会いとかそういう機会を設けることができなかったっていう人はむしろたくさんいると思うんですよ。
そういうことが目の前に来たときに、僕らチームとして考えようって思ってるのは、やっぱりそこに自分の目の前から困ってることを机から吐き捨てるようにですね。
誰か他の人の机に置いちゃえばいいやとか、そういうふうに考えたくなるところをグッとこらえようぜと。
分かる、そうなるけど、我々が逃げたらですね、徳島県の中で県立中央病院っていうところの救命救急センターですからね。
我々が逃げると、もう社会は困りますし、必ずこれは受け止めなくちゃいけないっていうところから向き合わせっていうふうに思うようにみんなで頑張ろうって言うんですよ。
だからそういうのはですね、一番最初のあの方の彼女をどれぐらいかわかんないですけど、結構自分の中では大きく残ってると思います。
一人一人の患者にちゃんと向き合うっていうところ、逃げないっていうところは、後輩にもそういうところを伝えていってみたいな。
とか言いながらチャランポランしてるんですけどね。
できないことの方が多いですし、とかあまりにそれで時間かけちゃったりとかもあってアンバランスなんですけど、やっぱり困ってますからね、目の前の人。
困ってることを誰かの手に渡しても困りますからね。
だからやっぱり良かったってなってほしいなと思います。
分かりました。ありがとうございます。こうした重い場面に向き合う毎日の中でも、川下先生が大事にしている小さな一歩があると伺ったんですけど、それは挨拶っていうふうに伺ったんですけど、意思としてどのような思いで挨拶っていう部分を大切にされてるのかっていうのを教えていただいてもいいですか。
お恥ずかしい話ですよ。社会では当たり前だと思うし。なんですけど、結構やっぱり、結構その医療の現場ってですね、特殊というか、悪い風潮で患者さんとかですね、目上の方とか年齢が上の方とかであっても、結構その意思がですね、
医療従事者がちょっと公平な態度をとるようなシーンって、現実問題をよく目にしてきたんですよ。できて、もしかすると過去の僕もそういうところが大いにあったんじゃないかと思うんですけど、やっぱりその、僕たちはやっぱり教育、自分自身も成長していくっていうことをチームが成長するためにはやっぱりその教育が重要だと思ってるんですけど、やっぱり下の学年から見てですね、
この公平な態度をとってる人の背中を見ると、そう育つんですよ。
それはそうかも。あると思います。
こんな風に接してたってとか、こういう言葉を使ってたってものを参考にしますから、それはですね、僕たちとしては残念で、やっぱりその必ずですね、どんなこの患者さんが確かに危険な場面とか危なかったとしても、ほんの数秒の必ず名札を見せてですね、
僕であれば救急課の川下ですって、これから診察しますねって担当しますねっていうことを必ず言うと、そういうチームになりたくてですね、それをだいぶ言い続けてきて、実践をみんなで救急課のみんなでやり続けていくと、結構研修医諸君とかやってくれるんですよ。
ちゃんと名前も名乗って、もちろん敬語で接してくれるようになってきたと思うんですよね。これはですね、ほんとちっちゃいことかもしれないけど、やっぱり大切なことだと思っていて、それをやり続けてちょっと変わってきたのかもしれないなっていうと嬉しく思ってます。
ナースもそうでですね、みんなもそういうふうに名乗ってくれるようになって、なんか誇らしいんです、僕としては。
素晴らしいですね。確かに慣れ慣れしくじゃないですけど、こう行くことが親しみやすさを生むっていうのも、そういう場面もあるかもしれんのですけど、やっぱり一手以上の礼儀みたいなところっていうのは持ってっていうのは大事な部分。
自分が患者になったこともあるんですけど、どこのお店でも行っても、こうですってお願いしますって言ってくれたらすがすがしいじゃないですか。やっぱりリスペクトが生まれるし、上も下もないですから困ってて、何か困ってませんかって役に立てたら嬉しいですし、やっぱり上とか下じゃなくてフェアだと思うんです、そこは。
そうですね、確かにもうそれについては本当にもう医療現場だけじゃなくて、普段の僕の生活の中もちょっと改めなかったところがあるなって、すごい参考にさせていただけるような話がいっぱいやなと思いましたね。
なんかそういう最初とか自分がそういうふうに思ってますってことを示した上で、やっぱりどこかで崩れていけるといい場面もわかってくるんですよね。そこは、ほんまですかみたいなですね。またこんなのおっしゃっててみたいな、そういうことを言えるこの患者さんとの関係性みたいなのもできてくるんですけど、最初からそれはないだろうと。
初対面ですからね。ですから、やっぱり信頼やお互いの尊敬なくしてはですね、ちゃんとした医療を提供するっていうのは難しいと思ってるんで、そんなチームに出られればなと思ってます。
すごい。そしたら、川下先生が率いる救命救急センターのチームはもう皆さん挨拶からまず。
そうですね。結構この場面で挨拶からみたいなこともありますけどね。早くなんかしてよみたいな時に、川下ですとか言ってることもあるんで、みんなハラハラさせてるかもしれないですけど。
なるほど。周りから見たら、いや、そこでまだ挨拶より先っていうのは。
あるじゃないですか。なるほどですね。って言ってるんだけど、ほんの数秒だけどちゃんとやると。やっぱりなんかこう細部に神が宿るって言うじゃないですか。そういうことは大切にしてますね。