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インベストメントブリッジがお届けする、いろはに投資のながら学習。
皆様、いかがお過ごしでしょうか。
久しぶりにポッドキャストに戻ってまいりました、インターン生の清水です。
このエピソードでは、投資・経済関連の書籍を、インターン生がピックアップしてご紹介しています。
今回ご紹介するのは、
父が娘に語る、美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
おすすめしたい方は、
投資云々以前に、まず簡単な言葉で経済の本質を知りたい、という方。
また、難しい経済書なんて読めない、けど資本主義について知りたい、という方です。
同書は、ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務大臣が、10代半ばの娘に向けて、経済について語っている本です。
おそらく、小学生・高学年でも、何が書かれているのかわからない、とはならずに読み切ることができるはずです。
著者は、先ほどもご紹介したヤニス・バルファキス氏です。
ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政禁止策を迫られる中、大幅な財務長期史を主張し、世界的に話題となりました。
同志は、イギリス、オーストラリア、アメリカ、アテネで長年経済学を教えている教授でもあります。
さて、今回の書籍紹介では、今までの書籍紹介のように概要を話すのではなく、ほんの一部のご紹介をしたいと思います。
この理由は、同書があまりに優しい言葉で、小説チックに解説があるため、要点を絞って解説する方がむしろ難しくなってしまうと思ったからです。
まずは、同書を読みたいと思わせてくれた、著者の冒頭のメッセージからご紹介します。
著者は以前から、経済学者にだけ経済を任せてはいけない、と考えていました。
そのためには、若い人こそ経済を身近に感じ、意見していかねばならないのです。
このため、同書はあえて、難しい解説書とは正反対の本になるような口調や言葉で書かれています。
また、長い間離れて暮らしてきた娘に、これまで時間がなくて話せなかったことを娘に話すつもりで執筆したものでもあります。
ブレグジット、グレグジット、トランプ、ギリシャ危機、ユーロ危機、といった日替わりのニュースの話題ではなく、本当に見るべきものである資本主義について娘に語りたかった。
なぜなら、私たちの人生を支配している資本主義という怪物とうまく共存することができなければ、結局は何もかも意味をなさなくなってしまうから。
と、そんな思いから、経済・資本主義が解説されています。
では、著者の思いを知った上で、最初に解説されている格差について読んでいきましょう。
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君は小さな頃から世界には格差があることに気づいていたようだ。
でも、毎日の世界で格差を体験することはないだろう。
世界には貧困や暴力に苦しんでいる子どもたちの方が多いけど、君の通っている学校の生徒たちは貧困や暴力とは無縁なのだから。
この間、君はこう聞いたね。
パパ、どうして世の中にはこんなに格差があるの?人間ってバカなの?
この問いを、オーストラリアで生まれ育った娘に向けて、少しひねって考えていきます。
なぜアボリジニはイギリスを侵略しなかったのでしょうか?
アボリジニの兵士がドーバーに上陸して、瞬く間にロンドンに侵軍して、女王と抵抗するイギリス人を皆殺しにしなかったのはなぜでしょう?
パカげた質問かと思うかもしれませんが、大切な問いです。
注意深く考えなければ、ヨーロッパ人は賢くて力があったから、とか、アボリジニはいい人たちだったから残忍な侵略者にならなかった、
なんていう答えをうっかり受け入れてしまうかもしれません。
歴史の中で迫害された人たちは、賢くないから犠牲になったのではありません。
すべては地理的な要因から紐解けるのです。
では、この解説をするために少し脱線します。
まずは、市場と経済の違いについてです。
市場は、交換の場所です。
欲しい商品とお金を交換するスーパーやアマゾンなどが市場にあたります。
お金が発明される前は、バナナとリンゴなど、物と物を交換しており、それも市場の取引と言えます。
しかし、これだけでは本物の経済とは言えません。
8万2千年ほど前に人類は初めて大きく飛躍しました。
それが、言葉です。
それから7万年後、今から1万2千年後に2度目の大きな飛躍がありました。
土地を耕すことに成功したのです。
唸り声の代わりに言葉を用い、木の実の代わりに作物を収穫できるようになり、経済が生まれました。
農耕を発明したことで、人類が自然の恵みだけに頼らずに生きていけるようになりました。
だからといって、当時の人にとって幸せな瞬間だったわけではありません。
そもそも土地を耕していたのは、皆が飢えて死にそうになっていたからです。
周囲の獲物を狩り尽くし、人口も爆発的に増え、生き延びるためには土地を耕すしかなかったのです。
つまり、自然の恵みが豊かなオーストラリアでは、土地を耕すなんて考えもしないのです。
人間が農耕の手段を開発していく過程で、本物の経済の基本である余剰が生まれました。
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余剰とは、自分たちの食べる分と、翌年の収穫のために植える種以外の余った作物です。
作物が収穫できない災害に備えて小麦を貯めたり、翌年より多くの種を植えるために作物を取っておくことで、昔の人は余剰を増やしていきました。
この余剰において注目すべき点は2つあります。
まず、狩りや漁、自然の機能や野菜の収穫は余剰を生み出さないことです。
保存できる穀物と異なり、ウサギや魚、バナナはすぐに腐ってしまうからです。
次に、農作物の余剰が様々なものを生み出しました。
文字、債務、通貨、国家、官僚制、軍隊、宗教、テクノロジー、最初の生物科学兵器を使った戦争などです。
余剰から文字が生まれたと紹介しましたが、これは余剰を記録するためのものでした。
考古学者によると、世界最古の文字はメソポタミアで誕生し、農民が共有倉庫に預けた穀物の量を記録していました。
このため、農耕が発達しなかった社会では文字は生まれませんでした。
木の実も果実も肉も魚も十分にあったオーストラリアのアボリジニア、南アフリカの先住民の社会で、音楽や絵画は発達したけれど文字が生まれなかったのはこのためです。
そして、余剰の記録が債務と通貨の始まりです。
古文書によると、多くの労働者への支払いに貝殻が使われていました。
畑で働いた労働時間を穀物の量に換算し、主人はその量を貝殻に書いて労働者に渡していたようです。
貝殻に記載された穀物の量は未収穫なので、ある意味主人が労働者へ返すべき借金のようなものでした。
また、この貝殻は通貨としても使われていました。
さらに、債務が生まれたおかげで通貨が流通するようになりました。
通貨が価値を持つには、国家などの何らかの制度や組織が通貨を信頼できるものにする必要があったからです。
この制度の中で、余剰の配分は大きく偏り、地位の高い人たちがありえないほどの分け前を扱っていました。
これに国民が歯向かわないよう支配者を正当化するために生まれたのが宗教です。
余剰が全員に際たるほど多くなかった当時、食べ物をわずかしかもらえなかった庶民はいつ反乱を起こしてもおかしくない状況でした。
宗教の裏付けをなくしては、支配者の権威は安定しなかったのです。
さらに、農耕はテクノロジーと生物兵器を生み出しました。
農耕のために開発されたテクノロジーが建設に使われるようになり、ピラミッドやパルテノン神殿、インカの寺院が生まれました。
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一方で、余剰は恐ろしい細菌やウイルスも生み出しました。
大量の穀物は街中の共有倉庫にあり、人や動物に囲まれていたため、衛生設備がなかった当時は人や動物を通して細菌やウイルスが繁殖し、種から種へ感染したのです。
人間の体はまだ免疫がなかったため、そうした細菌やウイルスによってたくさんの人が亡くなりました。
オーストラリアやアメリカでも、先住民は侵略者から殺されるよりウイルス感染で死ぬケースの方が多かったのです。
また、侵略者がウイルスを武器として使うこともありました。
天然糖をすり込んだ毛布をアメリカ先住民にプレゼントし、その地域を寝たやしにしたこともありました。
さて、ようやくオーストラリアの侵略者がイギリス人だったが、どうして逆ではなかったのかという問いに戻ってきました。
文字も財務や通貨も国家も、それらによる経済やテクノロジー、軍隊までも、すべて余剰から始まりました。
ユーラシア大陸の土地と気候が濃厚と余剰を生み出し、最終的に武器を装備できるようになるまで発展しました。
しかし、自然の食べ物に恵まれたオーストラリアでは、余剰は生まれなかったのです。
3、400万人がヨーロッパ並みの広さの国土に自然と共存し、人々は土地の恵みを独り占めてきたのです。
アボリジニは詩や音楽、神話などの素晴らしい文化を発達させたが、それらは他人を攻撃するものではなかったのです。
いくら文化が発達していても、濃厚社会の経済がもたらす軍隊や武器や細菌から、自分たちを守ることはできなかったのです。
逆に、気候に恵まれないイギリスでは、大量に作物の余剰を貯め込まないと生きていけませんでした。
航海技術や生物兵器も余剰から生み出され、はるばるオーストラリアまでたどり着いたイギリス人にアボリジニはかなわなかったのです。
さて、経済とは何かということを理解しながら、ようやくアボリジニがイギリスを侵略しなかった理由を読み終えました。
これは、動書の最初に紹介される格差についての話ですが、その後に市場社会、借金、金融、労働力、新しいお金など、より経済や今の世の中を理解していける話が続いていきます。
今回は、なるべくこの本の特徴でもある娘に語りかける話の流れを損なわないように解説したつもりではありますが、私の稚拙な紹介では良さと内容の大枠も伝わりきっていません。
ぜひ、知事が娘に語る美しく深く壮大でとんでもなくわかりやすい経済の話を手に取ってみてください。
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思わずのめり込んで読み進めてしまうはずですよ。
本日も最後までご視聴いただきありがとうございました。
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