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インベストメントブリッジがお届けする、いろはに投資のながら学習。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。インターン生の高田でございます。
このエピソードでは、投資・経済関連の書籍を、インターン生がピックアップしてご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、GDP〈小さくて大きな数字の歴史〉という本です。
この本は、GDPという指標が、いかにして重要視されるようになったのかということを、歴史的な背景とともに、分かりやすく説明しています。
難しい計算を使わずに、GDPとは何かについて考えられるため、普段から経済学に馴染みのない方にも、おすすめな一冊となっております。
著者はダイアン・コイル、マンチスター大学教授の経済学者です。経済学への貢献によって、大英帝国君威を受訓されている方です。
この本の結論ですが、それはGDPは経済を図る指標として、完璧なものではないという主張です。
ではなぜ、私たちはGDPを使って経済について議論をしているのでしょうか。
おそらくほとんどの人にとって、GDPを疑うという視点は新鮮なものだと思います。
GDPは土地の面積や気温などの客観的なものではなく、人為的に計算される指標です。
世の中のあらゆる商品やサービスの値段を合算してから、複雑な手順で季節変動やインフレの影響を組み込み、国際比較が可能なように標準化し、
理論上の為替レートに応じて、さらに調整を加えて計算されるのがGDPです。
そんなに人為的で複雑で抽象的な数字が、私たちの運命を決めるような政治判断に使われることは適切なのでしょうか。
この本を読んでいくと、GDPは戦争の産物であるということが分かります。
そもそも、国の経済全体の大きさを測るという試みが初めて本格的に行われたのは、17世紀のイギリスでした。
イギリスの学者であったミリアム・ペティが、イングランドとウェールズの収入、支出、人口、土地、その他資産についての推計を作成したことで、
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戦争に必要な資源が足りているか、そして徴税で戦費を賄えるかどうかを見積もることが可能になりました。
国の経済に関する総合的な統計を用意できたイングランドは、
共国オランダやフランスに対してもかなり優位な立場を手に入れることになりました。
その後、各国で国民経済計算が注目され、重要視されるようになったのです。
現在、私たちが使っているようなGDPができたのは、世界を揺るがした2つの歴史的事件がきっかけでした。
それは、1930年代の大恐慌と、それに続いて1939年から始まった第二次世界大戦の2つです。
1930年代の大恐慌、その未曾有の大不況から抜け出すための手掛かりとなるような情報を得るために、
当時のイギリスではジョン・メイナード・ケインズ、そしてアメリカではサイモン・クズネッツという歴史上でも有名な学者が、
政府に提供する統計データの作成を行っていました。
大戦後には国連が指揮を取ることによって、国際的な経済測定の基準、GDPが作られました。
欧州復興のためにアメリカが行っていた支援政策、マーシャルプランの効果測定のための指標が必要であったからです。
こうして出来上がったGDPには、政府の動かせる数字である政府支出や履歴がGDPを規定するという特徴がありました。
結果としてGDPは、政府の動かせる数字が経済の大きさにどう影響するかを論じてきたケインズ派の経済学を後押しすることになったのです。
こうした介入主義的な経済政策の基礎は、現在でも当たり前のように使われていますよね。
2023年の現在も、金利を動かして経済の成長をコントロールするという考え方が使われているのは、GDPの計算方法が根拠になっているのです。
一方で私が興味深いと感じたのは、クズネッツの主張です。
彼は単なる生産量を測るのではなく、国民の経済的な豊かさを測るべきだと主張していました。
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というのも、当時のアメリカ政府としては、政府支出の拡大を国民に納得させるために、政府支出が国民所得を増加させるという構造の指標を作りたかったからです。
ここで言う政府支出とは、主に軍事費のことを指しています。
つまり、戦争のためにお金を使うということを正当化したかったのです。
しかし、クズネッツは国防や司法、教育、公衆衛生といった公共サービス提供のための公共機関へのお金の出入りは、消費の一部ではなく、生活を成り立たせるための必要な出費であるという立場を取っていました。
そのため、こうした国民経済計算の生産量の一部として、計算の内訳に入れることを否定していたのです。
彼の重視した福祉的な観点は、現在になって議論が盛んになってきています。
それは、GDPは人々の生活の豊かさを測ることができない、という点です。
合計額で計算されるGDPは、平等について測定できません。
GDPの成長を重視すれば、地球環境への配慮が見過ごされ、持続可能性が軽視されかねません。
また、GDPは20世紀の大量生産経済を前提としており、21世紀の急速なイノベーションやデジタル化された無形サービスには対応できない指標です。
さらに、技術革新についても正しく反映されないとも考えられます。
ろうそくを明かりとして使っていた時代がありましたが、現在ではスイッチ一つで明かりがつくようになっています。
それに伴って人間の活動時間が増えたとも言われています。
しかし、過去と比べると、単位あたりの電気代はかなり安くなっています。
すなわち、GDPの計算においてはマイナスの影響とも考えられます。
こうした技術革新がGDPを避けてしまう可能性があるのです。
ここまでご紹介してきたように、あくまでGDPとは生産量を測る指標に過ぎないのです。
この本を読み、経済を測る指標が作られる歴史をたどることで、現代にふさわしい新たな指標の可能性、そして必要性について理解できるはずです。
本日も最後までご視聴いただきありがとうございました。
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