けんすう
はい、それではハイパー企業ラジオ番外編でございます。よろしくお願いします。
というわけで、今日の番外編はゲストをお招きして、いろいろお話を聞いていきたいなと思いますが、もう早速紹介しちゃいます。
独立KVCアニマルスピリッツ代表パートナー、朝倉祐介さんです。よろしくお願いします。
簡単に私の方から朝倉さんのプロフィールを紹介します。
競馬機種養成学校を経て東京大学邦楽部を卒業後、マッキンゼ&カンパニー入社を経て、大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任。
mixi社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員などを経てシニフィアンを創業。
スタートアップエコシステム協会理事なども勤めていらっしゃるという、なんかすごいバカの考えたプロフィールみたいな感じになってますけれども。
尾原
ヒーローヒストリーみたいな感じですけど。
けんすう
そうですね、なんかちょっといろんな要素があって、お客さんも混乱するかなと思うので、ちょっとなんか補足いただいてもいいですか、このプロフィールに対して。
朝倉祐介
そうですね、どこから補足すればいいか。
けんすう
まず競馬機種養成学校を経て東京大学法学部っていうところでみんなうんってなると思うんですけれども、よく聞かれると思うんですが、まず競馬の機種になろうとしてたということですよね。
朝倉祐介
そうですね。
けんすう
で、それを辞めて東京大学に入学したと。
朝倉祐介
はい、戦ってます。
尾原
しかも法学部だからね。
けんすう
そしてマッキンゼー&カンパニー、戦略コンサル会社に入社しつつ、傍らで大学在学中に設立したネイキッドテクノロジー代表に就任していたのか、その辺の時系列ってどうなってるんですか、これ。
朝倉祐介
そうですね、ネイキッドテクノロジーに関して言うと、学生時代に友人たちと一緒に会社を立ち上げまして。
僕は会社立ち上げた時がすでに大学4年生で、就職も決まっていて、学生の間やるよということで一緒に会って、僕初代の代表ではないし。
ちなみに初代の代表は現シナモンの平野美久さんですね。
そうですよね。
大学卒業した後、僕は完全にこちらの会社からは離れていたんですけれども、マッキンゼー3年ほど勤めて、このネイキッドテクノロジーという会社が資金調達をするというタイミングに戻りまして、その後代表を交代したという、そういう経緯ですね。
けんすう
なるほど。で、ネイキッドテクノロジー社がミクシーに買収されて、ミクシー社にメンバーの一員として入って、その後このミクシーの中で働いて、代表取締役兼CEOにまでなられたということですよね。
朝倉祐介
はい、あってます。
尾原
ミクシー社が生まれるところをガンガンにやってたところを、やっぱりミクシーがSNSをベースにしたいろんなテクノロジーを入れていくっていうところで買収されたんですよね。
けんすう
はあ、でもそこでなんでそもそもミクシーのCEOにまでなれたのかっていうところもお聞きしていいですか。
朝倉祐介
はい、ミクシー入社して以降の。
けんすう
そうですね、なかなかないじゃないですか。その買収された側の会社の社長が、その本体の社長にまでなるというのは。
朝倉祐介
もともと会社を売却した経緯で言うと、会社を売却したのが2011年なんですけれども、当時って皆さんご存知の通り今ほどベンチャー投資額って多くなくて。
2010年に資金調達をした会社だったんですけど、その時の当て年間ベンチャー投資額700億円の時代ですからね。全然お金がないと。
けんすう
700億しかなかった。
朝倉祐介
で、そこから次の年になって追加の資金調達しなきゃねっていうことで、いろんなVCだとかを回ったんですけど、そもそもVCの数もそんなに多くないし、仕方ないので事業会社も回って。
で、そしたら何社か、だったら100%買収したいというような、そういったご意向もいただいたものですから、じゃあこのタイミングに売りますかということで、売ってミクシーに入ったという、そういう経緯なんですね。
けんすう
で、入社した後も本当はミクシーの新規事業を作りたいなという、ミクシー社内で何かそういった新しいSNSを作るだとか、そういったことに興味関心があって、入社した時は勝手にいろいろ活動していたという、そんな感じですね、最初は。
社長になって業績回復をしたというのが、朝倉さんの非常に有名な話なんですけれども、ちょっと今回前編でそのあたりの朝倉さんの企業関連体験の中で一番お箱と言えるようなご体験をお聞きして、ちょっと今やってらっしゃることとか未来の話は後編にお聞きしようかなと思うんですけれども、
やっぱり企業体験の中で一番このミクシーの業績回復に関わったというところが大きいですか。
朝倉祐介
そうですね、自分自身の原点になっているというか、強烈な原体験にはなってますよね。
けんすう
めっちゃ聞きたいことたくさんあるんですけれども、まずなんかどう考えても大変じゃないですか。
朝倉祐介
なかなか痺れましたね。
けんすう
ご存じない方もいると思うんですけど、やっぱ当時はなかなか市場環境の変化が大きくて、まずSNS自体がFacebookとかいろいろな外資が入ってきたりとか、スマートフォンが出現して一気に広がったりとかがあったと思うんですけど、一番当時ミクシーで大変だったことって何ですか。
朝倉祐介
当時のミクシーの直面していた課題でいうと、まさに今おっしゃっていただいた通り競合ですよね。
Twitterなんかが一気に来たのって2010年ぐらいから割と一般の人たちも使いだしたんですかね。
けんすう
確かに確かに。
朝倉祐介
Facebookってソーシャルネットワークっていう確か映画があったと思いますけど、あれの後ぐらいから広がったじゃないですか。
確か2011年のお正月映画なんですよね。
けんすう
確かに確かに。
朝倉祐介
LINEがローンチされたのが2011年。
なのでここら辺から一気に2010年前後から一気にその代替サービスが日本に浸透してきたということ、これが一つ。
あとマーケットですよね。
柄系からスマホに一気に変わるタイミングで。
それこそ2011年ってKDDIがレディガガを使ってガンガンCMしてた頃ですよね。
2011、12、13って一気にデバイス環境が柄系からスマホに移っていく。そんな時期でした。
Mixiのユーザーの方って当時は相応にそういう新しい物好きでテクニック感度の高い人たちだったからスマホにどんどん移っていくわけですよユーザーは。
一方でMixiって基本的には広告収入が中心の会社だったので、
昔は柄系の広告とか、あとパソコンのログインするときのバーンと前面に出てくる画面なんかを売って、そこら辺が集撃の中心だったわけですけれども、
スマートフォンの広告市場がなかなか立ち上がらないんですよね。
朝倉祐介
確かこれ2012年度の日本国内のスマートフォン広告の市場って、確か1000億ないんですよね。800億円程度。
尾原
700から800ですね。
朝倉祐介
700から800ですよね。なんだけどこれポイントは、ほとんどの広告ってアドネットワークと、アドワーズみたいなやつが中心で、
いわゆる我々がプレミアム広告って呼んでたような、巡行って呼んでたような、ナショナルクライアントが直接メディアに張るっていうのって、確か60億ちょっとなんですよ、試算したら。
けんすう
それって要は市場が伸びてるのはみんなわかってるけど、大企業からしてみたらまだ出すほどの規模じゃないなみたいなので、出してないみたいな差があるってことですか。
朝倉祐介
これ背景としてはスマホのランディングページが全然なかったんですよね、当時。覚えてると思いますけど、2011年、12年、13年の頃とかって、
iPhoneとかAndroidでもいいんだけれども、ホームページにアクセスしようとすると、完全にPCのビューが出てくることだったじゃないですか。
見にくいみたいな。要はそういうナショクラがまだランディングページ、自分たちのスマホに特化した、スマホ版のホームページを持ってなくて。
けんすう
そっか、そうですね、確かに。
朝倉祐介
そういう状況だから、そもそも広告貼る意味ないじゃないですか、スマホ向けに。
けんすう
貼っても着地するページがないってことですもんね。
朝倉祐介
そういうことです。なので、まだスマホの広告市場っていうのが全然、巡行の市場がちっちゃくて、60億ちょっとだったはずなんですね。
当時のミクシーの売り上げって、だいたい120、30億なんですよ。
何を言ってるかというと、ユーザーは柄系からスマホに移っている。どんどん移っていく。
一方で、その移った先のスマホの広告市場は、全然まだ60億水準であると。
カタやミクシーの元々の売り上げの規模って120、30億である。
つまりスマホの広告市場を100%取ったとしても、元々の売り上げ規模に達しないんですね。
けんすう
でもユーザーは先行してスマートフォンに行っちゃってるので、当然柄系側の広告の価値は下がっていっちゃうと。
朝倉祐介
そうですね。業績面的にはそこは結構きつかったですよね。
けんすう
打てる手があんまりないというか、どうしようもないですよね。
朝倉祐介
そんな中どんどんサービスとしては、やっぱりFacebookだとかTwitterだとか、LINEもやっぱりコミュニケーションだとか、箇所分時間を奪い合っているツールですから、そういったものが対等してきていて、
LINEなんてね、よりスマホにネイティブで作ってる、スマホに特化した新しいツールじゃないですか、サービスじゃないですか。
だからユーザーもやっぱりそっちの方に移っていくっていうこともあるし、なかなか大きな過渡期だったのかなと思いますね。
けんすう
当時特にFacebookも日本市場頑張るぞっていうので投資フェーズだったから、彼らもそんなに広告をつけなくてもどんどん拡大していくし、LINEも立ち上がったばっかりでシェア取るぞっていうモードだったんで、
その2社はあんまりまだマネタイズフェーズじゃなかったみたいなのもあった記憶ありますね。
朝倉祐介
2011年の秋頃とか、今は懐かしいですけど、ベッキーがCMやってましたよね、LINEのCM。
けんすう
やってましたね。
尾原
当時は無料通話っていうのが結構衝撃的で、そこを牽引するためにベッキーがやってましたね。
けんすう
ありましたね。しかもスマホ同士だとメールがあんまりできないみたいな状況があったんですよね、当時って。
朝倉祐介
そうそう。
尾原
当時はガラケーの携帯についているメールアドレスでやり取りをするっていうのが主流だったんで、スマホになるとキャリアメールが使いにくくて、そこの感激をLINEが持ってきたっていうのは、当時僕Googleにいてミクシーさんを担当させていただいていたので。
けんすう
そうなんですね。面白い。
非常に鮮明に覚えております。
でもその状況だったら、逆に経営者からしてみると打てるってなくないですか?
朝倉祐介
客観的に見てなかなか厳しい状態ではあるんですけど、一方で結構いい価値あるなと思っていて。
というのは、世の中から見た時の当時のミクシーの価値ってイコールサービスとしてのSNSミクシーの価値じゃないですか。
確かに。
なんでSNSミクシーの価値が下がったら会社としての価値が下がってしまうっていう。
そこが完全に三つ結合している状態ですけれども、一方で僕は外から来たとざまの人間だったので、そういった人間の目から見てみた時、すごい良いものあるなと思っていて。
まずやっぱり一つは開発力。非常に良いエンジニアの方が非常に多くいらした。
日本初のCM系サービスでここまでわかりやすいものってなかなかなかったので、やっぱりナウティアのエンジニアの人たちが集まってましたよね。
あとキャッシュがやっぱり120,30億あったんじゃないかな当時。
けんすう
なるほど。
朝倉祐介
売上規模とほぼ同水準のキャッシュがあって、なおかつこれがもう全く働いていない。
株値還元も確かほとんどしなかったと思うんですよね。
けんすう
なるほど。
朝倉祐介
還元してなかったのかな。
だからもうお金が全く働いていない。何よりミクシーの看板っていうのはやっぱり大きいじゃないですか。
けんすう
ミクシーが何か新しいことを始めるよっていうことになれば、それはものすごく人の注目も集まるし。
朝倉祐介
これは当時ケンスも同じくスタートアップをやっていたのでよくわかると思いますけど、冷裁スタートアップからすると喉から手が出るほど欲しいもんじゃないですか。
けんすう
確かにね。めっちゃいい人材がいてキャッシュがあります。ブランドもありますっていう状態ですもんね。
朝倉祐介
こんな何回でもスタートアップできるじゃんみたいな。
こういったものすごくいい価値があるんだけど、それがうまく噛み合ってないというか活かされてないなというそういう印象があって、それはちょっともどしかかしかったですよね。
けんすう
噛み合ってないっていう印象なんですね。
それって中心となるミクシーっていう大きなサービスがあったから、それ自体がちょっと由来でしまうと、いろいろ噛み合わなくなるみたいな感じなんですか。
朝倉祐介
そうですね。さっきサービスと会社の見つけつこうっていう話をしましたけど、今でこそ僕も離れて10年ちょっと経つので、今全然会社の状況って僕は知らないですけど、
ミクシーってきっといろんな事業やってるんだなっていうのを外部から見ていると感じるわけですよね。別にそれが不思議に感じないじゃないですか。
不思議に感じないじゃないですか。ただ当時の2012年、13年頃のミクシーっていうのは、ある種SNSで急激に大きく成長した会社であり、もう本当にSNSの会社なんですよね。
だからそこから外れて何かをやるという発想はなかなか持ちにくいというか、これは僕が戸玉から見た人間の発想からすると何かカフューに近いような感覚はあったと思います。
けんすう
当時の感覚でいうと、一つの会社で一つのサービスをやるが美徳とされてたのがすごい強かった時代ですよね。
朝倉祐介
っていうのもあるし、やっぱりある種SNSの成功体験、日本ナンバーワンのサービスであり、もうほぼオンリーワンだったじゃないですか。
グリーさんはもうゲームの方に移られたので、いわゆるSNSっていう領域においては日本においてオンリーワンと言って差し支えない状況だったと私は思いますし、そこの成功体験って非常に大きかったと思うんですよね。
なおかつそこで人を採用してた時に集められた人たちも、より良いSNSを作っていこうという、そういうある種の信念のもとを集められていて。
なおかつC向けのサービスって、これはね、ケンスの方が詳しいと思いますけど、何か強烈なビジョンというか理念というか、ある種宗教地味な旧信力ってあるじゃないですか。
で、そこに浸水している人たちがやっぱり集まるし、その信念っていうのが中にいることでどんどんどんどん強化されていくから、そこから外れたものってちょっと邪教的な扱いになってしまう。
やってる意味わかります?
けんすう
SNS、SNSじゃない新規サービスやってる時点で、俺たちの大事にしてるものと違うじゃんって感覚ができちゃうってことなんですか。
朝倉祐介
あと当時のC向けのサービスって、あれ、健忘って言うんだっけ?
ノーケルを嫌うC向け。
けんすう
ノーケルを嫌うね。
朝倉祐介
それはおそらく多くのウェブサービスでマネタイズの手段が広告だったりして、広告が入るとユーザー体験って損なわれるよねっていうのは、それはよくわかるんですけど、ユーザーの立場からすると。
あんまりいいもんじゃないと。だけど、とはいえ、食っていくには仕方ない。稼がないと仕方ないことは仕方ないから、仕方なくやるものっていう。なんかそういう雰囲気はありませんでした?
けんすう
ありましたね。要はちょっとその相反するものというか、ユーザー体験を良くしたい側の人と売上げ上げたい人側が割とその正反対の方向を向いている感覚はすごいありましたね。攻めぎ合いというか。
朝倉祐介
シェイム系のサービスって、どこまで言ってもやっぱりサービスの人が主なんですよね。それは別に必ずしも僕は間違ってるとは思わないんですけど。そういった中で、今までオンリーワンでSNSの会社としてやってきたところに、デバイスの環境も変わり、デバイスの環境が変わったところで新しい環境により最適化してきたサービスがどんどん参入してきて。
そんな中、とはいえ過去の成功体験もあるし、とはいえガラ系のユーザーだって多数いるし、そんな中どう勝ち取りすればいいのかっていったところが、なかなか上手く歯車がはみ合わない。誰がやっても難しいタイミングだったと思いますね。
けんすう
確かにな。だんだん思い出してきました。当時だとやっぱDNAさんとかもモバゲーやってましたけど、やっぱり会社名をなんでモバゲーにしないのかみたいなのが結構議論になったみたいな記事をどっかで読んで、やっぱりそのぐらい一つのサービスに集中してやりましょうとか、そのサービスが主になって会社を引っ張るみたいな思想が今よりもだいぶ強かった気がするので。
だからやっぱりサービスを通じて人を採用しているみたいな面もあったので、そのサービス以外をやるとなると結構反発があったりとか、そういう時代でしたね。
なるほど。そこで何から始めたんですか、最初。つまりそういう難しい状況で誰がやっても難しいと。じゃあ何から手をつけようっていうところがなんかすごい難しそうだなと思うんですけど。
朝倉祐介
はい、当時僕入社した時平社員で、要はネイキッドテクノロジーっていう変われた子会社の代表と、あと本体の平社員っていうそういう立ち位置だったんですね。
で、ある時経営会議のちょっとファシテーションとかしてよっていうふうに呼ばれていって、様子見て、いやこれはなかなかちょっと厳しいというか、ちょっとひどい状況だなというふうに思い、何とかしなきゃいけないなって勝手に思ってしまってですね。
で、以降その会社の社内の人といろいろ議論していく。要は僕はとざまの人間なので、社内の人って全然知らないので、何かその社内で意見ありそうな人や声の大きそうな人たちをなんかお茶するとか、ちょっと時間30分くださいとか言ってミーティングするとか、何だったら飲みに行きましょうみたいな話をして捕まえて。
この会社の状況どう思ってるんですかみたいな、そんなことを結構個別で話してたんですね。会社買われてまだ当時ってまだせいぜい3ヶ月とかそれぐらいのタイミングで、そういうタイミングに来たなんかとざまの人間が、なんかお前この会社のことどう思ってんだみたいなことを言うと、何言ってんだこいつはっていうふうに思われますよね普通は。
割れるんだけど、中にはなんか変な奴いるなというふうに思ってくれた人もいて、そういった人の中でじゃあちょっと一緒にどうすればいいのかちょっと考えてみようかみたいな、そういったグループを作っていろいろ議論してたっていうのがそもそもの出発点ですね。
仲間集めみたいな感じなんですか。 そうですね、今思うとそんな感じかなと思います。 仲間を集めて、そこで経営人に対して提案とかをするみたいな感じなんですか。 そんなことをしていましたね。
当時のミクシーを見た朝倉さんが一番ここから変えなきゃなみたいなところってどこだったんですか。 そうですね、一番最初に思ったのは、とにかく物事が進まないなっていうのがあって。 これ仕方ないんですけども、もうすでにものすごい多くなユーザー基盤があり。
一方で、その今のサービスの形のままでずっとサービス運営をしていても、それはどうにもならんだろうと。 そういうTwitterとかFacebookとかLINEみたいな新しいサービスにどんどん駆逐されてしまうんじゃないかっていう危機意識は、これはおそらく誰もが共有していたはずで。
実際、中にいるとDAUの推移とかMAUの推移とか、もう見えるわけですよね。これ日に日に厳しいですねっていうのは見えてるわけですよ。だから何かこれはやり方を変えなきゃいけないっていうことは思ってるんだけれども、もう持ってるものが大きすぎるからなかなか変えられない。
結局、ものすごいSNSのサービス設計はどうあるべきかみたいな、仕様はどうあるべきかみたいな、すごく細かな進学論争にすっこんでしまっているところがあって。
なるほど、なるほど。
なんかそこに入り込みすぎて、結局のところやってみないとわからないけどこっちが正しい違いない、そうじゃないみたいな議論してるから、何か一向に物事が前に進んでない。だから僕からすると、会社全体として何か決めないっていうことを決めてる会社だなというような印象は持ちましたよね。
けんすう
なるほど。持ってるものが大きいがゆえに大きな変化をしようとするとやっぱりすごく議論に時間がかかるってよく大企業であるあるだと思うんですけれども、ミクシーぐらいの規模でもやっぱりベンチャーとはいえそういう大きなサービスだからこそ起こってたっていうわけですね。
朝倉祐介
そうですね。なのでそうこうしてるうちにやっぱりサービスはどんどんユーザー離れも進むし、一方でなかなかそうなってくるとね、今度はユーザー下がってしまったから媒体としての価値も下がってくるっていうこともあって、なかなか売り上げも立てづらくなってしまう。
だからこれね、放っておくと放っておくだけどんどんどんどん悪くなっていく状況で、だけど身動きが取れない。これどうするんだっていう。
けんすう
いやそうですよね、これ小原さん。これいわゆるイノベーションのジレンマの一種と考えていいんですか?
尾原
そうですね。現行でさっき言ったように、キャッシュ自体はユーザーが下がってても130億あるのに死なないわけですよね。
かつあと何よりもミキシーさんって居心地の場所を提供するっていうものすごく、今の会社のミッションに対してものすごく忠実だからいいサービスが使ってユーザーはある程度居続けるっていうところだから。
現状の居心地の良さをやっぱり担保したいっていうところと、一方で新しいものを作らないといけないって焦りがあるけれどもそこに乗り出せない。まさに本当にクリステン線いうところのイノベーションのジレンマですよね。
けんすう
こういう場合どうしたらいいんですか?
尾原
教科書的な話で言うと、基本的には別道舞台を作って、新規のものは新規のもので作っていく。いわゆる日本の中だとデジマっていう言い方をすることが多いですよね。
いわゆる九州の鎖国をしている日本の文化を保ちつつも、外国の文化を取り入れながらやっていく別道舞台であるデジマを作って、そこでやっていきましょうっていう話で。実はiMODを作った時とかもそうですし、KDDIさんいろんな新規事業をやってましたけど、まさにケンスがやり取りしてたKDDIのコンテンツ部門とかも最初はデジマとしてやってましたよね。
結果的にデジマをやられてた高橋真子さんが、今KDDIの代表取締役をやられてるみたいなのは、実は朝倉さんの話とすごい重なるところがありますよね。
けんすう
なるほど。朝倉さんが実際に手をつけたところって、やっぱりそういう別道舞台とかその辺なんですか?
朝倉祐介
そうですね、そうやってまず自主的な遊説活動といいますか、仲間集め的なことをどんどんしていく中で、じゃあお前やれよっていうことで執行役員だとか、あるいは最終的な代表になるんですけれども、一番中心、というか僕が意識していたのはサービスと会社の三つ結合の解きほぐしなんですね。
つまり株式会社ミクシーイコールSNSミクシーであると。これ内も外もそういう認識を持っていて、内側の人間っていうのはじゃあSNSミクシーをどうするんだっていうことにどうしても意識が行くし、外部の人たちからしてもやっぱりそうですよね。
けんすう
そうですね、そうですね。
朝倉祐介
当時って本当に、だって経済誌にミクシーオワコンとか、庶民ブロガーにミクシーは死ぬって書かれてましたからね。
けんすう
ひどい、そんなこと。
朝倉祐介
連日そんなんで、やっぱりちょっとみんなそれはなかなか心に応える部分があるんですけれども。だけどそうこうして、ネイキッドテクノロジーがミクシーに買われたタイミングのミクシー社の時価総額が確か400億から500億円程度で、僕が代表就任したのが2013年なんですけど、その時は確か180億だったんですよね。
けんすう
ああ、なるほど。
朝倉祐介
なんで、時間だけ経っていってどんどんどんどん価値も下がっていくし、まあそれはそう言われても仕方ないよなと。そういう中で、ミクシーをそのままの延長線上の発想でいると、ミクシーを何か改善してフェイスブックに対抗するんだっていう論調になるじゃないですか。
けんすう
うん。
朝倉祐介
だからこっからすると、竹やりでBに軸を落としますって言ってるのと変わらなくて、いやだってそれもう、かけてる予算もエンジニア数も桁違いよと、どう考えても無理よっていうのがあってですね。
その上で僕は会社の経営者としては、サービスをどうこうするっていうとか、そういうことにはもう一切関与しませんよと決めました。なのでSNSをどうこうするっていうのは僕は一切やってないです。
で、その代わりに自分が一番意識をしていたのは、サービスと会社の見つけ都合をどうやって解きほぐすかっていうことで。考えてみたら、当時のミクシーって実は営業利益の3分の1ぐらいはファインドジョブが稼いでたんですね。
尾原
まだそうだったんだ。求人サービスのね、本当オリジナルですよね、ネット専業へ。
けんすう
社員全体の3%ぐらいしか関わってない事業で、営業利益は3分の1ファインドジョブを稼いだんです。
朝倉祐介
そういうなんだろうな、だけどもうそんなの、みんな認識の中では圧倒的にSNSの会社じゃないですか。社内の人もそうだし社外の人もそうだし。そこになんかすごいそもそもズレがあるなというふうに思って。
ただ逆に言うと、そういう過去にもいくつか新しいサービスって生み出してきてる会社だし、その中でも本当に大ヒットしたのがミクシーである、SNSであるっていうのは間違いないんだけれども、そういうポテンシャルを持ってすれば、なんかもっといろいろやることできるんじゃないのっていうふうには思ってですね。
で、まあいろいろ取り組んだと。それは自社発で新しい事業をサービスを作っていこうよということも新しいきっかけもしましたし、当時2013年頃ってどういう時代かというとスマホのアプリがどんどん出てくる頃で、それこそサイバーエージェントがアメーバ構想って言ってたんじゃないかな。
とにかくスマホアプリをもう大量生産するぞっていうのをやってた時期ですよ。
けんすう
やってましたね。
朝倉祐介
発想はそれに近くて、新しいサービスを生み出していこうよっていうこと。あと130億っていうキャッシュが散々眠ってるわけだから、このキャッシュを働かせようよ。もうキャッシュをキャッシュフローに変えていこうよっていうことでCVCも作りまして。
今でこそCVCってあんまりメジャーなものというか、そんな目新しいものでもないですけど、2013年当時にiMercury CapitalっていうCVC作って、外部から事業を集めていこうよだとか。
何にせよ株式会社ミクシーとサービスミクシーの見つけつくを解きほぐして、もともと会社自体はポテンシャルあるんだから、他のこともできるようなそういった環境を作っていこうよということで、いろいろ試行錯誤をした。
さっきの小原さんの出島じゃないですけれども、本体と離れたところでいろんなものを作ろうとして、もがいていたというのが当時ですね。
けんすう
当時の記事見てたんですけど、SNSサービスのミクシー以外のサービスを作る。新しいサービスはミクシーブランドをつけなくてもいいみたいなことを、さくらさんがおっしゃってますね。
朝倉祐介
そうですね。それはかなり言っていて、結局モンスターストライクが非常に大きなヒットコンテンツになりましたけど、その時も絶対ミクシーのアカウント連携とかするなっていうふうに言ってましたね。
けんすう
なるほど。そうですよね、当時だと。
朝倉祐介
だけどやっぱり中にいると、なんでってなるわけですよ。下手したらミクシーユーザーだけ使えるようなゲームにしようとかね、いうふうな発想になってしまいがちじゃないですか。
これ他のサービスにしてもいろんなサービス、モンスター以外にもあってますけど、そうじゃないんだよっていう。
尾原
まさに三つ結合というものが前提になっている思考を破壊して、だってスマホってある種ミクシーを体験してない世代がどんどん入ってくるものだから、その事業から起点で考えたら、そこを第一優先順位にしちゃったらちょっとずれるよねって話ですもんね。
朝倉祐介
そうですね。
けんすう
これ小原さん、前回、あ、そう、朝倉さんにお伝えすると、前回経営と執行についてやったんですよ。経営と執行って違うよねっていう。
っていうと、これやっぱりほぼ経営の仕事しかやってないみたいな感じですか、小原さん。
尾原
そうですね。前回ちょっと話したのが、やっぱり日本のスタートアップって、その執行として今ある事業を磨くのが上手すぎて、できないことをやれるようにしていくっていう意味での経営っていうものが、
その経営そのものを学んでる機会がないのがもったいないよねっていう話をしていて、今の話なんていうのは、まさにその多事業をどう展開していくの、今の事業から離れたもので、
もともとあったミキシーの中にある資産、アセット、得意なことを延長線上に新しいものを作っていくのはどうするのっていう、まさに経営の仕事ですよね。
すごい珍しいんですよね。スタートアップの中で第二子、創業をしていくっていうことを経験された経営者って。
けんすう
そうですよね。だって僕、当時あれって言われたら、多分普通にミキシーのSNSをFacebookとかTwitterに買てるように改善しようとか思っちゃいそうですもん。
完全に執行側というかサービス改善とか、でもそれってあくまで執行の話であって、経営的には例えばそのキャッシュを使って投資をしたりとか、ミキシーのブランドとか制限をなくして新しいサービス作るみたいな方向にやるのが経営っていう、そういう理解なんですけど、なんかそれができるのはすごいですね。
朝倉祐介
当時も別に中にいる人たちは本当にそのSNSを考え尽くしたエキスパートの人たちで、別に自分なんかよりもよっぽど考え込んだ上で、いろんなアイディアを話してるわけですよね。
だからそのアイディアに自分が優れてるとは思わないし、なおかつそういったアイディアをぶつけ合った結果、なかなか物事が進まない状況になっていたので、そこはもうタッチしませんという、そういう判断をしていました、当時は。
けんすう
すごい、でもやれることを増やそうと思った経営が、まずその密結合をほぐすって、すげー、あんまり僕になかった発想なんで面白いと思いました。でも確かにそこが一番の制限になってんだなっていう風なのも言われると思いますね。
朝倉祐介
本気で社名、さっきの社名の話ありましたけど、本気で社名を変えるってことも考えましたよ。
けんすう
ああ、でもそっか、そこはすごい認知に効いてそうですもんね。
朝倉祐介
ただね、それはさすがにミクシーって完全に定着しきった社名を今更変えてもね、あんまりそのブランディング的にもよろしくないだろうというふうに思いましたし、結局それやめたんですけど、でも真剣に考えましたね、それは。
けんすう
モンストが当たるまでに試行錯誤ってどのくらいしたんですか?
朝倉祐介
いやもうだいぶいろんなことやっていて、ほとんどハマってないですけどね、それはもちろん新しい事業を生み出すということもやったし、あとなんだろう、そういったコスト削減だって同様にやっていかなきゃいけないし、買収だってやらなきゃいけないし。
例えば、いろいろその社内の人たちの声を集めて、手上げ式で新しい新規サービスをやってみるみたいな、そういったプログラムを作っていくつかやってみたいだとか、そういったこともやりましたし。
あとそうですね、モンスト出るその前段の話っていうと、例えばDNAとモバゲーとゲームプラットフォームを共通化するってことやったんですよ。
けんすう
あった。
朝倉祐介
これ開発基盤とかを統合して、何言ってるかっていうと、モバゲーに出たゲームがそっくりそのままミクシーにも出るっていう、そういうの仕掛けましたね。
当時ミクシーもある種プラットフォーマーとして、サードパーティーからそういうゲームを出してもらうっていうことをやってたわけですけれども、
だけどやっぱりね、そのユーザー数のボリューム感で言うと、モバゲーとかクリーとかの方がサードパーティーの人たちからしても出しかくなる規模感だし、
そもそもミクシーって最初はゲームをやるためのプラットフォームじゃないから、ユーザー数よりもさらに食いつきがあんまり良くない。
そんなところになかなか出したいっていうインセンティブもサードパーティーは持ちづらいし、なおかつそういったサードパーティーがゲームを出してくれたら、
そこに対してミクシー側からコンサルティングをするとか、そういういろんな企画をやっていかなければいけないわけですよね。
朝倉祐介
当時思ったのは、もうモバゲーからにゲームが出たら、それがそっくりミクシーに出るようになるとですよ。
当時のモバゲーってそういう非常にヒット力のあるコンテンツも集まっていたので、そこで結構マネタイズが期待できるんじゃないかなっていうふうに思ってましたし、
また当時にそこで関わっている人たちのリソースっていうのはだいぶ開くので、そこでスマホのゲームとか作ることができるんじゃないかなっていうのは考えてましたね。
けんすう
はー、なるほど。面白い。これって例えば当たった事業と当たってない事業があるとして、
それって連続性があるというか、たくさん失敗したからこそ成功したのか、それとも数打って当たったのかというとどっちの印象ですか?
確率論なのか積み上げなのかみたいな質問ですね。
朝倉祐介
いや、両方あるんじゃないですかね。今戻ったらもっと上手くできたのかなっていう気もしますけれども。
けんすう
なるほど。
朝倉祐介
だけどやっぱりやってみないと分からないところって多いんやって、どうしても運の要素ってあるわけですよ。
けんすう
はい。
朝倉祐介
それでいうと、モンスターストライクっていうゲームが出る前も4つぐらい確かゲームで作ってるんですね。実はスマホのネイティブゲームって。
それはそこまでモンストほど予算もかけず、ある種試作品的な感じで出したものもありましたけれども。
当時スマホのゲームは1つのマーケットとして絶対あるなと思って。
そこで当たるコンテンツが出るかどうかわかんないけど、そこにリソースはかけようということは判断はしてました。
当然そこに予算も抑えて。
2013年当時にスマホゲームが来るっていうのは誰もが分かっていたと思うんですね。業界にいる人であれば。
当時のスマホゲームって何かっていうとブラウザベースじゃないですか。
モバゲーグリーン。
要は今と違ってブラウザベースで遊ぶゲームがスマホゲームだったわけですね。
けんすう
そうですね。
朝倉祐介
どう考えてもそれこそアップストアとかグーグルとかからダウンロードするネイティブのアプリの方がユーザー体感いいだろうってことは、これおそらく誰もが分かってたと思うんですよ。
ただこれできない理由が2つあって、1つは単純に作れない。
もう言語も違うし、ブラウザベースのゲーム作ってた人が作れるかっていうとなかなかそうじゃないっていうことが1つと、
もう1つはある種既存プラットフォームに対する依存体質ってのがあったわけですよね。
そのスマホゲームを出す人たちが。
要はモバゲーないしグリーでゲームを展開していて、それが収益の柱になっているプレイヤーにとってですよ。
モバゲーグリーからしてみると、競合に認定されるようなアップストア等とネイティブのアプリを出せるかっていうと、当時のその人たちの経営判断としてはかなり厳しかったと思うんですよね。
けんすう
難しいそうですね。
朝倉祐介
2013年当時僕が記憶しているところで言うと、スマホのネイティブアプリのゲームって結構精力的にやってたのって、ガンホーコロプラの2社なんですよ。
ガンホーコロプラって何でそれができたかっていうと、両方ともブラウザゲーム出してなかったからですよね。スタートパーティー。
けんすう
そっかー。言い方難しいですけど、向こうの担当者からしてみたら、スマホのネイティブアプリ作り始めたらちょっとうちではそんなにプッシュできないですよみたいなことを当然言わざるを得なかったりしますし、
そこで今は売り上げ的には収益の柱だから、結局やっぱりプラットフォームとうまくやらなきゃなみたいなことを考えた時に、手を出すタイミングはめちゃくちゃ難しいですよね。
朝倉祐介
ある種、プラットフォーム側からスタートパーティー側に対する牽制っていうのは効いていた状態ですよね。
けんすう
そうですね。
朝倉祐介
だから誰もがネイティブアプリいいよねっていうふうに思っていたとしても、じゃあそれ踏み出せるかっていうと踏み出せるプレイはいなかった。
コロプラも元々コロニーな生活でゲームとは全然違う世界でやってて、そこからスマホゲームに転換したっていう、そういった経緯の会社さんだからそういったことができたわけでしょうけど、そう思うと空いてるわけですよ、そこのスペースが。
けんすう
なるほどだ。
朝倉祐介
だから当たるものが出るかどうかわかんないけど、そこは当然攻めるべき領域だってことはこれはわかってたわけですね。
けんすう
はいはいはい。
朝倉祐介
じゃあ現場感として一番難しいのは何かっていうと、結局さっきの話でミクシーとの密結合を解きほぐしてどうやってそれを取り掛かれるようなエクスキュースを作るか。
これね、社長がやれって言ってやらないじゃないですか。研修もお母さんもご存知の通り。社長がやれと言ったからってみんな動かないじゃないですか。だからそれをどうやってやろっかなっていうのが一番大変で。
だからそこはDNAさんとの連携によって結果的にそこのリソースが空いたっていうのは良かったかなと思いますよね。
けんすう
なるほどな、なるほど。でも立場的にはミクシーもある意味プラットフォームだったから、簡単な話ではないですよね。
朝倉祐介
けど、我々はそれまでゲームを自分たちで作っていたわけではないけれども、作れる素養のあるチームではあるよなというふうに思っていたし、またゲームのサードパーティーとしてMOBAゲーグリーにゲームを出していたわけではない。
だからプラットフォーム感だから別に依存状況ではないわけですよね。もっと言うとプラットフォームとしては圧倒的に負けていると。だから僕MOBAゲーとの連携に関して言うと、やったことって差別化戦略じゃなくて同質化戦略なんですよね。