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2025-07-04 24:15

Ep.123 エッセイか小説か。虚実が織り交ぜられた2冊

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鮮烈な言葉で綴られた本と、先住民族について書かれた本について、つばきが紹介します。どちらも事実を基礎において書かれていますが、虚実を織り交ぜていて、小説のような雰囲気も持っています。


【紹介した本】

・イリナ・グリゴレ「優しい地獄」亜紀書房
・イリナ・グリゴレ「みえないもの」柏書房
・国分拓「ノモレ」新潮文庫


【よりぬき】

・鮮烈な言葉が胸に迫る本
・ペルーに突如現れたイゾラドという民族
・先住民族の暮らしを守ることの難しさ
・生き別れになった同胞を探し続ける
・泡のように消えていく民族の切なさ

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生物学者と書店員のインターネットラジオ、本の虫のススメ。
本を偏愛する生物学者の椿と、書店員の佐藤が、本にまつわるあれやこれやをゆるっとお届けします。
今回も始まりました、本の虫のススメ。7月に入りましたが、皆さんいかがお過ごしですか。
暑いんでしょうね。
まだね、ちょっと暑くない時間軸に、今私たちはいるので、ちょっとクーラーのかかった部屋の中で、撮影じゃない、録音しております。
が、はい、さあ椿さん、最近はいい本に、なんか素敵な本に出会ったりしましたか。
えっとね、結構前に紹介させてもらった、
やさしい地獄っていう、
あー、海外の方の。
あ、そうそう、ルーマニア出身の、日本で文化人類学って言ったらいいのかな、映像人類学って言ったらいいのかな、を研究されているイリナ・グリゴレさんっていう方が、
日本語で書かれたエッセイをご紹介したことがあるんですけど、
それは、著者のイリナさんが、自分のこれまでとかを、これまでとか、日本での感じたこととかを、すごいまるでガラス作品みたいな、美しい日本語で綴ったエッセイなのかな、作品だったんですけど、
今回この、見えないものっていう、新しい本を、4月10日に出版されまして、それを読みました。
で、すごいこれも、やっぱりその、言語感覚っていうのが、もともとの母語が日本語じゃないっていうところもあるんだと思うけれど、
そもそもその、日本語の新しい、なんていうんだろうな、表現の仕方っていうのも、すごく前回の本と同様に感じる、こういうなんか言い回しって、あんまりしないけど、美しいというか、心に迫ってくる表現だな、みたいなのも、
そういう文章表現の、なんだろう、美しさ、面白さっていうのも、前作と同様に楽しめるし、ちょっと前回のその、優しい地獄、前作と大きく異なるところとしては、結構その、自分のその生活、娘さんとの生活、娘さんとか家族との生活とか、
あの、故郷のルーマニアでの、あの思い出の話とか、っていうその、自分自身の体験っていうところから広がっていく、まあいわゆる王道のエッセイの形式だけじゃなくて、そこからなんか、フィクションだかノンフィクションだかエッセイだか、ちょっとわからないみたいな、方向にどんどんなんか、話がほつれ合いながらというか、
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発展していく感じで、ちょっとだからエッセイって言っていいのか、ちょっとわからないんだけど、だからちょっとその、虚実がどんどん曖昧になっていきながら、引っ張っていかれるみたいな、本で、
うーん、なんかその今、その出版社の版元の柏書房さんの紹介のウェブサイトを見ながら喋ってるんですけど、あの、この本の、なんて言うんだろう、宣伝文っていうのかな、ウェブサイトに書いてるこの文章が、すごいこの本を言い表してるなと思うんですけど、
虚実を越えて、新たな地平を切り開く渾身のエッセイ、虚実ってあの、嘘と本当とみたいな、そうそうそうそう、の虚実。で、今までに書かれたどんな日本語よりも鮮烈な言葉をあなたにっていう、あの、このウェブサイト、はんもつさんに書いてるんですけど、まさにまあ、そういう鮮烈な言葉っていうのが、なんか、胸に迫ってくるような、
本ですごく、あの、読書、これも、筋を折っていって、はあ、読んだ気になった、みたいなことができない本で、まさにその体験というか、として面白い、ぜひ読んでほしい、あの優しい地獄と合わせて、読んでほしい本だなと思いましたね。
で、これに関連して、読んだ本がもう一冊あるんですけど、で、この見えないものの中で、イリナ・グリゴレさんが、えー、南米のヤノマミ曲って知ってる?
いや、知らない。
結構その、NHKで昔、あの映像番組として、まあNHKだからそりゃそうやねん。なんか、あの、放映されたのですごく有名になって、私もその絵、あの、放送を見たのをすごい鮮烈に覚えていて、
うん。
で、あの、すごい、そこでも、結構衝撃を受けたんだけれど、妊婦さんが出産するときに、自分でその産んだ子供を、人間として育てるか、それとも、あの、赤ちゃんっていうのは、精霊からこう、預かったものっていう風に、
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あの、そのヤノマミでは言われていて、だから、まだ人間じゃないんだよね。
だから、それを人間として育てるか、それとも精霊の世界に返すかっていうのは、母親が判断することで、で、精霊として返すってなると、
えー、バナナの葉で来るんで、焼いてしまうんで。
っていうので、すごい、やっぱりその静止感をすごい問われる、すごい人間の、やっぱり根源的な行為っていうのかな、根源に触れるような行為やんか、すごい、あの、私たちが常識と思ってることだけがこの世界じゃないというか、そういうのをこう、感じて欲しくて、
そのイリナさん、優しい地獄見えないものの著者のイリナさんは、それを授業で、あの、見せるみたいなことを書いて貼って、それで、あの、思い出して、そういうのを見たなと思って、で、ちょっといろいろ調べていたら、
NHKの映像作品を作った、映像作品というか、番組を作った、ディレクターの方が書かれた、えー、本に出会いまして、で、その方がその、ヤノマミ族の本も書いていらっしゃるんですけど、その本はちょっと、その時に行った本屋さんになかったもので、それは読んでないんですけど、
で、その方が書いた別のその、これも同じ、南米、同じって言ってもまあ場所は結構違うかなと思うんですけれども、その南米の先住民をテーマに書かれた、えー、国文博文さんっていうそのNHKディレクターの方が書かれた、ノモレっていう本を、えー、そういう流れでちょっと読んだんだよね。
なのでちょっとそれの話も、ご紹介もしようかななんて、思います。
はい。これはその、また、えー、書き方、内容に入る前に、書き方の話なんだけど、それもまた独特で、普通のこういうノンフィクションっていうと、著者が見聞きしたことを、著者の視点で語っていくものが多いと思うんだけれど、これはそうじゃなくって、あの先住民の一人のその、この物語、この、
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なんて言っていいのかな。
まあこの本の主軸となる、登場人物の目線、で、だからある意味フィクションみたいな、小説みたいな形で書かれてるっていうのが、すごい面白い、特徴的な本だなと思って、で、それによってこう、
多分だけど、著者ご自身が、日本で育った、生まれ育った価値観を離れて、接近していこうっていうような、多分気持ちが、あの、感じられるような、
なるほど。
文体、文体というかその、個性になってます。
で、内容としては、あの、ペルの、アマゾンの奥地で、その、イゾラドって呼ばれる、その、文、今までのこの、今までこの、現代社会と接触をこれまで持ったことのないと思われる先住民の集団が、イゾラドって呼ばれる、呼ばれてるらしいんやけど、
現れた、大量に現れた、たくさんのイゾラドが現れたっていうところから話は始まって、
どこに現れた?
ペル。
あ、ペルに急に現れたとか、消えたってことか。
そうそうそうそう、アマゾンの、あの、もういろんなプランテーションとかで開かれてるけど、その最前線というか、
アマゾン奥地の入り口みたいなところの村に、そのイゾラドと呼ばれる、これまで、えっと、現代社会との接触を持ってこなかったと考える人たち、考えられる人たちの集団が、何十人、何、百何人とか書いてたかな、ちょっと忘れちゃったんだけど、
すごいでも、人家族とかの単位じゃなくて、現れたっていうようなところから始まる話で、
で、そういう方たちは、どういう出自で、どういう暮らしをしてて、で、どうして今現れたのか、これからじゃあ、どう関わっていったらいいのか、
っていうのを、まあ、あの、書くというか、その、この先、この本の主人公は、あの、著者じゃなくて、あの、キーパーソンとなる方だって言ったんだけど、そのキーパーソンとなる方っていうのが、その先住民、
で、でも、もう、あの、西洋化された社会の枠組みの中で生きることになっている、一人の、スペイン語とかも、もう、あの、自在に操れる、まあ、言ってみれば、先住民出身のインテリ層というか、
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の、あの、若い村長を務めてる人で、で、その人が、やっぱり、欧米の文化人類学者とかが接触していくよりも、あの、言葉もある程度通じたりとか、で、見た目とか、あの、いろんな、その、アマゾンでの暮らしを知っているとか、いろんな、その、ところから、やっぱり、
その方が、責任だっていうことになって、その、イゾラドと呼ばれるような、その、これまで現れてこなかった人たちとの交流の、あの、窓口というか、担当することになって、その人を軸に、だから、話が進んでいくっていうような構成になっていて、で、すごい、なんていうのかな、もう、この、
著者の国文さんが、だから、その、その主人公が、ロメウさんっていう方なんだけど、ロメウさんに、こう、どんどん、たぶん、なりきるというか、憑依するじゃないけれど、そういう気持ちで書かれていくから、なんか、ある意味、すごい、危機に迫るというか、
へー。
いろんな、やっぱり、立場の人がいて、その、イゾラドが現れたときに、やっぱり、先住民の人は、その、いわゆる文明化された先住民の人たちは、やっぱり、自分の畑とかに侵入してきて、怖いし、自分たちのものを取られるっていうので、早く捕まえてほしいっていうふうに思う。
それも当然の、当然というか、自然なことやんか、自分の財産や、生活がかかってるし、なんなら、殺されたりとかっていうことも、あったりして。
へー。
それって、どんどん話が進んでいくと、分かってきたりするんやけど、その合わせ鏡で、文明側の人間が、どんどん殺してきたっていう、やっぱり歴史とかがあったりとかで、
だから、そういう欧州というか、が、繰り返されてきたっていうような背景があったりとか、なので、やっぱり、その先住民で、その近くに住んでる人にとっては、やっぱり邪魔者っていうのがあって、それを、私たちが、ここの、日本のこの快適クーラー空間にいて、なんか、どうこう言える話ではないと思うんだけど、
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で、その一方で、その、文化人類学者とかは、やっぱりイゾラドの、その人たちの言葉とか、文化とかっていうのは、守っていくべきもので、そのままの生活を続けられるような施策をすべきだって思ってる。
で、それももう、もちろん、あの、それは、それができたら一番いい。けれど、やっぱり、その、じゃあどうやって守っていくかっていうと、彼らは狩猟祭住民、だからすごく生活範囲も広かったりとかで、じゃあその、広大な土地っていうのに、他の開発の手が及ばないように、見張りとかつけて、密漁とか、あの、
そういう、不法なものとか、法整備だけじゃなくて、実際にその、それをしたってこう、破ろうとする人がたくさんいるから、それを防ぐための、その人員を配置して、コストをかけられるのかとか、そういう問題もあるやんか。
で、じゃあ現実的な落とし所はどこや、っていうのを、ま、実際は考えないといけなかったりして、なので、すごい多層的な難しい問題で。
で、その中で、あの、この主人公の立ち位置というか、が、あの、際立ってきて、っていうのも、彼ら、あの、ロメウは、祖父、祖祖父ぐらいかな、ちょっと忘れちゃったけど、ま、自分のその、想像できる射程の中でのその、自分の先祖っていうのが、ま、あの、同じ、同じというか、今イゾラドって呼ばれてる人たちと、ま、そんなに変わらない暮らしをしてきたっていうのを、
知ってるわけで、で、一方でその、近代、現代社会の力学っていうのも、もう骨身に染みてわかってるっていう、中でその、現れた人たちと交流していくっていう、物語なんだよね。
で、この、タイトルのノモレっていうのが何かって言うと、何年ぐらい前だろう、100年ぐらい前に、その、南米って結構その、いろんなプランテーションとか、その奴隷を使って、そのバナナ畑を作ったりとか、あの、木の密伐採っていうの?
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木を不法に伐採する。
あ、密漁とかの。
密伐採って言うのかな。
なんか不法な伐採とかをさせたりとか、っていうのが、あのすごい横行してて、ま、今も、ま、ある、もちろんあるけれども、ま、もっとその、横行していた時代に、その、先住民を結構その、奴隷として使ってたっていう歴史があって、
で、その時に、その、ロメウの先祖たちは、先住民のその、ま、いわゆる主人、自分たちを奴隷として使ってる主人から、逃げ延びたっていう、言い伝えというか、があって、で、その時に、森の中で、
のっぴきならない状況になって、二手に別れなきゃいけなくなった。
で、あの、私たちはこっち、あなたたちはこっち、でも、あの、必ずまた再会しようって誓って別れたっていう、言い伝えがあって、で、その時に交わした言葉が、あの、私たちはその、友、友だから、の、のもれだからって言って、友っていう意味、らしいのね、のもれ。
だから、その、言い伝えの中で、のもれを探してくれ、のもれと会いたいっていうようなことが、その、ロメウの先祖からずっとこう、言い伝えというか、で、ロメウは幼い頃から聞いていて、
ん?その、別れた友が会えなかったってこと?
会えなかった、その後。
あ、そうなんや。
へー。
だから、のもれに会いたい、のもれを探してくれっていうのが、その、ロメウの集団での言い伝えで、ずっと共有されていて、
だから、その彼らが、イゾラドと呼ばれる彼らが現れた時に、ロメウは、あれはのもれだって思ったっていう。
うーん。
ただ、最後までこれはその、本当にそののもれだったかっていうのは、わからずに、あの、終わるんだけれど、
そういう、これはこの、著者の方が解説で書いてらして、すごい心に残ってるんだけれど、その、私たちとかやと、明日の約束、来週の約束、来月の約束ってまあ、当たり前にするけど、
結構その、先住民の方と、明日の約束とか、明日何時ねとか、そういうのを交わすのは、難しいっていうふうにおっしゃってて、
でも一方で、そういうその、100年前の行き別れののもれを探してくれっていう、ある種の誓いみたいな約束っていうのは、ずっと残って、引き継がれていくっていうその、時間感覚の違いというか、その、まあ何か価値観といえば価値観の違いっていうのがすごいこう、印象に残ったみたいなことを書いてらして。
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うまく言えないんだけれど、すごい本当にいろいろ考える本でしたね。
そののれの話は、あの実際の話なんかね、その本が主人公みたいな視点で書かれるっていうことやったけど、その行き別れになったっていうのは、実際にあった話なのかね。
それはわからない。
わからないか。
いいよね。なんか、確かめる術がないよね。
まあまあそうやね。
そっかそっか。
でもそういうさ、これって特別な話に思えるけど、
その、あの、欧米人とかが入っていってさ、日本人もそうやと思うけれど、アマゾンとかいろんなところに入っていって、先住民が追われて、亡くなっていってっていうのは、何も全然特別な話じゃないからさ。
なんかそのいう広がり、泡みたいに消えていく人たちがこう、泡が弾けて2つになって消えていくみたいな、そういうすごい儚さ、切なさみたいなのもすごい感じたりして。
まあ普通になんか文学的な感じにもう仕上がってるっていうのもあるので、その本としてその読みやすいし、そういう意味でもいい本だなと思いますし、テーマとしてもすごい、うまく言えないけど、考えさせられる。紹介したいなと思いました。
なるほど。
今回はそんな2冊の本を紹介していただきました。じゃあ来週も楽しみにしていただければ幸いです。
良い読書体験を。
良い読書体験を。
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