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生物学者と書店員のインターネットラジオ、本の虫のススメ。
本を偏愛する生物学者の椿と、書店員の佐藤が、本にまつわるあれやこれやをゆるっとお届けします。
佐藤さん、最近なんか、本読んでこれはみたいなのってあったりする?
うん、ある。
ある?すごい。
あるある。
聞きたい。
ちょっとね、人を選ぶ本かなと思うんですけど、個人的にすごい面白いなって思った本があったんで、紹介したいんですけど、
えっと、ずっとお城で暮らしてるっていう本。
ん?なんかタイトル聞いたことがある気がする。
どんな本?
あのね、ジャンルは多分サスペンスとか恐怖小説とか少女小説とか幻想とか、その辺が入りそうな感じなんですけど、
なんか全体的にちょっと不穏な空気感がある感じの本。
で、シャーリー・ジャクソンって方が書かれて、東京草原社から出てる。
草原社来ました。
あの、信頼の東京草原社なんですけど、
そう、そんなに新しい本ではない。
結構、まあ、あのあれですね、信頼の草原推理文庫から出てる。
本当にいい本がいっぱい。
いっぱいあるよね。
エマリー・クイーンから。
いろいろあるよね。
古典から最近のまで。
その、えっと、文庫版の発売が2007年なんで、まあまあ。
結構前だね。
前やね。
なんていうのかな、その謎が最初にこう提示されてて、でそれが、え、どういうこと?って思いながら、
こうちょっとちょっとずつわかっていくっていう形式の本なんですけど。
なるほど。
なんか、まあ最初の方やから言っていいと思うんだけど、
あの、えっと、お姉ちゃんとその住んでる私っていう女の人か女の子が主人公なんやけど、
なんかその、何曜日だかな、なんか忘れたけど、
例えばね、今週の火曜日が、あの、私たちが家の外に出た最後の日になった、みたいな感じ始まる。
なんか状況はわからんけど、出られないのか出なくなったのか、ずっと家から。
不穏だね。
そう、不穏でしょ。
そうそうそう、っていうのが始まって、でしかも理由はわからないんだけど、
その私が、あの家の外に出ると、すごいなんか、礼具されてる感じだよね。
なんか小さい多分町の、みんな顔見せるみたいな感じなんやけど、
なんかすごいなんか、悪口言われてるのか、なんかわかんないけど、
とにかく人となるべく関わらないように、地面を見て歩いて、
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最短経路で買い出しに出て帰る、みたいな感じ帰ってるから、何がどうなってんねんみたいな感じだよね。
で、しかも、二人姉妹とおじさんみたいな人がいるんやけど、
ちょっとどういう状況でその人たちが一緒に暮らしてるかも。
関係性も、なんかよくわからないし、状況もよくわからないし、でもなんか不穏な感じやし、
ていうので、こうなんか、こう、なんか嫌な感じの汗をかいてる、書くような、なんか粘り気のある不穏さがあるけど、なんか気になって、
こう読んでってしまうっていうようなタイプの本。
なんでまあ、恐怖小説とか、その辺が大丈夫な人は、あのすごい面白い。
心理的な怖さみたいな感じやね、人がなんかめっちゃ死ぬみたいなのよりも面白い。
そうやね、なんかじわじわ来る嫌さみたいな感じやね。
なるほどね。
なんか人間心理の、なんか人間の嫌な感じっていうのが出てくる感じの本かな。
だけど、やっぱりなんかその、すごい上手いなと思うんやけど、その、
えっと、主人公の女の子が、結構空想癖があって、なんかいろいろその、辛い現実からちょっとこう、
それるように、ちょっとその、思い描く想像というか妄想みたいなのが、
あの現実の世界にちょっとこう挟まれて、同じように信号してるんだけど、それがやっぱちょっと幻想感、
というか少しファンタジックな要素が加わって、読みやすくなってるのかな、なんかちょっとこう。
現実とリンクしながら、こう並行して進んでいく感じ?
リンクはしない。
リンクは、あんまりリンクはしてないけど、なんていうの、その心理描写で、なんか、なんていうのかな、
人間がさ、歩きながら例えば考えてることってさ、結構脈絡なかったですよね。
なんか、スーパーで、今晩何買おうとか、思いながら、ああ、なんかあの花綺麗やったな、あれを言ってたらどうなるかな。
そういえば、昔お母さんがみたいなね。
みたいなね、脈絡ないやん。
それがその、空想癖が結構ある女の子やから、なんかこうポンポンポンポンポンポンって同時並行で、心理描写で書かれてる感じが、なんかその人間のその内面に入って、物語を読んでる感じで、ちょっと没入感があるかな。
それはすごいでも珍しい気がするね。なんかさ、やっぱ小説って結構その筋を覆わせるっていうところがさ、大事なところでもあるから、あんまりそういうポンポンポンと、人間の思考自体はね、実際は飛んでるけど、あんまりそういう描写って、してる小説もあるけど、結構ユニークな気がした。
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なんかその、そんなにこう脈絡なく飛んでるわけではなくて、なんか、あ、そういえばあれどうだったかな、みたいなこの関連性もちゃんとある。
で、ちゃんと物語が、だんだんその謎っていうのが明かされていくねんけど、その結構難しいと思うんで、その一人称でそれをこうやっていくのってね。
一人称ってね、大体のこと知っちゃってる人になっちゃうやろうからね。
そうそうそうそうそうそうそう。そうなよね。だからあの時系列が、最初の入りがその、家から出れなくなったのか出なくなったかの時から、なんかちょっとこう古くこう。
遡ったりもするから、そういう手法でちょっと謎を提示してる。
すごいな、それは構成力だね。
そうそうだから構成力がすごいあの高い、面白い。でいてその幻想的な描写っていうのも上手いから、なんか素晴らしい。
そうちょっと暗黒面があるので人を選ぶけど、ハマる人にはそれはハマるもんかなと思って。
でなんかその、個人的なちょっとこう、なんかなんていうのかな、共通点っていうか連なりで思い浮かんだ本なんですけど。
知りたい知りたい。
これを読んで思い浮かべた本があって、私の男っていう本があるんですよ。
ん?
確か映画家もしてた。
なんか聞いたことがある。
二階堂文さん主演で映画化してたんじゃないかなと思うんですけど。
誰が書いた本?
えっとね、桜庭和樹さん。
あーお名前だけ。
そうそうそう桜庭和樹さんの本なんですけど、この本もあのちょっとなんか不穏な感じがずっと全体的に漂ってる。
で女の人が主人公。
でその、あーでも違う人の視点も挟まるけど、ちょっと置いとこう。主人公は女性なんですね。
で時系列が一番最近の話からだんだんだんだん過去に遡っていくにつれて、今のその状況っていうものがどういうものかっていうのが謎が解けていくみたいな。
その構図がじゃあちょっと似てるんだ。
似てるのと、あとその全体に漂うなんかよくわからないけど不穏な感じ。何やろこれみたいな嫌な感じみたいな。それがすごい似てる。
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であともう一つ似てるなと思うのが、なんとなくどんどんこう追い詰められていく感じ。
あのどんどん逃げ場がなくなっていくような感じ。物語に進むにつれて。
よく王道のパターンだと主人公にいろんな苦難があって、それを乗り越えていくことで成長していくみたいな。で問題が解決するみたいなとかが結構王道やと思うんだけど。
どっちかって言うと逆。
あーなるほどね。
なんかいろんな選択肢があったかもしれないけど、どうしようもだんだんなくなっていっているみたいな。
なるほどね。
そういう意味でなんかこう読み心地が悪いけど、なんかこうハマってしまう感じというか。
なるほど。それ聞いて私も最近読んだ本を思い出した。
これもね、東京草原社。
あー出ました出ました。
これさ結構最近出た本。えっとね、去年の10月に発売の本で、ウィルワイルズさんっていう方が書かれたフローリングのお手入れ方法。
なんか実用書みたいなタイトルやね。
っていう本で、これもね不穏で。
タイトルから全然想像つかない。
でも結構そのまんまの本でさ、どこまで言っていいかあれなんやけど。
これはなんかその、最初に謎が提示されてっていうわけではなくて、なんか普通の話かなみたいな、普通のっていうかそんな不穏な話ではないんかなって感じで。
タイトルからもね。
そうそう、暗く悪い。ちょっとなんか主人公が仕事とかにもう行き詰まってて、そういう意味での暗さはある始まり方なんやけど。
主人公がその学生時代の友達の音楽家に頼まれて、自分が出張の間、猫とかもその友達は飼ってて、その世話をして、家をちょっと管理というか、見といてほしいっていうような依頼を受けて。
で、どこやっけな、ちょっとマッチ忘れちゃったんやけど、主人公はイギリスに住んでんねんけど、ちょっとヨーロッパのちょっと東みたいなところにその友達は住んでて、そこの家に向かうために空港から向かってるみたいなシーンから始まって。
だから、そこからだとさ、結構ニュートラル。なんかすごい、なんかそこで出会った出会いが僕の人生を変えたみたいな方向に行くかもしれんし、なんかどうなるんやろうなっていうか、まだわからん。
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わからんし、どっちかというと明るくなりそうやね、なんか。
そうそうそうそう。
どっちかというと。
そういうなんかシチュエーションで始まるから、そうなんかなと思って。なんか表紙が可愛くて、なんか猫飼ってるからさ、なんか猫ちゃんが表紙にいたりして。で、ちょっとフォントもさ、ちょっとなんかふわふわみたいな感じで。
なんかあれ確か、駐車券をタダにするためとか、なんかちょっと急いであんまり見ずに、あらすじとかも読まずに買ったり。
あーそうなんや。
そういうねことをするから、本が無限に増えてくるんだけど。まあそれはいいんだけどさ。
そうそうだから私もあんまりその内容を知らずと読み始めて。
ちょっと猫ちゃんもいて可愛いじゃんみたいな感じで読み始めたらめっちゃ不穏でさ。
なんか裏切られて。
そうそうそういいんやけどさ。本当になんかさっきのりこが言ってたのと同じような、どんどんどんどんいろんな選択肢が狭まっていって行き詰まっていくような物語で。
でタイトルの通りなんだけど、その友達がフローリング、家に対してすごいこだわりがあって、特にフローリングは絶対に起こさないようにしてくれって言われて。
なんか嫌な予感やな。
そうそうそうでなんかいろんな出来事が重なってやっぱりそれを守れないわけ。
それを守れないって別にだから、はっきり言って大したことないやんか。フローリングぐらい。なんかお金さえ払ったら解決。
そうやね。
ような問題かなと思うけど、だんだんお金払っても解決できひんみたいなこう連鎖的にどんどん暗いことが起こって。
嫌だな。
言ってこれどうなるんやろうって思いながら読み進むと、結構ラストがまさかのまさかのまさかで。
あー面白そうやね。
なんかでもねちょっと納得いかん感じもある。
へー。
でもちょっとねいろんな意味で読語感がそんなに良い本ではないけど、なんか不穏な雰囲気でこう手が止まらないみたいな。
なるほど。
感じで。
なかなか不穏な海外文学だった。
なるほどね。面白いな。
それでちょっとずれはするんやけど、連想した児童書があるんやけど。
児童書。
児童書。
ここから児童書に行く感じはもなかった。
飛ぶ感じやけどね。片足蛇鳥のエルフっていう絵本があるんですね。
高談社から出てて、尾乃木学さんっていう方が書かれてる絵本なんですけど、なんかその今のね、最近の絵本だと結構こう、ポップだったり可愛かったりとかする、キャラクターぽいものとか結構多くて、優しいとか。
そういうイメージある。
明るいみたいなのが多いけど、なんかすごいな、なんて言ったらいいんかな、影みたいな感じの。
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ちょっともちもちの木みたいな。
そうそうそうそう、もちもちの木に近いか。影調、なんか、なんて言ったらいいんや、半画?半画じゃないや。
霧絵?
霧絵とか。
そんな感じに見える。
結構渋い絵柄。
渋いね、これは。
なんですね。
で、別にこの話は、そんなに不穏な話は全然ないんだけど、なんて言うのかな、物語のラストが、読む人によって結構捉え方とか感じ方が変わるんじゃないかなっていう本。
なるほど。
で、ネタバレにせずに説明するのがすごく難しいんですけど。
そうよね。
でもなんかその、最近よく見るようなテイストと全く違って、優しいとか幸せとか温かいっていうようなだけじゃない、なんかいろんな物を含んでるっていう意味で、
子供が読むと結構なかなかその、感受性っていうものに響くだろうし、大人が読むと、余計その人生のいろんな経験を積んでる分、捉え方っていうのがその年齢とかその自分の状況によって変わるんじゃないかなっていう意味で、
すごい深みがあって、私一番好きな絵本の一つにこれを置いてるんですけど。
結構、いつ頃出た?
結構古い。ごめんなさい、高段車じゃなくてポプラ車ですね。失礼しました。ポプラ車から出てますね。1970年に出てる。
それはじゃあ私らが子供の時からあったんだ。
うん、あったあった。子供の時に読んで。
本当?
すごい印象に残ってる本なんですよね。
そうだ、そうね。50年以上前の。
そう考えるとすごいね。
でもまだ絶版になってない。ずっとあるね。本なんで、図書館でも本屋さんでも手に取れるので、ぜひぜひ。絵もすごいインパクトがあって。
そうね、素敵なので見せていただいて、読んでみてもらえると嬉しいです。
なんか不穏な本っていう流れになってるよね。
なったね。
なぜか。
私さ、江戸川乱歩めちゃくちゃ好きなんですよ。
古典だけどいいですよね。不穏だよね。
不穏のね、代表。
そうやんね、ほんとにほんとに。
なんか結構、大衆小説も結構書か張ったから、あの人は親戚みたい。
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なんかこう、なんていうのかな、すごいいい意味でなんですけど、悪趣味な本もよく書いてあるんよな。
人間意志とか?じゃなくて。
人間意志も悪趣味やけど、人間意志はまたなんか文学性が結構あるけど、もっとなんか、いい意味で下品な悪趣味さがある本も書いてる。物語も書いてる。
パッと出ないけど、そうか、そうだったっけね、あまり。
ちょっともし、そういう悪趣味系が大丈夫な方がいらっしゃったら、あの鎌倉ハムとか読んでほしいです。
読んだことないと思う。
短編なので、多分なんか、本の中に入ってる感じだと思うんだけど。
ほんま悪趣味やから。
なんか人間意志は、谷崎純一郎さん的なフェティッシュという、なんか、そういうそのさ。
確かにね、ジャンルっとしてね、ありうる。
ありうるけど、もっとなんかグロテスクだったり、もっとなんか、
ゲスい。
ゲスい感じの、本っていうか物語もあって、
そのなんかゲスさが、なんか嫌じゃないのがすごい、あの人すごいとこやなって思うんやけど。
なんか本当に陳腐で、なんか、作品性が失われちゃいそうやん、そういうなんか。
センセーショナルなさ。下品ぽいこと書いたらさ。
でもなんかそれが読めてしまうっていうのが、江戸川乱歩さんは。
少年探偵のイメージが多分結構強いと思うけど。
でもいろんな側面があるんで。
鎌倉ハムの話なんですけど、正確なタイトルは、鎌倉ハム大安売りっていう。
なんか聞いても全然ないような想像つかない。
まあとにかくもう、ひどい悪趣味だもんで。
もしあの多分、青空文庫とかで読めると思うんですけど。
もし本で読まれるんだったら、
春陽道書店っていうのかな。春の太陽の陽の小道。
で、猛獣っていう作品集があるんですけど。
それは知ってるな。
猛獣有名やね。
その中に収録されてるみたいですね。
で結構あの短編集に対してその本人がコメントをしてるのとかがあるんやけど。
あーあるよね。なんか覚えあるそれは。
あるよね。それでその確か鎌倉ハムの話は、江戸川乱歩自身がちょっとこれはほんまにひどすぎたっていう。
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なんかこう自分自身でそういう批評をしてたりするんですけど。
もう辞めたらよかったみたいなことを確か書いてた記憶があります。
いろんなね、作家も精神状態があるやろうし。
あるやろうしね。
ちょっとチャレンジするぞみたいなやつはわからんけど。
あの時はいいと思ったけど、読み返したらこれあかんわみたいな。
なんかちょっとねわかるような気もするね。
まあでもあのうん、乱歩さんらしいというか、ちょっと悪趣味が平気な人は、ぜひおすすめの物語です。
なるほど。
はい、という感じで今回は、なんかね、そういうつもりはなかったんですけど、ちょっと不穏な感じの本を。
不穏シリーズで。
シリーズで紹介しました。また次回も楽しみにしてもらえると幸いです。
では良い読書体験を。
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