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生物学者と書店員のインターネットラジオ、本の虫のススメ。
本を偏愛する生物学者の椿と書店員の佐藤が、本にまつわるあれやこれやをゆるっとお届けします。
今週も始まりました、本の虫のススメ。はい。佐藤さん、最近どうですか?
うん。なんか本読んだりしてますか?
そうですね。まあ、そこそこ本は読んでて。
面白いのあった?
小説で面白いのが2冊あったんで、紹介しようかなって思うんですけど。
どっちから紹介しようかな?柔らかい方から紹介しようかな。
柔らかいのと柔らかくないのがある?
そうですね。はい、私目線でですけれど。
1冊目が児童書で、足長腕さん。
何気に読んだことないかも。
なさそうやんな。なんかその児童書はあんまり読んでないって言ってたから。
そうやね、そうやね。
あの小学生の頃結構大人の文庫とかを読んでたって、あの前個人的に聞いたことがあって。
そうなんですよ。あんまりその家に本を読み聞かせとかは多分してくれてたと思うんですけど、
あんまりその図書館とかも行ってなかったかな。
へー、そうなんや。どこで本に出会ってたの?
家で母が買った文庫本とか。
そういう感じやったんや。
だからその後の本が多くて。
あんまりそういう、だから触れてないんですよ、私。
児童書的なものにね。そうかそうか、なるほど。
私は逆に図書館に親がよく連れてってくれたりしたりとか、あと自分が好きだったりとかして、図書館で本借りまくってたっていうことがあったので。
青い鳥文庫と岩並少年文庫で育ったみたいな感じ。
でその少年文庫とかってその子供だから、児童書を読みたいその世代やから面白いんかなって思ってたんやけど、
大人になってから、これ足永おじさんなり少年文庫みたいなものを読み返しても、やっぱり面白いなって思うから、
自分の好きなものって子供やからとかじゃなくて、基本的に変わらないやなって改めて思ったりしますね。
足永おじさんも多分大人の文庫とかで出てると思うんですけど。
それは何で出てるやつを読んだの?
これは岩並少年文庫版を読みましたね。
ジーンウェブスターという方が書いてて谷口由美子さんという方が訳しているバージョンを読みましたね。
翻訳もいくつかありそうやね。
多分あるやろうね。もう結構もう古い作品やからね。
古典じゃないけど。
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まあ古典と言ってもいいよね。
そうなんかせっかくやから岩並少年文庫を全巻読破したいなと思って。
すごい大きな野望を掲げて。
でも別にあれはいつまでにとかじゃなくて。
そうそうそうそうなんですそうなんです。
そう思って、それをまとめた記事とかあげたら面白いやんと思って。
それを思って読んでみて。
そのまあ第一弾でもないんだけど、一弾として足永おじさんを選んでみたんですよね。
結構あの当時でも多分特徴的特色があることやったと思うし、
今読んでみても特徴的やなと思うんですけど。
全部じゃないけどほとんど手紙なんですよ。
そうなんだ。
足永おじさんってまああれやね。
いわゆる孤児院って言われるところに入ってる17歳だったかなの女性というか少女というかが、
大学に行くお金を給二個出してくれる、いわゆる足永おじさんって今言うけどさ、
まあ世話をしてくださるような人が現れた。
あれやもんね。小学金でもそれにちなんだ。
足永いくえかいとか。
あるよね。
まさにそれの元ネタというか。
貴族の人がスポンサーじゃないけどそういうのになってくれるっていうので、
その足永おじさんが要求したのが感謝の言葉とかそういうのいらないから、
その様子を手紙で送ってよこしてって。
そういうのをくれればいいから一月に一回かなぐらい手紙をくださいと。
であなたに会う気はありませんからって。
それを要求しても会わないよみたいなことを最初に条件として言われる。
でも。
そうそうそうそう。
でもこの主人公は気になるやんそんな。
そうやね。
どんな人なんか。
そのたまたまその足永おじさんと言われるその人が、
まあそういう援助をしますよって言った帰りにチラッと見かけるんやけど、
シルエットしか見えへんのよね。
それがあのタイトルの足永おじさんの由来なんだ。
そうでその名前がなんか偽名みたいな使ってくるんやその。
自分にたどり着けないように。
そうそうそうそうジョンとかそういう名前にして言うけど、
でもそのジョンって呼ぶのもなんとなく嫌やから、
その偽名で呼ぶのも嫌やから。
なるほどね。
だからそのシルエットの足が長い男性だっていうのから、
足永おじさんって呼ばせてもらいますっていうところから始まるんよね。
その手紙がすごく感性豊かで面白くて。
いくつくらいの主人公は?
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たぶん17歳ぐらいかな確か。
で大学入るから18とか9とかかな。
でまあ大学卒業するぐらいまで。
大体それぐらい学生生活送っているところを手紙で送るんやけど、
すごいそのなんかこの情景を見てるみたいにすごい豊かな表現力があって、
誰々がすごい感じ悪くて嫌なのよみたいな。
その年っぽいことが書いてあったりとか、
あとその手紙の送り方も結構変えてて、
今回はちょっと文語帳で行きますみたいな感じで書いてたりして、
だからちょっとこういう言葉ではなかったけど、
拙者は何々でござるゆえ、
何かよろしく総論文章で書かれたりとか、
遊びがあったりとか。
でまあなんとなくその話のオチが見える感じはするんよね。
ストーリーとしてはそこまで構成がめちゃくちゃひねくれてるじゃない。
間違えた。
複雑、ひねりがあるとかじゃなくてシンプルな構成なので、
なんとなくこういう結末かなっていうのはわかるんだけど、
それをもってしてもその結末を見たいって思わせてくれる。
こうなるんかなそうなったらいいなって思いながら、
次々読ませてくれる。
やっぱりその小児っていう家庭環境というか、
バックグラウンドがあるからすごく寂しいんよね。
寂しさみたいなのも主人公を抱えてて、
根が深い寂しさ、天外孤独っていう寂しさを抱えてて、
だからその足長おじさんを家族みたいに慕っていくわけ。
そりゃそうだろうね。
だけどその足長おじさんから返事がこない。
最初から返事はしませんし愛もしませんっていう約束で、
手紙を一方的に送っているだけやから、そういうのはない。
けどなんで送ってくれへんねんってなったりとか、
やっぱり人の気持ちとしてなったりとか、
どうかわかってますけどやっぱ送ってくださいよって。
手紙をするけど全然返ってこなくて悲しむとか。
と思ったらクリスマス、私がこういうのがあったらいいなみたいに、
いいと思うんですよねみたいな冗談めかして言った、
例えばすごい立派な高価な帽子とかを送ってくれたりするわけ。
返事お願いじゃなくて。
じゃなくてね。
だからそういう温かい認定がある人なんだなっていうのはなんとなくわかる。
やりとりはできないっていうその一方通行のなんか死亡というか、
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思い入れじゃない、なんて言ったらいいかな。親しい。
なんて言ったらいいかな。
でも死亡が。
死亡っていう、死亡の念っていうのがすごいあってる。
ない家族、なかった家族っていうものを、
やりとりはないけどちょっとしたその、
送ってくれるものだったりとかその自分が手紙を送るってことで、
相手との関係性を築いていくみたいな不思議なストーリーが結構面白い。
そういう話だったんだね。
ですです。
そうですそうです。
いわゆるもうなんていうの、
言葉じゃないけどさ、よく言う言い回しみたいにもう足中おじさんっていう。
なってるよね。
そうなってて、その現状っていうのがどういうのかなっていうのは、
あんまり確かに考えたことがなかったけど、
そういう、なんか、もっと交流っていう感じかなとなんとなく。
じゃないよね。
そうイメージが繋がってたけれど、
じゃなくて本当にその、私は会いません、送りませんっていう関係性でっていう感じだったの。
意外な感じがすごいした。
そうなんですよ。
それで、ちょっと脱線してもいい?
もちろん言葉でもしていいよ。
2冊紹介しようと思ってたもう一つの話じゃん、また違う話で、
確かホームスでは言ったことなかったと思うので、
それであの、何て言うか、寛容句とかことわざみたいになってるっていうところで思い出した本があって、
フランケンシュタイン。
フランケンシュタイン、はいはい。
ですね、えっと、メアリー・シェリーさんという方が書かれてる本。
で、セリザワ・メグミさんかなっていう方が訳されてる、新潮文庫で出てる本が今はあったりするみたいですね。
私も読んだことないわ。
あれ、フランケンシュタインは読んでほしい。すごく。
すごく読んでほしい。
いや、足長おじさんも読んでほしいけど。
あれは私の思考を考慮してくれてる。
そうそうそうそう。
あれは読まなあかんとずっと思ってる。
あれはおもろいから読んでほしい。
フランケンシュタインも、映画とかアニメとかで顔がツギハギとかになったさ、
なんか水色の顔したさ。
大男でギクシャクみたいな。
歩くみたいなのがなってるけど、フランケンシュタインは確か博士の名前ない?博士って科学者か。
だから作られた側じゃなくて、作った側の人がフランケンシュタイン。
フランケンシュタインっていう名前が有名すぎて、
化け物みたいに扱われてるあっち側の方がフランケンシュタインって思われてるねんけど。
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そうなんですよ。
ちょっとこれ記憶が定かじゃないんだけど、
デビュー作とかなんか結構かなり初期の作品だったような記憶があって、
よくこんな改作を生み出したなっていう。
かなり昔やね。
100年前とかじゃなかったっけ?相当本当に。
そうやね。だから今後、いろんな科学技術だとか社会の構想というか、
いろんな条件が違う中で生み出された、
先駆的な作品だというのはずっと気になってる。
でも全然色褪せないからね。
やっぱりあれだけの、映画とかアニメとかモチーフになっただけある作品やなって思わせられる作品なので。
フランケンシュタイン博士が生み出した、つぎはぎの異形のものみたいなものが命を持ってしまって、
持ってしまってって言っていいと思うんですよ。
確か性別が男だったんだったかな?なんだけど、
でも自分一人しかいないわけ。
当たり前やけど。
同じ人間じゃなくて作られてっていう仲間だってことね。
そうそう。一人しかいないから、だから友達もいないし、
博士は作ってくれた人やけど、でも兄弟とかもいないし、
だから恋人だったりとか、自分の夫婦じゃなくて、
なんて言うんだっけ?
え?何を言いたいの?
なんて言うの?
オス・メスみたいな感じの子供が出てこない。
え、なに?
相手がいない、子供を産むためのパートナーみたいなものも作れないから、
自分の存在を後世に残すこともできないし、
パートナーみたいな愛情交換したりする相手もいないっていう絶望的な孤独の中で、
追い詰められていく怪物ですね。怪物の姿と、
怪物とされて嫌われてしまうよね、フランケシュタインの作ったものは。
が、ちょっと恨む。博士を恨んで、だんだん博士に憎しみを抱いていくっていう。
すごい生々しく、突拍子もない設定に思えるのが、とてもそうは思えないぐらい迫ってくる。
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サスペンスとか恐怖小説の類にも入るかもしれない話なんですけど、
人間の孤独っていう、絶対的な孤独っていう、
普遍的なテーマも扱ってるって意味で、フランケシュタインは本当にこれは一度は読んでほしい作品ですね。
なるほど、名著っていうのはね、いろんなところから聞いていて、
いつかとは思ってたけれど、読みたいなと改めてそれを聞いて思いました。
というところでね、すごいね、つながりが良くなったんですけど。
本当に?
意図せずつながりが良くなった。
そういう怪物とか異形とか、
現実とは少しこう、世界がずれて存在しているような作品という意味で、
もう一個読んだ本が、最近読んで面白かった本がありまして、
レプリカたちの夜、市城二郎さんという方が書かれている本ですね。
この流れで聞くと、レプリカっていうのがやっぱ意味深いな。
でしょ、そうそう。
なんか世界観というか、最初の導入で示されるその舞台設定が、
ん?って興味を引くような世界観で、
主人公は男性で若者、多分なんですよね。
の青年が工場で勤務してるんですけど、
その工場が動物のレプリカを作ってる。
それはどういうレプリカ動いたりする?
それともぬいぐるみ?
ぬいぐるみ、白製みたいな。
すごい精密な白製を作ってるイメージ。
でも白製じゃないの。本物ではない。
白製は、実際に生きてたものを使ってるけど。
レプリカを使って、確かそういう設定。
なんでレプリカかというと、絶滅してるね、動物たちが。
なので、それのレプリカを作るっていう需要があって、
それを作ってるっていう設定なんですよ。
なんとなくSFっぽいというかさ。
そうね、梅津和夫とか。
なんかちょっと闇を感じる。
諸星大二郎とか、ちょっとなんかその、
闇もやし、ちょっと幻想小説みたいな雰囲気もある。
幻想小説、あるかな。
なんかどっちかっていうとね、
梅津和夫さんとかすごい近くて、
なんかこう、驚々しく迫ってくる感じがするよね。
で、この作品ちょっとなんか他の読書では、
なんかこう味わったことのない読書体験というか、
なんか終始揺さぶられているような感覚があるんですよ。
どういう揺さぶられ方?
あの、これは私だけの感覚やから、
ちょっと一緒に共感できるかはちょっとわからないんですけど、
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ドグラマグラっていう作品。
夢の旧作さんの作品を読んだときに、
あれってさ、堂々巡りみたいな意味からドグラマグラってさ、
作られてる、作られてるというかその、
東北の確か言葉なんやけど、ドグラマグラって。
それみたいに、あの本を見てるとすごい、
なんか、え、何これ?みたいな。
惑わされるというか、
なんかどうすればいいの?困惑する。
のと近い感覚を覚えた。
なるほど。
じゃあ、なんか自分の信じてる価値観が絶対じゃないんだとか、
そういう感じじゃなくて、
もうただジェットコースターみたいな、
グワングワンみたいな感じってこと?
そうそうそうそう。
なんか書いてることの意味は分かんねんけど、読んで。
読んで、理解はすんねんけど、
怒ってることの意味が全然分からへんねん。
ほんと読書体験だよね。
そうなんよ。
筋が読んで、ふんっていうんじゃ全然ない感じ。
ないのよ、ないのよ、ないのよ。
っていうのは、例えば、
これ実はミステリーの章を撮ってる作品なんですけど、
でもその、なんていうのかな、
一般的に思い浮かべる殺人があって、
犯人が誰かっていうのを、
探偵とか誰かが追い詰めていったりとか、
そういうタイプのミステリーじゃ全くなくて、
これミステリーって言っていいの?みたいな話だよね。
なるほど。
でも確かにミステリー要素はあって、
っていうのはなんか、
なんか白クマが動くんですよ、ある日。
レプリカなはずの白クマが、
なぜか夜中に一人で、一人というか一匹というか一頭で、
動いてるところを青年は見てしまうよね。
で、え?ってなって、
でも絶滅したはずやんってなって、
そこで謎があったりとか、
で、その工場内に白クマの毛と思われるものが落ちてて、
それを分析したら、生きてる白クマの毛やってなって、
え、でもそんな生きてる白クマが本当はいるはずないのにとか、
っていう導入部分での揺さぶりがあるんやけど、
どんどん白クマが何か加害行為をしてくるんよ。
ほう。
例えばその工場、工場長やったかな?
何かまあ工場の管理者みたいな人がいて、
その人を白クマが殺してしまう。
ありゃりゃ。
で、どうやら。
で、どうして白クマって言うの?何かまあいろんな証拠で。
確かその白クマが殺す現場を見たんやったな。
ちょっとあの、定か、ちょっと思わされてしまったんやけど。
いや全然ね、本筋じゃないけど。
そう、確かまあでも明らかに白クマ犯人っていう状況で、
その工場長だったっけ、管理者だったっけ、が殺されてしまって、
え、ちょっと待って、本当にそうやったかわからないなと。
え、でも白クマがそう、いろんなその。
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まあ加害行為をする、そうそう。
で、白クマに襲われんねん、主人公は。
ほう。
2階の窓ガラスがバリバリになって、そこにこう叩きつけられて、で放り出されて。
でもなんかこう、柔らかいゴミか落ち葉かなんかの下に落ちて、
なんとかこう、救死に一生得るみたいな話があんねん。
でその、白クマに襲われたその部屋に、
その管理者の人が机にこううつ伏せになって、
明らかにもう完全に殺されてるわけ。
はいはい。
で現場を見て、でまあそのセンニャー逃げ出すんやけど、
もう一回その現場に戻ったら、
ガラスが壊れてなくて、管理者もいなくなってて。
時間が戻ったみたいな。
そう、誰もいなくなってて。
で、「いやでも管理者が殺されたんです。」みたいなことを他の人に言うたら、
いや管理者いるしみたいな。
あの旅行行ってるだけやで、みたいなこと言われて。
いやそんなはずはないって言うたら、
いや電話してみんやってなって。
ほんなら電話で、その管理者のかと思われる声の人が話してくるんやんか。
ちゃんと繋がって。
ちゃんと繋がって。
と生きてるやんってなって。
じゃああの姿なんなんやって。
みたいに、泣いてることは分かるんやけど、
怒ってることの追障が何にも合わなくて。
そういう出来事がどんどんどんどんどんどんどん繋がっていって、
で最後の方に、ああだからそうやったんやっていう、
ちゃんとオチはあるので、
口頭向けな話ではないし、
そうそうミステリーの要素もある。
だけどその始終ずっと、えなんでなんでなんでなんでって、
戸惑わせられるっていう揺さぶられる小説っていう意味で、
ちょっとなかなかこれは、
この本でしか味わえない読書体験かなっていうところで、
ちょっと紹介してみたかったですね。
それって結構最近の本?
最近ではなかった気がするな。
ちょっと思えてないけど。
でも文庫版になったのが2018年なんで。
じゃあ私の時間間隔で言うと結構最近かな。
そうね7年前ぐらいやから単行本になったのがね、
もしかしたら10年前とかぐらいなのかな。
そんな2冊の本をちょっと今日は紹介したかったです。
フランケンシュタインとかもいろんな幅広い本紹介してもらったかなと思います。
ということで来春を楽しみにしていただければ幸いです。
良い読書体験を!
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