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生物学者と書店員のインターネットラジオ、本の虫のススメ。
本を偏愛する生物学者の椿と書店員の佐藤が、本にまつわるあれやこれをゆるっとお届けします。
今回も始まりました、本の虫のススメ。
イエーイ。
最近、椿さんは読んだ本はありますか?
ありますよ。
どんな本ですか?
ジャンルが違う本を2冊紹介したいなと思って、持ってきたんですけど。
1冊目は、泉健太郎さん著の、古生物学者と40億年っていう、
竹間プリマー新書から出てる、ジュベナイル向け。
ジュベナイル向けってノンフィクションで言わへんな。
ジュベナイル向けって何?
昔、ジュベナイル小説とか、
なんか聞いたことあるけど。
キンエイジャーとか、あのぐらい向けの本を言わへんかったっけ?
言った覚えはあるけど、今なんて言うやろ。キンエイジャー向けでいいんかな。
ヤングアダルトとか。
そのぐらいの年齢が、竹間プリマーなんで、ターゲットの本なんですけど。
なんかタイトルの通りで、古生物学と40億年じゃなくて、古生物学者とってなってるのがこの本のポイントで。
だから単純に知識的な、これまでわかってきたこととかを教えてくれる本っていうか、もちろんそういうことも知れる本なんですけど、
古生物学者っていう職業の営みみたいなところにフォーカスしてて、
結構古生物学って、古い生物学って書くんですけど、恐竜とか、
そのイメージやけど。
そう、キラキラしたイメージがすごくあって、でもこの著者の泉さんめちゃめちゃ誠実で、
多分そういうキラキラしたイメージに、そこまでそれで言えるんかなとか、
ここまではわかるけど、実際にそれを詰めるためにはこうする必要があってみたいなのを、
多分すごい真面目に、誠実にありたいと思う方だと思うんだよね。
実際のジュラシック・パークじゃないけど、みたいなキラキラ。
華やかな感じのね。
そうそう、キラキラなんでもわかるぜ、古生物学者像みたいなのと、
実際のギャップみたいなのを埋めて、私たちはこういうことを知っていて、
こういうことをしたらここまで言うことができて、そのためにどういう研究者としての実践をしているかみたいなことを、
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ちょっと職業、紹介本に近いような。
なるほど。
だから新しい切り口で、結構読みやすいですし、すごいそういう誠実さっていうのが、
業間からにじみでまくっていて、あんまり類書がないっていうか、
面白いなって思いました。
なんかこういう、結構泉さんまだお若い、若手の研究者の方なんですけど、
このぐらいの方が書かれる研究のノンフィクションって、結構自分が自分がじゃないですけど、
自分の研究にメインフォーカスみたいな、それはそれでもちろんいいんですけどっていう方が多いんですけど、
そうじゃなくて、本当に基礎的な、この分野の個性物学の基礎的な話とかも、
結構詳しく取り上げてくれてて、図表とか写真も結構多くて、
分かりやすくって、そっかそっか、当たり前やけど、そうやんな、みたいな、研究者が読むと。
私、個性物学の分野の人間じゃないので、なんかいろいろと勉強になるし、面白い本でしたね。
で、それと関連してちょっと前に読んだ本も思い出して、これも個性物の本なんですけど、
これはちょっと写真集的な、ビジュアル的な美しさがある本で、タイトルが世界を変えた100の化石っていう本で、
ポール・D・テイラーさん、アーロン・オデアさんが書かれた本で、
マトバッド・ムユキさんが役監修、マナメ・ヤマコトさんっていう本なんですけれども、
これはその、個性物学って結構他の分野の学術分野とたぶん際立って違うのが、
物が見つかったらそれまで描かれてたストーリーがガラッと変わったりするっていうのがあって、
だからその化石が見つかって、これまで考えられたことがガラッと覆されたみたいなことが結構起こって、
その100の事例というか、実際の美しい化石の写真とともに紹介してるっていう本で、
読みたいところから読むこともできて、写真だけパラパラ見ることもすごい美しくて楽しいっていうような本で、
これは私もまだ全然全部読んでないんですけど、たまに見て、ほげーこんなのあったんかいなーと思いながら見て楽しんでるっていう本ですね。
結構個性物の本って、再現したイラスト、復元図が多いんですけど、意外とこれ復元図がそんなにないっていうのも結構特徴で、
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あるんですけどね、それよりも化石そのもののアツっていうの、すげーみたいな、
そういうのを見て楽しむような、物の持つ力みたいな、ちょっと博物館に行ったみたいな気持ちになるような本ですね。
へー。
っていうのを最近ちょっと自分にはあんまりなじみのなかった個性物の本2冊っていうのを読んだりしました。
なるほどなるほど。
もう1冊全然違うジャンルでも読んで、ちょっと衝撃的に、面白い?面白いのかな?面白いっていう言葉が適切なのかわからないんですけど、
すっごく文章が繊細で美しくて、ちょっと心を打たれた本があるんですけど、
イリナ・クリゴレさんというルーマニア人の人類学者で、
ちばるー。
そうなんですよ、ちばるー。
斉藤哲長さん。
この番組にも69回から71回にかけて3回にわたってご出演いただいた斉藤哲長さん。
千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話。
通称ちばるーと呼んでるんですけれども、このちばるーにも出てくる本で。
それがきっかけで実は読んだんですけれど。
なので、これ訳書じゃないんですよ。翻訳書じゃなくて。
原書?
そうそう、だからイリナさんが日本でフィールドワークしてて、日本の方と結婚して日本に住んでるっていう方で、
だから日本語で書かれたエッセイというか、なんですよね。
だから本当に哲長さんと鏡のような、哲長さんは日本人でありながらルーマニア語で文学をしてるから。
なんですけど、イリナさんは逆でルーマニア人なんですけど、
彼女は肉体的な移動が伴っているのでそこは大きく違うんですけど、
日本に来て日本語でこの本を出版されたっていう。
すごい本当に文章が、触ったら壊れそうなくらい繊細で美しくて、
読んでると涙が出てくるんですよね。
テーマとしても結構、ルーマニアって社会主義経験が長くて、
すごいドラマチックなチャウヒュシク政権の最後を遂げたりとかっていうのがあって、
その体験って私たちの心にはまた刻まれてないっていうか、やっぱり遠い国の話っていう認識なんだけど、
彼女はやっぱり実際にそれを見たというか体験した世代なので、
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それを綴るというか、自分のバックグラウンドのところからお話が始まるので、
話から始まって、自分の肉体が社会、計画経済の中に埋め込まれた暮らしっていうのの中で、
幼い日々を過ごしたので、自分の体が社会に絡めとられる感覚みたいなのが、やっぱり彼女のこの文章を貫いてると私は感じて、
それがなんかもうすごいね、ちょっと、
例えば、言葉のその使い方もやっぱりすごく独特で、それはなんか汚いとかそういうわけではなくて、
ちょっと印象に残ってる文章で象徴的に現れてるかなと思うんですけど、
人の体に詰まっている感覚、感動、愛情の塊は言葉だけでは伝えにくい。
私たちの日常の中では言い尽くせないもので、お互いのコミュニケーションの壁が砕けない、壁が破けない日々を生きているとか、
ちょっとやっぱり独特かつ、言葉という表現に彼女が、
執着じゃないけれど、すごくそこで表現をしようという思いがある一方で、
その外にあるものっていうのを強く感じさせる文章というか、
すごく優しい、本当に。
彼女自身の、自分の生まれ育った国と違うところで、全然違う文化の中で生きる、
中で感じたことって言ったらすごくチンプになってしまうかもしれないんだけれど、
それをまた日本語化するっていうフィルターを通して、
なんて言うんだろうな、日本にペッキンしてるじゃないけど、
すごい彼女の繊細な体と言葉と、それじゃ言い尽くせないものっていうのの関係を、
すごく張り詰めた緊張関係みたいなのを感じるようなもので、
結構、何か体験を通じて心を通じ合うみたいな描写とかもあって、
例えばワインを作るシーンがあるんだけど、
結構お父さんとイリナさんはBVというかを結構されてて、
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うまくいってないというか複雑な感じを抱えてたりしたんだけれども、
自分でワインを作って父が作ったようなやり方でやったんだったかな、ちょっと忘れちゃったんだけど、
ワインを作るっていうことを通じて、自分の父の心と初めて心が通ったような気がしたとか、
そういう感覚ってちょっとわかるんじゃない?
そういう彼女自身が体験したことを追体験するじゃないけれど、
本当に不思議な美しい独語館の文章で、もう読んでくださいとしか言えないみたいな。
結局ね。
そうなのよ、本当に。
美しいんですよ、文章が本当に。
あ、そうだ、なんか、これが多分一つの大きな、もう一つというか、
このイリナさんの著書の中で大きな目標というか、人生のテーマとして掲げられているのが、
一度、彼女が高校生になった時に、なんか言葉が話せなくなったことがあったらしくて、
多分だから心音的な心の問題なんだと思うけれど、
それを一生かけて、その言葉と自分の体の感覚を、
ずっとその社会主義の中に踏み込まれて、失わされてきたと感じていたので、
それを取り戻すっていうのが自分の目標だというふうに書いてあって、
その実践というか、を日本で、日本というか、異国でされている、その一環というか、なのかなと思ったり。
なるほどね。
タイトルがもう既に繊細じゃないですか。優しい地獄。
これ、イリナさんの子供のお子さんが言った言葉なんです。
子供から出たことはないや。
何をもって優しい地獄っていうふうにそのお子さんはおっしゃったよね。
ダンテの新曲の地獄の話を聞いて、
今は優しい地獄もある。好きなものを買えるし、好きなものも食べられるっていうふうに、5歳のお子さんが。
すごい感性やね。
これやっぱり、もうこの親にしてこの子は。
資本主義の皮肉を5歳という年齢で口にしたことにびっくりしたというふうにイリナさんも書いてるんだけれども。
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で、その言葉がイリナさんの中でずっとずっと響いて、
で、この本のタイトルになったという。
みたいですね。
なるほど。
難しい。
一言でなかなか、いろんな要素が重層的に組み合わさってる本なの。
でも本当にこれもまたなんというか、読書体験だと本当に思った本なので、
本当に読んでるとなんか、なんでかわからないんですけど、涙が出てくるんですよね。
そんな本なので、ちょっと重いといえば重いんですけど、
なんか逆にその心が現れるっていうか、ちょっと金銭に触れるような、私には文章だったので、
美しくて壊れそうなものに触れたい人はいいんじゃないかなと思います。
なるほど、なるほど。
なんかその話を知ってると真逆の話になっちゃうと思うんですけど、
一冊ちょっと紹介したい本があるんで。
聞きたい聞きたい。
チバルー関係で。
そのチバルーの中で紹介されてた本で、気になって読んだ本なんですけど。
すごいよね、あの本。読みたくなるよね、本をさらに。
そうそうそう。困るよ、あれ。ツンドクが山ほど増えてしまうから。
その本は、ババヤガの夜。
え、全然覚えてない。
っていう本で、大谷明さんっていう方が書かれてる。川出初号新社から出てる本ですね。
出た、川出。
出た、信頼と実績の川出さん。
これ結構バイオレンスな作品で、
いきなりね、人形、ヤクザの人が、車の後部座席に両面、両二人座ってて、
その間に女の人が血まみれになって、うなだれて座って、運ばれてるっていう、そういうシーンから始まるよね。
なるほど、確かに真逆やな。
真逆でしょ。
真逆ってグイグイ連れて行く系の文章というか小説って感じ。
そうそうそうそう。
それもいいよね。
なんか全然、自分自身のアンテナやったら絶対引っかからなかった本やなと思う。
確かに。
そういう、つい幻想とかさ、墓投げとかそういう方に、残酷とかに人やけど、
これほんまの直接的なバイオレンスものやから。
そうっすか。
そう、なんかこの本すごいね、なんか痛快なんですよ。
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で、そのボロボロになってる女の人が、ヤクザの家みたいな、事務所みたいなのに連れてこられて、
で、ボコボコにされそうになるんやけど、
なんかその女の人がはちゃめちゃに強くて、
そんなボロボロの方々の体になってるような感じなんやけど、
そっからその人狂の屈狂な男たちをボコボコに殴って、倒してしまうっていう。
まあでも多勢にぶつれてちょっとこう、やっぱりちょっと、
劣勢になったり。
劣勢になったりはするんやけど、
でも何人もの男を相手にこう、
割撃みたいな。
割撃みたいな。
しかもなんかこう、悪い奴らを殴っていくっていう意味で、
なんかちょっとこうスカッとするような感じの物語。
なるほどね。
なんかちっちゃい頃から、大体小学生から中学生ぐらいに上がる時に、
なんか私すごい悔しさがあったんですよ、男の子に対して。
なんか別にただ男で生まれたっていうだけやのに、
身長が大きくなっていって、背も抜かされて、力も強くなっていって、
なんて不条理なんだって思って。
そうだよね。
そう、なんか悔しいなっていう。
わかるわかる。
そうそう、そういう気持ちがあったんやけど、
なんかだからっていうのがあれなんですけど、
なんか悪い男たちを女の人がボコボコに殴って倒していくっていうのって、
結構なんか、やれやれじゃなくて、
男嫌いとかそういうことじゃなくて、
なんかそういうなんかこう、なんか悔しさをこう思い出して、
なんかこう爽快な気持ちがあるというか。
で、この話、それだけじゃなくて、
重層的に人間が絡み合っていくっていうの面白さもあるんですけど、
ちょっとバディモノに近い感じがして。
あ、そうなんだ。
一人じゃないんだ。
一人じゃない。
その屈強な女戦士みたいな人と、
もう一人その役者の事務所のお嬢っていうのかな。
娘さんっていうのかな。
組長の娘みたいな。
その二人が組んでちょっとこうなんか、
なるほど。
いろいろやっていくっていう。
じゃあちょっとシッターフッドみたいな。
面もあるかな。
なるほど。
で、結構これもうほんま言われへんけど、
ぜひほんとこの本読んでほしいです。
あの、えーっていうような途中から展開が。
マジで?
そのバディモノってスカッとする爽快なアクション劇っていう、
なんか怒涛のストーリー展開っていう面白さもありつつ、
もう一つ結構構成がすごい巧みで。
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そうなんだ。
そう。
なんか、え、こんな風に展開するのっていう、
どんでん返しじゃないですけど。
そう、なんか、えーみたいな。
長いでしたもん。
大きく驚き。
えー、あれってこれってあれやったんやみたいな。
全然言えない。
全然言えない。
全然言えない。
それを言ったらもう読書の楽しみを奪ってしまうので、
言えないんですけど、
まあでもその、なんかこう、
えーっていう驚きも途中の後半から出てくるので、
構成も巧みやし、その勢いもあるし読ませるっていう意味で、
この本はぜひぜひぜひお勧めしたいですね。
なるほど。
はい。
という感じで、今回は全然なんか対照的な感じの本を紹介したりとり。
個性物も紹介したり。
したりとか。
多様でしたね。
多様でしたね。
毎回のことですけれども。
そうだね。
はい。
という感じで、来週も楽しみにしていただければ幸いです。
良い読書体験を。
良い読書体験を。
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