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生物学者と書店員のインターネットラジオ、本の虫のススメ。
本を偏愛する生物学者の椿と書店員の佐藤が、本にまつわるあれやこれをゆるっとお届けします。
はい、今週も始まりました。本の虫のススメ。
今回は、原点に戻って、原点って何?って感じですけど、最近どんな本を読んだ?っていう話から始めていこうかなと思います。
佐藤さん、最近なんか面白い本読めました?
かなり豊作なんですよ。
うっそ、いいじゃん。
そうなんですよ。で、どこから紹介したものかな?って、内容ぐらい色々あるんですけど。
幸せな悩みだ。
そうなんです。そうなんです。
まあ、なんかカテゴリー分けしてもいいかなと思って。
そんなに?すごい。つんどく本の回みたいな。
つんどく本を紹介してるから今。
あの回ヤバかったもんね。
うん。リストがすごい。20個ぐらいあったかな、確か。
そう、あれなんか、私たち交代で毎回編集やってるんですけど、私の担当だったんですけど。
そうそうそうそう。申し訳なかったね、あれは。
いやいやいや、それでも泣きついて、佐藤さんにもやってもらったんですよ。
そうそうそうそう。それ多すぎてね。
あれヤバかったな、あんな感じ?
あそこまではないけど、そんなに読むスピード早くないから、そこまでじゃないけど。
そんな早かったらつんどくせえへん。
つんどくすぎない、そもそも。つまれないけど。
そうやね、なんか一つ、命っていう意味でテーマに2、3冊ちょっと紹介したいんですけど。
一つは犬の形をしているもの。
終焉写画出てる高瀬潤子さんの本なんですけれども。
全然タイトルから想像つかない。
いや、そうでしょう。
もう一人が李琴美さんっていう方の生を祝うっていう。
生って生きるのはいい?
生きるを祝うっていうようなタイトルの本で、両方なんか設定が結構ぶっ飛んでる感じの本なんですけど。
犬の形をしているものの方は、主人公が女の人で、彼氏っていうか恋人がいるんですけど。
その恋人が体の関係を持つ浮気を女性と、違う女性として、その女性との間に子供ができて、その子供を育ててくれないかと。
私は産むけど育てる気はないから、そっちで育ててくれないかみたいな。
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現実的にはなかなかなさそうな設定のところからドーンっていきなり物語が始まる話で。
生を祝うの方は、これは設定が結構ぶっ飛んでて、SFみたいな感じなんですけど。
生まれてくる前の赤ん坊タイジに、生まれてくる意思があるかどうかっていうことを確認できることができるようになった。
カッパみたいなアクターがいるんですけど。
あ、呼んだことないね。
ネタバレしちゃった。なんか、僕はまだ生まれた子ありませんって。
へー、でもそういうことよ。リジクトっていうのができるらしくて。
面白い。
そう、なんかちょっとカラクリはよくわからないけど、タイジに対して、あなたの生きづらさは何ですみたいなのを提示をして。
で、その結果、あなたはどうします?あなたは一般的な人より生きづらいですとか、生きやすいですけど、生まれますかどうしますかっていうのを聞いて。
で、「はい、生まれます。」とか、「いいえ、生まれません。」みたいなことを答えるみたいな。
なるほど。それは結構印象的なカッパ、そこしか覚えてないんだけど、カッパのシーンを思い出した。
あ、そうなんや。
僕は生まれたくありません。僕はカッパ的存在を悪いと信じていますからみたいなことを言うね。
なんて言うんやったっけ、前さ、言ってたさ、生まれるということは悪いことだみたいな主義。
反出生主義。
シオランだね。
シオランさんみたいな。
そうやな、そういうの好きやから、たぶんめっちゃ喜んで読むと思う、私。
いや、だからそういう話なんやけど、なんか、生を祝うの方は、でもそのリジェクトしたりしなかったりする、赤ん坊側の話というよりかは、この子供を授かる人側がリジェクトにならへんかなとかドキドキしながら過ごすっていう。
なるほど、なるほど。
で、その社会では、子供の、子供というか胎児の人権というのがすごい言われてて、だからその、胎児が拒否したにもかかわらず、産むっていうことはありえない非道徳なことだみたいな倫理感があるよね。
なるほど、なるほど。
とはいえ、子供を身ごもって産みたいっていうのって結構まあ、自然な感情ではあるから、そこで葛藤して産んだ人は、ちょっとなんか苦しむ、世間の目に晒されて苦しんだりとか、あとその子供から訴えられたりするね、そのリジェクトしたにもかかわらず、なぜ産んだんだみたいなこと。
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みたいな、なんかこう、そのSFチックな、ちょっとぶっ飛んだ設定なんやけど、結構なんか考えさせられるというか。
タイトルがまたなんかあるよね、その設定聞くと。
そう、なんか皮肉っぽいでしょ。
皮肉っぽいでしょ。
そう、生を祝うっていう。
だけどなんかその、結果的に、あ、でもネタバレになっちゃうか言えないんですけど、この生を祝うっていうタイトルにしたのは、なんか皮肉でもあるけど、祝福も込められてるような感じがして、ピッタリなタイトルだなって思いました。
面白いですね。
犬の形をしたものの方は、その後どうなるって言ったらネタバレになるけど、どういう、その、なんか浮気相手の子を育てるというところから、命のテーマにどう繋がっていく感じでしょう。
えっと、なんかね、その、生まれてから育てて、あの、葛藤していくみたいな話かなと思いきや、その子供が生まれるまでの葛藤をずっと描いてる。
なんか育てるわけないやんみたいな、なんかその拒否反応のところから、いやでも育てることになるんかなとか。
恋人と別れることになるんかなとか。
あー、なるほどね。
でも別れるってことは考えづらいくて、恋人はその、自分の子供を育てる気でいるってことは、この人と一緒にいるってことは子供を育てるってことになるんかなとか。
いやでもそんな受け入れがたいしとかっていう葛藤が結構主に描かれてる感じ。
なるほど、なるほど。
それを通じて、何の命というか人間の。
何なんやろうね、何を描きたいのかって言われると難しいし、捉え方にもよると思うんやけど。
それはそうだね。
なんか家族の形っていうものの、なんかイレギュラーなものを突きつけられることによって、なんか家族っていうものをもう一回考えさせられるみたいなところがあったかもしれない。
なんか生を祝うの方でもそうなんやけど、生を祝うの方は、主人公が子供を産むことになるんやけど、パートナーが女性なんやんか。
だから女性同士とか男性同士でも子供が産めるようになっているっていう設定になってて。
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なるほど。
だから犬の形をしているものも、生を祝うの方も、なんか家族っていうものの形のあり方が変容してきている現在において、
もう一度家族ってなんやろうとか、パートナーシップってどういうものなんやろうとか、それにまつわる子供って一体どういうふうに関わってくるんやろうっていうのをもう一回考えさせられるっていう感じのお話ですね。
ちなみに犬の形をしているものというタイトルはネタバレになるよね、きっとね。
そうやね、ここは触れない方がいい。
ぜひ読んでもらってから、あーなるほどねって思ってほしいところかな。
さっきジャンル分けして最近読んだ面白い本をって言ってたけど、他のジャンルはどんな感じですか?
それと絡むところで、生を祝うか、同性愛者のパートナーシップっていうところを描いてるって書いてたんですけど、もう一つ祝縁っていう本を最近紹介した覚えがありますね。
ウェン・ユジュースさんっていうのかな?っていう方が書かれている本なんですけど。
舞台は?
舞台は、主に東京かな。
確か台湾人の両親の子供、両親と子供っていう家族の物語なんですけど、でも実際には福岡とか東京とか日本の方で会社を、
香港やったかな、台湾やったかな、ちょっとごめんなさい忘れてしまったんですけど、から台湾、台湾じゃない、日本に行って住んでらっしゃる現地の方っていう物語なんですけど、
この職縁の本は、カミングアウトを受ける父親側の話っていうか、
私は、まず妹が先に結婚して、お姉ちゃんが残るっていう、若干気まずいみたいな状態の家族の中で、実は話してないことがあって話さなあかんことがあるってお姉ちゃんが両親に言うんですけど、
それが、実は私には女の恋人がいて、一緒にその人と暮らしていきたいと思ってるんやみたいな話なんですけど、
父親は、お姉ちゃんのことを何でも理解して、何でも受け入れてずっと暮らしてきたんやけど、
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でも、その女の恋人がいるっていうのが、妙に生々しく気持ち悪く感じられてしまって、
どうしても受け入れられなくて、女の子を拒絶してしまったりとか、合わないようにセッティングするみたいな。
避けて。
そういう父親の葛藤が描かれてるっていう、こっちは本なんですけどね。
なんかでもそれも、何て言うんでしょうかね。
それが言い悪いとかっていう話ではなくて、自分が思ってた価値観じゃないところから立ち現れてくる、
ニュー価値観みたいなものに対しての拒絶感とか、拒否反応っていうものって、人間で普通に持つものじゃないですか。
自然だよね。
そうだから、その父親の感情っていうのを読んでても胸クソ悪くならないっていうか、
そうやんな、そう思うよな、やっぱりなって読んでて、
私はそのLGBT側の人間ではあるけど、拒否する人の反応も分かる分かるって思って読める感じの内容で。
なるほど、それは結構珍しい視点だね。
そうそうそう、だいたい当事者の視点が書かれることが多いから、
っていう意味で面白かった作品ですね。
ほとんど最初の方で、実は女の恋人がいるんだって書かれて、
そっからずっと前編に渡って、父親の葛藤っていうのが主にフォーカスされて書かれるっていう意味でも、
なかなかポイントが絞られてて面白いなって思いましたね。
確かに確かに、私たちはもうまた、
親の世代とは全然違う環境で育ってるから、
私たちというか、そのちょっと舞台、登場人物のちょっと年齢があれやけど分からんけど、
30代ぐらいやったかな確か。
30代ぐらいやったかな確か。
それだとね、また本当に親世代ってなると、全然本当に。
違う、異世界みたい。
本当に特にそういうLGBTとか環境とか、
ここ本当に10年20年で大きく変わったところに関しては、やっぱり全然違うよね。
それをこう、一概に悪とか、そういう話じゃないよね。
本当に、私自身親にカミングアウトって両親ともしてないんですけど、
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でもなんかそれをするのもどうなんかなっていうのが個人的にあって、
分かるよ。
あまりにも価値観が違うところにいるから、世代的に。
本当に。
今さら私実はそうなんだみたいなことを言って、
異世界のカルチャーを知ってガーンってなって、
そっから拒否反応をしてまた授与するまでみたいなプロセスを、
なんか、得させるのも大変やなみたいな。
そうやねんな。
それはすっごい思う。
あの、やっぱりきっと異物感っていうのは絶対あるからさ。
なんか、やっぱ考えちゃうよね。親と過ごせる時間とか、あと何年とか。
ってなった時に、それで、それこそ今紹介してくれた宿縁みたいなものを減ることが、
なんか、残り少ない時間でいいことなんかなみたいな。
そうそうそうそう。なんか全部を全部言うことだけが正解じゃないよなというか。
そうだよね。
親子であっても。
全く同意する。
なんかそれで、もう一つ本を絡めて紹介したいんですけど。
これはでももう、私が今さら言うような本ではない、超有名な本。
ベストセラー珍しく。
ベストっていうか、もうロングっていうか、古い本なんで。
たでくう虫ですね。
ああー。
あれ、中学ぐらいの時に読んで、面白かった印象だけ残ってて、もう内容とか忘れてて。
さっき、純一郎、私もすっごい同じぐらいの頃に読んだんやと思う。
忘れてるわ。
忘れてるよね、もうね。
で、たでくう虫って、どんな話、なんか谷崎純一郎ってさ、結構性癖偏ってる話とか多いからさ。
結構ハードなあるよね。
フェティッシュな話とか。
お姉ちゃんがふみふみしてくれたお団子食べるとかそういうやつやな。
そんなやったっけ。
掘り物を掘ってる姿が美しくて最高みたいな。
そう、そう、そう。
刺激強かったの覚えてない。
イメージがあったから、たでくう虫っていうのもすごいなんか老人とかが出てきて。
わかるよ、わかるよ。
なんか誰か女の人の足を舐める話というか。
そういう感じの話かなと思ってんけど、全然違くて。
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そうなんや。
なんか自分のイメージする谷崎さんらしくない作品。
そうなんやね、読んでみよう。
なんかね、夫婦の話やねんけど、
夫婦で一人息子がいて、仕事せんでも暮らしていけるみたいな、
悠々自敵で勇敢、貴族じゃないけど、みたいな不裕相の人の話なんやけど、
なんかその夫婦は、もう夫婦の実態がないねん。
もう仮面夫婦みたいな感じなんやけど、
で、その奥さんには恋人がいて、もうその恋人とも将来を約束してるみたいな。
だからいつ別れようかなみたいな。
でも息子がいるからなみたいな。
かわいそうやんなみたいな。
だけどでももう、今更この夫婦関係もないし、
でも、でもなぁ、別れるのもなぁ、いやでもなぁ、みたいなのがずっと、ただそれだけのことがずっとぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃなんか、
続くっていう、すごいなんか老人が足なめるみたいな、そういうの。
なんか淡々とした静かな話なんやけど、なんか言ってしまえばそれだけなんやけど、老人と海とかもそうやけどさ、
魚取りに行くって。
そうそうそう。
でもなんかそれでもなんか嫁でしまうっていうような。
なんか私はちょっとあの、このさっき言った食塩とたで食う虫がちょっと近いというか、
なるほど、一人の大野というかに。
そうそうそうそう、フォーカスしてるっていう意味で。
なるほど。
なんかね、でもなんかすごい、その中に京都の女の人が出てくるんですよ。
それはその、奥さんのお父さんの愛人。
OK、わかった。
主人公の奥さんのお父さんの愛人。
で、20代ぐらいの若い女の子を囲って、老人やねんけどその。
そこは谷崎純一郎のイメージ。
のイメージに合うよね。
そう囲って一緒に暮らして、なんか自分の世話焼かせたりとかしてるわけなんやけど、その老人がね。
でもそのなんかそのね、京都の女の人の京都弁がすごい美しくて。
なんか、いわゆる舞妓さんがさ、喋るような言葉あるやん。
あるよね。
なんて、どんな言葉かパッと今出てこないけど。
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出てこんな。
塩酸えみたいな。
しておす、なんとかどすえみたいな。
あれが、ナチュラルにこう、そういう言葉を喋ってて。
あ、ほんまに京都のそういう人って、そんな言葉、当時喋ってたよなーみたいな。
なるほど。
舞妓さん。
寺井の人がね。
そうそうそうそう。
そうやね、そうやね。
で、なんかそういう言葉が美しくて。
で、なんかその、めっちゃ文字文字文字文字してんねんけど、その主人公が別れようかな、でも別れるしかないんやろうな、でもな、別れるしかないんやろうな、でもな、みたいな。
と書かれてんねんけど、でもなんかその言葉の美しさとか文体の美しさとか。
でも、なんかそういうふうにグズグズしてしまう人間の性格っていうのもなんとなくわかるというか。
そうやね、そうやね。なんかその、ズバッとなんだって最適解出せないっていうか。
そうそうそうそう。
そうそうそうそう。
ベストっていうものがないっていう、何か悪いものを選ばなきゃいけないっていう時に、悪いものを選ぶのをなるべく先延ばしにしたい人間の心理っていうか。
そうやね、そうやね。
そういうのがすごいリアルに書かれてて。
へー。
そうそうそうそう。だから、結構何が起こるわけでもないんやけど。
で、谷崎さんの小説としては異作なのかもしれないけど、でもなんか読み応えがあってすごい面白い作品でしたね。
なるほどー。確かにそういう何が起こるわけでもない作品って結構あるよね。
そうやね。
なんかそういうのあった?何が起こるわけでもないけれど、なんか読めてしまう作品。
なんか何が起こるっちゃ起こるけど、思い出したのは、ラディゲ。レーモン・ラディゲの肉体の悪魔。
あれもなんか人妻と少年の恋愛劇というか。
めっちゃ怒ってるやんって感じやけど。
めっちゃ怒ってるけど、なんかその大脳がやっぱり中心で。
だから、なんか妊娠するんだけど。
え、その女の人が?
そう、その少年との子供、身こもってみたいな。
へー。
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でもなんか、怒ってるっちゃ怒ってるけど、そこにすごい他者が介入して大騒ぎになってみたいなんじゃなくて、
あくまでその、二人きりの世界の中で、いろんなこう、ことを暴動しながら本当に、その様子が書かれてるみたいな感じで、ちょっとそれ思い出したかな。
純文学みたいな感じなのかな。
純文学、そうだと思う、たぶん。
結構なんか三島由紀夫が影響を受けた小説としてあげたりとかしてるような本で。
確かすごいこの、書いた時の著者のラディゲが若くて、そのアンバランスさっていうのがすごい本だったかな。
だいぶ前に読んだからこれも忘れちゃったんですけど、でもなんかちょっと思い出したりした。
なるほど。
というわけで今回はフィクションが小説のお話をしました。
皆さんも最近読んだ、いろんなことを考えさせる小説、大脳を眺める小説、そんなものありましたか?
ぜひあったらお便りお待ちしております。
なんか変にしっとりした。
ではまた来週も楽しみにしていただけると幸いです。
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