定期的に子どもたちを集めて「教養講座」を開いていたというへいなかさん。
日々の疑問が集まる場に、好奇心を取り戻す様子を伺いました。世間から隔絶された塀の中の話をしていたはずが、いつの間にか最新の教育とリンクしていきます。
《 ゲスト:へいなかさん 》
本名:安部顕(あべあきら)さん
放デイ指導員兼広報。38歳一児の父。大学卒業後、教員になる前の社会勉強として営業マンに。教採直前に法務教官を知り、並行して受験。2012年4月から少年院で矯正教育に携わる。2021年3月に退職後、現職。発達支援の現場で働きながら、個人事業として教育現場や企業向けの研修・セミナーも行っている。(こども発達支援研究会 機関研究員)
《 つぼけん 》
1982年生まれ。東京都出身。 大学の自主映画サークルで映像制作の面白さを知り、2005年に映像の制作会社に入社。カメラマンディレクターとして多くのテレビ番組に携わる。 子どもが小学校に入ったことがきっかけで、日本の学校教育に関心を持つ。人生の目標は「Happiness Creactor」(=自分も他人もしあわせにできる創造力をつくる)
《 大ちゃん:大野大輔 》
1991年生まれ。東京都出身。共育ファシリテーター。
学校と自分が嫌いだった学生時代を、ある恩師が幸せに変えてくれたことがきっかけで教師の道を志す。10年勤めた公立小学校を退職し、現在は(株)先生の幸せ研究所のコンサルタントとして全国の学校の伴走支援を行うなど、「教育をもっと自由に」をテーマに活動している。
○(株)先生の幸せ研究所 コンサルタント
○(社)教育の窓口 共同代表
○社会教育士
感想はTwitter「#ほぼ教」でつぶやいていただけたら嬉しいです!
【つぼけんTwitter : @tsuboken_mol】
00:02
今回のテーマは、少年院の中にある好奇心を取り戻す教育ということで、へいなかさんにお話を聞いております。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
前半では、少年院の中の法務教官のお仕事っていうのが本当に知らなかったので、いや、知らない世界を知れたなというふうに思っております。
テーマである好奇心を取り戻す教育っていうのは何かっていうのを伺ってまいりたいと思います。
へいなかさん、僕、一番聞きたかったことを聞いてもいいですか?
はいはい。
へいなかさんのツイッターとかを最近ファンになってお見かけしてるんですけど、まずへいなかさん、今の教育に怒ってます?
そうですね。怒ってるっていうか、もったいないなって思ってます。いろんな意味で。
もったいないなって思って。
っていうのも、ツイッターとか発信を拝見してると、ラッパーのような印象を受けたんですよ。
文字の雰囲気もそうですし、何か怒りなのかわかんないんですけど、思いを秘めたものを、なんでだよっていうような印象を受けたので、
怒っていますかって一応聞いてはみたんですけれども、感情とか、なぜだっていう気持ちをお持ちなのかなと思ったんですけど。
めっちゃ嬉しい、めっちゃ嬉しいです。いろんな意味で。
まず、僕もヒップホップすごい好きなんで。
そうなの?
ラッパーストーリーはちょっと嬉しいです。
この話は広げると長くなるから、サクッと言うと、やっぱり近年はラッパーの子がよく入ってきてたんですよ。
ラッパーの子がよく入ってきてて、僕がいる量にそういう子が入ってくると、わかった、じゃあお前も日記、一日一回日記書くんですけど、
俺が当直の時、お前日記にちゃんと音符でライムで書いてやろうって。
最高、最高。
僕はそいつの日記にはそれに対するアンサーを10行全部音符で返すっていうのをやってた。
ゴリゴリに市場でMCバトルやるみたいなのをやってて、すごい嬉しい。
し、怒りはめっちゃあるんですよ。
上、要するに施設の幹部とか法務省とか文科省も含めた教育界隈の考え方が何でやねんって思うことも多かったし、
世間の無理解とかに怒ってもしょうがないんだけど、それどう考えても知識の問題じゃなくて考え方の問題でしょ。
その考え方のせいで自分で苦しんでるでしょっていうのが多くて、
行きどおりっていうか、もったいないよ本当にって思ってることがすごいあるし、
どちらかというと仕事のモチベーションはそういうふうな感情だったりするんで、嬉しいです。
嬉しい、よかった。ありがとうございます。
03:02
僕たちも同じかもしれないですね。やっぱり取り直そうぜっていう根っこをたどると怒りの部分はやっぱりあるわけですよね。
スタートとしては。分かります。
嬉しい嬉しい。ありがとうございます。
ありがとうございます。
だってですよ、きっとその9年の法務教官の世界をされて、すごく充足感も、もちろん行きどおりもいろいろなことがある中で、
辞めるっていう選択肢を取られたわけじゃないですか。
それっていうのが何でなのかなって思ったりもしたんですけど。
これはもう本当に自分自身の人生のために一つの選択として辞めたんですけど、
前提、おっしゃる通りで、僕は法務教官めちゃくちゃ充実感あったし、今でも転職だと思っているし、やりゃ一生やっていけると思ったんですよ。
ただ、全国転勤のある仕事をいつまで続けるのかっていうこととか、
それを65までやり続けている先輩たちもたくさんいる中で、こういうことを言うのは本当恐縮なんですけど、
現実問題、途中で体壊したらどうなるんだろうとかも考えて、途中で体壊したって、結局事務方の仕事とかもあるから続けられるんです、法務教官自体は。
でもそれはその時僕がそこまでして法務教官をやり続けたいかって言われると、そうでもないなって思ったんです。
事務方の仕事とっても大事だし、僕は本当にそこで信頼できる仕事をしてくれている仲間たちに恵まれたので、最大級にリスペクトをしてるんですけど、
ただ僕が法務教官と言いながら事務方で働くイメージが全く持てなくて、
でも例えば40代後半50代で体壊して事務しかできなくなった時に、それを法務教官として、それしかできないっていう状態で前向きにやり続けることは無理だな。
でもその時に転職しようって思ったら、もう無理だろうって思ったので、
まだまだ体が動いて、いろんなことにチャレンジできるうちに次のステップに進むってことは大事だなって、自分自身のキャリアのために。
そういう背中もまた送り出した教え子たちには見せたいなっていうのもちょっとありましたね。
だからとってもエゴです。ただのエゴでやめました。前向きに。
確かに体力勝負ですもんね。スポーツも一緒にやって、勉強も一緒にやって、
著書では誤信術?確保する?やっぱり暴れる子を、もちろん自分が怪我しないもそうですし、子供たちを怪我させないでも拘束するっていうこともしなきゃいけないってなってくると、相当体力勝負だなっていうふうに思いました。
06:05
そうなんですよね。怪我しない保障はどこにもないし、体壊さない保障はどこにもない中で、自分がそれでも納得できる仕事をし続けるのは、
どこかで職を変えた方がいいっていうことだったんですよね。だから今でも法務教官はやっぱり好きだし、副業でできるならやりたいぐらいの気持ちはめっちゃあります。
すごい舐めた発言ですけど、そんな副業でできる仕事じゃねーことは100も承知の上で言ってますけど。
事務方じゃなくて、やっぱり現場で直接子供たちと向き合うのが中田さんの中での法務教官だとしたら、その中で好奇心を取り戻す教育って今回のテーマになってることっていうのは、どうリンクしていくのかなと思うんですけど。
子供たちが結局健全な生活をするっていうのは、まずスタート地点はやろうと思えばできるじゃなくて、やろうと思ってもできないっていうところから始まっていくんですよね。
それは例えば僕は語学がすごいできない人間なのでほとんど日本語しかしゃべれないんですけど、明日からフランス語でしゃべってねって言われてもしゃべれないんですよ。
何度しゃべりたいって思ってもしゃべれない。だから僕が本当にフランス語しゃべろうと思ったら必要なのはフランス語しゃべれこの野郎って言われることじゃなくて、アンデュートロワから教えてもらうことだと思うんですけど。
ヒコモ少年にとっての健全なライフスタイルってのはまさにそういうもんで、殴っちゃダメだよって言われたら、じゃあどうやってコミュニケーション取ったらいいんですか。
万引きしちゃダメだよ。じゃあどうやって働き続けたらいいんですか。それができる能力はあるんですかっていうところから入っていかなきゃいけない。
だからつまり子供たちは健全なライフスタイルを獲得するために成長しなきゃいけないってことだよね。それは反省するってことも含めて。成長が必須だと。
じゃあ成長ってどういう時に起こるんだろうって言ったら、やっぱり子供たち自身が前のめりに学び始めた時が一番伸びる。
じゃあ前のめりに自主的に主体的に学ぶってどういうことかって言ったら、やっぱり好奇心を持つことだと思うんですけど、ヒコモ少年の多くは好奇心を忘れてきてるんです、どっかで。
例えば、僕たち新聞読んでて読めない字が出てきたら調べると思うんですよ。知らない単語が出てきたら調べると思うんですよ。
でもそれって8割9割知ってる言葉の中に知らないものが入ってるからそうなるんですよ。
確かに。
目の前にそれこそフランス語の新聞を置かれた時に読んでみようって絶対思わないと思うんですよ。
思わないですね。
これは知らない情報の方が遥かに多いからなんですよ。
09:03
だから子供たちは今、世界、社会に対して好奇心を持てない状況なんです。読めない漢字だらけ、わからない数字だらけ、意味のわからない仕組みだらけ。
この子たちが、もし学んでみようって思うためには、少しずつ知識を増やし、少しずつ体験を一緒に積み重ねる中で、
30過ぎの俺と18のお前で何で俺の方が速いんだろうな?何が違うと思う?とか。
お前の方が握力強いし、腕立てもやってるのに何で俺の方がスパイク強いんだろうな?何でだと思う?
いい問いだ。
何でもいいです。一緒に汗かいたり勉強したり生活をしていく中で、こちら側が疑問を抽出していく。何でだと思う?
それって実はこの数学から来てんだよ。これと同じことを世界中のここで勉強するんだよとかって言っていくと、
勉強面白いかもしれないですねって始まる。ちょっとやってみますってなった時からが、やっぱり子どもたちは一番伸びるんで。
いかに好奇心を持てる状態まで引き上げていくか。そこまでをいかに積み上げていくか。
その上で少年院ってのはやっぱり、さっきも言ったようにインターネットもない環境なので、子どもたちが取り戻した好奇心にどれだけ我々が応えられるか。
そこから先はまた勝負なんですけど。
そっか。Googleで調べなさいはできないですもんね。
できないです。
だから僕は空いた時間に教養講座っていうのをやってたんですよ。
要するにカリキュラムの合間の時間です。
30分とか1時間とか余白が生まれるんですよ、少年院ってどうしても。
その時間の中でちょっと寮内で、何やってもいいんですよ。
寮の先生の判断で。じゃあ1時間、10時間でもいいし、学習の時間ねって言ってそれぞれに好き勝手に学習させてもいいんだけど、
僕がいるときは教養講座やるか、上級生はもう分かってるんで教養講座やりますって日直が言うとみんな紙とペンを勝手に持ってきて。
紙とペン。
何だろう何だろう。
質問がある人みんなが手を挙げてパパパって指名すると、その子が今一番疑問に思ってることを勝手に言うんですよ。
えー。
教養ってのは何聞いてもいいっていう定義で僕はやってたんで、
本当に何聞いてもよくて、新聞から見つけてきたローマ法って誰ですかとか。
えー。
なぜ冬になると葉っぱが落ちる木と葉っぱが落ちない木があるんですかとか。
虹が7色に見えるのは何でですか。
月の虹架けって何で起きるんですかとか。
それから今の時期だとたとえば多分聞かれただろうなって思うのはウクライナとロシアは何で戦争になったんですかとか。
12:02
何でもその子たちが聞きたいこと。
一人暮らしするにはいくら必要ですかとか。
女性とうまくコミュニケーションするにはどうしたらいいですか。
何でもいいから聞いてこいっていうので、
5、6個質問が上がってくるんですよ。
バーって書き出して、それをなるべく一本のストーリーになるようにその場で考えて答える。
5、6個?
なるべく一つのメッセージでまとまるように。
じゃあどれから答えようかなーとかって。
これからいくとはこちらの回答に何らかの一つの共通項目が生まれるような組み立て方をしていくっていうのをやってたんですよ。
だから子どもたちがこいつ何聞いても答えてくれんぞっていう状態が、
じゃあ次あったら何聞こうって思うんで、
だんだん休み時間とかに質問をノートに書き留めるやつが出てくる。
新聞読んでても、先生ちょっとこれ分かんないんで説明してもらっていいですか?
聞くって言ってると、隣のやつもそれちょっと俺も聞きたいです、聞いてていいですか?みたいなのが生まれてくるんで、
子どもたちが本当にありとあらゆることを聞きたくなって、
こっちも意図的に、それはあれだわ、あの教科書のあそこに載ってるわとか言うと調べてみますみたいなやつもいるし、
他のあの上級生に聞いてみとか言うと教えてくれたりするし、
それでも手が終えないときに僕が答えるから、
必ずヒント答えがもらえると思ってるんで、
子どもたちがどんどんどんどん知りたいものが増えていく。
これはちょっと僕じゃなくて、だいちゃん話したいでしょう。
それは12個ぐらい話したいことある。
絞りますわ、3個に。
今聞いてて本当に感動してるのは、その子たちの好奇心って言葉を使うと取り戻してきてんだなっていうのが、
その場面だけでもわかるじゃないですか。
僕、辺中さんの言葉で一番グッときたのは、忘れてたって言葉ですね。
好奇心がないとかじゃなくて、もともとあるっていうことをちゃんと信じてるってところ。
それをたまたま何かがあって忘れちゃってて、それを取り戻してあげるっていう仕掛けを作ってる。
その教養講座でしたっけ、の場とかが、その子たちにとってはすごい楽しい場になっていて、
社会と自分が繋がる場になっている。
それがテクノロジーとかなかなか使えない環境であれば、辺中さんがそうやって自分がその環境になるっていう動き、
最高だなって思ったっていうのが一つと、
僕、その場面で寺子屋をすごい想起していて、
あの時ってなかなか自分が社会と関わるとか最先端を知る場がなかった時に、
寺子屋にいる先生とか師匠とか呼んでいたと思うんですけど、聞きに行くから始まるんですよ、たぶんね。
自分なりにこれ、なんで今海外ではこんな部分になってるんですかとか聞きに来て、
それでまず答えたりして、きっかけで自分から学び出したりとか、
15:04
そこで師匠が資料を渡すとかもあるかもしれないですけど、その場をすごい想起していて、
辺中さんが作っていた環境を見てみたかったなっていうのが2つ目ですね。
3個目は質問なんですけど、なぜその動きをしようと思ったのかっていうところ。
たぶんいろいろ他の業務もたくさんある中で、やらないを選択できたはずなんですよ。
それをやろうって思って、やらなくてもいいけどやったらより良いものを始めたっていうところ、
辺中さんの中で何があったのかなって聞きたかった。
いろんなことがあるんですけど、やっぱり子供たちは聞きたい話を聞く時間が一番伸びるじゃないですか。
伸びる。
し、彼らは往々にして答えてもらえなかった経験の多い子たちなので、
はいはいはい、そうだよね。
それはネグレクトとか、育児本気的な話だけじゃなくて、片親だとかだけじゃなくて、
両親揃ってても、その両親の言葉がすごい精神論だけだったりするんですよ。
頑張れ、とにかく頑張れとか繰り返せば、ちゃんとやれ、本気でやれ、信じてるぞ、お前は俺の息子だからみたいな。
熱としては正しいのかもしんないけど、具体的に何をやってるか全くわかんないみたいな。
どうしたらいいの父ちゃん、いやそれは繰り返すしかねえから、みたいな。
だから本当の意味では向き合ってもらえなかった、子供たちが多い中で。
徹底してこいつらと何でも聞いてこいっていう関係を作るにはこういうのが一番いい。
それを集団でやることがまた、この上級生そんなこと考えてるの?
何それっていう子供たちに、ちゃんとお前にも関係あることだからなっていう話になっていくように、
物事の解像度を調整しながら話をしていくんで、
だんだん俺にも当てはまる話ですね、子供たちが多くて。
それで集団形成もできるし、本当は1対1で伝えたいこともその場でねじ込んで伝えていくこともできるんで、
いろんな意味で効果的だなと思ったし、何より僕が楽しかったですね。
こいつら何聞いてくるんだっていうワクワクがあって。
楽しかったですね。
いや、最高っすね。
もはや学びの場ですよね、そこが。
だから、さっきおっしゃっていただいたように、寺小屋感はすごいなって。
どっかの会で、そうそう、自転車先生古内慎吾が出てた会で僕聞いたんですけど。
ありがとうございます。
昇華尊塾の話。
もう昇華尊塾のイメージめっちゃありました。
ピザ付き合わせてるわけじゃないけど、僕たちの子供たちは座ってんだけど、
でもまさに頭の中では吉田松陰のイメージで、おうし何でも聞いてこいっていう。
18:05
でもそれを答えることによって子供たちに自分の健全なライフスタイルとか、
より望ましい将来っていうところへのモチベーションが高まっていくように答えを返していく。
めっちゃいい。
めっちゃいい、なんか救われるなって。
18:50
コメント
スクロール